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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

エヴァートン戦が最高と語るマティッチと話したい「チェルシー優勝を決めた、価値あるベストマッチ」

モウリーニョ監督、ドログバに続いて、ネマニャ・マティッチまでが「Boring, boring Chelsea(退屈な、退屈なチェルシー)」論争にリアクションしました。このチャントは、元々1980年代に攻撃的ではなかったアーセナルに対して歌われていたもの。グーナーが歌詞をチェルシーに変えたのも今年始まったことではなく、どんなサッカーをしても必ずやられる恒例行事です。昨季プレミアリーグでも話題になったネタで、今さら感もあり、モウリーニョさんが「退屈とは11年間、タイトルを待ち続けることだ」などと反論しなければ、これほど引っ張らなかったでしょう。そろそろ下火になったかというこのタイミングで、「退屈を演出する張本人(ほめ言葉です)」、すなわち相手にシュートを打たせない能力ではプレミアリーグNo.1クラスのセントラルMFマティッチに出てこられると、「ホントはみなさん、退屈っていわれたいんちゃうの⁉」とツッコミのひとつもいれたくなります。

「勝ち点3を獲得できたなら、そのチームがどういうプレイをしたか、選手やサポーターが楽しかったかどうかなどは、5年、10年経ったら問われないだろう。残るのは順位表で、それが一番重要なことだ(ネマニャ・マティッチ)」

おっしゃるとおり、大事なのは優勝という結果です。大丈夫です、マティッチさん。プレミアリーグファンは、みんなわかってますから。退屈話はこのぐらいにして、私は、マティッチのもうひとつのコメントのほうに興味があります。「数多くのいい試合があったけど、僕は、エヴァートンにホームで1-0で勝った試合が今季のベストマッチだと思う。1-0というスコアは大きな成果じゃないのはわかるけど、いいプレイを続けて、最後にゲームを決めることができた。攻め続けていた僕らに、勝利を得る資格はあったはずだ」 。なるほど、ラスト1分でウィリアンが決めた、あの試合ですね。今季のチェルシーのベストマッチ。このテーマは、できることならマティッチと居酒屋で議論したいところです(和やかにいきましょう)。私が考える、チェルシーにとって大きかった勝利は2試合あります。プレミアリーグ2節のレスター戦と、30節のハル・シティ戦です。

単純に完勝をベストとするなら、3-6という打ち合いを制したエヴァートン戦や、10月に2-0で完封したアーセナル戦、3-0で勝った12月のトッテナム戦のほうがふさわしいでしょう。しかし、「プレミアリーグ優勝に近づくターニングポイントとなった試合」という視点では、上記の2試合はより貴重な勝利だったと思います。スタンフォード・ブリッジのレスター戦は、ジエゴ・コスタやセスク、クルトワといった新戦力を迎えた2試合め。この試合は、危なかった!39分にマレズにきわどいシュートを打たれてクルトワが最初のビッグセーブ。0-0で後半に入ると、カスパー・シュマイケルとクルトワのビッグセーブ合戦が始まります。

先に音を上げたほうがそのまま負けるのではないかと思われる、緊張感の高い攻め合い。開幕戦のバーンリーに先制点を喰らい、この直後のエヴァートンで3失点を喫しているように、当時のチェルシーは後に称賛されるような堅守ではありませんでした。大きかったのは、ニュージェントが放った2発の絶望的なシュートをクレバーな読みと素晴らしい反応で止めたクルトワのプレイです。この活躍で、チェルシーのベテラン選手たちは、当時22歳だった新入りGKがチェフの代わりにゴールマウスに立つことを認めたのではないでしょうか。63分に難しいこぼれ球をジエゴ・コスタが決めたところでチェルシーは落ち着きを取り戻し、最後はアザールのズドンでとどめを刺したものの、シーズン最初のホームゲームで昇格チームに先制を許して負けていれば、モウリーニョサッカーの秋の快進撃はなかったのではないかとすら思います。5節のマンチェスター・シティは、プレミアリーグ開幕4連勝のチェルシーを警戒して慎重になっており、7節のアーセナルも、無敗の首位チームにプレッシャーを感じながら戦っていました。

