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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【リーグ杯速報・後篇】何度も繰り返されるマンチェスター・ユナイテッドの負けパターン

【リーグ杯速報・前篇】マンチェスター・ユナイテッド、信じられない自滅で準決勝敗退!より続きます。

キャピタルワンカップ準決勝のマンチェスター・ユナイテッドは、ファーストレグをアウェイで負けたとはいうものの、1-2は悪いスコアではありません。折り返しのゲームで、プレミアリーグ下位のチームにホームで無失点勝利を収めればよかっただけなのに、なぜ敗退したのでしょうか。この日のサンダーランド戦の負け方は、マンチェスター・シティやチェルシーをはじめ、今季のプレミアリーグで数々のチームに負けてきたパターンと共通項があるように思います。

今季のプレミアリーグにおけるマンチェスター・ユナイテッドの負けパターンは、以下の3つの組み合わせだと思います。(1)ドリブルと無謀クロスのみの攻撃(2)精度が低くて決められず、前がかりになって中央が空いてチャンスを創られる(3)相手のチャンスが増えると、左右からのクロスやセットプレイでマークが空いて失点。ニューカッスルには(2)でキャバイエに決められ、エヴァートンには(3)でバレンシアがオヴィエドにかわされてやられました。昨夜のサンダーランド戦の後半も、ただ追加点が獲れないどころか、75分に左からのクロスをアダム・ジョンソンがフリーで外し、83分にボリーニがやはりフリーでボールを受け、トラップを浮かしたためにチャンスを逃したシーンがあり、プレミアリーグのトップ10とのゲームなら、90分で負けていたところです。サンダーランドと延長戦まで戦えたのは、「彼らにエトーやジェコ、スアレス、ジルーのような抜け目のないFWがいなかった」という幸運に恵まれただけです。

そして、「なぜドリブルと無謀クロスのみの攻撃になってしまうのか」ですが、これはおそらく、攻撃時の約束事がないからでしょう。今季のユヴェントスやASローマのサッカーは非常に迫力があっておもしろいのですが、テベスやジェルヴィーニョなどのプレイを観ると、コンビネーションよりもイマジネーション、個人技で勝負するタイプのプレミアリーグOBが組織のなかで機能しているのがみてとれます。マンチェスター・シティのヘスス・ナバスやサバレタ、コラロフが、ドリブルで抜いてクロスを上げるシーンは、実は多くありません。ダヴィド・シルヴァやナスリにボールが入ったとき、斜めに斬れ込んでSBの裏に入るプレイが徹底されているので、彼らがフリーでクロスを上げるシーンは、スルーパスやワンツーを受けた後が圧倒的に多いのです。

マンチェスター・ユナイテッドで、同様のシーンを観ることは稀です。フリーでクロスが上がるのは、ヤヌザイやバレンシアが突っかけて勝ったときか、エヴラやラファエウが上がって数的優位を創れたときがほとんど。チェルシーやマンチェスター・シティをはじめプレミアリーグ上位チームは、2対1の局面など簡単に作らせてはくれないので、彼らとの戦いでは劣勢を強いられることになります。

攻撃時の約束事、崩しの定番がない「個人技担保のサッカー」になると、割を食うのは香川真司やチチャリートなど、コンビネーションやタイミングで勝負するタイプの選手です。もう、これは悪循環で、「攻めの形がないから、香川真司ら小柄な選手が浮遊霊のようになる」「そうすると点が入らない」「強豪にうまく守られるから、何とかしようとヤヌザイ、ヤングやバレンシア、ウェルベックなどのドリブラーに頼る」「そうするとますます個人技頼みになる」「攻めの形がなくなる」…これでは勝てそうにないですよね。

