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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ヴェンゲル監督、「最大3人」というのは、補充ですか?補強ですか?

「われわれは既に、にジャカとサインしている。この夏はアルテタ、ロシツキ、フラミニと3人の選手を失ったから、MFを補強した。ここにあと1人か2人を加えようとしているが、決して楽なことではない。チームにはしかるべきバランスが必要だからだ。選手を獲得し過ぎれば、チームは安定を失う。契約するのは最大でも3人だ」

ヴェンゲル監督のこの言葉を目にしたとき、大きな違和感が押し寄せてきました。なぜ、3人なのか、と。アーセナルにとって、来季こそはプレミアリーグ優勝を勝ち取る千載一遇のチャンスなのではないでしょうか。最終的にプレミアリーグ2位でフィニッシュした昨季、私はチームの熟成とチェフ効果に期待して「アーセナルはマンチェスター・シティに次ぐ2位」とポジティブな予想をしましたが、冷静に状況を見れば、優勝候補はチェルシーとマン・シティでした。圧倒的な強さで2014-15シーズンを制したチェルシーはわが世の春。デブライネ、スターリング、オタメンディを獲得したペジェグリーニ監督のチームの補強は適材適所、不足なし。シーズンが進み、グーナーのみなさんが指揮官への不満を露わにしたのは、優勝候補筆頭のチームがミッションを達成できなかったからではなく、「ライバルがコケてくれた絶好のチャンスを、なぜ活かせなかったのか」というニュアンスだったと理解しています。

しかし、来季は違います。モウリーニョ、グアルディオラ、コンテと新監督がやってきたクラブは、それぞれモデルチェンジしようとしています。ユーロとコパ・アメリカ開催によって始動が遅れるシーズンとなれば、完成度が高まるまでのリードタイムが必要。ロケットスタートというわけにはいかないでしょう。マンチェスター・シティは全体的に高齢化したチームに新たな才能を加え、ペップ仕様に塗り替えなければなりません。チェルシーもまた、ベテラン揃いの最終ラインの立て直しと、ジエゴ・コスタとアザールに一昨年の輝きまでは期待できない攻撃陣の強化が必要。イタリアがユーロで勝ち進めば、そのぶん新監督の到着は遅れ、プレミアリーグ8位で終わり欧州へのチケットを持たないチームの補強は苦戦を強いられそうです。

モウリーニョ監督のマンチェスター・ユナイテッドは、マタ、デパイ、エレーラ、フェライニ、ダルミアンらに名将がNGのハンコを捺せば、こちらもこれまでの2年間が無になるような作り直しが発生します。プレミアリーグをよく知るモウリーニョさんでさえ、チェルシー復帰のシーズンは3位でした。ドイツやイタリアからやってくる新しい指揮官が、当初は苦労することも充分に考えられます。

レスターは、チャンピオンズリーグで戦える体制にするという重い宿題を形にするまでで精一杯でしょう。マフレズやカンテが出ていくとなれば、補強の前に補充です。こうして見ると、1年早くプレミアリーグに舞い降りたクロップ監督、自前の若い選手でプレミアリーグ優勝を争えるレベルにもっていったポチェッティーノ監督、現状の戦力をベースに積み上げでチームづくりができるヴェンゲル監督にとっては、来季はジャンプアップのチャンスなのだと思います。そんななかでも、スパーズはユーロで疲労困憊のハリー・ケインしかいない最前線が弱く、リヴァプールはCBと左SBがネック。大きな弱点がないアーセナルは、唯一「補充」を必要とせず、「補強」による積み上げで早期にチームを仕上げられるのだと思います。しかし…。

3人というのは、中盤の退団とウェルベックの出遅れに対する補充ですか?

違和感の中身を簡潔に表現すれば、こんな言葉に収れんされるのかもしれません。「来季はグアルディオラ監督など、偉大な監督がプレミアリーグにやってくる。今季よりさらに難しくなるだろう。上位にいるのが簡単ではないことをわれわれは知っている。それを実現するなら、補強する必要がある。夏のマーケットでクラブがどれだけのお金を使うのかに興味があるね(メスト・エジル)」「2位で終わったことに失望している。悔いが残る。今季は優勝を争える力があったと思うけど、僕たちには一貫性が欠けていた。とりわけ2月と3月は数試合しか勝てなかった。来季はいいスタートを切りたい。新しく加わる選手が僕たちを上のレベルへと引き上げてくれると思う(ローラン・コシールニー)」。補強による明確なレベルアップが必要…攻守の要が、同じことをいっています。

