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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

2015年は「カウンター元年」…マン・シティを2度倒したアーセナルの新しい武器の歴史を総括!

速い、鋭い、美しい。アーセナルのカウンターは、今やプレミアリーグNo.1の切れ味です。2015年1月18日、プレミアリーグ2014-15シーズン第22節のマンチェスター・シティ戦で見せたアーセナルのカウンターサッカーには、サポーターならずとも度肝を抜かれたのではないでしょうか。インヴィンシブルズの時代には速攻が冴えていたアーセナルには、いつしかポゼッションサッカーのレッテルが貼られるようになっていました。そんななかで、「正面からぶつかり合ったら前季プレミアリーグ王者が有利」といわれたこの試合で、プライドの高いヴェンゲル監督があっさり引いてくるとは誰も想像しなかったでしょう。この大事なアウェイゲームを、アーセナルは0-2で完勝します。2015年は、アーセナルの「カウンター元年」。今季のいくつかのメモリアルな勝利につながる新しいスタイルで、幕が開いた年でした。

しかし、エティハドでのゲームは、いくつかのカウンターには希望が感じられたものの、ゴールシーンはモンレアルが倒されて得たPKと、カソルラのFKからのジルーのヘッド。カウンターからゴールを陥れるシーンはありませんでした。次に私たちがアーセナルの変化に出会ったのは、8月2日のコミュニティシールド、ウェンブリーのチェルシー戦です。ヴェンゲル監督がモウリーニョ監督に初めて勝利したこの試合もまた、ガナーズは相手に持たせて低い位置から直線的な攻撃を仕掛けつつ、堅い守備で前半に挙げた1点を守りきりました。ゴールシーンは、中央のウォルコットからのパスを受け、アスピリクエタをかわして放ったチェンバレンの個人技です。カウンターは、有効な脅しにはなっていたものの、未だゴールという結果が出ていない戦術。ここまでは、決め手と呼ぶには至りません。

アーセナルの意図的なカウンターが、その美しさとともにゴールという形で結実したのは、今季のプレミアリーグが始まってからでした。10月4日の第8節、対マンチェスター・ユナイテッド。先制した直後、アレクシス・サンチェス、カソルラ、エジル、ウォルコットと速いパスがつながり、最後はエジルが仕留めたショートカウンターはパーフェクトでした。パスやクリアを拾われ、速い攻撃を次々と決められたマンチェスター・ユナイテッドは、20分で3-0とされてはさすがにはね返せません。その2週間後、ガナーズは最も大事なゲームで、またもカウンターを炸裂させます。

エミレーツで行われたバイエルン・ミュンヘン戦、90分を過ぎ、1-0でリード。敵陣でのインターセプトに成功し、快速を飛ばして右サイドを蹂躙したのはベジェリンです。エジルの左足にノイアーが素晴らしい反応を見せて触ったものの、ボールはゴールラインを越えていました。ここにきて、アーセナルのカウンターは決して苦肉の策ではなく、強豪クラブを仕留めるためのもうひとつのスタイルであることが明らかになりました。2015年も終わりに近づいた12月21日、カソルラ、コクラン、アレクシス・サンチェスを欠いたヴェンゲル監督は、あのときと同じ戦術を選択し、年明けに倒したチームを返り討ちにします。

「僕らは異なるアプローチができるようになった。その結果、相手にとってより難しいチームになったと思う。昨シーズンも敵地でのマンチェスター・シティ戦で普段と違うゲームプランで戦った。今季はそれがより徹底できている。ユニットとして僕らは向上しているんだ。…状況に適応しなければいけないときがある。今はすべての選手が揃っているわけじゃない。だから、そのアプローチこそがマンチェスター・シティに勝つ最善策だと考えた。ここまでは、それがビッグクラブとの試合で強みとなっている。僕らはチームとしてより強くなっているんだ」(ペア・メルテザッカー)

メルテザッカーが語る「それ」は、すなわちカウンターという従来とは異なるアプローチ。ボールポゼッション37%、シュート数8対14と相手を下回りながら、倍以上の決定機を創って2-1と勝利したマンチェスター・シティ戦は、昨季のアウェイゲームと同じ2ゴールではありながら、カウンターの完成度は格段に上がっていました。マンチェスター・シティから2勝を挙げ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、バイエルン・ミュンヘンに勝利した2015年のアーセナルは、そのすべてでポゼッションは50%以下。マン・シティ戦は1月が35%、先日は37%で、バイエルン戦に至っては27%という低さです。

ベジェリンとウォルコットという快速プレイヤーを擁し、エジル、アレクシス・サンチェス、カソルラ、ウォルコットとパスの出どころも多彩。自陣のどこにいてもゴール前まで必ず上がってくるラムジーの存在も、カウンターには欠かせません。2016年、アーセナルの新しい武器は、どこまで進化するのでしょうか。チャンピオンズリーグのバルセロナ相手に、大きな仕事を成し遂げてもらえればと期待せずにはいられません。

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“2015年は「カウンター元年」…マン・シティを2度倒したアーセナルの新しい武器の歴史を総括!” への8件のフィードバック

  1. エジルのパス より:

    更新お疲れ様です!

    素晴らしい記事ですね!

    自分はガナサポですが管理人さんの様な公平にプレミアのフットボールを観る…というプレミア独特の楽しみ方を、いつもこの場所で教えていただいている様な気がします。

    ガナーズ一本ですがプレミアが何処の国にも負けない時代が、また到来する事を願います!

