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残り1分、最後はマルシアル!マンチェスター・ユナイテッドが劇的な勝利でFAカップ決勝進出!

今さらですが、ウェンブリーの厳かな雰囲気は、格別です。FAカップ準決勝、エヴァートンVSマンチェスター・ユナイテッド。計画性は感じられないながらも、最悪の状態をふわりふわりと切り抜けてきた奇将ファン・ハール監督は、いつの間にやらプレミアリーグ4位とFAカップ制覇の一歩手前までたどり着きました。GKデ・ヘア、最終ラインはロホ、スモーリング、フォス=メンサー、ブリント。フェライニ、キャリック、ルーニーの3センターに、リンガード、マルシアル、ラシュフォードが前という布陣でしょうか。スタメンにマタの名前がありません。いささか不安なキックオフではありますが、当面のテーマはルカク、ロス・バークリー、アーロン・レノンが揃ったエヴァートンのうるさい前線を自由にさせないことです。

開始早々から、マルシアルが元気です。調子の波が小さく、必ず爪痕を残してくれる20歳のアタッカーに、われわれマンチェスター・ユナイテッドサポーターはどれだけ救われてきたことか。4分に左サイドからターンを繰り返して中に入ったマルシアルは、左足のフィニッシュに持ち込みますが、振られずに対応していたジョン・ストーンズにカットされます。その1分後、いきなり心を揺さぶられる感動的なプレイがウェンブリーを沸かせます。ロブレスのゴールキック。キャリックが駆けっこでルカクにちぎられ、目測を誤って引き過ぎたフォス=メンサーも一瞬でかわされ、エヴァートンのエースが独走。GKデ・ヘアが抜かれた瞬間、勝負ありと諦めかけましたが、猛然と戻ってポストに激突しながらヘディングでクリアしたのはキャプテン・ルーニー!ルカクは顔を覆い、信じられないといった表情でボールの行方を追っています。8分、左からのルーニーのFKは、ロホのヘッドの当たりが薄く、右に外れます。

プレミアリーグでは大苦戦のエヴァートンは、この大会となると見違えるようなシャープな攻撃を繰り出してきます。10分、ロス・バークリーのミドルはデ・ヘアの正面。その直後、フェライニからのパスを受けたルーニーが見事なロングフィードをゴール前に通すと、フリーでロブレスと対峙したリンガードのボレーはGKがブロックします。15分にロス・バークリーが裏に通した素晴らしいパスで、スモーリングを振り切ったルカクは、右足のシュートの角度が厳しくなりデ・ヘアがカット。リンガードのスルーパスを受け、強烈な左足シュートを放った20分のマルシアルは、枠にいかなかったボールを見て天を仰ぎます。どちらが先にゴールを決めてもおかしくない好ゲーム。ブリントのロングフィードをフェライニが頭で落とし、ラシュフォードがボレーを打ったシーンも美しかったのですが、名手ティム・ハワードからポジションを奪ったロブレスが右に飛んでがっちりキャッチします。

34分、先制はマンチェスター・ユナイテッド。左サイドでラシュフォードがマルシアルに落とし、背番号9が鋭いドリブルでゴールライン際までえぐると、タイミングよくニアに入ってジョン・ストーンズを外したフェライニがきれいなボレーを決めました。奇将が珍しく笑顔を見せていますが、これはゴールの喜びではなく、ハンパなく盛り上がるウェンブリーへの驚きのようです。そういえば、赤いユニフォームを率いてここで戦うのは初めてでしょうか。前半を1-0で終えたマンチェスター・ユナイテッドは、攻撃陣に勢いがあるうちに追加点を決めたいところです。

ラシュフォードが右サイドから上がった54分、マルシアルのヒールパスをダイレクトで狙ったリンガードの一撃は、アウトにかかってしまい枠を捉えられず。3分後、劣勢だったエヴァートンに千載一遇のチャンスが到来します。アーロン・レノンのグラウンダーを受け、左にかわして打とうとしたロス・バークリーをフォス=メンサーが引っかけてしまい、PK。ルカクの速いシュートで同点…と思いきや、デ・ヘアが素晴らしい反応でセーブ!ルカクが頭を抱えるのは、この日2度めです。ロホはレノンが手に負えなくなってきました。59分の右からのクロスは、リンガードに先着したクレヴァリーのボレーが左にアウト。ファン・ハール監督はフォス=メンサーをバレンシアに代え、右サイドを締めにかかります。