2011年の夏。グーナーにとっては、思い出したくない季節でしょう。セスク、ナスリ、クリシーを次々と他クラブに持っていかれ、8月28日に行われたマンチェスター・ユナイテッド戦で8失点という惨敗を喫したヴェンゲル監督は、マーケット締め切り直前に一気に5人の選手を獲得しました。これ自体は、パニック・バイといわれても仕方がない不細工な対応だったかもしれません。アンドレ・サントス、パク・チュヨン、ヨシ・ベナユンのその後を見れば、人選は失敗のほうが多かったのも事実です。しかし、そこにはアルテタとメルテザッカーがおり、22歳以下を7人も起用せざるをえずライバルに大敗して壊滅の危機に瀕していたチームは、経験豊富な選手の力によってプレミアリーグを3位でフィニッシュしています。あのときのヴェンゲル監督の鬼気迫るテコ入れとクイックなチームづくりは忘れられません。

今、必要なのは、多少乱暴でもいいから何としてもプレミアリーグの頂点に立ってやるという必死さではないでしょうか。あの夏は立て直すためでしたが、5年後の今は、勝ちきるためにそうあってほしい。ヴェンゲル監督は、それができる監督なのだと思います。

何しろ、事情や思惑が複雑に絡まる移籍市場です。結果的に獲れた、獲れないはどう転ぶかはわかりません。大事なのは、意志をもって獲りにいくこと、欲しい選手なら多少高額でも諦めないこと。イギリスメディア「メトロ」がサポーターに向けて実施した「ヴァーディがダメだったら、次に狙うべきストライカーは?」というアンケートで、モラタ、ラカゼット、バチュアイ、ヴィンセント・ヤンセン、チチャリートといった設問にあった名前より上位に「ここにはいない。もっとレベルが高いストライカーを」が28%もあったのを見て、私は共感しました。ストライカーなら、たとえばイグアインにいってほしい。欧州や強豪クラブ相手には限界がみえるメルテザッカーの代わりとなる一流のCBを獲得してほしい。ラムジー、ジョエル・キャンベル、チェンバレン、アレクシスとタイプが違う選手が4枚使える右サイドに、ウォルコットは必要なのか?昨季プレミアリーグで先発3試合に終わったギブスは、まだいけるのか?2011-12シーズンのように、12人も獲れとはいいません。ただし、必要なポジションに加えて現状の選手の見極めまで精緻にやれば、3人でおさまる話ではないのではないかと思うのです。

2014年7月20日。ジエゴ・コスタ、セスク、フィリペ・ルイスを獲得したモウリーニョ監督は、「マーケットは終了した」と補強完了を宣言しました。ところがチェルシーの指揮官は、その舌の根も乾かないうちにドログバをゲットすると、マーケットが締まる寸前にフェルナンド・トーレスをミランに出してロイク・レミーを獲得。当時は、「ストライカーだけで2人も獲って…あの宣言は何だったの?」とびっくりしたことを覚えています。私は、今回のヴェンゲル監督の「3人発言」にも裏切られたらいいなと、秘かに期待しています。「3人?それは退団した選手の数じゃないか?」と。(アーセン・ヴェンゲル 写真著作者/Ronnie Macdonald)

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“ヴェンゲル監督、「最大3人」というのは、補充ですか?補強ですか?” への8件のフィードバック

  1. ジウベルト より:

    この補強の進捗状況だと、戦術家の監督が増えるプレミアにおいて、ガナーズが後手を踏みそうな予感がします。最低でもCBとCFはワールドクラスが必要で、後は中盤の余剰人員の売却。この余剰人員売却がいつも投げ売りで下手ですねガナーズは。
    もしEU離脱となったら、EU枠はどうなるのでしょうか?

  2. 新参 より:

    モラタ、イブラ以外にまだ動きがなさそうなストライカーはマーケットが大きく動かない限り、そこそこの選手しかとれないと思います。しかし、マーケットが動きさえすれば、アーセナルは一流のストライカーを獲得するチャンスがあると思います。エジルやジャカ、サンチェスが言っていたように、ベンゲル監督には直接口説かれると断れない魅力があるように思います。

    個人的に気になるのはカバーニの動向です。コパアメリカでグループリーグ敗退に終わったウルグアイの中心を担っていただけに、パリが彼ではいけないと判断するのではないかと思っています。イグアインをパリが買い、カバーニ放出となればアーセナルにとってはチャンスです。