そしてもうひとつ、気になるのは「基本的なことの徹底がなされていない」ように見えること。セットプレイで何度もやられ、前後半の開始・終了5分以内での失点が多いのは、監督が口を酸っぱくしていわないからではないでしょうか。サー・アレックス・ファーガソンは、前半ラスト5分で失点すると、ハーフタイムは激怒しまくり、物蹴りまくり、顔を真っ赤にして「パワハラ上等!」な罵詈雑言を浴びせまくりで大変だったようです。無理にラインを上げない、センターMFが同時にふたり上がって中を空けない、セットプレイでは誰がどのエリアのどんな動きをする選手に付くのか声を掛け合う、といったことが、ゼロではないにしても乏しいと、最近の失点シーンのような致命的な状況を簡単に招くようになるのだと思います。

先日来、チェルシーのMFマタを獲得するのではないかというニュースが伝えられていますが、この状態で、トップ下の選手を獲ってどうするのでしょうか。マタはいいゲームメーカーで、得点力もありますが、いわば「他人を使えるけど守備はあまりしないヤヌザイ」です。ドリブルでリズムを創り、遠めからでもミドルや高速クロスを上げていくタイプのプレイヤーで、いちばんキャラがかぶるのが、現在いちばん好調なヤヌザイでしょう。そして同時に、彼が入れば香川真司とウェルベックの出場機会も減り、場合によっては来季、ルーニーが出ていくことを誘発しかねません。中盤の密度を濃くしてポゼッション重視のサッカーにシフトする、等の意図があればまだいいのですが、今のサッカーでは機能せず、うまくいったとしても今いる選手をベンチからも追い出すというマイナスが発生します。

私が今、現実的な範囲でチェルシーから誰かをもらうとするならば、60億強といわれるマタではなく、その3分の1以下の値段でエッシェンを獲ります。センターMFは、フレッチャーとキャリックが並ばないと不安定で、クレヴァリーとP.ジョーンズでは明らかに厳しいからです。中盤からタイミングよく前にパスが出せる選手か、もしくは中盤の底で侵入者をチェックして、CBをラクにしてあげられる選手であれば、大きなマイナスもなく、すぐにでも機能するのではないでしょうか。前者はヤヤ・トゥレのような選手、後者はフェルナンジーニョでしょうか。…決勝で戦うはずだったライバルを例に挙げていること自体、悔しいですが。

最後に。あらためて、モイーズ監督は代えるべきだと思います。今のように、チームが精神的に参ってしまっている状況では、もはや短期的な改善はうまくいきません。こういうときは、監督交代自体がリフレッシュ効果、発奮材料となり、おそらくプレミアリーグの勝率は格段に上がるでしょう。そして、このままモイーズ氏が監督に居座るのであれば、香川真司とチチャリート、ザハは、遅くとも夏には移籍しないといけません。彼らは、活躍しても次のゲームでは外されるメンバーであり、現監督とそのサッカースタイルにとって不要な人材だと思われます。香川真司は、彼を必要とするチームでちゃんと使ってもらえさえすれば、プレミアリーグで15ゴール挙げることはできるでしょうし、アーセナルのカソルラ、リヴァプ―ルのコウチーニョ、マンチェスター・シティのナスリぐらいの活躍は充分可能だと思います。

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“【リーグ杯速報・後篇】何度も繰り返されるマンチェスター・ユナイテッドの負けパターン” への15件のフィードバック

  1. ぷーがそん より:

    全くその意見に同意です。

  2. チェルシー より:

    更新おつかれさまです

    あれだけチェルシーを救ってくれたマタがユナイテッドに行ったらかなりショックですね(^^;
    補強ポイントがそもそも違うと思いますがあれだけ英紙のいろいろなところで報道されてるということは信憑性は高いんですかね?

    デブライネを放出したのにマタをわざわざライバルのユナイテッドに放出したらフロントの無能っぷりに失望します(^^;

  3. プレミア大好き! より:

    ぷーがそんさん>
    ありがとうございます。年内はずっと、「モイーズ巻き返せ」「香川真司はここで踏ん張って力をみせろ!」といっていたのですが、最近の理不尽な采配に、堪忍袋の緒がキレました(苦笑)。

  4. makoto より:

