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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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最後はアレクシス!執拗に相手を追い続けた3バックのアーセナルが、逆転でFAカップ決勝進出!

プレミアリーグとFAカップのダブルを狙うチェルシーと戦うファイナルに進出するのは、アーセナルかマンチェスター・シティか。過去3年のプレミアリーグでは2勝3分1敗とアーセナルがリード。自陣に引いて相手の攻撃を受け止め、カウンターを仕掛ける戦術でヴェンゲル監督のチームは2勝を挙げています。アーセナルが勝てば、直近4年で3回めのファイナル進出。プレミアリーグ優勝が厳しくなったペップ・グアルディオラとしては、サイドの攻防を制して初のタイトルにリーチをかけたい一戦です。

さっそく両チームのスタメンを見てみましょう。アーセナルのGKはチェフ。最終ラインはミドルズブラ戦同様、ホールディング、コシールニー、ガブリエウの3バックです。ジャカとラムジーがセントラルに入り、WBにはチェンバレンとモンレアル。エジルとアレクシス・サンチェスの前にオリヴィエ・ジルーが入ります。このところ、ブラボがゴールマウスに戻っているマン・シティは、ヘスス・ナバス、コンパニ、オタメンディ、クリシーの4バック。ヤヤ・トゥレとフェルナンジーニョが中央を締め、ダヴィド・シルヴァ、デブライネ、サネが2列め。トップはプレミアリーグで5戦連続ゴールと好調のセルヒオ・アグエロです。

静かに立ち上がったゲームは、3分のデブライネのミドルシュートを合図に、マンチェスター・シティがペースをつかみます。9分、敵陣で奪ったボールがダヴィド・シルヴァに渡ると、すかさずアグエロをラインの裏に走らせるスルーパス。コシールニーがかろうじて足に当てますが、執拗なプレスに悩まされているガナーズは、ビルドアップでのパスミスに気をつけなければなりません。15分にチェンバレンのクロスをジルーが頭で狙うと、直後にアグエロが浮かしたボールを叩いたダヴィド・シルヴァのヘッドはチェフがセーブ。ヘスス・ナバスがしばしば右サイドでフリーになるのは、CB3枚のウィークポイントです。23分、右足を痛めたダヴィド・シルヴァが無念のリタイア。スターリングが右に入ったペップ・シティは、4-3-3にシフトしたようです。

26分、デブライネが蹴ったFKをヤヤ・トゥレが頭で折り返すと、クリアをダイレクトで叩いたスターリングのボレーは左にアウト。アーセナルの選手たちは全員自陣にこもって相手にボールを持たせ、ひたすらスペースを消しています。38分、スターリングのパスを受けたアグエロが、モンレアルを一瞬かわしてシュートを放つも右に外れます。40分にアグエロのボレーが決まったかに見えたシーンは、直前のサネのクロスがラインを割っていたというジャッジ。大半の時間を守って過ごし、セットプレー以外に攻める手立てがなかったアーセナルは、シュート1本で前半を終えました。ジャカとラムジーがミドルレンジのスペースをつぶす5-4-1を、マン・シティがどう崩すかが後半の見どころのひとつです。

50分にデブライネが蹴ったCKは、オタメンディのヘッドが左に外れます。攻めるマン・シティと受けるアーセナルという図式は後半も続きそうです。53分にボックス左でFKを得たアーセナルは、アレクシス・サンチェスが転がしたボールをジャカがダイレクトで狙うも、DFに当たって枠に届きません。サイドから仕掛けるサネが中に折り返してもガナーズの中央は厚く、フィニッシュははね返されてしまいます。

均衡が崩れたのは62分、マンチェスター・シティのゴールはカウンターでした。ラムジーの強引なドリブルはヤヤの餌食となり、縦パス1本で抜け出したアグエロがチェフとの1対1を制しました。アグエロが長く出した最初のタッチでダッシュしていれば、チェフは体に当てられたのではないでしょうか。反撃に出たアーセナルは64分、アレクシス・サンチェス、ジャカとつながった左からのボールをエジルが左足で狙いますが、惜しくも右のポストぎりぎりに外れます。アーセナルが追いついたのは72分。右サイドで孤軍奮闘していたチェンバレンが、完璧なクロスをファーサイドに通しました。右足を突き出し、ブラボの脇を抜いたのはモンレアル!形勢はイーブン、勝負の行方はまったくわからなくなりました。

79分、ボックスの外にこぼれてきたボールをヤヤ・トゥレが体をひねってボレー。チェフの指先を抜けたボールはサイドネットに吸い込まれるかと思いきや、左のポストに阻まれます。81分に右サイドから抜け出したエジルは、切り返しをカットされてフィニッシュに持ち込めません。1分後、左からのCKにフリーのフェルナンジーニョが頭を突き出すと、今度はクロスバーにヒット。ヴェンゲル監督はジルーを諦め、ウェルベックを投入します。85分、アグエロのスルーパスでボックス左から抜け出しかけたサネは、ガブリエウがストップ。直後に右から仕掛けてオタメンディを抜き去ったウェルベックは右足のシュートを巻いてしまい、ボールはポストの外へ逃げていきます。両者譲らず、勝負は延長戦に持ち込まれました。

