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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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にわかに信じがたい!「ファン・ハール解任間近&モウリーニョ基本合意」報道

プレミアリーグで4試合勝利なし、チャンピオンズリーググループステージ敗退ではメディアが騒ぐのは仕方がありません。12月17日にチェルシー監督を解任となったモウリーニョさんに続き、ファン・ハール監督にもついに具体的な「解任間近」報道が出ました。イギリス紙「ザ・サン」は、プレミアリーグ次節のストーク戦敗戦で一発アウト、「インディペンデント」は、ストーク戦かホームのチェルシー戦のいずれかに負けたら、と報道。高級紙とタブロイド紙のはさみ撃ちの最大公約数をとれば、次の試合はファン・ハール政権の命運を賭けた一戦ということになります。

私は、この秋までのファン・ハール監督は、よくやっていたと思います。プレミアリーグ7位に沈んだモイーズ監督の後を受け、抜本的な立て直しに着手した最初のシーズンで、チャンピオンズリーグ出場権獲得に漕ぎ付けられた監督がどれほどいるでしょうか。3億ポンドといわれる補強額をみて「それだけお金を注ぎ込んだら当たり前」という方もいますが、それは機能しない選手や峠を過ぎた選手の放出という逆サイドを見ない、一面的な評価ではないかと思います。マルシアル、シュナイデルラン、シュヴァインシュタイガー、デパイ、ダルミアンらを獲得したこの夏の補強は的確。オタメンディを取り逃がさず、もうひとり純粋なストライカーを確保できていれば完璧でした。今季のマンチェスター・ユナイテッドは、マタが調子がよかった10月まではプレミアリーグ最少失点の堅守をベースに悪くないサッカーをしており、9月には3試合連続で3ゴールを記録しています。首位に立った時期もありながら、その後崩れてしまった要因は、負傷者の多発と、主に攻撃面で「こうすれば勝てる」という軸となる戦術を明確にできなかったことでしょう。

カソルラ、コクラン、アレクシス・サンチェスという主軸を欠きながらマンチェスター・シティに勝利したアーセナルを観てあらためて感じたのは、ヴェンゲル監督のチームの「最低点の高さ」です。負傷した主力の代わりに誰が入ってもクオリティの高いサッカーができるのは、「うちのチームはこう戦うのである」という基本戦略と、「あなたのココを買っている」という個人への期待・信頼が両立しているからではないでしょうか。前者があれば迷いなく戦え、選手への信頼がモチベーションの高さと臨機応変な対応を生んでいます。マンガラのパスをカットしてエジル、ジルーとパス2本でゴールを陥れた美しいショートカウンターと、中央にジョエル・キャンベルが入り込んでラムジーをGKと1対1にしたシーンは、まさにアーセナルの「こうすれば勝てる」だったのだと思います。

翻ってファン・ハール監督のサッカーは、戦略・戦術はあっても個人への期待が乏しいように映ります。自由な発想を許す遊びの領域が少なく、誰がどこに入っても同じような展開にならず、フェライニ以外で意図的に変化を促すことができません。ルーニーがトップ下に入ったときと、マタを入れた形における「期待の違い」を語れる人はいないのではないでしょうか。言葉にできるのは、「ルーニーとマタの違い」でしかなく、ファン・ハールサッカーにおける要求の違いではありません。「6番の役割」「8番の役割」といった表現を駆使する監督の下で、選手たちは敷かれた戦術をトレースするのが精一杯で、うまくいかないときに新しい方法を試してみようという機運は生まれません。

マタとマルシアルの調子がよかった時期は、何とか結果は出しておりましたが、「彼らを中心にゴールを奪う」と基軸に据えることなく、エース級の選手があちこちでリーズナブルに使われるようになると、マン・ユナイテッドは深刻なゴール欠乏症に陥ります。機能するとそれなりに強いものの、一度おかしくなるとチューニングが難しい戦術は、ノリッジとボーンマスという今季プレミアリーグ昇格組に連敗するという69年ぶりの屈辱を味わうはめになりました。チャンピオンズリーグのヴォルフスブルク戦におけるマタとニック・パウエルの不可解な交代など、内容、采配、結果すべてに疑問符がつく最近の停滞は、経営陣がドラスティックな改革を検討し始めたとしても何の不思議もありません。6試合勝利なしは、2000年代には最強だったマンチェスター・ユナイテッドが黙って見過ごす成績ではありません。とはいえ…。