    ありがとうございました!

  2. ゆうま より:

    クラブの予算が制限され強いアーセナルのメンバーが去ってゆく中
    小柄なOMタイプばかりを獲っていき、プレッシングと推進力が失われていき
    何故ベンゲルはこんな補強を繰り返すのか?と度々思いましたが
    今考えてみるとデカくて強くて上手い選手は高くて買えないので、デカくて強くて
    下手な選手ではなく、小さくて弱くても上手い選手を集める事によって苦しい時期を
    乗り越えようと言う事だったのでは思うようになりました。

    苦しい時期を乗り越え、段々以前のようなプレッシングと推進力が戻ってきて
    ベンゲル本来の速攻が復活出来る時期が来たということでしょうか。

    数年前までは速攻発動!でもペナルティエリアに誰も居ない(笑)が恒例だったのが
    三人ぐらい走り込んで来る姿がまた見られるとは感無量です。

  3. ヤンガナ大好き より:

    カウンターを戦術に取り入れるのはいいと思います。その為の前線の選手も揃っていますしパサーもいます。ただ質の高いカウンターを成立させるのに問題なのがチーム全体の守備意識と守備陣のクオリティでしょう。
    実際バイエルンには一回対戦しただけで容易く攻略されてボコボコにされてます。その試合ではコマンのキープに吊られてしまい守備陣がティアゴをフリーにさせてしまい何度も決定的なパスを入れられていました。この辺がチームとしての守備意識の改善点だと感じます。
    ですのでシティには通用しても現在世界のトップレベルであるバイエルンやバルセロナなどには今のままのカウンター戦術ではまだ不完全だと思います。まだまだ伸び代はある戦術でしょうが、だからこそ一流の守備者の確保とチーム全体の守備意識の見直しをしなければならないと感じました。

    そういう意味ではバルサ戦は興味深い一戦になりますね。カウンターがはまり優位に試合を進められるのか、それともMSNにやられてしまうのか、興味深いですね。ただ絶対にしてはならないのはイニエスタをフリーにさせる事です。彼を封じMSNを孤立させる事が出来れば勝機はあると感じました。

    —–
    確かに昨年度のエティハド シティ戦以来、ビッグクラブとの対戦でガナーズのカウンター、光る時がありますね!特に今シーズンのバイエルンとの初戦はチームベストのパフォーマンスだったと思います。

    が、如何せんプレスが強く、ボール奪取力の高いCBコッシーとボランチ、コクランの中央二枚が必須要件かと。実際、コッシーを欠いたバイエルンとの2戦目は玉砕でした。

    シーズン折り返しの段階でフラミニ頑張ってますが、コクランを欠いてバルサとCLで戦うのは厳しすぎます。カウンター一発狙いで戦うためにも、強くて上手いボランチの補強を強く願います。

    まあヴェンゲルさんのことなので余り期待してませんが。

  4. ぐーなー より:

    さすが管理人さん!

    インビジブル時代から良い時のアーセナルは奪ったら縦に早い直線的かつダイナミックなパスサッカーでした。
    ヴィエラとジウベルトが中盤を締めて、ピレスとベルカンプが快速のアンリ・ヴィルトール・リュングベリを操りゴールを陥れるというのが当時の勝利の方程式でした。

    それがいつしか前線のスター選手が去り…スタジアムの関係で補強が小粒になり…ゴール前で崩しきれず横パスが増え…前がかりになったところをカウンターで…下位相手に勝ち点を取りこぼし…優勝から遠ざかり…
    というのが私の見解です。

    もちろんポゼッションサッカーとカウンターサッカーは両立するものだと思います。

    アーセナルのパスサッカーはバルサのような緻密なパスサッカーではないと思っています。

    もちろんポゼッションサッカーも大切だと思いますが、このような強豪相手のプランBのカウンターサッカーがしっかりできるようになればプレミア制覇も夢ではないと思っています。

    過去にも同じようなプランBでCLの決勝まで勝ち上がり決勝戦でも先制点を上げたことがヴェンゲルにはありますからね。

  5. グナイゼナウ より:

    いつも楽しく拝読しています!
    自分もアーセナルがカウンターのチームであると常々思っていたので、このように記事にしていただけるととても嬉しいです。
    ちなみに、2003年以降のプレミアにおける支配率ワースト9試合の戦績は、なんと8勝1分です(skysportsより)

    ところで常々思ってたのですが、管理人さん、アーセナルのことものすごく好きですよね?(笑)
    もちろん、各記事とても中立的な目線で書かれているのがこのブログの素晴らしいところなのですが、どうもアーセナルに関する記事だけものすごくウキウキした表現が散見され、グーナーとして嬉しい気持ちになります。
    だからどうというわけではないですが、全記事を読む中でふと思ったので聞いてみました!

    最後に、おせっかいで締めさせてください。
    本記事の「快速」→「快足」では?

  6. グナイゼナウ より:

    皆さんへのお返事コメント、お待ちしてますよ(^^)

  7. グナイゼナウ より:

    どうしたんですかね?たまたまコメ欄更新の通知がいってないんでしょうか。
    みなさんがお返事を期待してますよー^^

  8. プレミアリーグ大好き! より:

    前回のレスから半年弱が経過しました。あれほど皆さんのコメントに丁寧にレスをされる誠さんがどうされたのでしょうか…?
    他にコメントをされた方もきっとレスを待っているはずです。ひとつひとつでよいので、お待ちしております。

    —–
    ストーカーみたいで怖E

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