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数字で見る「ロジャースVSクロップ」。11試合のスタッツをイギリス紙が徹底比較!

早いもので、クロップ監督就任から11試合が行われ、前任のブレンダン・ロジャース監督と今シーズンの消化試合数が並びました。イギリス紙「デイリー・メール」は、このタイミングを見逃さず、「Jurgen Klopp has delivered the ‘full-throttle’ football that he promised Liverpool and stats show the remarkable improvement since Brendan Rodgers was sacked(ユルゲン・クロップは、自身が約束したフルスロットルサッカーを提供。スタッツは、ブレンダン・ロジャースが解雇されてからの顕著な改善を示している)」と題したレポートを掲載。両監督が残した数字を徹底比較しています。

クロップ監督就任後のプレミアリーグ6試合は、3勝2分1敗。ロジャース監督はプレミアリーグ8試合で3勝3分2敗という数字を残しており、一見さほど差はないようですが、クロップ監督の3勝のうち、2勝はチェルシーとマンチェスター・シティ、しかもいずれもアウェイです。ホームの3勝はすべて1点差なのに対して、アウェイ4勝のうち3つで1-3、1-4、1-6という圧勝を記録しているクロップ監督のスタイルは「アウェイチームに引かれると苦労するが、攻めてくるホームチームを迎え撃って逆襲に転じるとゴールを量産する」鋭いリアクションサッカーだといえそうです。

クロップVSロジャースでもうひとつ特徴的なのは、カップ戦の成績です。ロジャース監督は、キャピタルワンカップのカーライル戦のPK戦勝利とヨーロッパリーグ2試合をすべて1-1としており、1勝もできなかったのに対して、クロップ監督はリヴァプールにおける欧州デビュー戦のルビン・カザンに引き分けてからは、4連勝。サウサンプトン戦の1-6大勝を除けば、1点差のゲームを制しており、勝負強さが際立っています。ドローばかりだったロジャース体制の名残りか、最初の3戦こそ引き分けたものの、その後の8試合を7勝1敗と「勝てるレッズ」にモデルチェンジしたクロップ監督。彼は、クラブに何をもたらしたのでしょうか。2人の指揮官が残したプレミアリーグとカップ戦のスタッツを見てみましょう。

■ブレンダン・ロジャーズ監督=3勝6分2敗/勝率27.3%
・得点11⇔失点13 シュート149/枠内71
・ポゼッション/54.9% パス5633/成功率83.1%
・クリーンシート→3 ファール128/タックル232

■ユルゲン・クロップ監督=7勝3分1敗/勝率63.6%
・得点21⇔失点8 シュート130/枠内56
・ポゼッション/56.6% パス5777/成功率80.7%
・クリーンシート→4 ファール153/タックル253

顕著な違いは、「ロジャースさんのほうがシュートが多い」「クロップさんは、パスが多いが成功率が低い。加えてファールとタックルは明確に多い」ことです。数字を分析すると、こんなことがいえるのではないでしょうか。「クロップ監督のチームは、できるだけ前でボールを奪取しようとするため、タックルもファールもおのずと多くなる。ただし、ひとたび奪えば相手のゴール前が少人数となっているため、決定的なチャンスになることが多く、枠内シュートがロジャース時代より少なくても倍に近いゴールをゲットできている」。同じ試合数で、新指揮官は失点を5つ減らしており、守備のスタイルを改善したことが速攻の精度向上、ゴール数増加につながっているのだと思われます。この傾向を象徴しているのが、いくつかのアウェイ戦の圧勝や、カップ戦における勝負強さなのでしょう。クロップ監督に絶対的な信頼を寄せている左SBが、母国スペインのラジオ局のインタビューに応えて、こんなことをいっていました。

「クロップ監督のトレーニングは、すべてが戦術に関するものなんだ。各々がピッチ上でいかに正しいポジションにつけるかを追求して、いつどうやってプレスをかければいいのかを学んでいく。ゲーム形式の練習はほとんどしない。本当に、戦術しかやらないんだよ。それが彼のスタイルなんだ。…本当のことをいえば、選手にとって彼のトレーニングは少々つまらないものではある。だけど、それが結果につながっているんだ」(アルベルト・モレノ)

ルーカス、ミルナー、ジョーダン・アイブ、ララナ、エムレ・ジャン。クロップ監督就任以降に変わった感があるのは、走る選手、守る選手なのもうなずけます。あの頃は攻撃の破壊力、今は守備力と速攻の切れ味。リヴァプールサポーターは、SASが暴れまくった2シーズン前の熱狂を、いま一度体感することができるかもしれません。7勝3分1敗、勝率63.6%は、現在プレミアリーグ首位に立っているマンチェスター・シティの勝率64.2%と同等の数字で、両者の勝ち点差は6。アンフィールドで行われるシックスポインターを制すれば、勝利ひとつぶんしか差はないのですから。

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“数字で見る「ロジャースVSクロップ」。11試合のスタッツをイギリス紙が徹底比較!” への3件のフィードバック

  1. macki より:

    更新ご苦労様です。
    なかなか興味深い記事です。名門クラブ故前任者との比較されてしまいますね。
    やはりDFは目に見えて改善されたと思います。個人名をあげるとすれば、ロブレンでしょうか。元々ポテンシャルは高い選手ですから、今の状態は嬉しい限りです。また接戦をモノにする姿勢が出てきているので、勝ちきる力が徐々に付いてきたと言うことでしょうかね今後に期待が持てます。

  2. nyonsuke より:

    更新ご苦労様です。

    私は選手に戦術を理解させる技術と方法が両監督の差のような気がします。
    ロジャースさんも優れた監督であり戦術家であり、SASの時代は今と遜色ないチームで、選手の表情も今のように生き生きしてました。
    しかし、スアレス、ジェラードが退団後は選手に見合う戦術を構築、浸透、または持続させることができなかったと思います。
    これが、ロジャースさんとクロップ監督の決定的な差ではないでしょうか。
    クロップ監督は与えられたチームにクロップイズムを浸透させる術が非常にうまく、選手が試合中に混乱する姿が見受けられません。
    しかも、スタメンのみならず、リザーブや若手選手、もしくはスタッフやサポーターにチームが進むべき道をわかりやすく示すことができていると思います。
    少なくとも、私はこれほど短期に戦えるチームを構築したクロップ監督がレッズに来てくれて本当に感謝するとともに、その手腕にとても感動しています。
    ぜひ長期政権となってほしいです。

  3. makoto より:

    mackiさん>
    攻撃が格段におもしろくなりましたね。今まではドローに終わっていたような試合を拾えるのではないかと思います。

    nyonsukeさん>
    選手が自信をもってプレイしてますよね。ドルトムントとマインツを7年率いた監督ですので、長期政権になるのではないでしょうか。

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