「ヤツがおまえの仕事を奪う、ヤツがおまえの仕事を奪う、ジョゼ・モウリーニョ、アイツがおまえの仕事を奪う!」

ノリッジ戦で、アウェイサポーターがファン・ハール監督の背中に叩きつけたチャントは、現実のものとなるのでしょうか。当地ではアウェイチームのサポーターのほうが元気なのはデフォルトで、彼らがブラックなチャントで大騒ぎをするのはプレミアリーグの日常的な光景なのですが、これがさっそく実現するとなると、「耳キーンてなるわ」状態。いい悪いを判断するにはあまりに話の展開が速すぎて、頭では消化できても、心がついていけません。今季分のサラリーを満額受け取ってクラブを離れたといわれるスペシャルワンが、こんなに早く仇敵を指揮するとは思えないのですが…。

「ザ・サン」は基本合意と報道、「デイリー・スター「デイリー・ミラー」は、モウリーニョ監督は、チェルシー時代の年俸1000万ポンドから、ファン・ハール監督と同等の600万ポンドでも承諾すると伝えています。ひとつだけいえるのは、両者が現状を「千載一遇のチャンス」と捉えている可能性は高そうだということ。新監督はサラリー40%カットでもOKと、複数のメディアが伝えている現状は、何ともいえない緊張感に満ち溢れています。ゴシップでしょうと空笑いしつつ、続報を気にせずにはいられません。

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“にわかに信じがたい!「ファン・ハール解任間近&モウリーニョ基本合意」報道” への6件のフィードバック

  1. MUFC@No.7 より:

    モウリーニョになったらどうなるんですかね。今まで築きあげたポゼッションはなくなります。彼のメンバー固定はレギュラーとベンチの溝を作り時期早々にチームに崩壊をもたらします。それに今のユナイテッドで固定メンバーでいけば6試合終わったらメンバー11人全員が違うメンバーなんて事もありえます(怪我離脱により)ユナイテッドの哲学にある、若手へのチャンスも潰されるでしょう。彼はユナイテッドの監督になる条件には当てはまりません。彼は素晴らしい監督ですけどね。たとえチェルシー、レアルで選手との確執があったとしても。能力に疑いようはありません。ただユナイテッドの監督としての条件には当てはまらないだけです。私はまだLVGでいいと思います。内容はつまらなくても彼はユナイテッドにいいものを根付かしてくれるはずです。それはこれまでの功績をみれば明らかですよね。モウリーニョの後には何も残りませんよ。

  2. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    私はレッズファンですが、モウリーニョが指揮をとっているユナイテッドが想像できません。今のチェルシーと同じ過程をたどるのでは?と思います。ユナイテッドは株式公開をしているので経営・株価の側面もあるので舵取りが色々と難しいのかもしれませんが、モウリーニョだけは想像がつかないです、、、今シーズンはLVGで来季はギグスでいいと思うのですが、、、。

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    ファンファールよりは良いと思います
    ポゼッションはしてるだけですし
    ファンファールではもう選手の心が離れてるように感じます
    モウリーニョが良いというわけではないですが
    ファンファールではダメだなと思います

    —–
    正直マドリーにしても今回のチェルシーにしてもモウリーニョが残していったチームが悪いものとは私には思えないんですよね。マドリーではエジルやディマリアを加え、ヴァランをスタメンにしてモドリッチを加えて去った。
    チェルシーでもマタやデブライネといったテクニックのある選手を、ウィリアンやマティッチらフィジカルと運動量のある選手と代えて全体的なバランスを取るスカッドにした。ルカクにしても守備はしないファーストチョイスでないと移籍する選手をコスタというプレスを献身的にかけるFWに代えた云々と、好みの違いはあれ基本的にどんな監督でも喜んで引き継ぎたいチームをしっかり残してる気がします。

    若手にしても私は3年に一人スタメンクラスの若手を育てれば上出来と思っていて(バルサですらクエンカテージョ辺りは駄目で平均するとそんなものでは)もうすでにズマをスタメンにし、おそらく続けていればケネディもそうなっていた、マドリーではヘセを上げ、モラタを上げた、そんなに悪くない気がします。

