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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

いつから勝てなくなったのか…プレミアリーグ勢の欧州における凋落の歴史を振り返る

アーセナルとマンチェスター・シティが敗れ、プレミアリーグ勢でチャンピオンズリーグのベスト8に残ったのは王者レスターだけとなりました。「スカイスポーツ」が、今季を含む過去5シーズンの8強を国別にカウントすると、プレミアリーグは4番手になると報じています。1位は、バルセロナ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリードが8強どころかベスト4の常連になっているスペインで、のべ15チーム。2位がバイエルンとドルトムントが強いドイツで9回。3位はパリ・サンジェルマン4回、モナコ2回のフランス。アーセナルが7年連続でラウンド16止まりのプレミアリーグは、レスター、チェルシー、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッドの4に留まっています。

以前は、ベスト4に3チームも送り込んでいたプレミアリーグ勢は、どこで勝てなくなったのでしょうか。以下に過去10年のベスト8進出チームをまとめてみました。2007-08シーズンからの5年間で、8強入りしたクラブは14。今のスペインに負けない数のチームが、4月までCLを戦っています。マドリード勢とバイエルンに勢いがなく、セリエAが死んでいた2000年代後半は、「プレミアリーグ勢VSバルセロナ」の時代でした。2010-11シーズンまでは、決勝トーナメント出場クラブは4が基本。ベスト8で2ついなくなったら事件、ファイナルに1チームが残り、バルサに勝ったチームは優勝、勝てなければ準優勝というわかりやすい数年でした。

【過去10年のチャンピオンズリーグにおけるプレミアリーグ勢のベスト8】
2016-17 レスター
2015-16 マンチェスター・シティ
2014-15 なし
2013-14 チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド
2012-13 なし
2011-12 チェルシー(優勝)
2010-11 マンチェスター・ユナイテッド(準優勝)、チェルシー、トッテナム
2009-10 マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル
2008-09 マンチェスター・ユナイテッド(準優勝)、アーセナル、リヴァプール、チェルシー
2007-08 マンチェスター・ユナイテッド(優勝)、アーセナル、リヴァプール、チェルシー

異変が起こったのは、2011-12シーズンです。チェルシーがビッグイヤーを獲得したため、プレミアリーグ勢はまだ強かったという印象が残っている方もいるかもしれませんが、このシーズンはマンチェスター勢がグループリーグで敗退しています。優勝したチェルシーも、バルセロナ戦とバイエルン戦で見せたのは、ひたすら自陣にこもって2~3回のカウンターに望みを託す弱者のサッカー。彼らの栄冠は「番狂わせ」と評されました。翌シーズンもチェルシーとマンチェスター・シティが年を越せずにCLを終了。2014-15はリヴァプール、昨季はマンチェスター・ユナイテッド、今季はトッテナムがアウト。プレミアリーグ勢が年内にひとつ落ちるのは、もはや定番となりました。ここ数年では、いなくなったクラブの共通項は「前年は出ていないクラブ」。CLとプレミアリーグを両立させようと戦力増強や布陣変更を試み、チームの完成度が低いまま敗れ去るパターンです。ベスト8に1チーム出すのがやっととなり、ベスト4は2年に1回。ここ数年で、何が変わったのでしょうか。キーワードをいくつか、挙げてみましょう。

「TOP4がTOP6へ」「欧州への資本投下」「イングランドの弱体化」。2009-10シーズンにトッテナムがプレミアリーグ創設以来初の4位となり、翌シーズンにマンチェスター・シティが初の3位。潮目となった2011-12シーズンには、マンチェスター・シティが初優勝を遂げています。国内では年を追うごとに強くなっていったマン・シティは、欧州では別なチームのようにおとなしくなる内弁慶クラブで、初めてベスト8に届いたのは、セミファイナルまで進んだ昨季です。「チャンピオンズリーグ出場権争いが激化し、クラブの目線が内向きになった」「急激に強くなったクラブが欧州で勝てなかった」ことで、プレミアリーグ勢が確保していた椅子は、フランスなどに明け渡されます。

