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2016.06.29 ユーロ2016

歴史的敗戦に揺れるイングランド…ホジソン監督辞任で、次期監督どうする論争がヒートアップ!?

「私はこの夜の結果と、イングランドのユーロ2016敗退に失望している。イングランドはまだまだやれたはずだ。しかし、受け入れがたいことだが、持てる能力に対してチームは成長が足りなかった。あと2年、私はこのチームに留まりたかったが、監督という仕事は結果がすべてだ。私の契約はユーロまでだった。若く才能あふれるチームを、誰かが率いるときが来た。近い将来、メジャーな大会のファイナルで、イングランドが戦う姿が見られると期待している」(ロイ・ホジソン)

来季昇格が決まっているバーンリーのGKヒートンを含むすべての選手がプレミアリーグ所属のイングランドは、自国リーグ登録のプロ選手が100人の小国アイスランドに敗戦。ジャイアントキリング直後の記者会見で、ホジソン監督が辞任を表明しました。2012年のユーロはグループステージを突破したものの、ベスト8でイタリアにPK戦負け。2014年のワールドカップブラジル大会は、コスタリカの躍進を指をくわえて見ているようなグループリーグ敗退。そして今回のユーロでは歴史的敗戦と、68歳の老将を擁護できる材料は、残念ながらまったくありません。

昨日の試合は無残でした。プレミアリーグ得点王のハリー・ケイン、迷いながらプレイしていたラヒム・スターリングといった不調選手をスタメンに戻して前半は1-2で折り返し。早い時間に追いつきたい後半頭から投入されたのは、昨季プレミアリーグで3試合しか顔を見せていない「3人めのスランプ」ジャック・ウィルシャーでした。スタリッジはゴールから遠い右サイドで才能を無駄遣い。明らかにキックの感触がよくないハリー・ケインにCKやFKを蹴らせるたびに、ボールはことごとく相手GKに渡ります。ジェイミー・ヴァーディを入れた後に放り込みに走るという不可解な戦い方が続き、最後の切り札ラシュフォード投入は85分という遅さ。追加タイムを入れてもたった10分の出場で、両チーム最多となる3回の突破成功を果たした18歳ストライカーにあと10分でも時間があれば、この悲惨な結果は変わっていたかもしれません。

これだけ明確に指揮官の采配で負けたゲームも珍しいでしょう。悲劇の予兆は、終了間際に追いつかれた初戦のロシア戦から見え隠れしていました。ルーニーをウィルシャーという狙いが曖昧な交代、後半は機能していなかったスターリングを87分まで引っ張った対応の遅さ。ミルナーという頼れるベテランの力を活かせず、2年後には主役としての活躍が期待されるロス・バークリーやジョン・ストーンズに経験を積ませることもできず。ホジソン監督の時間は、予選序盤で止まっていたのかもしれません。エースはルーニー、中盤の軸はウィルシャー、GKは何があってもジョー・ハートなのだ、と。最後の試合の終盤、彼が戸惑いの表情を浮かべていたのは、ベンチをいくら探してもウェルベックがいなかったから…?何も得るものがなく、何も残すことができなかった指揮官の退場は妥当でしょう。マスコミやイングランド代表OBは、声を揃えて指揮官の采配がもたらした最悪の結末について嘆き、非難しています。

「屈辱。イングランドサッカー史上最悪の結果。歴代最悪の監督のひとりとして、ホジソンの壊滅的な4年間の支配は終焉を迎えた」(デイリー・ミラー)
「彼らは、1週間に2回も欧州から去った」(アメリカ・タイム誌)
「今まで観たイングランド代表のなかで、最悪のパフォーマンスだった。正直いって恥ずかしい。私たちは、プレミアリーグにはワールドクラスの選手が集まっていると信じていたが、外国人の選手や監督に依存しているだけだ。…どう考えればジャック・ウィルシャーを選べるのだろうか。彼は昨季、141分間しかプレイしていない。なぜ、彼が代表にフィットすると思ったのか」(リオ・ファーディナンド)
「彼(=ホジソン監督)は人格者であり、威厳のある男だと思うけど、格下のアイスランドに敗れたことは国民の頭から永遠に離れないだろう」(ガリー・リネカー)

