イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「アーセナルのチケット代は高い!バイエルンはファンに優しい」という現地記事に微力ながら抗議します!

今晩、といってもイギリスの夜で、日本では明け方ですが、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントファーストレグ、アーセナルVSバイエルン・ミュンヘン戦が行われます。プレミアリーグファンとしては、昨夜のマンチェスター・シティ完敗のショックを、世界王者と戦うアーセナルに払拭していただきたいと願う次第であります。が、しかし。イギリスのタブロイド紙「デイリーメール」が、この大勝負に水を差すような記事を掲載しているのです。曰く「アーセナルの高額チケット代はひどい!」

アーセナルは今回のバイエルン・ミュンヘン戦で、シーズンチケットを持っているサポータに対しても、約60~130ポンド(約1万円~2万3000円)の別料金が必要としています。「プレミアリーグやFAカップはいいけど、チャンピオンズリーグは別だよ」ということですね。アーセナルは、ただでさえシーズンチケットが高いことで有名。先日の記事でも紹介させていただきましたが、安い席でも14万円と、プレミアリーグ平均の倍。高い席だと30万円以上です。元の値段を安くしてほしいくらいなのに、さらに取るとは…と嘆くサポーターのお気持ちはわかります。

これに対してバイエルン・ミュンヘンは、アウェイ戦に足を運んでくれるサポーターに、「ささやかな感謝の気持ち」と、総額9万ユーロ(約1260円)分、肩代わりをするそうです。デイリーメールは「これでは、試合前から勝負はついているようなもの。グーナーは盛り上がらないどころか、エミレーツに顔を見せるのか?」と煽っているわけです。これも、わかります。

…しかし、いや、ちょっと待った!気持ちはわかりますが、とにかく待った!

私は何としても、プレミアリーグ勢が世界チャンプをノックアウトするシーンを観たいのです。今夜の試合にサポーターのみなさんに盛り上がっていただき、勝利を手に入れるべく、ここは「アーセナルのにわか弁護士」となって、イギリス紙得意のゴシップ仕立ての記事に反論させていただきましょう。まずは、こんなテーマから。「エミレーツスタジアムとアリアンツ・アレーナ、これだけ出費が違う!」というお話です。

エミレーツ航空と15年200億円のネーミングライツが成立し、「エミレーツスタジアム」と命名されているアーセナルの本拠地は、本名を「アッシュバーン・グローブ」といいます。2006年7月オープンの素晴らしいスタジアムの総工費は、750億円と発表されており、バイエルン・ミュンヘンの本拠地「アリアンツ・アレーナ」の376億円と比べると、2倍近い費用です。これだけ聞くと「アリアンツ・アレーナのほうが収容人員が6000人も多いのに、何でこんなに違うの!?」と思うかもしれません。最大の理由は、片やはロンドンのど真ん中の工業地解体、いま一方はドイツの高速道路脇のさら地利用であること。一等地の地代を払い、建設だけでなく解体にもお金をかけたスタジアムと、高速に近いので資材運搬もラクで、何かと安上がりなスタジアムの違いでしょう。いってみれば、「東京23区内と海老名(ICとして首都圏で有名なので出しただけで他意はありません)」です。世界のあらゆるスポーツの試合会場のなかでも、エミレーツの建設費はトップ10に入っており、サッカースタジアムで上をいくのはウェンブリーとスタッド・ドゥ・フランスだけです。

さらにいえば、「アリアンツ・アレーナ」は2006年のドイツワールドカップで使うスタジアムとして建設され、バイエルン・ミュンヘンは1860ミュンヘンと共同使用しているので、工費を全額負担してないでしょう。あえて乱暴にいえば、役所やワールドカップ実行委員会、共同使用者に金を出させた(であろう)バイエルンに対して、エミレーツをハイバリーの近くに建設してノースロンドンの伝統を守り、サポーターが足を運びやすくするために、アーセナルはこれだけの負担をしたわけですね。でも、彼らはそんなことをアピールしません。不器用ですから。…うう、何てけなげ。

そしてこの2チームは、クラブとしての規模にも差があります。以下は、昨年発表されたサッカークラブの高収入ランキングですが、アーセナルの収益はバイエルン・ミュンヘンの2/3なのです。

2012-13シーズン サッカークラブ収入ランキング
1位 レアル・マドリード(リーガ・エスパニョーラ)   5億1890万ユーロ(約738億円)
2位 FCバルセロナ(リーガ・エスパニョーラ)      4億8260万ユーロ(約686億円)
3位 バイエルン・ミュンヘン(ブンデスリーガ)    4億3120万ユーロ(約613億円)
4位 マンチェスター・ユナイテッド(プレミアリーグ) 4億2380万ユーロ(約603億円)
5位 パリ・サンジェルマン(リーグアン)        3億9880万ユーロ(約567億円)
6位 マンチェスター・シティ(プレミアリーグ)    3億1620万ユーロ(約450億円)
7位 チェルシー(プレミアリーグ)           3億0340万ユーロ(約431億円)
8位 アーセナル(プレミアリーグ)           2億8430万ユーロ(約404億円)
9位 ユヴェントス(セリエA)             2億7240万ユーロ(約387億円)
10位  ACミラン(セリエA)               2億6350万ユーロ(約375億円)
(監査法人デロイト発表)

こういった状況を無視して、「チケット代を安くしろ」「でも一流選手を獲得せよ」「タイトルを獲れ」「バイエルン並みのサービスしろ」というのをすべて要求するのはやはり酷ですね。クラブ経営上、いちばん影響が大きい「チャンピオンズリーグ出場」を守り続けているヴェンゲル監督を、私はクラブ経営を理解している優秀なマネージャーとして、最大級にリスペクトします。上記のどれを守って、どれを捨てるか。私がアーセナルサポーターなら、

「バイエルン・ミュンヘン戦は勝ってほしいから、ちょっと痛いけどチケット買ってスタジアムに行くよ。でも、チャンピオンズリーグ獲ったら、来季のシーズンチケット安くしてね♪」

でしょうか。話がややもち、でかくなり過ぎた感はありますが、アーセナル弁護人からの答弁は以上です!…もし、この記事を「おもしろい」と思った方は、下のランキングバナーを押して「無罪」判決を下していただければうれしいです。おもしろければ、で結構ですので、何とぞ、よろしくお願いします!

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“「アーセナルのチケット代は高い!バイエルンはファンに優しい」という現地記事に微力ながら抗議します!” への3件のフィードバック

  1. ウィルシェア より:

    更新お疲れさまです

    ほんと財政面をしっかりしているチームとしてはFFPの影響力をもっと大きくしてもらいたいですね。

  2. ちくちく より:

    グーナーですからね、もちろん押しました。チケが異常に高いのはそういう理由だったんですね…!ファッキン スペンドマネーのチャントもありますが(笑)。これは俺得情報でした、ありがとうございます。

  3. やす より:

    無罪!とてもユナイテッドファンとは思えませんね。毎日欠かさずチェックしているグーナーです。私も偏見的です。プレミア勢の2ndレグ奮闘を期待します。でも、更新されるここの記事はもっと期待してます。いやー面白い!

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