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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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よくやった!ロングボール戦術でアトレティコ・マドリードを追いつめたレスターはドローで敗退!

ファーストレグはアトレティコ・マドリードが1-0で勝利。昨季プレミアリーグ王者のレスターが準決勝に進出するには、1-0で90分を終えて延長戦かPKを制するか、2点差以上の勝利が必要です。チャンピオンズリーグ準々決勝、キングパワースタジアム。シェイクスピア監督は、9人の優勝メンバーを揃えて最後となるかもしれない夢の舞台に臨みます。GKシュマイケル、DFシンプソン、ウェズ・モーガン、ベナルアン、フクス。エンディディとドリンクウォーターの2センターに、マフレズとオルブライトンがサイド。前線はもちろん岡崎慎司とジェイミー・ヴァーディです。マフレズからヴァーディに最初のロングフィードが出たのは3分。エースが触れずにボールはゴールラインを割ります。初戦はパス2本と何もできなかったヴァーディがどれだけチャンスに関与できるかが、勝負を分けるポイントとなりそうです。

ホームチームは、岡崎慎司にパスを当てても前に展開できず。10分過ぎまで静かだったゲームは、カラスコとグリーズマンのショートカウンターをウェズ・モーガンがカットすると歓声が沸きます。ボールを支配するのはアトレティコ・マドリード。15分を過ぎてもヴァーディがボールを触るシーンはありません。プレミアリーグではおさまるロングフィードは、競り勝ってもすぐに紅白のストライプに囲まれ、サイドに展開できません。19分にCKを取っただけで、キングパワーのゴール裏は大騒ぎ。しかし、工夫がないマフレズのキックは簡単にさばかれてしまいます。21分、ようやくレスターにチャンス到来。中に入り込んだマフレズが縦パスでヴァーディを走らせると、左からのグラウンダーに飛び込んだ岡崎慎司のボレーはポストの左に外れます。23分に右サイドで得たマフレズのFKは、GKオブラクがキャッチ。エンジンがかかってきたレスターですが、26分に痛いアウェイゴールを喫してしまいます。

縦パスをウェズ・モーガンがカットすると、左に流れたボールにコケが追いつき、元チェルシーのフィリペ・ルイスに落とします。プレミアリーグを知るSBが左足で上げたきれいなクロスがファーサイドに届くと、ノーマークのサウールが左隅を狙ったヘディングシュート。ここまでチームを危機から救ってきたシュマイケルは触れず、ボールはサイドネットに吸い込まれます。トータル2-0となり、レスターは3ゴールが必要となりました。まずは同点が目標ですが、相手に引かれたとたんにこのチームの攻撃は魅力を失います。

33分のCKがクリアされると、拾ったオルブライトンが再度放り込み、ボックス右に高く上がったボールをマフレズが右足でボレー。DFの間を抜けたボールは、オブラクが落ち着いてキャッチします。40分に右サイドからゴールライン際まで侵入したヤニック・フェレイラ・カラスコは、シュマイケルが足元に滑り込んで何とか抑えました。前半は0-1。シェイクスピア監督は、ハーフタイムに2枚代えを敢行しました。岡崎慎司を下げてウジョア、ベナルアンをチルウェル。前線のウジョアをターゲットにロングフィードを集め、落ちてきたボールにヴァーディとマフレズが絡むという狙いでしょう。

47分、マフレズのクロスが流れてきたところを右足で叩いたオルブライトンのボレーは、DFに当たってCK。49分にはグリーズマンがウェズ・モーガンとフクスを一気に抜き去り、右からラストパスを通すもわずかにカラスコに合いません。51分、右からのハイクロスがウジョアを越えると、裏にいたチルウェルの強烈な左足ボレーはわずかにバーの上。狙いは明確で、徹底度も高いレスターのアタックは早い時間に結果を出せるでしょうか。シメオネ監督は、55分にファンフランをエルナンデスにチェンジ。レスターのロングボール戦術が実ったのは、61分でした。自陣からの長いボールをウジョアがマフレズに落とすと、右のシンプソンが中央めがけてクロス。これがチルウェルに流れ、飛び込んだサヴィッチにボレーが当たってこぼれると、落ち着いて押し込んだのはジェイミー・ヴァーディ!2点が必要なプレミアリーグ王者には、時間はたっぷり残されています。

