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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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問題は守備か、攻撃か?現地メディア編集者が指摘する「リヴァプールの攻撃における4つの変化」

プレミアリーグ7試合で3勝3分1敗と、勝ち切れない戦績自体もさることながら、得点13失点12という上位クラブらしからぬ数字が気になります。クロップ監督の下で開幕から戦う2年めのシーズンを迎えたリヴァプールは、序盤から予想外の停滞に苦しんでいます。1年前は、アーセナル、チェルシー、前年プレミアリーグ王者のレスター、トッテナムと難敵が揃った最初の2ヵ月を5勝1分1敗。クリーンシートゼロながらも失点は10で、得点18は2017-18シーズンを5つも上回っています。「ブレンダン・ロジャースの時と変わらない。攻撃は素晴らしいが、最終ラインはクレバーではない(アラン・シアラー)」「失点が多すぎる(グレアム・スーネス)」と、守備陣が批判の矢面に立たされることが多いチームですが、勝ち点が伸びない原因を後ろだけに背負わせるのは妥当なのでしょうか。

「マンチェスター勢と失点が10も違う…」という声が聞こえてきそうですが、38試合に換算すると11失点で終わるようなハイレベルな数字と比較するのは現実的ではありません。マンチェスター・シティは絶好調、マンチェスター・ユナイテッドは上位とやっておらず、彼らもいずれ失点を増やすはずとのんびり構えましょう。マンチェスター・シティ戦の5失点を悪夢だったと切り捨てれば、他の試合は昨季よりもいいぐらいです。守備批判が多数派のなかで、ポール・インスさんはこんなことをいっています。「前線がよければ、誰も守備のことを憂いたりはしないはずだ。多くの決定的なチャンスを逃しているにもかかわらず、誰もが守備のことばかり話している」。同感です。あくまでも「現状においては」という但し書き付きですが、より大きな課題は中盤より前にあるのではないかと見ています。「フットボール365」の副編集長ダニエル・ストーリーさんが、レッズについて興味深い分析をされているので、紹介しましょう。

Four key differences between last season’s Liverpool attack and this season’s frontline(昨シーズンのリヴァプールのアタックと、今シーズンの前線における4つの重要な違い)」という記事では、今季プレミアリーグにおけるレッズの変化をデータで指摘しています。「コウチーニョがインサイドMFに下がったことで、4トップとなった」「ムダ打ちが増えた」「ヘンダーソンのパス成功率が落ちた」「SBのアタックの左右比率が変わった」。これらはあくまでも差異であって、すべてが悪化ではないのですが、最初の3つは気になる指摘です。

コウチーニョが「第4のトップ」として振る舞うことについて、ストーリーさんは、「ゴールに近い位置で多くの選手が創造性を発揮でき、シュートが増えた」ことをプラス材料としながら、「日曜日のニューカッスル戦ではジョンジョ・シェルヴィの反撃を許す広大なスペースを目撃した」と記述しています。前シーズンと比べると、中盤でボールを奪ってフルスロットルでショートカウンターを仕掛けるシーンが減ったように感じていたのですが、4-2-4になる時間帯が増えたことが、ゲーゲン・プレッシングを機能させづらくしている面もあるのかもしれません。

もっと気になるのは、シュートの精度です。昨季のプレミアリーグにおけるレッズは、シュートの精度(オンターゲット)が52.6%で2位、ショットコンバージョンが17.4%で4位、ビッグチャンスの決定率が56.6%で2位と秀逸な数字を残していました。ところが今季は、シュート精度48.0%は7位、ショットコンバージョンが13.0%で8位、ビッグチャンス42.1%は12位と低迷。これらの数字が昨季並みなら、PKを外した後追いつかれたセヴィージャ戦や攻めまくったスパルタク・モスクワ戦、プレミアリーグのバーンリーやニューカッスルとのドローは勝ち点3で終われたかもしれません。コウチーニョの攻め上がりで前線が活性化したとしても、シュートが決まらなければ、裏にスペースを生むリスクのほうが大きくなってしまいます。

3つめに挙げられたヘンダーソンのパス成功率は、昨季が85.9%、今季は75.6%。最もタッチ数が多いポジションだけに、10%の下落は懸念材料です。記事では、「左右のMFにセーフティにつなぐばかりだったことを非難されたこともあったが、今季は冒険している」と好意的な捉え方をしています。しかし私は、ゲーム終盤に彼が入れるボックスの左右へのロングフィードが、簡単にクリアされるシーンが目立つのが気になっていました。ナサニエル・クラインがいた昨季はSBのオーバーラップは右からが多く、ジョー・ゴメスとアーノルドが穴を埋めている今季は左の比率が高まったというデータは、絶対数が減ったわけではないので重要度を下げていいでしょう。

