イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ダメージを払拭できるか?今までになく不安なアーセン・ヴェンゲルとアーセナル。

「難しかった。非常に残念なパフォーマンスだ。破滅的だった」。プレミアリーグ3節、アンフィールド。リヴァプールに4-0と手もなくひねられたアーセナルの戦いぶりに、指揮官、エース、OB、評論家が落胆や怒りを表明しています。ヴェンゲル監督は、冒頭の発言に加えて「われわれはすべてにおいてフィジカルで劣っていた。相手に楽をさせてしまった。最近はビッグマッチでよく戦えていたので、より落胆が大きい」とコメント。辛口なガリー・ネビル氏が「私なら選手全員を放出リストに入れる」と憤慨すると、ティエリ・アンリは「スタジアムから出て行きたかった。私はこのチームとは関係ない」と厳しい表情で語りました。プレミアリーグで枠内シュートゼロは、2014年10月のチェルシー戦以来、2年10ヵ月ぶり。この試合は2-0で、今回のレッズ戦ほど彼我の差は明確ではありませんでした。中盤で必死に上下動を繰り返しながら、ボールに絡めず非難されたメスト・エジルは「結果に失望している。批判は当然だ」と惨敗を受け入れながら、サポーターに謝罪の意を表明していました。

「90分を通してリヴァプールが勝利に値していた。いつもならフラストレーションが溜まるゲームの後は、怒りのあまりSNSを更新しないけど、この試合について何もいわずに代表に合流できなかった。サポーターのみなさん、申し訳ありません。特に、リヴァプールまで来て応援をしてくれていた人たちに。次の試合は、誰もが感じている失望から立ち直るために全力を尽くして改善したい」(メスト・エジル)

1-5を2回繰り返して敗れ去った昨季チャンピオンズリーグのバイエルン戦より、精神的なダメージは大きいのではないでしょうか。あの2試合は、コシールニーがピッチにいる間は勝負を争っており、大差がついたのは敗戦が明らかになって集中力が切れたからでもありました。一方で今回は、収穫といえるものが何も残りませんでした。3バックも4バックも崩され、アレクシス・サンチェスは空回り。コラシナツをプレミアリーグの水に慣れさせることはできず、ラカゼットは左サイドに置いても機能しないことを確認しただけでした。そう、最大の問題は、何人かの選手が本領を発揮できる役割を与えられていないことです。

ベジェリンは左では彼らしさを見せられず、モンレアルは快速ウインガーをボックス内でハードマークせよというミッションは得意ではないでしょう。ジャカとラムジーのコンビは、中盤を完全に支配できるプレミアリーグの中堅・下位クラブならなくはない選択ですが、ゲーゲン・プレッシングとガチンコで勝負することを避けるなら最初からコクランでした。いや、その前に、マネとサラーがいるチームを相手に、なぜ3バックだったのでしょうか。ホールディングとWBの間のスペースを使われることは、これまで戦ったチームに教えられていました。ベジェリンとコラシナツをSBに起用し、サイドをナチュラルに埋められる4-2-3-1なら、これほどまでにやられることはなかったと思われます。

レッズのようなチームに対して、今の選手たちのよさを最も活かせる布陣は4-3-3なのではないかと思いました。ベジェリン、ムスタフィ、コシールニー、コラシナツの4枚に、アンカーはジャカ。パスコースを切るのがうまいエルネニーとエジルをインサイドに置けば、状況を見ながら「2センター+トップ下」の形にもスムーズに移行できます。アレクシス・サンチェス、ラカゼット、チェンバレンが前線にいれば、サラーやマネも上がりっぱなしではいられないでしょう。3バックにこだわったのは、昨季プレミアリーグの後半戦で勝利を重ねたからだと思われますが、当時の相手は目標を既に失くしていた中位クラブと、プレミアリーグを捨てていたマンチェスター・ユナイテッドでした。本気で3バックを完成させるなら、相応の補強とWBの後ろをカバーする術を用意しなければならなかったのではないでしょうか。

レッズ戦の惨敗が今までになく心配なのは、あまりにも選手たちのモチベーションが低く、バラバラに見えたからです。ヴェンゲル監督が安定的な戦績を残せていたのは、頑固という短所と背中合わせの一貫性、ブレなさがあったからでもあると思います。明快な方針が選手たちに迷いを生じさせず、アーセナルは長いスランプに陥ることはほとんどありませんでした。しかしこれも、昨季プレミアリーグ後半戦で2か月半に及ぶ不調を経験し、怪しくなってきました。選手たちが指揮官の起用や布陣に疑念を抱くようになれば、モウリーニョ監督がチェルシーで経験したような厳しい状況を迎える可能性が高まります。

