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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

抜きん出ていた上位3人!プレミアリーグ2015-16・偏愛的監督ランキング【前編】

プレミアリーグ2015-16シーズンの総括第2弾は、半期に1度、やらせていただいております「監督ランキング」です。年々、個性派指揮官が増えている感があるプレミアリーグ。今季も、ウェストハムに熱血漢のスラヴェン・ビリッチ、リヴァプールにはゲーゲン・プレッシングのユルゲン・クロップ、スウォンジーには中小クラブの立て直し屋グイドリン、そしてレスターには見事に「ティンカーマン」を返上したクラウディオ・ラニエリと素晴らしいキャラが揃い、彼ららしいサッカーを見せてくれました。一方で、昨季チャンピオンのジョゼ・モウリーニョや、2013-14シーズンにリヴァプールを優勝寸前まで導いたブレンダン・ロジャース、ニューカッスルのマクラーレン、エヴァートンのロベルト・マルティネスといった実力派たちが無念の退任。クラブの復活を託されたヒディンク、ベニテス、アラダイスといった「プレミアリーグ復帰組」もまた、軒並み苦戦を強いられました。

以下にランキング形式で、リスペクトしたい10人の指揮官をピックアップしてみました。今季は、上位3人のチームマネジメント力が抜きん出ていたという印象です。4-4-2のカウンターサッカーを早期にインストールし、戦いながら守備戦術を構築して後半戦を1敗で走り抜けたラニエリ監督。エリクセンに、人生でこんなに疲れたことはないといわしめる「走るサッカー」とハードマネジメントでトッテナムをジャンプアップさせたポチェッティーノ監督。この2人に関しては、今季のベストマネジャーを争う存在であることに異論はないでしょう。しかし、私が声を大にしていいたいのは、サウサンプトンのクーマン監督も、彼らに負けず劣らず素晴らしい仕事をしたということです。

あまり話題にはならなかったものの、リヴァプール、マンチェスター勢、トッテナムをすべて叩いた後半戦の12勝3分4敗は、同時期のレスターに3差に迫る堂々の2位です。プレミアリーグ開幕前にはシュナイデルラン、ナサニエル・クライン、アルデルヴァイレルトと主力をトップクラブに抜かれ、シーズンが始まってからもシェーン・ロングの離脱、グラティアーノ・ペッレの大スランプ、マネが遅刻でスタメン落ち、ワニャマはレッドカード3枚と、事件続きだったチームをよくぞ6位に引き上げました。「降格候補」「がんばっても5位」「おそらくボトム10」と、三者三様に開幕前の評価が低かったクラブの監督たちに、惜しみない拍手を送りたいと思います。ブラボー!

■プレミアリーグ2015-16 監督ランキング!■
1位 クラウディオ・ラニエリ(レスター)
2位 マウリシオ・ポチェッティーノ(トッテナム)
3位 ロナルド・クーマン(サウサンプトン)
4位 スラヴェン・ビリッチ(ウェストハム)
5位 ユルゲン・クロップ(リヴァプール)
6位 フランチェスコ・グイドリン(スウォンジー)
7位 キケ・フローレス(ワトフォード)
8位 アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)
9位 エドワード・ハウ(ボーンマス)
10位 トニー・ピューリス(ウェスト・ブロムウィッチ)

さて、ここからは、それぞれの監督について、シーズンを振り返ってまいりたいと思います。各項目最大5つ星で評価をつけさせていただいておりますが、厳密さより、それぞれの監督の特徴がわかりやすくお伝えできるようにとつけているものですので、ご容赦いただければと思います。では、さっそく、1位にさせていただいたラニエリ監督からスタートです。

1位 クラウディオ・ラニエリ(レスター)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★★

素晴らしかったのは5点。「前シーズンのチームの長所を活かしたこと」「岡崎慎司とカンテの長所をいち早く見抜き、適所に配したこと。特にカンテのセントラルMF」「アーセナルに大敗した後、両SBを守備に長けたシンプソンとフクスにスイッチしたこと」「後半戦から堅牢になった守備戦術の構築」「うまく選手をリフレッシュさせ、高いモチベーションをキープしたこと」。クリーンシートでピザおごる、クリスマスのコペンハーゲン旅行など、トップクラブが欧州で厳しい戦いを強いられているなか、アメとムチをうまく使い分けて、プレミアリーグ首位で走り切ってしまいました。SBスイッチのきっかけはホームで2-5とやられたアーセナル戦で、「掟破りの勝手にウインターブレイク作戦」、すなわち1週間休暇を取ったのも終了間際のショッキングなゴールで敗れたアーセナル戦の後でした。ラニエリ監督に秀逸な作戦を立てさせたヴェンゲル監督が、レスター優勝を実現させた「影のマネージャー」だったのかもしれません。

2位 マウリシオ・ポチェッティーノ(トッテナム)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★★★

中盤でボールを奪って直線的に攻めるショートカウンター、カイル・ウォーカーやダニー・ローズにボールが渡ると4~5人がペナルティエリアに殺到する厚みのある攻撃、ロリスとアルデルヴァイレルトが統率するシュートコースを空けない守備。ポチェッティーノ監督の「走るサッカー」は、クロップ監督とともに、プレミアリーグを革命的に変えるかもしれないコンセプチュアルな戦略でした。デンベレを機能させ、トム・キャロルまで活用した中盤の操縦法は見事だったのですが、トップがハリー・ケインだけだったのが残念。ソン・フンミンやラメラのワントップ起用といったオプションを機能させられず、敵前逃亡的な負け方を避けられなかったのが、カップ戦では上位にいけなかった最大の理由ではないでしょうか。とはいえ、デル・アリやエリック・ダイアーをブレイクさせ、ヴィマーにフェルトンゲン離脱の穴をしっかり埋めさせるなど、所属選手を全員使いこなした確かな手腕は、来季のトッテナムをさらに強くするのではないかと思います。

