イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

スポーツマンシップとリスペクトの大切さ…10歳の少年に宛てたユルゲン・クロップの手紙。

But it was nice, it was cheeky. We had time that day so I read the letter and I replied(ナイスで、生意気だった。時間があったから、その手紙を読んで返事をすることにした)」。プレミアリーグ26戦25勝…首位を独走するリヴァプールの指揮官の元に、10歳の少年からのレターが届いたというエピソードを「BBC」が紹介しています。「プライベートな話だ。レターを受け取り、返事を書くとそれが翌日の新聞に載っている。そういうのは好きじゃないけど、まあいいだろう」。送り主は、アイルランド北西部に位置するドニゴール州に住むダラー・カーリーさん。彼の学校の宿題に対して、返信をしたためたのは、プレミアリーグ制覇を目前にしているユルゲン・クロップです。

私は、カーリーさんのメッセージに少しだけ共感する者です。彼が応援するクラブは、マンチェスター・ユナイテッド。ライバルクラブのボスに手紙を送ろうと思ったのは、文句をいいたかったから。クラスメイトたちが、好きなクラブに対してファンレターを書いている間に、彼ひとりが抗議文を綴っていたそうです。まずは、その力作を紹介しましょう。クロップさんのいうとおり、とにかく上から目線で健気なメッセージです。。

「リヴァプールは、あまりにも多くの試合に勝っています。さらに9試合、このまま勝ち続けると、イングランドで史上最高の無敗記録を達成します。それは、ユナイテッドファンをとても悲しくさせるのです」

「だから、次にリヴァプールがプレイするとき、負けてください。相手にゴールを決めさせてあげるべきです。この手紙があなたを納得させ、リーグや他の試合でずっと勝てなくなることを願っています」

直線的な中央突破は、プレミアリーグNo.1の堅守を築いた名将の心を動かしたのですが…。「まさか返信があるとは。ショッキングでした」。父親のカーリー氏が、今週の頭にあった衝撃的な出来事について振り返っています。「妻のトリシアが、地元の郵便局から書留が届いているといわれたんです。誰からだろうと訝しんだ彼女が、ダラーに聞くと、返ってきた答えは”おお、それはユルゲン・クロップじゃない?”でした」。封を開けてみると、リヴァプールの指揮官からの丁寧なメッセージに直筆のサインが添えられていたのですが、肝心の内容は少年の意に沿うものではありませんでした。
「Dear Daragh、まずは手紙を書いてくれたお礼をいいたいと思います。私たちの幸運を願っているのではないのはわかるけど、若いフットボールファンの声が聞けるのはいいことです。送ってくれたことに感謝しています」

「しかし、残念ながら、今回のリクエストには応えられません。君がリヴァプールの敗戦を願うように、世界じゅうで何百万人ものサポーターがリヴァプールの勝利を望んでおり、そのために全力を尽くすのが私の仕事だからです。彼らをがっかりさせるわけにはいかないんです」

「君にとっては喜ばしいことだけど、私たちは今まで何度も負けてきたし、これからも負けます。それがフットボールというものだから。10歳の君は、物事はこのまま続くと思っているでしょう。52歳の私は、間違いなくそうではないとわかっています」
「年下の敵」に対して、自らの思いを真摯に伝えたクロップさんについて、カーリー氏はこう思ったそうです。「とても、とてもまっとうな人」。マンチェスター・ユナイテッドファンとして、リヴァプールがうまくやっているのは悔しいとしながらも、「クロップと彼の偉業に多大な敬意を払わなければならない。この手紙をもらって、彼がまともな男だと確信した。気に入ったのは、10歳に対してスポーツマンシップとリスペクトの大切さを説いてくれたこと。素晴らしい」と語っています。。

「手紙を読んで、ひとつだけはっきりいえることがあります。君がクラブやフットボールに注ぐ情熱は変わらないということ。君のようなファンを得て、マンチェスター・ユナイテッドはとても幸せですね」

「われわれが、幸運にも多くの試合に勝っていくつかのトロフィーを獲得しても、そんなに落ち込まないでもらえればと思います。私たちは偉大なライバルで、お互いに多大なリスペクトを分かち合うことができる存在です。この手紙は、私にとってフットボールとは何なのかを教えてくれました。Take care and good luck,Jürgen Klopp」
リヴァプールが、とてつもないスタッツを残してプレミアリーグ2019-20シーズンを制覇するのを見届けたいと思う一方で、マンチェスター・ユナイテッドが彼らの半分しかポイントを挙げられていない現状に絶望することもあります。週末のプレミアリーグで愛するクラブを応援しながら、同時にキックオフを迎えた強いライバルの試合経過を横目で見て「負けてくれないかな…」とつぶやいたことがある人は多いでしょう。。

私も、そのひとりです。仇敵のミスは、時に蜜の味。PK失敗、一発退場、オウンゴール、致命的なエラーがあると、それを咎め、囃し立てる気持ちよさに浸りたくなることもあります。しかし、ふと立ち止まったとき、こんなふうに思うのです。「自分は何が楽しくて、プレミアリーグを見続けているのだろう」。素晴らしいゴールシーンやビッグセーブ、想像を上回るキラーパスに出会った瞬間、敵・味方を忘れて、ため息を漏らしたり歓喜の声を挙げたりしていたのではなかったか、と。。

ユルゲン・クロップの言葉に触れて、「ポジティブなマインドに支えられなければ、プレミアリーグを語る場から多くのファンが遠ざかっていってしまう」と、あらためて思いました。本日は、27節の6試合が開催されます。ランチタイムキックオフはチェルシーとトッテナムのロンドンダービー。夕暮れのゲームはレスターとマンチェスター・シティのシックスポインター。いずれの試合も、いかに選手たちが素晴らしかったかを、フェアネスとリスペクトを以ってレポートしたいと思います。。

「変化を起こすために、可能な限り他者に対して手厳しくする風潮を、一部の若者にときどき感じる。ソーシャルメディアによって、それはさらに加速している。しかし、もう充分だろう」

「コールアウトカルチャー(糾弾文化)はアクティビスム(行動主義)ではない。決して変化をもたらすものではない」(バラク・オバマ)

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“スポーツマンシップとリスペクトの大切さ…10歳の少年に宛てたユルゲン・クロップの手紙。” への1件のコメント

  1. アイク より:

    素晴らしいエピソードですね。
    クロップ監督の精神と社会性にはいつも惚れ惚れしますが、こちらのブログの精神にも共通するものを感じています。
    マッチレビューではラフプレーや誤審、特定選手への非難についてページを割くよりもフットボールの面白さの詰まったシーンを取り上げようとされるポジティブさ、言葉に込められたフェアネスとリスペクト。どれも軽んじられやすく意識的に守らなければ保てない貴重なものです。私はそれらに触れたくてこのブログに足を運んでいます。
    これからも応援しています!

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