アレックス・オックスレイド=チェンバレンが3500万ポンド(約49億円)でチェルシーに移籍合意と報道され、シュコドラン・ムスタフィは人間関係を理由にインテルに行く可能性があると伝えられています。CBを補強しなければならない3バックのチームが、ガブリエウ、ムスタフィと2人も戦力を手離すとすれば、やむにやまれぬ事情があるということなのでしょう。大丈夫か?アーセン・ヴェンゲル、そしてアーセナル。「補強なし、離脱あり」でデッドラインデーを過ごし、次節のボーンマス戦で勝ち点を落とすようなことがあれば、プレミアリーグ優勝どころか4位も一気に厳しくなり、長年それなりの結果を残してきたボスの立場も危うくなるかもしれません。名古屋時代から彼を応援してきた者として、ただただ心配です。

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“ダメージを払拭できるか?今までになく不安なアーセン・ヴェンゲルとアーセナル。” への10件のフィードバック

  1. だしまる より:

    更新お疲れ様です。
    さすがに今回ばかりは不安です。
    選手の抱えすぎで管理できないとのベンゲルの話からも
    モチベーション・人間関係の不安が見て取れます。

    チェンバレンの移籍は、開花を長年待ちわびていただけに残念。
    ただ、ベジェリンとの同時期用が、チームバランスを壊していたように感じるだけに、
    しょうがないのかなと。

    一番ショックなのがムスタフィの件。チームの大黒柱候補が人間関係が嫌でとは。

    誰もしくはグループがガンになっているのか。
    フレンチかイングランドの派閥があるのか。

    勝てなかった時代にインテルの派閥をズラタンがぶっ壊したように。
    荒療治が必要になりそうです。

  2. D より:

    チェンバレンとムスタフィが居なくなったらもう3バックも4バックも機能しないのでは。。。
    もう現状から目を逸らしたくなります。

  3. 麦茶 より:

    個人的にはムスタフィの件が一番の焦点です。情報ではインテルと個人間ではすでに移籍合意、
    クラブはレンタルでなく買取を望んでいるようですが、ちょっと待ってくれと言いたい。
    現在のチーム状況的にも将来的にも人間関係が問題で放出していいような選手ではない。
    そもそもアーセナルのキャプテンは同じドイツ人であるメルテザッカーでしょ?
    さらにエジルという絶対的な同国籍選手までいる。彼らは一体何をしているのか。
    もしかしてその二人と仲が悪いのか。彼ら以上の一大派閥ではイングランド籍選手ですが
    誰だろうと放出すべきはムスタフィと対立している相手の選手だと思います。
    まぁ、実際にはムスタフィがとんでもな人間性に問題があるという可能性もありますが
    それくらいアーセナルにとって待ち望んだ選手だということです。
    彼を残せるかどうか、残した場合に内部の問題を解決出来るかは、大きな分岐点になる気がします。

  4. プレミアリーグ大好き! より:

    この2週間で一気に何かが崩れましたね。サンチェス、コシールニー、ムスタフィ不在でもサブの選手が力を出して勝利をもぎ取った開幕戦がウソのようです。

    ムスタフィの件は本当に何なんでしょうか?今更人間関係?今までそんな話は一度も出ていませんでしたよね。

    早くも価値を見せていた新戦力の2人をベンチに置き、左が本職のモンレアルをわざわざセンターで起用。おまけにディーセントプレイヤーのムスタフィを使わずホールディングが先発・・・。ジルーに至っては「ラカZが入って先発が」とか言ってラカZベンチでもスタメンじゃないし。守備的FWのウェルベックより序列下なのか、とかわいそうになってしまいます。

    ところで今回の問題は、相変わらずのコンディショニング下手にもあったようにも思います。ガナーズを見てきた人は知っていると思いますが、1週間きっちり空いたあとの試合で休養の短い相手よりもフィジカルで完全に劣っていた、という試合が本当に多いんです。逆に過密だと結構動けるんですが、毎試合誰かつぶれるという。当然それも含めてチーム力なわけでこのあたりがチェルシーなんかとの大きな違いですよね。

    インターナショナルが救いになるのかどうか。選手買っても何も変わらないような気がしてなりません。早くも詰んでるのかなぁ。

    —–
    更新ご苦労様です。

    ご指摘の通り昨季のバイエルン戦を凌ぐ状況でしょうね。長く続いたベンゲル政権では過去に何度もピンチがありましたが過去最大かもしれませんね。少なくても開幕直後のこの時期にここまでベンゲル辞任論が噴出したことはないでしょう。

    移籍期間最終局面でメディアを騒がせるのがバリバリの主力の放出話ばかりでは何とも寂しいですよね。チェンバレンはチェルシーに移籍するでしょう。極めて残念ですけどこの移籍でようやくベジェリンを本来のポジションで起用できます。コラシナツもまた然りです。バランスを考えれば致命傷にはならないでしょう。

    問題はムスタフィとサンチェスです。彼等の放出は最低でも後釜の獲得が必要ですけどこの環境を知りながらであえてアーセナルを新天地に選ぶ実力者がいるでしょうか?
    私は甚だ疑問です。だからこそ・・・何とか残って欲しいのですが・・・