    チェルシーさん>
    お互いやめておきたいお話ですね。モウリーニョ監督は、「残ってほしいが止められない」というニュアンスだったので、マタが「行きたくない」といえば、成立しないと思うのですが…。出すチェルシーもチェルシーなら、獲るほうも獲るほう。さらにマタにも「ホントに今のマンチェスター・ユナイテッドでいいの!?」といいたい状況で、「プレミアリーグ・世紀の3バカ移籍」になりやしないかと心配です。

    アーセナルが、「FWとDF!」といいながら、エジルとフラミニを獲って成功した例もあるので、絶対失敗するとはいいませんが、香川真司なりウェルベック、ルーニーなり、マンチェスター・ユナイテッド側で相応のマイナスがありそうなので、早まらないでほしいですね。まずは、長期的にどんなサッカーをめざすのかを固めることが先で、少なくともそれは今の延長にはないと思います。

  5. 蓮実 より:

    前後編にわたりおつかれさまです
    管理人さんも激おこですか?(すこし古いかwww)

    戦術についてはいつもどおり同意見です
    ここまでくると今順調で鬼強いお隣さんを憎さをこして羨ましくおもって
    しまうのが悔しいです

    マタの獲得はどうなんでしょうね
    チームに刺激をあたえないといけないのはそうなんでしょうが
    ヤング・ナニも残留したら二列目過多になってあぶられる選手がでてきますし、ルーニーの夏移籍も進展してしまうかもだし
    そもそもどんなサッカーを目指しているのやら┐(‘~`;)┌

    香川については監督が変わんないのであれば出て行くしかないですね>今のチームに連動性や崩しなどは求められてませんからね
    1月の移籍市場は後1週間で閉まるので今冬はないとはおもいます
    が、私は香川ならもう一度プレミアだけでなくリーガでもセリエAでも二桁取れるだけの力は持ってると思うので今シーズンは限られた出場機会になろうともユナイテッドで成長しつつチームの勝利のためにゴールを決めて欲しいですね。

    別件ですが吉田麻也もロブレンが3週間ほど離脱らしいのでチャンスを掴み取って欲しいです

  6. moka より:

    ついに#Moyesoutキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
    ウェンブリーでの決勝マンチェスターダービー見たかったなぁ

  7. makoto より:

    蓮実さん>
    同感です。香川真司には、チームに残るとしても、移籍せざるをえなくなったとしても、今季の成績が次の進路決定に影響するので、プレミアリーグやチャンピオンズリーグの最終戦まで思いっきり戦って、ゴールを決められるだけ決めてほしいです。

  8. makoto より:

    mokaさん>
    観たかったですねぇ!

  9. makoto より:

    ホントにその通りですね。
    監督交代のマイナスは大きくないと思ってましたが、まさここまでになるとは。。予想外でした。
    去年までの私の好きなチームが、「勝者のメンタリティ」云々言われてた頃のことを思い出します。

    中盤の補強は、何処も取らないならキャバイエとか良いと思うんですけど。中盤底のグレードアップはもちろん、サイドの選手への眺めのパスとかも出せるし、いまのゆえに合うきがするんですけど、どうでしょうか?
    本人もそろそろランクアップのための移籍考えてそうですし。

    あと、とりあえず香川には移籍して欲しいです。

    —–
    goshiさん>
    キャバイエは、ありですね。今も、ニューカッスルを出る気はあるのでしょうか。獲れればこの冬獲りたいくらいです。

  10. スパーズ推し より:

    切に監督を変えることが望まれます
    頭を取り替えれば全てが上手くいくという訳ではありませんが
    ここまでヒドイとその一手は、もはや待った無しです(現にスパーズは成功しています、今はw)

    当初、あのSAFの後任なんだし、誰がやってもキツい仕事になるだろう
    とは、予想されていましたが
    後半戦に入っても改善の兆しがないならば……

    確かに、ここにルーニーとRVPが入れば勝てるでしょう
    ただ、それで成績が残る、というのは監督の力ではなく、選手の力でしかありません
    それならば誰がやっても同じ
    今季望まれたのはこのチームを維持する、もしくは違う形になったとしても
    明るい未来を見せてくれる監督のどちらか
    残念ながら、モイーズはどちらの仕事も失敗しています

