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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「判定には有利も不利もある。サッカーとはそういうものだ」…あれ?ポチェッティーノ監督⁉

2つのゴールがオフサイド絡みだったのではないかと話題になった、プレミアリーグ7節のトッテナムVSマンチェスター・シティ。映像で見ると、1点めにつながったカイル・ウォーカーの飛び出しは明らかにオフサイド。エリクセンがFKを蹴るタイミングとデブライネの上がりを同時にチェックするのは難しかったとはいえ、3点めのハリー・ケインも限りなくクロでした。ドローに終わったニューカッスル戦の後、主審のアトキンソン氏について「彼は選手との話が長く、時間を消費する」と発言したモウリーニョ監督なら、FAににらまれないようにディフェンスしながら、遠回しな皮肉を何発も放り込んできたことでしょう。しかし、マンチェスター・シティのペジェグリーニ監督は、オトナでした。「スカイスポーツ」が敗軍の将の冷静なコメントを伝えています。

「1-4で負けた試合で、レフェリーのミスを責めるのは安易だ。同点のシーンでは明らかなオフサイドがあり、トッテナムはオフサイドの状況から2点を決めたが、ジャッジと守備のミスは別な問題だ。われわれはセットプレーから2点を失った。マークに問題があり、集中力がなかった」

「審判のミスは常に起こりうる。これ以上は話したくない」「プレミアリーグで勝つのはいつでも難しいもの」と語ったチリ人指揮官は、レフェリーに対する非難めいた言葉を口にしませんでした。あれだけの不利があれば、プレミアリーグの監督のほとんどが怒りを露わにするでしょう。怒っても結果が変わるものでもない、と達観しているのでしょうか。素晴らしい姿勢です。終わったゲームのネガティブな出来事をついて、最低限のコメントに留めて切り上げたボスに、「次のチャンピオンズリーグが大事だ」といわれれば、選手もしっかり気持ちを切り替えられるのではないでしょうか。

一方、勝ったトッテナムの監督もまた、分別の塊のような言葉を残しています。「サッカーとはそういうものだ。レフェリーの仕事は非常に難しい。誤審で不利になることもあれば有利になることもある」。なるほど。審判に敬意を払った立派な発言…って、あれ?ポチェッティーノさんですよね?

みなさん、私が紹介したいお話は、ここからです。2014年4月5日、プレミアリーグ2013-14シーズン第33節。この試合は、印象的なアクシデントがあったので、覚えてらっしゃる方も多いかもしれません。サウサンプトンのジェイ・ロドリゲスが復帰まで1年以上を要する重傷を負った試合です。場所はエティハド、マンチェスター・シティVSサウサンプトン。「ポチェッティーノ監督がマンチェスター・シティと戦った」「最終スコアは4-1だった」「明らかなオフサイドの見逃しが試合の流れを変えてしまった」…よくまあこれだけ共通項があるものだ、とびっくりしました。ただし、ひとつだけ、大きな違いがあります。こちらのゲームは、敗者がポチェッティーノ監督だったのです。

問題のシーンをリプレイしてみましょう。1-1、前半終了間際の45分。ヤヤ・トゥレが左のダヴィド・シルヴァに一発でスルーパスを通していればセーフだったのですが、中のジェコを経由してヒールパスが出た瞬間は、1メートルは余裕ではみ出していた真っ黒なオフサイド。ところがラインズマンの旗は上がらず。おそらく、最後に触ったのがDFだと判断してしまったのでしょう。何人かがプレイを止めてしまったセインツを尻目にダヴィド・シルヴァが中に走り込んだナスリにパスを入れ、ゴール。不満を募らせたセインツは、この後追加タイムにジェコにゴールを許し、たった5分で勝負が決まってしまいました。このときのポチェッティーノさんは、とにかく激怒でした。そりゃそうですよね。強豪相手に追いつき、いい試合をしていたのですから。