この記事で紹介されたデータを私なりに読み解くと、「敵陣に近いところで奪う機会が減り、相手の体勢が整った状態で攻める頻度が高まったために、確率の低いミドルシュートが増え、チャレンジせざるをえないヘンダーソンの難しいフィードも増えた」となります。第5の違いとして「序盤からサディオ・マネを欠いた」ことも停滞の理由のひとつだと思います。

誤解なきように添えると、決して守備は問題がないといっているわけではありません。「今のメンバーなら、守備を改善するよりも攻め勝つことに徹したほうが戦績はよくなるのではないか。最大のポイントはプレスの見直しと、ボックス脇を崩してより近いところからシュートを狙う”勝ちパターン”の構築ではないか」といいたいのです。守備のほうは…グレアム・スーネスさんの「1月にファン・ダイク獲得」が最高の特効薬でしょう。上位に食らいついて前半戦を終え、念願のCB獲得を成功させれば、後半戦はレッズサポーターにとって楽しい日々が続くのではないかと思います。

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“問題は守備か、攻撃か?現地メディア編集者が指摘する「リヴァプールの攻撃における4つの変化」” への9件のフィードバック

  1. COYS より:

    私も元記事を読みましたが、興味深い考察でしたね。
    「4-2-4になり中盤にスペースができてプレスがかからない」ことが問題になるのは主に前のめりになるも崩しきれなかった場合かと思います。
    今シーズンのリヴァプールは前線に攻撃的な選手が集まりしばしばノッキング状態になりますが、もう少し崩せるあるいは攻め切れるようになればおそらく状況は改善するでしょう。
    スターリッジの復調か冬に典型的なCFタイプの選手を獲得できれば、「プレス」と「”勝ちパターン”の構築」の両方の課題が解決するように思います。
    あるいはコウチーニョとマネ・サラーの両WGの連携が向上すれば昨年同様0トップでも十分に上位陣と戦えるようになるかもしれませんね。

    ニューカッスル戦の失点はCB2枚の間を簡単に通されており、守備の問題はプレスだけでは無いように思えます。
    ファン・ダイクは素晴らしい選手ですが、獲得するだけで果たして問題が解決するのかどうか。
    攻撃時と守備時の戦術的な整合性がとれていないことが最大の問題のように思えますが。。。

  2. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。

    私はどうしてもマン・シティ戦での敗戦、負け方が尾を引いている気がしてなりません。
    5-0で敗れたことよりも、1点目の崩され方が全てで、同じようにセビージャやニューカッスルにもやられたことから、ペップによってレッズ攻略法を公開されてしまったと思います。
    その結果、自らの広大な裏スペースの不安が前線でのプレスや決定力に影響を及ぼしている気がします。
    もう一つ、昨季はプレスとスペースのケアで痒い所に手の届く活躍だったミルナーやララーナのような存在が今は見当たらない気もします。
    そのような存在がいれば、少なくともヘンドの気の効いたパスは増えるのではないでしょうか。

    私が期待するのはララーナの復帰とチェンバレン起用法の発見ですが、チェンバレンについては何か妙案はないでしょうか?
    1月ファン・ダイク獲得は夢のようですが、それ以上にアンチェロッティ解任余波でクロップの名前が出てくるのが心臓に悪いです。
    今季はないにしても来季、コウチのみならずクロップ監督まで引き抜かれる事態は…、ないと思いたいです。
    (結局、また長文を投稿してしまいました。すいません…。Motsuki909さんはじめ、皆様の温かいコメントありがとうございました。)

  3. yuto より:

    リヴァプールの試合を見ていて気になるのは指摘されているとおり、ヘンダーソンです。
    これまでの印象でロングフィードやサイドチェンジが上手い選手といえば、ルーニーとヘンダーソンが私の中ですぐに思い浮かぶのですが、今期の彼のロングフィードは収まらないなぁと感じるシーンが多いと思っていたので納得のデータです。
    しかし、今期もコウチーニョは十分に戦えているだけにマネが復帰すればカウンターでどんどん得点できそうだなというのは楽観過ぎますかね。
    質が異なるかもしれませんが、マンシティも攻撃は最大の防御といわんばかりの怒濤の攻めを見せていますし。

  4. グッチ より:

    更新お疲れ様です。今季のリヴァプールはとにかくゴールが奪えていません。サラーとコウチーニョが何とかしているだけで、4トップ化する意味は見出せません。中盤のバランスも「走れるけど捌けず、仕掛けるのも…」と言う状態です。コウチーニョが組み立てからフィニッシュまで大車輪ですが周りはハッキリ言って組み立て時は消えてます。ヘンダーソンも両翼や裏へ長いパスを放らざるを得ず、近距離のサポートは無いに等しいです。
    攻守の一体化を推し進め、前線でボールもゴールも奪い切るサッカーを売りにするチームが最終ラインで相手と勝負しても意味がありません。「徹底して寄せ、徹底して決めにいく。決めるためのビルドアップは全員が参加する。」、1人たりとて遊兵とする余裕など無いと認識して欲しいです。

  5. ルタレック より:

    守備に関しては諦めてます。せめ

  6. ルタレック より:

    リヴァプールは攻め勝つサッカーをすればいいのですが筆者さんも書かれてるように決定機でのシュートミスが問題です。特にサラーです。とてもいいプレイをしてるだけに残念です。サラーがもう少し決めていればマンチェスターのチームの位置にいたかもしれませんね。守備に関してはもう諦めてます。モウさんの守備力は羨ましいです。

  7. プレミアリーグ大好き! より:

    スパーズやシティの試合を見るとポジションに関係なく攻撃にも守備にも貢献することがチームとして大切なのがよくわかりますよね
    もっと敵陣でボールを奪える事が出来ればDFの負担も減り攻撃する機会も増えるはずで
    守備を改善することと攻め勝つことは同時にできるのではと思います

  8. Motsuki909 より:

    ストーリー氏の話を受けて、しっくりきてしまいました。ゲーゲンプレスが発動しないなぁ、と思って見ていたのですが、理由は4-2-4でしたか。やはり、ある程度の失点は致し方なしと割り切り、相手より1点でも多くの得点を奪うチームへと特化すべきです。もしかすると、このところワイナルドゥムが消えている理由も、4-2-4の“2”に当てがわれているからかもしれません。

    あとは、ヘンダーソンについてです。今は攻めあぐねるシーンが増える事もあり、相手エンドに侵入してもショートパスばかりのイメージがあります。その中で、最も俯瞰で見れているのか、サイドチェンジを選択肢として持っているヘンドには良い印象があります。問題は出し手より受け手かもしれません。両SBや両WGにサイドチェンジが通っても、そこで一旦ボールを止めてしまい、結局は相手DFがスライドして対応できる時間を与えてしまっている気がします。

    何というか、もう少し横からのボールをヘディングで叩くのが上手い選手が欲しいところですね。ベンテケのようなザCFタイプではなく。ワイナルドゥムをゼロトップで試しても良いのでは?等と思ったりしてしまいます。

    守備が悪い、攻撃が悪い、出し手が悪い、受け手が悪い、全てその通りでもあり、その通りではないはずです。あくまでチームスポーツなので。問題山積でも、少しずつ崩していくしかないんでしょうけどね、結局は。

  9. makoto より:

    COYSさん>
    1対1で絶対的に強く、プレミアリーグに来てから失点につながるミスがないファン・ダイクは、カンテ同様に獲ったチームの力を確実にUPさせる逸材だと思います。過大に評価しすぎているのかもしれませんが。

    nyonsukeさん>
    マン・シティショックはあるかもしれませんね。中盤の寄せを速くしてパスコースを切り続けるしかありませんが。私もララナには期待しています。チェンバレンとアルベルト・モレノを脇に置いた3-4-3というオプションはないですかね?可能性は極めて低そうではありますが、実現したらおもしろいと思います。

    yutoさん>
    攻め倒すほうが可能性を感じますよね。ヘンダーソンは、動きは悪くないので連携の改善に期待です。

    グッチさん>
    「徹底して寄せ、徹底して決めにいく。決めるためのビルドアップは全員が参加する。」→そのとおりだと思います。これが決まったときが気持ちいいんですよね。

    ルタレックさん>
    私もサラーが気になっており、加えてスタリッジとフィルミーノです。サラー以外はバイオリズムのようなもので、決まり始めれば課題は消えるのかもしれませんが。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    賛成です。プレスがよくなればいろいろなことが一気に解決する気もします。

    Motsuki909さん>
    フィルミーノはヘディングも悪くないですよね。クロスとボックス内への飛び込みのタイミングがもっと合えば、ゴールを増やせるのかもしれません。ワイナルドゥムのゼロトップはおもしろそうですね。純粋に、見てみたいです。

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