首位を譲らず年を越したチェルシーは、2015年になって3つの挫折を味わいます。5失点を喰らったトッテナム戦、3部のブラッドフォードに敗れたFAカップ、パリ・サンジェルマンに2度のリードを追いつかれて散ったチャンピオンズリーグ。とりわけ激痛だったのは、昨季勝ったチームにリベンジを果たされた3つめの挫折でした。直後のセインツ戦をドローで終わり、迎えたのが30節のハル・シティ戦です。

アザール、ジエゴ・コスタと10分までに2ゴールを奪い、チェルシーの快勝ペース。しかし、26分にアルムハマディに1点を返されると舞台は暗転し、まったく別なゲームとなります。直後、名手クルトワが、今季初めての致命的なミス。バックパスの処理を誤り、アベル・エルナンデスに同点ゴールを決められると、チェルシーは想定外の2-2のまま前半を終えます。ハーフタイムにイーブンのゲームでは、モウリーニョ監督は後半開始からラッシュをかけ、リードを奪って優位に立とうとするのが常ですが、この試合では得意のスタートダッシュが空振り。それどころか、63分にはアルムハマディ、リヴァモア、ガストン・ラミレスにフリーで3連発を浴びせられ、クルトワがビッグセーブを3つ続けてしのぎます。ジエゴ・コスタがロイク・レミーにポジションを譲った75分までのチェルシーは、完全なる負け試合のなかにいました。

それだけに、77分のロイク・レミーの決勝ゴールは大きかった!今季いちばん貴重だったゴールはこれでしょう。苦しかったアウェイゲームで勝ち点3をゲットし、チャンピオンズリーグのショックを払拭したチェルシーは、ストーク、QPRを連破して、3連勝でマンチェスター・ユナイテッド、アーセナルとの上位決戦に臨みました。もし、ハル・シティ戦で負けていたら…。プレミアリーグ13試合負けなしを続けていたリヴァプールが、マンチェスター・ユナイテッドに敗れた後、2勝1分け2敗と崩れたように。そのリヴァプール戦を含むプレミアリーグ6連勝中だったマンチェスター・ユナイテッドが、チェルシーに負けたとたん、連敗を喫してマン・シティの再逆転を許したように。チェルシーもまた、ハル・シティ戦を落としていれば、3季前のマンチェスター・ユナイテッドがマンチェスター・シティに喰らった大逆転を、ロンドンのライバル・アーセナルに許していたかもしれません。

どうでしょう?マティッチさん。エヴァートン戦もいいと思いますが、やはりベストはハル・シティ戦ではないでしょうか。こうして振り返ると、ここぞという試合でクルトワがキーマンになっているのですね。プレミアリーグ最高のGKはデ・ヘアだ!と主張したいマンチェスター・ユナイテッドサポーターではありますが、クルトワとデ・ヘアの間に優劣をつけようとは思いません。何しろクルトワは、優勝チームの危機を救ったゴールキーパーですから。単純な数字の比較では語れない価値が、そこにはあると思います。

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“エヴァートン戦が最高と語るマティッチと話したい「チェルシー優勝を決めた、価値あるベストマッチ」” への2件のフィードバック

  1. VOO より:

    最近このブログを見つけましたが本当に素晴らしいブログで感激しました。
    おっしゃる通り今季のチェルシーは、今の2位との勝ち点差がなくなるくらいドローや負けでもおかしくないゲームがありました。
    そしてハル戦含むアーセナル戦前の3~4試合が綱渡りを成功させた優勝のポイントになった試合だと思います。
    レミーは本当にいい仕事をしてくれてますが、非常に残念なことに怪我のしやすさについてはリバプールのメディカル落ちは正しかったのかなとも思います。
    これからも楽しいブログを続けていってください。

  2. makoto より:

    VOOさん>
    ありがとうございます!チェルシーは、ハル・シティ戦とQPR戦を勝ち点6でクリアしたのが大きかったですね。勝ち点1~2で終わってもおかしくない、厳しいゲームだったので。これからも精進いたします。よろしくお願いします。

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