65分、マルシアルが左から入れた柔らかいパスでフェライニが一瞬フリーとなり、左足で流し込もうとしたボールをジャギエルカが倒れ込みながら手で止めましたが、レフェリーからは見えなかったのでしょうか。75分にマンチェスター・ユナイテッドがようやく2点めを決めますが、スモーリングが蹴り込んだのはデ・ヘアが守るゴールでした。レノンに代わって入っていたデウロフェウの高速グラウンダーは、CBが触らなければルカクが決めていたでしょう。1-1、同点。騒然とするウェンブリー。左から斬り込んだデウロフェウのシュートはデ・ヘアがビッグセーブ。ブリントに競り勝ったルカクのヘッドは右にアウト。中にいたデウロフェウから右のルカクにつながった決定機は、フェライニがぎりぎりで戻ってクリア。マンチェスター・ユナイテッドは落ち着かなければなりません。

88分のマルシアルのバイシクルはDFに当ててしまい決まらず。エキサイティングな攻め合いは延長戦に入りそうな雲行きでしたが、92分、FAカップらしい劇的な幕切れで勝負は決しました。ルーニーからパスを受けたとき、マルシアルはゴールの予感のない左サイドにいました。しかしここから9番はラシュフォードとのワンツーで中に入り、途中出場のアンデル・エレーラからのリターンを受けるとジョン・ストーンズをかわしてフリー。冷静な右足のシュートに、ロブレスは何もできません。マルシアル、リンガード、ロホ、ラシュフォードが次々とゴール裏のサポーターの前に殺到し、もみくちゃになって決勝ゴールの喜びを分かち合っています。ブリントもいます。遅れてルーニーも来ました。奇将ファン・ハール、珍しくガッツポーズ!マンチェスター・ユナイテッドがFAカップ決勝進出です。

この感動は、うまく言葉になりません。何よりもまず、この素晴らしいゲームを戦い抜いた両チームの選手全員をリスペクトしたいと思います。魂のこもったバトルでした。マンチェスター・ユナイテッドは大変な時期もありましたが、何とか立ち直り、12年ぶりのFAカップ制覇、3年ぶりのタイトル獲得まであとひとつに迫りました。ここまで来たら、5月21日はぜひ勝ってほしい。頼りになるエースのマルシアルと、体を張ってピンチを防ぎつつ積極的にシュートを放っていたキャプテン・ルーニーのゴールでシーズンを締めくくれたら、2015-16シーズンはいい思い出として残せそうです。ファイナルも、戦ってください!

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“残り1分、最後はマルシアル!マンチェスター・ユナイテッドが劇的な勝利でFAカップ決勝進出!” への3件のフィードバック

  1. yuto より:

    更新お疲れ様です。
    両チームともに勝利への執念が感じられる素晴らしいゲームでした。
    特にマルシャル、デヘア、フェライニの奮闘には感謝の一言ですが、個人的に気になったのはルーニーです。
    今シーズンは最前線の起用が中心でしたが、中盤で起用された今日がシーズンでもベストパフォーマンスだったのではないでしょうか。
    ルーニーは視野が広く、そこを展開する力を持つだけでなく、この試合のように縦横無尽にピッチを走り、チームを救い、鼓舞する力がある選手です。
    ファンハール監督の発言からもラッシュフォードが好調の限り、ルーニーを中盤で起用していくような印象を受けました。
    この試合が今後のキャプテンのキャリアにとって大きな試合であったと数年後言えたらうれしいですね。

  2. pee より:

    ユナイテッドは今季のベストゲームでしょう
    前半ユナイテッド後半エバートンという印象です
    どちらもいいところがあり、ルーニーも体がかるそうでらしさを見せました

    —–
    更新お疲れさまです。
    試合自体はハイライトでしか見ていないのですが、ルーニーの中盤起用、4141のインサイドハーフなので一応アタッキングハーフになると思いますが、あの位置はいいと思います。まあ、ディフェンシブハーフとまではいきませんが笑。ただやはり中盤に三人いるのは大きいですね。どっちかというとこのシングルボランチは大陸型のポゼッションサッカー用のシステムですが、ボールの流れが違う笑。逆になぜシーズンの最初の方でLVGはダブルボランチの4231をやってたのかとか思ってしまいます笑。

  3. makoto より:

    yutoさん>
    ルーニーは、ジェラードみたいでしたね。ロングフィードが絶品でした。私も、ベストといっていい出来だったと思います。

    シティさぽさん>
    ありがとうございます。後半、よく耐えました。マルシアルの勝負強さはさすがです。

    peeさん>
    試合をすべてご覧になっていれば、「ルーニー=アタッキングハーフではない」と思われたのではないでしょうか。必ずしも2センターが悪いというわけでもないと思いますが、この試合はルーニーとフェライニが冴えていました。

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