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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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プレミアリーグ2014-15年末総決算 (3)プレミアリーグ前半戦・監督ランキング!

プレミアリーグ前半戦総括第3弾、最後のテーマは監督です。「目に見える事実や数字、情報しか考慮しない」というスタンスを基本としながら、チームが残した数字と指揮官のコメントを総ざらいして、ランキング形式で監督を評価してみました。特徴をわかりやすくお伝えするために、「戦略」「戦術・采配」「モチベート」「育成・登用」「やりくり力」の5項目について、5段階評価で星印をつけていますが、こちらは多分に感覚的なものが入っていることをご了承ください。これを通じて、それぞれの監督の魅力やキャラクターを楽しんでいただければ幸いです。

さて、ランキングに入る前に、ひとつだけ。プレミアリーグの20クラブのなかで、昨夏の移籍市場の収支が黒字だったのは、サウサンプトン、スウォンジー、ストークの3クラブ。主力を持っていかれるというピンチもありながら、それぞれ4位、9位、11位に踏ん張っているのはお見事です。いちばん素晴らしいのは、ルーク・ショー、ララナ、デヤン・ロブレン、リッキー・リー・ランバートを抜かれたにも関わらず、昨季よりも順位を上げているセインツ。移籍収支がプラス69億円とダントツで、コストを抑えながらここまで結果を出しているクーマン監督は、前半戦の最優秀監督でしょう。ペッレ、タディッチ、アルデルヴァイレルト、マネ、フォースター、バートランド。新戦力が全員フィットしたのは経営陣の慧眼だけでなく、適材適所でいいチームづくりをした監督のお手柄だと思います。では、いってみましょう監督ランキング、1位から9位をこんな形でまとめてみました。

■プレミアリーグ2014-15 前半戦監督ランキング!■
1位 ロナルド・クーマン(サウサンプトン)
2位 ジョゼ・モウリーニョ(チェルシー)
3位 サム・アラダイス(ウェストハム)
4位 マヌエル・ペジェグリーニ(マンチェスター・シティ)
5位 ルイス・ファン・ハール(マンチェスター・ユナイテッド)
6位 マウリシオ・ポチェッティーノ(トッテナム)
7位 ガリー・モンク(スウォンジー)
8位 マーク・ヒューズ(ストーク)
9位 アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)

いかがでしょうか。ランキング全体についてコメントするよりも、それぞれの指揮官について触れさせていただいたほうがわかりやすいと思われますので、1位のクーマン監督から順に、今季のプレミアリーグでの戦いぶりを紹介させていただければと思います。

1位 ロナルド・クーマン(サウサンプトン)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★★

トップに点取り屋グラツィアーノ・ペッレ、左右にタディッチとマネを置いた3トップでジェイ・ロドリゲスの長期離脱ととララナのレッズ移籍は帳消し。シュナイデルランが司令塔の役割を果たし、ワニャマは守備とつなぎで貢献。アルデルヴァイレルト、フォンテ、クライン、バートランドが並ぶ最終ラインは、デヤン・ロブレンとルーク・ショーがいた昨季よりも安定しているかもしれません。クーマン監督は、与えられた戦力を完全に活かしきりました。後半戦で先頃ケガが癒えたウォード=プラウズをはじめとする若手の成長を促し、シュナイデルランやワニャマがいないときの戦い方を確立させれば、来季の欧州進出が見えてくるでしょう。

2位 ジョゼ・モウリーニョ(チェルシー)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★
やりくり力★★★★

得点力強化と、攻撃のバリエーション創出。ジエゴ・コスタ、ドログバ、セスクらをチームに迎えたモウリーニョ監督は、「引かれると攻めあぐむ」という昨季の課題を見事に解決してみせました。スタメン固定で戦いながら、ズマやミケルが入ってもさほどクオリティが落ちないのは、試合ごとの戦術、狙いどころが明確だからでしょう。ライバルの足音が高くなってきてはいるものの、今季のプレミアリーグ優勝はやはりチェルシーだと思います。

3位 サム・アラダイス(ウェストハム)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★
やりくり力★★★★★