    一方のセンターバックはマルキーニョスのような若手即戦力が望ましいですが、チャンスがあると思うのは、マノラスとブリント。ローマがリュディガーの怪我により、売却する選手を変更しなければならなくなりました 。マノラスはチャンスありです。

    長々と書きなぐりましたが、アーセナルはマーケットを自ら動かすほどの資金を持ち合わせていないものの、マーケットが動きさえすれば補充ではなく、補強ができる資金を持ち合わせていると思います。

  3. ヤンガナ大好き! より:

    おっしゃる通りですね!記事のリストに上がっていたストライカーならジルーと同じ程度の力しか期待できないと思います。

    ストライカーに関してはユーロを観ていても分かるように、プレミアで20点以上取れるストライカーは、クリロナ、ベイル、ケインを除くと見当たらないと思いました。やはり、本物のストライカーを狙うなら、コパアメリカでスカウティングするのが正解かと思います。

    ストリートサッカーで鍛えられた、ハングリーなストライカーが欲しいですね!かつてスアレルを取れなかったことを大きな反省材料に、南米産ストライカーに是非ともアタックしてもらいたいですね。ヴァーディーが本当にだめなのであれば、イグアインがベストですが…

  4. ホタ より:

    アーセナルには何か明確なコンセプトというか、方向性が欠けているように感じます。シティのペップやユナイテッドのモウリョーニョのような狂信的なカリスマ性があるわけでもないし、スパーズの様に若手を使うといった明確な方針があるわけでも無く…何か派手な買い物をするライバルを尻目にスマートな買い物(移籍市場での振る舞い)に徹することに何かこだわりがあるようにすら感じます。今年こそはマネーを大量投入して関係者に「おっ!?」と言わせるベストタイミングだと思うのですが…

  5. yuto より:

    更新お疲れ様です。
    ユナイテッドファンですがヴェンゲル監督には報われてほしいという思いがあるので15-16シーズンは非常に残念でした。
    ここ数年でサンチェス、エジル、チェフとワールドクラスの選手を少しずつ獲得していったアーセナルですが今夏はどうでしょうかね・・・
    発言からして補強というよりも補填するイメージの方が強く感じてしまいます。
    周囲のヴェンゲル解任派を黙らせるためには来シーズンは監督キャリアの中でも大きなチャンスでしょう。
    群雄割拠となるであろう監督陣の中でリーグタイトルを獲得できれば格別の称賛を受けると思うのですが。

  6. queen より:

    ヴァ―ディーが決まらないのはなんか嫌な感じです。
    もしリカルドロドリゲスが来てくれたらギブスは市場に出るでしょうし、
    センターバックに大物来てくれたら、ガブリエルかチェンバースは厳しいですかね。
    二列目はウォルコットとチェンバレンのどちらかに見切りを付けて良い時期だと思います。

    間違っても、ペルシのように、野心の欠けていることに失望して出ていくことが、エジルサンチェスに無きよう。

  7. ガナユ より:

    queenさんのおっしゃる通り。今必要なのは野心と補充ではなく補強だとわかるワールドクラスの補強です。

    もしワールドクラスの選手を取れなければ戦術で遅れているベンゲルにはチャンスは薄いかもしれませんね。今の移籍市場の値段が狂っているのもまた事実でベンゲルが哲学に従うか、賭けに出るかみものです。

    玉突きで何時ものように上手いことしそうな気はしますが 笑

  8. makoto より:

    ジウベルトさん>
    ヴァーディ問題が正式に決着しないと動きづらいのは確かでしょうね。EU離脱については、変わるのはビザを取らなければならなくなる選手が増え、ハードルが上がる問題だけではないかと思います。

    新参さん>
    そうすると、7月以降の動き次第ということになりますね。CBは獲る意志が強ければ何とかなりそうですが、ヴァーディが最終的にNGだった場合のストライカーは、マーケットの動き次第でしょうね。

    ヤンガナ大好き!さん>
    私もイグアインが獲れたら最高だと思います。欧州では、ルカクはガナーズなら20ゴールオーバーいけるのでは?と考えたりします。

    yutoさん>
    そうですよね。チャンスなんです。ヴェンゲルさんにとっては勝負どころだと思うのですが…。

    queenさん>
    エジルとアレクシスがいなくなったら、相当厳しいですね。その意味でも、トップとCBは早く決めたいところです。

    ガナユさん>
    ライバルが作っている最中にいかに引き離すか、ですね。現状戦力に多少積み上げ、ではプレミアリーグ優勝は厳しそうです。

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