    —–
    疑問なのですが、なぜベンゲルは守備のできる潰しやタイプのボランチを獲得しないのでしょうか?チェフ、コシェ、ムスタフィの前に例えばファビーニョがいたらだいぶ楽になると思うのですが。
    ジャカ、ラムジーでシーズンインする意図がよくわかりません。
    中盤から後ろの守備陣を安定させれば、極端な話あとはサンチェスの突破力決定力、エジルのインスピレーションに任せるだけでもチームは回りそうな…素人考えですが。

  5. ヒロ より:

    個人的にベンゲルは甘いというか決断力に欠ける気がします。一部の選手に期待しすぎ
    と言えばいいのか。コンテやペップ、モウリーニョなどにある良い意味での非情さが
    ベンゲルには出来ないんでしょうね。

  6. sini より:

    憎きお隣とはいえ、長年"模範的なお手本"の一つでもあったと言えなくもない(?)アーセナルのことは、なんだかんだで気になります。

    ヴェンゲルの人員過多で管理できない発言と、ムスタフィの人間関係理由で退団希望説。
    開幕は良い勝ち方をしていたので、今季はそう簡単に上位をスパーズに明け渡してはくれないだろうと思っていたのですが……。
    アーセナルが抱え込んでしまった問題は簡単ではないでしょうが、チームにとって誰がより優先されるべき存在なのかを、よく判断しながらマネジメントしていかないと取り返しのつかないことになりそうです。

    逆に、同じくコウチーニョ絡みで不穏な雰囲気だったリヴァプールはどうしたのでしょうね。オリギ移籍の噂も含め、いろいろ吹っ切れた感じの印象を受けました。
    というか、もしこのスカッドにコウチーニョ帰って来たら反則やんと思うくらいに強かったです。
    バルサ移籍に揺れてたコウチが、今すぐは無理でも休養を挟んでから帰ってきて、その勢いのまま念願のプレミア初タイトル……ありえない話ではないですよね。
    スパーズにとっては困った話ですが。。。w

  7. ミツル より:

    Jsportsで観てましたが、戸田さんの意見が怖いほど一致して悔しさ倍増でした。ディフェンスが1ラインになってる、ベジェリンラカゼットウェルベックのアンマッチなポジション、3バックが不向き、私もエルネニーの3バックセンターは面白いと密かに期待してました。
    とても辛いと同時に皆の気持ち実感してきます、仕事頑張って出張ゲット、チェルシー戦アウェイ席で、、とにかく問い合わせたら売りに出てますパニックバイは避けてほしい。

  8. ミツル より:

    Jsportsで観てましたが、戸田さんの意見が怖いほど一致して悔しさ倍増でした。ディフェンスが1ラインになってる、ベジェリンラカゼットウェルベックのアンマッチなポジション、3バックが不向き、私もエルネニーの3バックセンターは面白いと密かに期待してました。
    とても辛いと同時に皆の気持ち実感してきます、仕事頑張って出張ゲット、チェルシー戦アウェイ席で、、とにかく問い合わせたら売りに出てますパニックバイは避けてほしい。

  9. セオ より:

    飛翔と凋落を見ました。
    クロップが来てからリヴァプールは
    蘇りました。アーセナルは変わらないどころか
    酷くなっていく。私はボスが好きなわけですが、
    だからこそ辛いですね。選択ミスが多過ぎる。。。
    フォメ、人員配置。決して戦術や戦略に詳しくない
    私でも分かるのになんでと・・・。
    唯一の光というべきか、エジルの言葉が希望です。
    闘志か悲哀か、全力で応援したい。

    —–
    こんなときこそジャックを使ってほしい。
    ウォルコットも、意地をみせてほしい。
    たとえ負け試合だとしても、楽しみながら試合が見たいです。

  10. makoto より:

    だしまるさん>
    ムスタフィの件はショッキングでしたね。クリアしなければならない課題が多く、崩れたら立て直すのが難しそうです。

    Dさん>
    チェンバレンがいないと3バックは難しいですね。彼がいることで相手の侵入を防げているシーンが多いので。

    麦茶さん>
    同感です。長い間、最終ラインを仕切ってほしい逸材だと思います。

    トマシュさん>
    トレーニング方法に問題があるのでしょうね。負傷者もコンディション不良も少ないチェルシーを見ていると、なおのこと気になります。

    tomoさん>
    私も過去最大ではないかと思います。外圧よりも、内部的にかなりネガティブな状況になっているのではないかと心配です。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    根本的に好きではないのでしょうね。名古屋時代のフラット4や、インヴィンシブルズのサッカーを手離せないのではないでしょうか。

    ヒロさん>
    ヴィエラが同じことをいってました。

    siniさん>
    レッズは、クロップさんと主力選手の関係がとてもよいのではないでしょうか。アーセナルも、今までは総じて良好だったようにみえるのですが。

    ミツルさん>
    いろいろ「?」ですよね。納得感なくやっている選手もいるかもしれません。

    ミハルさん>
    いろいろ弱点を指摘されてきた指揮官ではありましたが、ここまで同時多発的に選択ミスといわれることはなかったように思います。4バック回帰が最適解なのではないでしょうか。

    セオさん>
    それは大事な視点ですね。攻めてほしいですよね。

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