こちらもクーマン監督同様、ピタリとはまった適材適所。ソングやノーブルが後ろを締め、ダウニングが展開し、サコやエネル・バレンシアが仕留めるダイヤモンド型の中盤と2トップは、前半戦を通じて安定していました。9月にリヴァプールに完勝して波に乗り、マンチェスター・シティに競り勝って4連勝を決めた10月は完璧。最近になってアンディ・キャロルが復帰し、スタメンで出場する機会が増えていますが、これが却ってバランスを崩す結果にならないかが気がかりです。

4位 マヌエル・ペジェグリーニ(マンチェスター・シティ)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★
育成・登用★★★
やりくり力★★★★★

ペジェグリーニさんの率直さは、調子がいいときは何も問題ないのですが、10月にチームが調子を崩したときの、「理由がわからない」に始まるネガティブすぎるコメントは、チームの士気を低下させないかとハラハラしました。とはいえ、少数精鋭のチームをしっかり仕上げ、ケガ人が出てもうまく人材を回して穴を埋めてしまうあたりはさすが。攻め重視か守り重視かによって、SBやセントラルMFの顔ぶれを変えてわかりやすくギアチェンジするペジェグリーニ采配には、選手に迷いを生じさせない明快さがあります。マンガラ、フェルナンドがさらにフィットし、アグエロが戻ってくれば、チェルシーに大きく引き離されることはないでしょう。無冠なら、解任となってしまうのでしょうか。この方以上の監督を探すのは、相当難易度が高いと思われますが…。

5位 ルイス・ファン・ハール(マンチェスター・ユナイテッド)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★

あれだけ守備陣に負傷者を抱えながら、よくぞプレミアリーグ3位にまで上がってきました。モイーズ時代は選手間の距離が遠すぎて攻撃が遅く、クロスを上げる頃には相手の陣形が整っていましたが、ファン・ハール監督は、よりパスをつなげやすい形に選手を配置。キャリックの復帰とともに中盤でボールが動くようになり、サイドからも中からも攻撃できるチームに変わりました。戦略家として有名なオランダ人監督の長所として、チームの綻びへの対応の速さを挙げたいと思います。機能しないパーツや空いたスペースを見つけると、選手を代えたりDFの人数をいじったりしながら改善してしまうのは、戦術の引き出しが多く、それをチームに浸透させているからでしょう。やや強引ではありながら、若手の積極的な起用にも好感が持てます。

6位 マウリシオ・ポチェッティーノ(トッテナム)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★★

直近は、マンチェスター・ユナイテッドとのドローを含む3勝1分け。何だかんだで、昨季のヴィラス・ボアスさんやシャーウッドさんよりもよくやっているのではないでしょうか。セインツからきたポチェッティーノ監督のお手柄は、ハリー・ケイン、ライアン・メイソン、ベン・デイヴィスなどの若い選手をうまく導入したことだと思います。秋以降、DFラインは徐々に整備が進んできましたが、ストライカーが点を獲れないのを何とかしたいところ。ラメラやソルダードの活かし方を考えるのか、冬に補強するのか。得点力が強化されれば、ELとプレミアリーグの両立がよりスムーズになるのではないでしょうか。全員を入れ替える大胆すぎるターンオーバーにはびっくりしました。

7位 ガリー・モンク(スウォンジー)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★

キ・ソンヨン、ダイアー、シグルズソン、ルートリッジ、シェルヴィがしつこくパスをまわしてくる強力な中盤を創り上げたのは、35歳の最年少監督ガリー・モンク。昨季は降格寸前までいったチームがトップ10で折り返せたのは、どこからでもゴールが狙える自在な攻撃の成果だと思います。さらに改善すべきは、守備の整備とボニー以外のストライカーの活用でしょう。選手交代でチームが活性化されないので、悪い試合を悪いまま終わらせてしまうのが悩ましいところです。

8位 マーク・ヒューズ(ストーク)
戦略   ★★★
戦術・采配★★★
モチベート★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★★

