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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「チームは弱体化したかも…」コンテの言葉から、ノースロンドンの若手シフトの是非を考える。

「1月に起こったのは簡単なことではなかった。トッテナムにとって重要な4人の選手を失い、2人しか連れてこなかった。そう、数字はもちろんだけど、われわれは紙の上で、スカッドを強化するどころか弱体化させてしまったかもしれない」

「ベンタンクールとクルゼフスキは、能力開発によって成長させられるヤングプレーヤーを探しているトッテナムにとっては、理想的な選手だろう。しかし、それこそが問題」

「これはクラブのヴィジョンであり、哲学でもあると理解している。ただし、より早く成長したい、競争力を高めたいのなら、経験豊富な選手が必要だ。チーム全体の経験値を上げることにつながるからね」

発言の主は、もちろんアントニオ・コンテ。11月にトッテナムのマネージャーに就任し、プレミアリーグ9戦連続無敗とスタートダッシュに成功した指揮官は、まさかの3連敗で8位に沈んでいます。カラバオカップ準決勝で2-0、0-1と連敗したチェルシーには、プレミアリーグ23節でも2-0と3戦ノーゴールの3連敗。セインツ戦はウォード=プラウズの絶品クロス連発で逆転され、ウルヴス戦はエンジンがかかる前の2失点で逃げ切られてしまいました。

プレミアリーグ後半戦の4試合で10失点。厳しい状況に追い込まれたコンテ監督は、最終ラインのクオリティだけでなく、中盤の脆弱さも課題と捉えているようです。「スカイイタリア」が紹介したコメントは、デル・アリ、ロ・チェルソ、エンドンベレ、ブライアン・ヒルの放出がパラティチSD主導で進められたことを示しています。指揮官がほしかったのは、3年後に輝くかもしれない原石ではなく、すぐにチームを変えられるワールドクラスだったのでしょう。

彼の指摘は、大胆な若手シフトに打って出たアーセナルに対する問題提起でもあります。夏のマーケットでラムズデール、冨安健洋、サンビ・ロコンガ、ヌーノ・タヴァレス、ウーデゴーアとU-23をかき集めたエドゥTDとアルテタ監督は、冬は新戦力を加えず、コラシナツ、オーバメヤン、パブロ・マリ、チャンバースを手離しています。

若手シフトのメリットとして、「移籍金やサラリーを安く抑えられる」「大化けすれば、高額の移籍金を手に入れられる可能性がある」「指揮官の色に染めやすい」といったあたりが挙げられます。これに対してリスクは、「うまく育たず、失敗となる選手がいる」「全体の経験値が低いため、ビッグマッチを落とす可能性が高まる」「成長途上でチームから出ていってしまう」。最も大きな懸念は、コンテ監督がいうとおり、強くなるまでに時間を要することです。

アーセナルは、単に若返りを図ったわけではなく、「リーダーシップ、人間力、成長余力がある選手」というコンセプトで新戦力を揃えたと認識しています。とはいえ、それも半ばギャンブル。若手シフトは、基本的には弱者の戦略です。ワールドクラスに大枚をはたけないクラブ、安く買って高く売りたいクラブが用いる経営手法は、弱体化したスカッドを立て直そうとするクラブにとっても効果的で、彼らは今のチームには最善策と判断したのでしょう。

ユルゲン・クロップとともにリヴァプールの強化を推進したマイケル・エドワーズSDの当初のコンセプトも、「他のクラブでワケあってくすぶっており、力を発揮できていないコストパフォーマンスのいい選手」でした。ファン・ダイク、アリソン、チアゴは既にワールドクラスでしたが、彼らを獲得したのはチームの骨格が固まって課題が明確になってからです。ガナーズもスパーズも、同じ道を歩もうとしているのでしょう。だとすると…。

問題は1点。アルテタ監督が納得して若手を育てているのに対して、コンテ監督が納得していないことです。

スパーズの次節はマンチェスター・シティ。その後のバーンリー、リーズ、エヴァートン、マンチェスター・ユナイテッド、ウェストハム、ニューカッスルも、必ず勝ち越せる組み合わせとはいえません。欧州行きのチケットを逃し、ハリー・ケイン資金で若手を押さえようという話になったら、コンテ監督はノースロンドンに別れを告げるのでしょうか。クラブに聞こえるように不穏な言葉を残した彼の意図が、大いに気になります。


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“「チームは弱体化したかも…」コンテの言葉から、ノースロンドンの若手シフトの是非を考える。” への1件のコメント

  1. グーナーです より:

    コンテ監督は良くも悪くもそういう監督だと分かっていてスパーズは迎え入れたと思っていたのですが、そうでは無かったのでしょうか??

    良くも悪くもの「良くも」はもちろん、タイトル獲得請負人の面。
    悪くもは「自分の理想のチームが手に出来なければ出て行く」という面。

    今のところ後者のコンテに見えるというか、「そりゃそうじゃねぇか??」という感じもしてしまうのですが。。。

    とはいえやはり、なんだかんだ強いコンテですので。
    油断なんて出来る人ではありませんね。

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