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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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「冬の移籍市場は撤廃したほうがいい」ヴェンゲル監督が持論を展開!しかし…。

もはや、この季節の恒例行事ととなりつつあります。アーセナルのヴェンゲル監督が「冬の移籍市場は撤廃したほうがいい」 という持論を展開しました。2年前にも、ヴェンゲル監督は冬の補強機会について疑義を呈しています。2013年1月、UEFAのミシェル・プラティニ会長が、現行のルールは大会をアンフェアなものにしてしまうと警告。「冬の移籍市場の存在には、多くの監督が不満を感じているだろう。彼らは、リーグ戦の開幕と同じチームでシーズンを終えられるかわからないという状況に置かれているからだ。ある大会で、チームAにいた選手が前半戦にBと対戦しておきながら、後半戦ではBの一員としてAと戦うなどということは受け入れがたい」と語りました。

これを受けて、ヴェンゲル監督も同様に「アンフェアである」とコメント。改善策として、撤廃もしくは人数制限を検討すべきだとしています。当時のプレミアリーグでは、ニューカッスルがフランス人選手を何人か補強しており、ヴェンゲル監督はこんな例を挙げていました。

「完全撤廃か、もしくは2人までに制限されるべきだと思う。アンフェアだからだ。例えば、ニューカッスルとすでに2回、戦い終えたチームは、6~7人の選手を加えたニューカッスルとこれから戦うチームより有利になる」

これはこれで、確かにそうなんですよね。ヴェンゲル監督の主張を聞いて、「アーセナルも冬の市場を使ってるじゃないか」とツッコミを入れたくなる方もいるかもしれませんが、「撤廃論者は冬に補強するな」というのは乱暴でしょう。現状認められているルールは活用しつつ、同時に未来のルールを見直すべしというのはおかしな話ではありません。今年のメッセージが発信されたのは、ノーズロンドンダービーを控えた先週の金曜日。以前から主張している「よりフェアな戦いを」という考え方をベースに、「チームとしての一貫性」という新たな装いも加えて2014-15冬モデルを発表。今回は、完全廃止1本というストロングな提案をしています。

「(この冬は)ヨーロッパ全体としてさほど大きな動きはなかった。ほぼ何もないといっていいだろう。これまでにはなかったことだ。FFPのインパクトがあったということだね。冬のマーケットは完全に撤廃してはどうだろうか。シーズンを通じて同じ選手たちで戦うべきだ。(現在の冬の移籍市場は)シーズンの途中でグループとしての一貫性を阻害するものだからね。選手は、9月末~10月にプレイできなければ、すぐに1月の移籍を考えたりするだろう。われわれの仕事では、チーム全員が同じ方向に向かうことが重要だ」

おっしゃることはよくわかるものの、選手の立場、ファンの立場に立ってみると、完全廃止はどうでしょうか。監督に戦力外と見做された選手、出場機会を得られない選手からすれば、1年を棒に振るのは痛いので、出来るだけ早く環境を改善したいところです。また、サッカーを観る側からしても、力のある選手が監督とうまくいかないがためにベンチにいるのを見ているのはつらいもの。開幕前に想定していたフォーメーションがうまくいかず、新しいスタイルに切り替えるチームもあるので、シーズン途中に見直す機会があるのは、チームにとっても選手にとってもポジティブなことなのではないかと思います。

しかし一方で、以前のプラティニ会長やヴェンゲル監督の主張もわかります。今季のプレミアリーグでは、冬の市場でマンチェスター・シティがスウォンジーのウィルフリード・ボニーを獲得しました。プレミアリーグ前半戦で9ゴールを挙げていたエース級の選手が所属チームを変えるのは、リーグ全体にとって相当大きなインパクトですが、現地ではそういう見方はさほどないようです。おそらくそれは、スウォンジーが現在9位にいる中堅クラブで、ビッグクラブが中堅クラブから選手を獲得するのはよくある話だからでしょう。では、冬の市場でこんなことが起こったと想像してみると、どうでしょうか。

マンチェスター・シティが獲得したのが、現在プレミアリーグ3位につけているサウサンプトンの絶対的エース、今季8ゴールのグラツィアーノ・ペッレだったとしたら。

この移籍劇により、セインツの大健闘は終わってしまうかもしれません。年始に、強いセインツに敗れたアーセナルとマンチェスター・ユナイテッドにとっては、「ペッレ抜きのチームと戦いたかった…」。後半戦の戦いはこれからとなるチェルシーやリヴァプールにとっては、ちょっとした幸運です。昨年、チェルシーがマンチェスター・ユナイテッドにマタを放出したときも、一部で「既にマンチェスター・ユナイテッドとの対戦を終えていたチェルシーが、マンチェスター・ユナイテッドに他クラブの足を引っ張ってもらうためにマタを出したのではないか」といった”モウリーニョ陰謀説”があったぐらいです。やはり、優勝争いに直結するプレミアリーグ上位クラブ同士の選手のやりとりとなれば、それなりのインパクトがあります。今季、開幕前に主力を大量に抜かれながらも、その後の補強とチーム作りで上位に食い込んできたセインツが、さらに選手を抜かれたために弱くなっていく姿など、誰も見たくはないでしょう。

私は、冬の移籍市場自体はあったほうがいいと思います。ベンチでくすぶっている選手が新たな出場機会を得られたり、監督交代やフォーメーションチェンジをしたクラブがチームをよくしていくためのチャンスを得られることは、プレミアリーグをよりおもしろいものにしてくれると信じるからです。ただし、プラティニ会長やヴェンゲル監督が懸念するアンフェアさも、考えなくてはいけない問題です。そこで、冬のマーケットにはこんな条件をつけてみてはどうかと考えてみました。「前半戦で、チームの消化試合数の半数以上に出場した選手は対象外とする」。冬のマーケットは、ケガ人対応、見込み違い是正、戦力外選手の救済の場として機能させるという考え方です。いかがでしょうか。

ボニーの場合、アフリカネーションズカップ出場でしばらくプレミアリーグを離れるのが既定路線。今回の移籍話がなくてもスウォンジーの1月は我慢の季節だったわけですが、年が明けてから、プレミアリーグ唯一のウェールズのクラブは1試合平均得点が1点未満。FAカップ4回戦では、チャンピオンシップのブラックバーンにいいところなく敗れており、1月3日にリーグ2(4部相当)で降格候補のトレンメア相手に6ゴールで大勝してからというもの、2得点を挙げたゲームがありません。前半戦はトップ10に食い込んでいたスウォンジーは、これから厳しいかもしれません。何しろ、絶対的なエースの離脱ですから。

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“「冬の移籍市場は撤廃したほうがいい」ヴェンゲル監督が持論を展開!しかし…。” への2件のフィードバック

  1. さすおに より:

    ちょっと辛口になりますが、冬に補強してもいつもハズレくじを引きまくるベンゲルの言い訳じゃないですかね…。多分、普段から冬の補強で成功していたら、こんな愚痴はいわないような気がするのですが、どうでしょうか。

  2. makoto より:

    さすおにさん>
    どうでしょうね。ヴェンゲルさんは、成功しても失敗しても発言がブレない方なので、率直に思ったことを口にしているのではないかと思ってます。過去の補強に関しても、総論では失敗したとは思っていないのではないでしょうか。シェルストレームはともかく。

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