65分、フクスのロングスローが左にこぼれ、フリーのウジョアが左足で叩くとエルナンデスが必死のクリア。68分にはドリンクウォーターのロングフィードがマフレズに通り、折り返しを直接狙ったヴァーディのシュートはサヴィッチがぎりぎりでブロックします。レスターのロングボールは欧州の強豪を苦しめ続け、エンディディのボレーもコースにいたサヴィッチにヒット。サポーターの夢の時間は、あと20分で終わってしまうのでしょうか。シメオネ監督は、フェルナンド・トーレスに続いてコレアを投入。76分にマフレズが直接狙ったFKは、落ち切らずにクロスバーのすぐ上を抜けていきます。

プレミアリーグでも、ここまで徹底した放り込み作戦はなかなか見られません。左からのスローインは、すべてフクスのロングスロー。レスターは、最後まで攻め続けました。負傷を押して出場していたウェズ・モーガンは、84分にハムストリングを痛めて無念のリタイア。追加タイムの2回のCKでは、シュマイケルがゴール前で待ち構えます。しかし2点めは遠く、後半はまともにシュートを打てなかったアトレティコ・マドリードが1-1で逃げ切りました。タイムアップの瞬間から、拍手が鳴り響くキングパワースタジアム。最後まで諦めずに戦い抜いたヴァーディとマフレズはピッチに倒れ込み、うつむき加減に歩くグリーズマンから漂う空気は、喜びよりも安堵です。レスターの冒険は、ついに終わりました。残り6試合でプレミアリーグ残留を決めて初夏を迎えれば、マフレズとシュマイケルは今度こそチームを離れるでしょう。

今季のチャンピオンズリーグにおけるプレミアリーグ勢のなかで、レスターは唯一力を出し切ったと胸を張れるチームでした。シェイクスピア監督のロングボール戦術は、お見事。45分の出場ながら、再三左サイドを崩したチルウェルは、マン・オブ・ザ・マッチに選んでもいいのではないでしょうか。ポストに入ったウジョアも忠実に役割を果たし、DFに当て続けたシュートのいずれかが枠に飛んでいれば、勝負の行方はまったくわからなくなっていました。岡崎慎司の入団以降、彼らの全試合を追い続けてきた者として、欧州でこれだけ素晴らしい試合を見せてもらったことに感謝したいと思います。格上を追いつめた大会屈指のグッドルーザーは、地元サポーターの歓声に送られて次々にドレッシングルームに引き上げていきます。高揚感とせつなさがないまぜになり、「よくやった!ありがとう」という月並みな言葉しか浮かびません。(クリスティアン・フクス 写真著作者/@cfcunofficial (Chelsea Debs) London)

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“よくやった!ロングボール戦術でアトレティコ・マドリードを追いつめたレスターはドローで敗退!” への5件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    先に点を入れられてしまい苦しくなったと思いますが、自分たちの戦いを貫き相手を十分苦しめたと思います。シュマイケルやマフレズの残留は難しいかもしれませんが、このチームなら来季もEPLで威力を発揮できるチームだと思います。ヨーロッパの舞台でまた観たいチームであります。

  2. D より:

    更新ご苦労様です
    正直グループ抜けるのも無理かなと思っていただけに最後はレスターファンでなくても頑張って欲しいと思わずにはいられなかったです。本当によくやったですよね。レスターがここまでこれたのはCLに全てを賭けたラニエリさんの功績もあると思うと彼にもありがとうと言いたいです。夢のあるやり方で楽しませて貰えました。

    それにしても近年のスペイン勢は本当に強いですねぇ。

  3. おはむ より:

    昨年のレスターって本当に強かったと思いました

  4. makoto より:

    Mackiさん>
    先制点のシーン以外に絶望的なピンチはなく、先にゴールを奪われてしまったのがとにかく悔やまれますね。来季は、数人抜けたポジションをうまく補強できるかどうかですね。

    Dさん>
    大真面目に声援を送ってしまいました。まさに夢のような舞台でした。技術・戦術ともしばらくはスペイン勢には勝てないでしょうね。グリーズマンなど、何人かが移籍したとしても。

    おはむさん>
    強かったですね。一方で昨夜の試合は、シメオネ監督のチームに引かれても、あれだけの攻撃ができるのかと感心しました。

  5. おはむ より:

    昨年のレスターって本当に強かったと思いました

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