2大会連続で不甲斐ない結果に終わったイングランドは、2年後のワールドカップで同じような結果に留まるわけにはいきません。メディアやファンの興味は、早くも次の監督の人選に移っているようです。現地で名前が挙がっているのは、ホジソン監督の下でアシスタントコーチを務めていたガリー・ネビル、ボーンマスをプレミアリーグ残留に導いたエディ・ハウ、クリスタル・パレスのアラン・パーデュー、サンダーランドのサム・アラダイスなど。ブックメーカー「Sky Bet」の本命は、U-21イングランド代表監督のガレス・サウスゲートです。こうしてみると、「イングランド代表監督は難しい仕事だが、それよりも難しいのはイングランド代表監督を選ぶ仕事だ」という声があるのはわかります。ガリー・ネビルさんはバレンシアでの失敗の記憶が鮮やか。エディ・ハウさんは38歳という若さでマスコミやFAを仕切れるかが心配。サウスゲイトさんは、プレミアリーグの中堅クラブならまだしも、代表となるとサポーターの支持が得られないのではないかといわれています。

一方、現地のファンは、EUは離脱しても代表監督は外国から迎え入れてもいいと考えているようです。イギリスメディア「メトロ」が、12名のリストから最も適任を選択させるアンケートを実施しています。ここでトップに立ったのは、パリ・サンジェルマンを解任されたばかりのローラン・ブラン。20%を占めたマンチェスター・ユナイテッドOBに続いたのは、アラン・パーデューで15%。以下アーセン・ヴェンゲル10%、ペジェグリーニ、ビリッチ、アラダイスがそれぞれ8%となっています。FAのグレッグ・ダイク会長は、外国人監督を選ぶ場合は「イングランドのサッカーに精通していること」を条件に挙げていますが、ここに名前が出た方々なら問題ないでしょう。現在プレミアリーグのクラブを指揮している監督が難しいとすると、ブランかペジェグリーニとなりますが、あるいはこんなサプライズもあるのでしょうか…。

「私はこの仕事をできると思う。しかし彼ら(FA)は、あなたは経験不足だといったんだ。これに対して私は、『FAは経験豊富な人に大金を払ってきたが、私は彼らより悪くはしないよ』と返した。もちろん、やりたい。彼らと話そうと思う。私の経験を提供したい」(アラン・シアラー)

2009年にニューカッスルで1ヵ月半指揮を執った経験が、FAの方々に響くかどうかはさておき、情熱的な彼が監督になれば、アイスランド戦のような寂しい負け方はしないでしょう。昨日のイングランド代表に最も足りなかったのは、自信とプライドだったのではないかと思います。ジャックは下を向き、ルーニーは無表情で、スモーリングが焦りで顔をひきつらせていたなか、ピッチのうえで代表としての誇りを体現していたのは、ジェイミー・ヴァーディとマーカス・ラシュフォードだけでした。いちばん自信を失っていたように見えたのが、ベンチに座り込んで頭を抱えていた監督だったチームだけに、シンプルな戦術とファイティングポーズを植え付けるだけでも、次の大会のベスト8ならいけるでしょう。自国からか外国か、いずれにしてもイングランド代表監督の選考は、しばらく時間がかかりそうです。(ローラン・ブラン 写真著作者/Илья Хохлов)

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“歴史的敗戦に揺れるイングランド…ホジソン監督辞任で、次期監督どうする論争がヒートアップ!?” への4件のフィードバック

  1. おハム より:

    サウスゲイトさんがいいですね。
    今のイングランドは中堅クラブレベルの選手が勢ぞろいなのでちょうどいいかと。

  2. 凹んで より:

    若くて経験もある監督にしてほしいですね。因縁のあるシメオネかはどうでしょうか?アトレティコを去る気はなさそうだし、イングランド人の気質に合わないかもしれないけど、これくらいのビッグサプライズが必要なのでは?サウスゲイトとかだったら、FAのやっつけ仕事ですね。

  3. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    ホジソンはかつてレッズの監督もしておりましたが、レッズ時代ホジソンは行き詰まるとベンチに座って傍観しちゃうんですよね、、、サウスゲイトですか、、、うーんA代表の監督って感じがまだしないですね、、、。

  4. makoto より:

    おハムさん>
    うーん、ワールドカップかチャンピオンズリーグを知っている監督でないと、勝ち負けのための戦術の浸透はできても、修羅場の戦い方のレベルが引き上がらないのではないかと懸念しています。

    凹んでさん>
    シメオネさんは難しそうですが、「シメオネさん的な」監督という方向性はいいと思います。

    Mackiさん>
    Mackiさんがおっしゃっていることが、現地のファンが支持しない理由だと思います。クラブで実績を重ねるか、U-21で出色の成果を出すか、決め手がほしいですね。

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