おお、ガナーズはアレクシス・サンチェスがトップ、ウェルベックが左にスイッチしています。ウェルベックが右サイドを崩した95分のチャンスは、グラウンダーのこぼれ球をアレクシスが拾うもDFにぶつけてCK。エジルのキックにニアで合わせたホールディングのヘッドはバーすれすれを越えていきます。ペップは99分に2枚代えを敢行。アグエロとフェルナンジーニョが下がり、デルフとフェルナンドで劣勢の中盤を修正します。しかし指揮官の采配虚しく、この1分後にアーセナルが勝ち越しゴールを決めました。左からのエジルのFKをコシールニーが頭で折り返すと、ウェルベックが触ったボールがアレクシス・サンチェスの足元へ。今季プレミアリーグ18ゴールのストライカーは、こういうチャンスは外しません。右足のシュートがコンパニの股間を抜いてネットに突き刺さり、グーナーの歓声が聖地ウェンブリーにこだまします。

チェンバレンがベジェリンに代わって間もなく、試合は延長後半に突入します。世界に先駆けてFAカップが導入した「延長戦に入れば4人めの交代OK」のルールに則り、ペップはスターリングをイヘアナチョにチェンジします。108分のヤヤ・トゥレの直接FKは壁がブロック。110分に3対2の形を創ったマンチェスター・シティは、デブライネのラストパスが左のデルフに通るも、シュートを相手に当ててしまいスコアを動かせません。114分、右に流れて縦パスを受けたデブライネがクロスに放つと、チェフが触れなかったボールは逆のポストの外。右サイドから再三仕掛けるガナーズのカウンターは、エジルやベジェリンがボックスに入ったところで捕まります。119分、エジルに代わってコクラン。アーセナルの走力は最後まで落ちませんでした。タイムアップの笛が鳴ると、ヴェンゲル監督は会心のガッツポーズ。アーセナルが逆転勝利で2年ぶりのファイナル進出を決めました。

最大の勝因は、3人のCBとモンレアル、チェンバレン、ジャカがマッチアップした相手をしつこく追い続けたこと。カウンターやセットプレーで危ないシーンはあったものの、ほとんどのシュートシーンでDF陣がコースを切っており、シュートを20本放ったマン・シティは3つしか枠内に飛ばせませんでした。MVPを選べといわれれば、右サイドで攻守に奮闘したチェンバレンです。同点ゴールを呼んだクロスは完璧。彼の存在がしばしばクリシーにオーバーラップを思いとどまらせ、危険なサネに単独のドリブルしか許さず戦い抜けたのだと思います。

決勝は、ビッグロンドンダービーとなりました。アーセナルは攻めるのか、あるいは今日のように引いてアザールとペドロの進路をつぶすのか。マンチェスター・シティに効果てきめんなこの戦い方を、チェルシーにぶつけてみるのもいいかもしれません。プレミアリーグのボロ戦とは見違えるようによくなった3バック、いや「5-4-1」を崩せといわれれば、本家のコンテ監督のチームも苦しむでしょう。注目の試合は5月27日、舞台はもちろん聖地ウェンブリーです。

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“最後はアレクシス!執拗に相手を追い続けた3バックのアーセナルが、逆転でFAカップ決勝進出!” への4件のフィードバック

  1. ひろと より:

    数年前、ヴェンゲルは「最終的にはチェンバレンは中央でプレーさせたい」と言ってたと記憶しています。
    まさかここにきて、思わぬ化け方をするとは思ってもいませんでした。
    チェンバレンはいつも「惜しいなぁ」という評価だったのですが、
    昨日はもう大満足です。
    感動しました。

  2. ヤンガナ大好き! より:

    今回は負けをほぼ覚悟で寝転がりながらネットラジオで聴いてました。詳細なゲーム記事、本当に助かります。シティーがプレイメーカー シルバを前半に失ったのが大きかったです。

    チェンバレンとモンレアルが本当によい働きをしましたね!チェンバレンは強豪相手だとキレキレですが、下位チームとやると普通のプレーヤーになる不思議な選手です。ポテンシャルはかなり高いですし、今日の両WBは本当に器用で助かりますね。

    おっしゃるように5バックが珍しく機能してましたね。特にヤンガナ、ホールディングスは今期一番の出来だったと思います。来期に明るい光が見えましたあ。

    後半一点を奪われた後、すぐに同点に追い付いた執念と、最後まで走り続けて維持を見せてくれたガナーズ選手達には拍手を送りたいです。リーグ戦は4位内フィニッシュがかなり厳しい状況ですが、ウェンブリーでの今期最後の舞台で、ボスと選手達の勇姿を目に焼き付けたいです!

  3. makoto より:

    ひろとさん>
    そうでしたね。ところがWB!素晴らしかったです。逆サイドのWBも。

    ヤンガナ大好き!さん>
    いくつか危ないシーンはありましたが、最後まで集中できてました。決勝、楽しみですね!

  4. 新参 より:

    迷走の末の3バックではなく、しっかりとものにしていたのは驚きでした。
    3バックを可能にしたのは、ガブリエウとチェンバレンというのがまた驚きです。
    4231だとスペースがなく窮屈な攻めで、守備も軽いチェンバレンをWBに置き、2CBだと連携不足を露呈し、SBだと守備はいいが攻撃が物足りないガブリエウを3CBの右に置くと、確かに機能しそうだなあと納得してしまいました。
    噂に出ているコラシナツやファン・ダイクなどをチームに加えれば、よりオプションとして機能しそうです。4231のジルートップとサンチェス偽トップとともに使い分けれれば、対策をしにくい厄介なチームになれそうです。
    試合内容も久しぶりにチームからパッションを感じられましたし、リーグ戦もこの調子でいってくれるといいんですが…

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