    あまり言いたくはありませんが
    ファーガソンの"最後にして最大の"失敗であったかもしれません

    話は変わりますが、シティを止めたいのは山々ですが、止まる気がしません(爆)
    正直、コンパニ相手ではアデバは消されるでしょうし
    唯一チャンスがあるとすれば、シティ最大の弱点、コンパニの相棒をエリクセンが攻略出来るか……
    ウチで一番視野が広く、クレバーな彼がそこを突けるがどうかです
    失点は覚悟しなければならないでしょうね

    ともかく、頑張ってほしいです
    スパーズにも、ユナイテッドにも

  11. ちくちく より:

    ちなみに、香川が出て行くとして放出先を選べるならどのチームが良いと思いますか!?自分としては…ドルトムント帰還か、アーセナルはフィットしそに思いますが。。

  12. あああ より:

    ユナイテッドにはCLに出てほしいですねー。
    こういう言い方は、低迷しててもずっと応援してるリバプールファンには失礼ですが、冗談抜きにリバプールコースも有り得るのでしょうか。
    株を上場してるので一度堕ちると建て直すのも至難の技ですよね。
    ただ今のユナイテッドがマンチェスターシティやチェルシー、アーセナル、リバプールより上に行ける気がしませんが・・・
    マタで劇的に変わるのでしょうか。
    低迷期のリバプールが補強箇所を大失敗し続けてたので心配です。
     
    あとずっと思ってましたが、取れるはずもない選手を追い掛け続けて(セスク)、結局リリース条項を上回る額でフェライニを獲得し、そんな簡単な判断ミスで数億の損失を出した。
    それなのに誰も責任を取らないって、サッカークラブの経済規模をからするとどう考えてもおかしいですよね・・・
    しかも全く活躍してないし(笑)
    指摘されてるようにカバイエの方が安いし取ればよかったのに

  13. makoto より:

    スパーズ推しさん>
    おっしゃるとおりです。ファーガソン監督が最後に成せなかったのは、「欧州で常時勝てるモダンなサッカーへの脱却」です。これができる監督じゃないとダメだと思ってます。その意味では、この冬いちばんうれしい補強は、プレミアリーグで指揮を取りたがっている「ルイス・ファン・ハール」なのですが…。マンチェスター・ユナイテッドと合わない、という声もありますが、バイエルン時代のチームづくりには共通項はあるので、私はOKですね。

    トッテナムにはマン・シティ戦、がんばってほしいです。コンパニの相棒もそうですが、コンパニ自身も先日のウエストハム戦ではヌーンにやられてましたので、今のアデバヨルやレノンならいけるかもしれませんよ。

  14. makoto より:

    ちくちくさん>
    香川真司の移籍先ですか。おもしろいテーマです。
    プレミアリーグなら、断然リヴァプールですね。理由は、前のふたりがパスセンスがあり、香川真司が活きそうなのと、ロジャースサッカーは自在性があるから、でしょうか。
    他国でいえば、ナポリかローマ。ガルシア、ベニテスといった、システマティックでいろんなフォーメーションを操る監督の下が、香川真司が元気になれる場所のような気がします。

    噂のアトレティコ・マドリードは、シメオネ監督と香川真司の相性がよくなさそうにみえます(実際のところはわかりませんが)。ムヒタリアンを獲ったドルトムントは、「今、香川真司が本当に必要ですか?」という疑問があります。

  15. makoto より:

    あああさん>
    マンチェスター・ユナイテッドのオーナーと経営陣の問題は、かなり根深そうですね。レアル・マドリードやバルセロナは、無茶も失敗もありますが、オープンな議論と評価が必ず介在しています。そこでいうと、われわれの愛するクラブはとにかくクローズドなので…。

    サー・アレックスが引退したこともさることながら、「ギルCEO勇退が相当痛い」と思っておりました。責任を取らないのはサッカー界の常ですが(笑)、失敗を認めたら、早い意志決定でリカバーしてほしいです。リヴァプールより明るいのは、スタジアムが大きくてサポーターが多く、収入は世界でもトップクラスだということですね。

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