ここ5シーズンでベスト8に6回進出しているパリとモナコのフランス勢は、いずれも大きな資本が投下されたクラブ。カタール・スポーツ・インベストメントがパリの株式を購入したのは2011年5月、ロシアの実業家ドミトリー・リボロフレフ氏が、最下位でリーグ・ドゥに落ちようとしていたモナコに投資したのは2011年12月です。以来、欧州の多くのクラブに中東、東南アジア、中国、ロシアなどから資本が投下されて戦力の底上げが進み、プレミアリーグのトップクラブのアドバンテージは埋められていきます。アンリ、スアレス、マスチェラーノ、セスク、クリスティアーノ・ロナウド、シャビ・アロンソ、モドリッチ、ガレス・ベイルなど、ただでさえ主力をバルサとレアル・マドリードに持っていかれていた母国のビッグクラブは、今までは負けなかった国のクラブに足をすくわれるようになりました。

追い打ちをかけるように、プレミアリーグの中小クラブに巨額のテレビ放映権料と海外資本が入り、マンチェスターやロンドンのクラブを苦しめます。欧州との実力差があったため、流して勝てていたチャンピオンズリーグのグループステージもガチンコ勝負となり、若手やサブメンバーで戦える試合は秋口のリーグカップぐらい。ウィンターブレイクがないどころか年末年始は超過密スケジュールで、2月に欧州を戦うアーセナルやマンチェスター・シティ、チェルシーは、しばしばベストからはほど遠い状態で登場しています。彼我のレベルが変わらなければ、過密スケジュールは明確なビハインド。伝統か栄冠か。FAは難しい選択を迫られています。

外国人選手の比率が上がったことによってイングランド人選手がベンチを温めることが増え、ワールドクラスの自国選手がいなくなったのも、プレミアリーグの指揮官たちの悩みだと思われます。2010年以降、ワールドカップやユーロを戦うイングランド代表がそれまで定位置だったベスト8に入ったのは、ユーロ2012のみ。ルーニー、ジェラード、ランパード、ベッカム、ファーディナンド、アシュリー・コールのようなスケールの大きい選手は未だ出てきていません。ハリー・ケインやデル・アリ、スターリングを後継者と呼ぶのは、欧州や世界で実績を残してからでしょう。スペイン3強やドイツ勢、ユーヴェなどは、自国のトップクラスを集めれば、おのずと欧州で戦える布陣のベースが創れるのです。それがいちばんわかっているのは、多くのスペイン人やドイツ人をピッチに送り込んだ後、今季の新チームで苦労しながら「イングランド人選手は高すぎる」とこぼしていたペップ・グアルディオラではないでしょうか。

こうして並べると、2011年~12年に、プレミアリーグ勢の凋落につながる象徴的な出来事が重なったのがわかります。モウリーニョ、ペップ、コンテ、クロップ…この2年で集まったワールドクラスの指揮官たちは、もう一度プレミアリーグを欧州の頂点に押し上げることはできるでしょうか。お金、リーグ運営、人材…さまざまな課題が重なっているなか、彼らの仕事は簡単ではないように思えます。

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“いつから勝てなくなったのか…プレミアリーグ勢の欧州における凋落の歴史を振り返る” への4件のフィードバック

  1. チキタカ より:

    プレミア最強の時期のビッククラブは一部を除いて外人万歳で、イングランド人は一握りの有能な選手だけをつかってましたからね。
    今はホームグロウンとかいう制度のせいで、ただでさえ小粒化が激しいイングランド人を使う羽目になったのも弱体化の原因ですよね。
    シティのストーンズなんかイングランド人じゃなきゃシティでやるレベルじゃないですからね(おんなじ値段でもっとまとなCB買えたでしょう)。

  2. cc より:

    グアルディオラ、モウリーニョ、コンテ、クロップら優秀な監督が揃ってますから来季以降の巻き返しに期待したいところですが課題は山積みですね

    個人的にはカップ戦をFA杯だけにしてもいいんじゃないかと思いますが

  3. ひろと より:

    そのへんは、ファンの変化も必要でしょうね。
    W杯もユーロも、あるいはCLすらもプレミアより価値が下であると思ってるファンは多いのではないでしょうか?
    W杯しか観ない日本人とはまた違った悩みなのかも知れません。
    かくいう僕も、代表ウィークで最初に考えるのは「怪我せず帰ってきますように」だったりします。

    どっちを優先するのが正しいかは分かりませんが、「世界レベルではイングランドは弱い」という現実が続くと、長い目で見ればファンは減っていくだろうなと思います。

  4. プレミアリーグ大好き! より:

    過去5シーズンの8強にイタリアもユーべが3回くらい出てるんだから・・・?
    と思ったらユーベだけだった

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