  4. Uボマー より:

    現在がチームの再建途中と見るならば、ファンハールを見切るにはまだ早い。他方常勝を義務付けられているクラブだと考えるなら思い切って変えないと優勝に届かなくなる。個人的には再建途中と割り切って、来シーズンはギグスにバトンタッチが望ましいと思いますが、エド・ウッドワードとしてはアディダスの意向に配慮して途中解任もありえそうですね。ただそれを繰り返しているとクラブが弱体化するんじゃないかって気もするんですがね。

  5. makoto より:

    ファン・ハールはチームに戦術や戦略を叩き込む事はできてもチームを奮起させるような事はできない監督だと思ってます。彼が成功してきたチームにはキャプテンシーに優れ、個の能力がずば抜けて高い選手がそれぞれでいたのではないでしょうか。ユナイテッドでも昨季はルーニーがその役割を担っていたそうですが、今の彼が何を言ってもユースあがりの選手ですら耳を傾けないでしょう。ストーク戦では完璧な戦術をファン・ハールが事前に用意しておいて選手がそれを履行するしか勝ち目はないのではないでしょうか。それかフェライニが個人で爆発するかしかないと思います。

    モウリーニョ監督は短期的な成功しか期待できない監督かもしれませんが、短期的な成功でも今のユナイテッドサポーターからしたら喉から手が出るくらい欲しいものではないでしょうか。欧州のトップクラブの争いはもちろんプレミアリーグでの覇権争いにすら指をくわえて眺めてるしかできない今の状況には一時的であれストップをかけてもらいたいです。ファーガソン監督のもと温室で過保護的に育てられたサポーターとしてはもう限界です。

    たとえすぐにユナイテッドを去る事になったとしてもモウリーニョ監督が今までのチームに残したベースは素晴らしいものばかりだと思います。中長期的な展望もモウリーニョ監督を招聘できたら実質的には可能になるのかなと、その時バトンを受け継ぐのがギグスなら申し分ないなと妄想してます

    —–
    MUFC@No.7さん>
    そうなんですよね。モイーズ、ファン・ハールと続く流れの前であればまだしも、ここでモウリーニョさんとなると継続性が遮断されるのが気になるます。モウリーニョさんの「レギュラー固定」「ベテラン重視」も逆流している感がありますしね…。

    Mackiさん>
    私も、ここで踏ん張ってもらってファン・ハールさんで最後までいくのがベターだと思ってます。耳キーンです。

    シティふぁんさん>
    なるほど。私は、いいところも結構あると思っていたので、ファンの9割がダメ出ししているという報道に違和感を覚えます。守備的で退屈といわれれば、返す言葉に困るのは確かですが。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    モウリーニョさんがチームを壊した、とは思いませんが、若手に関してはやはり少ないですね。トッテナム、セインツ、リヴァプールからは数多くの若手が出てきており、アーセナルも昨季のコクラン、ベジェリンがいます。プレミアリーグはカップ戦が多く、試す場があるのにチェルシーはコンサバすぎたのでは?と思ってました。

    Uボマーさん>
    途中解任で、中途半端な人材を連れてくるのだけはNGですね。4位と同勝ち点差の5位につけている状況なら、選手と深刻な確執があったり、4位が絶望的になるといった状況に陥らない限りは続けてほしいですね。

    グローリーグローリーさん>
    一貫性がありますね。私は今のタイミングではモウリーニョさんに引き気味ですが、おっしゃることはわかるんです。勝利に飢えてますよね、われわれ。クラブは長期的な展望を持ち、簡単に監督のクビを切らずに腰を据えてチームづくりをすべしと考えてはいるものの、「長期ありき」で監督を決めるのは違うかなと思ったりします。ファン・ハールさんとの違いが大きいので、クラブと選手が振り回される感があるのがいちばん心配です。

  6. プレミアリーグ大好き! より:

    ズマがあんなに早くものになったのはモウリーニョの手腕だし、アシュリーコールをアスピの左SBコンバートで、ランパードやトーレスも若い選手に代えてチーム全体をむしろ若返らせたのであまりベテラン偏重という感じはしませんでした。

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