長身でごつい最終ラインとセットプレー、ロングスローの放り込みなど、前任者ピューリスの香りをそこはかとなく残しつつ、チャーリー・アダムやボージャン・クルキッチ、アルナウトヴィッチが絡んだ中央突破といった、速攻とハイクロス以外の攻撃の幅が広がりました。クラウチ、ボージャン、ウォルタース、ディウフと前線に多彩なタレントが揃い、ストークのサッカーはより楽しくなりましたね。後半戦も何回かは上位いじめをしてくれるはずですが、今夜ばかりは勘弁してください。ディ・マリアやブリントがおらず、まだまだ大変なのです。

9位 アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★
モチベート★★★
育成・登用★★★
やりくり力★★★★

負傷者多発、上位に勝ち切れない、コシールニーの穴が埋まらないなど、例年通りの課題を抱えるヴェンゲル監督。主力の離脱が痛かったドルトムント、インテル、リヴァプールが順位を下げてもがいているなか、この状態でもプレミアリーグ4位と同勝ち点につけてくるしぶとさは健在です。ヴェンゲル監督にいいたいのは、「後ろに引いて勝とうとするのは、向いていないのでやめませんか」「やはりCBとセントラルMFは獲りましょうよ」といったところ。エジルやラムジー、ウィルシャー、ウォルコットが戻ってくれば、彼らは間違いなく調子を上げてくるでしょう。「上位対決で勝てるか」「チャンピオンズリーグでどこまでいけるか」が後半戦の注目ポイントですね。

以上でございます。プレミアリーグは、チームも監督もキャラが立ってておもしろいですね。昨季素晴らしかったロジャース監督、ロベルト・マルティネス監督が今季は沈んでいますが、4位からエヴァートンまで勝ち点差12は、まだまだわかりません。後半戦も、ここぞというシーンでの監督の鮮やかな采配を楽しんでまいりたいと思います。本年も、何卒よろしくお願い申し上げます。

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“プレミアリーグ2014-15年末総決算 (3)プレミアリーグ前半戦・監督ランキング!” への3件のフィードバック

  1. スパーズ推し より:

    あけましておめでとうございます
    今年も興味深い記事を期待しています(笑)

    ポチェはこのなんとも微妙な人員でよく頑張っていると思います^^;
    イェドリンの移籍前倒しは、ケガがちなウォーカーへの保険、
    ダイアーのCB本職復帰の用意、ノートンへの実質的解雇通告と色々意味があると思っています

    今のチームには周りに生かされるタイプの選手が少々多すぎる気がしますね
    よく言えばバランスのいい、悪く言えば
    パッとしないメンツ
    生かす側にいるのはエリクセンくらい
    パスを散らしてエリクセンの負担を少なくしてくれる、または守備職人的なボランチが必要な気がします
    とは言え、そういう選手は大抵お高いお値段がついてるものなんですけどね(笑)

  2. にわかスパーズファン より:

    明けましておめでとうございます。
    ファンハールは戦術面では素晴らしいと思いますが、選手を怪我させすぎです。ヨーロッパのコンペティションがないのにこの有様はトレーニングなんかに問題あるのでは?と思います。管理人さんはよく言えばの方を書かれてますが、私は悪く言えばの方が気になりますね。

    スパーズの話題にいくと、キャプテンと副キャプテンが干されていて、カプーもいません。ゴタゴタです。なのにゴタゴタしだしてから結果が良くなってきているのでなんともですが…
    ただこの状態が続いてヨーロッパを考えるともう一人FW取らないとケインに負担が大きくなってしまいそうです。CL行くためなら4位以内よりEL本気で行った方が可能性ありそうですしね。

  3. makoto より:

    スパーズ推しさん>
    チェルシーのオスカルとセスクのように、確かに組み立て側にもうひとつ、軸がほしいですね。パウリーニョやデンベレが中央で機能してくれればよかったのだと思いますが…。

    にわかスパーズファンさん>
    ケガ人多発クラブ(もしくは組織)の本質的な問題は、どのあたりにあるのでしょうね。原因が特定できないので、あまり強いことがいえず…。スパーズは、どちらが近道なのでしょうね。ELでボルシアMG、ローマ、ビジャレアルに勝つのと、4位まで勝ち点2差のプレミアリーグでアーセナルやマン・ユナイテッドを上回るのと。冬のマーケットでストライカーを補強できれば、後者のほうがいけるような気もします。

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