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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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絶望的な2対1。ファン・ダイクが見せた最高のディフェンスをリプレイ!

85分の攻防が、勝負のターニングポイントでした。プレミアリーグ32節、リヴァプールVSトッテナム。16分にロバートソンのクロスをフィルミーノがヘッドで叩き込んでレッズが先制すると、75分にハリー・ケインが右サイドに素晴らしいロングフィードを通し、トリッピアー、エリクセンとつながって最後はルーカス・モウラ。勝たなければプレミアリーグ初制覇が遠のくクロップ監督は、オリギを投入して4-4-2にシフト。リスクをとって攻めることを選んだ指揮官の策は、カウンターで2対1という絶望的なピンチを招き、失敗の烙印を押されようとしていました。

フィルミーノのドリブルをカットしたシソコがダニー・ローズに預け、前にいたハリー・ケインに縦パスが通ると、プレミアリーグ17ゴールのストライカーはパサーとしても一流であるところを見せつけました。ダイレクトで蹴ったボールがソン・フンミンに渡った瞬間、世界は一変。韓国代表がワンタッチで左にはたくと、このシーンが勝負と見極めて走り続けていたシソコがキープします。アーノルドとマティプは完全に置いていかれており、最終ラインにはファン・ダイクしかいませんでした。私は思わず拳を握りしめ、「優勝争いが終わる…」とつぶやいていました。

消化試合がひとつ少ないマンチェスター・シティが勝ち点3を積めば、1ポイント差でリヴァプールの上に出ます。クロップ監督は、先に落とすわけにはいかないからこそ、アタッカー4人を前線に並べるという勝負に出たのです。ペップが怖れているのは、3つのコンペティションの掛け持ちによる疲労と、絶対に負けられないというプレッシャーでしょう。勝ち点差が4に開いてひとつ負けてもいい状況になれば、昨季プレミアリーグ王者は悠々とゴールに辿り着くだろうと思っていたのです。

2対1という決定的なチャンスを手に入れたセントラルMFは、縦に進路を取っています。プレミアリーグ屈指のCBは、絶妙なポジショニングでシソコのプレイを遅らせています。近づきすぎればソン・フンミンにラストパスを通され、ひとたび離せばシソコとアリソンの1対1という最悪の状況が待っています。ソン・フンミンに背を向けてシソコを牽制するCBは、「出せるものなら出してみろ、カットするぞ」と挑発するようにどちらにも動けるポーズを取っています。

ボックス手前で一瞬、ソン・フンミン寄りに動いたのは、シソコを縦にいかせるためのフェイントだったのでしょうか。意を決したMFが左に持ち込むと、ファン・ダイクはすかさず詰め寄り足を出してシュートコースを狭めました。ニアしかシュートコースがなくなった17番はアリソンを目前にして焦り、フィニッシュは左に大きくアウト。ハリー・ケインのパスが出てから8秒の濃密な駆け引きは、プレミアリーグNo.1ともいわれるCBが完勝しました。

ここまでのファン・ダイクは、相変わらず最終ラインを統率していたものの、「悪くはない」という程度の出来でした。56分にダニー・ローズのパスを受けたハリー・ケインに珍しく1発でかわされ、シュートを許すと、失点シーンではエリクセンに着くのかパスコースをカットするのかが曖昧になり、何もできずにルーカス・モウラのフィニッシュを見届ける格好となりました。そんななかで85分に見せた最高のディフェンスは、PKストップにも等しい値千金のプレイ。4分後、サラーのヘッドをロリスがファンブルしてしまい、アルデルヴァイレルトの足に当たってレッズに決勝点が転がり込みました。

多くのサポーターがジェラードのスリップを今も覚えているように、レッズがプレミアリーグ初優勝を遂げれば、この8秒が語り継がれるのではないでしょうか。リプレイを10回以上繰り返しました。見るたびに、涙腺が緩みます。2018-19シーズンがどんな形で終わるにせよ、これだけは揺るぎない評価として語られるでしょう。リヴァプールには最高のCBがいた、と。

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“絶望的な2対1。ファン・ダイクが見せた最高のディフェンスをリプレイ!” への4件のフィードバック

  1. ガナーズぺろ より:

    いつも見させていただいております。
    マニアックな視点、細かい分析か大変魅力的です!

    今回のこの試合、
    ダイクは確かにある意味、イマイチでした。
    後半は、スパーズの猛反撃が凄くて皆のスタミナはどうなっているのかと思うほど。
    時間の問題で、スパーズにもう一点入る感じがしていました。 僕はレッズのスアレス、ジェラートが達成できなかった優勝を、みたいので
    この8秒が始まったときは日本がドイツと引き分けたワールドカップ前試合で中村が相手をいなしてから高原に預けたボールを思い出して、これは入ったと思いました。 
    しかしソンにボールが、渡れば一点は確実なこの展開だからこそ、ダイクはいい間合いで守備ができたのかなと思いました。 いやー、
    手に汗握る展開でした

  2. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    濃密な8秒でした。細かな解説毎回頭が下がります。パスが通り2対1になった時は得点を覚悟した自分がいました、、、。今でこそ落ち着いてあのシーンを観られますが、あの時は絶望的な感じでした(苦笑)さすがプレミア屈指のCBです。獲得して良かった!

  3. ホタ より:

    僕はあのシーンは、ファンダイクが寄せきれず中途半端なポジショニングで、千載一遇のチャンスでシソコがシュートをふかしてしまっただけのようにしか見えないのですがどうでしょうか。スパーズファンには見慣れた光景ですが、おそらく追走するDFが誰であれ、シソコは打ち上げていたと思います。
    もちろん、あそこでプレッシャーをかけていたのがファンダイクだったかという心理的な要因はあったかもしれません。

  4. アイク より:

    ポジションを微妙に調整しながら戻り、事実としてシソコにパスも突破もパスも許しませんでした。
    判断力の良さは彼の日頃の発言から知っていましたが、あの危機的局面で慌てず的確な判断を下し実行する胆力に惚れました。

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