「私はとても怒っている。ラインズマンがゲームを殺してしまった。あのジャッジは理解できない。説明も難しい。われわれはPKを献上し、ジェイ・ロドリゲスを負傷で失い、厳しい展開に追い込まれた。しかしチームは立ち直って、あの瞬間までは(マンチェスター・)シティよりもいいプレイをしていたんだ。そんな矢先に判定が試合を決めてしまった。ポジティブだったのは、前半の出来が素晴らしかったことだけだ」

わかります、わかります。セインツサポーターも同じ気持ちでしょう。主力も勝ち点も失い、踏んだり蹴ったり。これはさすがに文句のひとつもいいたくなります。片やで、今回は勝者の側となったポチェッティーノさんが、「サッカーとはそういうもの」という会見における慣用表現で畳もうとした気分もわかります。幸運が巡ってきたほうはバツが悪く、「あれは俺もおかしいと思ったんだよね!」などという白々しい言葉は出てこないものです。

敗者になれば口角泡を飛ばしてレフェリングを非難し、勝者のときは静かにやり過ごす。われわれプレミアリーグファンも同じですよね。ポチェッティーノさん個人がどうこう、ではなく、それこそ「サッカーとはそういうもの」なのではないでしょうか。1年半前のゲームと劇場こそ違えど、舞台装置と台本は似ており、主役は一緒。おもしろかったので紹介させていただきました。

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“「判定には有利も不利もある。サッカーとはそういうものだ」…あれ?ポチェッティーノ監督⁉” への6件のフィードバック

  1. シティさぽ より:

    勝ったチームが審判批判はしないですよね
    ビデオ判定は必要でしょうが
    サッカーは流れが止まらないスポーツですからね
    ビデオ判定導入は難しいかもしれません

  2. せろり より:

    ダブルスタンダードですよね
    大抵どの監督も自分が審判の判定によって有利になると騒ぎ立てるようなことはいわず不利になった場合の監督は騒ぐのはいい気分しないです
    有利になった時も不利になった時も同じ姿勢でいてくれればいいんですけど人間なので中々難しいですね

  3. nori より:

    ポチェとシティにそんな因縁があったんですね。
    スパーズとシティの話をすれば、バロテッリがパーカーの頭を踏みつけたのを見逃されたり(試合後に出場停止に)、ローズが誤審で退場になったり(試合後に出場停止の取消)、PKが乱発したりとここ数シーズン審判絡みで話題になる試合が多かったので、今年もかいっ!と思わずツッコんでしまいました。
    次の対戦ではお互いスッキリするような良い試合を期待したいですね。

  4. より:

    結構楽しみにしてた試合だったんですが、ケインのゴールまで認められた時点で見るのをやめました。
    シルバがいなくてシティの動きが良くなかったのもあったんですが、ゴールに絡む誤審が1試合で2つもあると
    何か見る方もやる気がなくなりますね。

    これもサッカーというのは分かってはいるんですが、あそこまでひどい誤審で試合を潰されるのは勘弁してもらいたいなーと思いました。

  5. makoto より:

    シティさぽさん>
    「ゴールシーン、PK、カードのシーンについてのみチャレンジあり」と限定すれば、ビデオ判定もありではないかと思います。1試合に10回以下、しかも現状でも一定時間プレイが止まるタイミングですので。

    せろりさん>
    ラテン系の国とわれわれの文化の違いでもあり、こればっかりは変わらないでしょうね。ツッコミ入れて楽しもう、と決めています。

    noriさん>
    そうでしたね。よりによってまたもこの試合か!ですね。

    ご さん>
    今季は、ブンデスリーガでもセリエAでも誤審騒動が目立ちます。今のままファンが諦めて楽しむのか、明確に何かを変えるのか。私は、いよいよ見直す時期にきているのではないかと思っています。

  6. makoto より:

    ビデオ判定をする人の差が出たりしないですかね?
    ゴールラインの通過を判定するホークアイは1秒以内で結果がわかるらしいです
    PKなどのシーンは難しいのではないですかね

    —–
    シティさぽさん>
    何をどこまでビデオに委ねるか、はひとつの課題ですね。どこまでいっても属人的な判断は入るので、ビデオ判定ですべてが解決するとは思いませんが、ファンにとってすっきりする着地は増えるのではないかと思ってます。

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