3位 ロナルド・クーマン(サウサンプトン)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★★

前述したように、今季は戦力的には明らかにマイナススタート。シーズンが始まっても、ロメウとクラシはシュナイデルランの穴を埋めるには至らず、後半戦から加入したチャーリー・オースティンは1ゴールと期待外れ。フォースター不在時にゴールマウスをまかせたステケレンブルクは不安定で、11月から年始のノリッジ戦までを1勝1分5敗と大崩れしたセインツは、さすがに欧州には届かないのではないかと思われました。ところが、ミーティングに遅刻したマネを80分までベンチで反省させたノリッジ戦以降は、フォースターが戻ってきたこともあり、6試合連続クリーンシートと見事に復活。終盤はマネが大暴れして6位に食い込みました。選手に対する毅然とした対応、一貫性のある起用と采配には、サー・アレックス・ファーガソンの香りが漂います。

4位 スラヴェン・ビリッチ(ウェストハム)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★

こちらはパイェ、ランジーニ、オグボンナといった戦力的な積み上げが大きかったので、クーマン監督より下とさせていただきましたが、ビリッチ監督の1年めは素晴らしいシーズンだったと思います。アーセナル、マンチェスター・シティ、チェルシーを次々と破り、リヴァプールにはダブル。1勝1敗だったトッテナム以外の上位には負けなしと、大物食いでプレミアリーグを混乱に陥れた戦国時代の象徴でした。アラダイス監督の後を受け、攻撃的なスタイルにリニューアルした手腕はお見事。マイケル・アントニオの抜擢やアンディ・キャロルの復活など、チームにいい変化をもたらしながら、最後までテンションを下げることなく戦い抜きました。なぜ、強かった彼らが昇格組のボーンマスやワトフォードに負けたのか…。最終盤に力負けしてチャンピオンズリーグ出場権獲得を断念させられたマンチェスター・ユナイテッドサポーターからすると、謎です。

5位 ユルゲン・クロップ(リヴァプール)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★
やりくり力★★★

今季、いちばん評価が難しかった監督です。プレミアリーグだけを取れば、8位は満足いく結果ではありませんが、ヨーロッパリーグとキャピタルワンカップでチームをファイナルに導いたのは、大きな収穫でした。チームに新しいスピリッツを植え付け、エムレ・ジャンやミルナー、ララナを働きやすくし、フィルミーノの能力を引き出したチーム作りが素晴らしかった一方で、守備の不安定さはセビージャとの最後のゲームまで解決できませんでした。サンダーランド、サウサンプトン、ニューカッスルと、2-0から追いつかれたゲームが後半戦だけで3つもあり、これらを勝ちきっていればプレミアリーグ4位フィニッシュだったのが悔やまれます。オジョやスチュワートなどの若手が出てきてはいるのですが、デル・アリ、リンガード、イオビ、マイケル・アントニオのような主力化には至らなかったため、育成・登用の評価を高くできませんでした。オフシーズンからじっくりチームを創り、国内の大会に集中する来季に期待です。

この稿は長くなりますので、「しぶとかった中堅&昇格クラブ!プレミアリーグ2015-16・偏愛的監督ランキング【後篇】」に続きます。

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“抜きん出ていた上位3人!プレミアリーグ2015-16・偏愛的監督ランキング【前編】” への3件のフィードバック

  1. ヤンガナ大好き より:

    監督評価異論無しです。ボーンマスのハウ監督には個人的にかなり期待していたのですが残念な結果となってしまいました。来シーズン巻き返しを期待したい若手監督です!

    The guardianに移籍補強放出金の各チーム毎シーズン収支と結果比較が出ていましたが、ポチェッティーノのトットナムのみ収支プラス£6.7mで3位は本当に素晴らしいですね。正に育成とピンポイント補強の成果だと思います。また、クーマンのサウサンプトンも引き抜きに会いながら収支でプレミア2位の商売上手で6位フィニッシュは、育成も充実していて立派です。

    チーム編成の全権を握っているガナーズ ベンゲルさんには上記2チームを見習って、まずはピンポイント補強でお金を有効に使い、来期戦えるチーム変革に着手して欲しいです。それにしてもプレミアリーグの監督は各チームとも補強予算があるだけに結果を出すのが大変ですね。

  2. makoto より:

    ヤンガナ大好きさん>
    もっとクーマン監督をリスペクトしましょう!というパッションで書いたような記事です。上位を食いまくりましたからね…。年末に大崩れしていたとき、なぜかアーセナル戦だけ別世界の凄いサッカーを見せ、4-0で勝ったのは未だに不可解です(笑)。

  3. makoto より:

    前記されたランキングで見るとグイドリンが5位にいるのにクロップが5位になってるのですが……

    —–
    むむむさん>
    すみません。とっちらかってたようで。訂正させていただきました。ご指摘ありがとうございました。

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