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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

インタビューと現地記事から考察!「コンテ監督は、なぜ短期間でチームを変えられたのか?」【後篇】

「インタビューと現地記事から考察!「コンテ監督は、なぜ短期間でチームを変えられたのか?」【前篇】」より続きます。チェルシーの公式サイトが2回にわたって掲載した、コンテ監督の肉声を紹介する「The Weekend Interview」を読んで、私は以前に「サンデー・タイムズ」と「インディペンデント」が紹介したエピソードを思い出しました。「独占」と銘打った前者のスクープの見出しは「Abramovich backs Conte during lunch date」。2日後に後追いで記事をUPした後者は「Antonio Conte backed by Roman Abramovich to overhaul squad after three-day meeting」。両紙の共通項は、アブラモヴィッチオーナーがコンテ監督と数日間にわたる会談をしたこと、オーナーが指揮官にバックアップを約束したこと、チームの主力選手について見直す必要があると一致したことです。

2016年9月下旬。プレミアリーグでリヴァプールとアーセナルに連敗し、苦境に陥っていたイタリア人新監督とクラブのオーナーは、ランチを交えた3日連続のミーティングでチームの現状と今後についてディスカッションしたとのこと。「インディペンデント」の明快な表現を借りれば、彼らの話題は「プレミアリーグ優勝チームを解体し、抜本的に再建すること」でした。ロンドンのコプハムで行われたこの議論は、従来なら経営会議を開催していたオーナーが望んだもので、エンゴロ・カンテ以外に欲しい選手を獲れなかった新指揮官にアブラモヴィッチさんは理解を示していたようです。バチュアイはSDのエメナロ氏が連れてきた選手で、今となっては3-4-3の主軸となっているダヴィド・ルイスとマルコス・アロンソは、イタリアから連れて来れなかった選手の代わりとして何とか帳尻を合わせた補強でした。モウリーニョ時代に体を張って活躍していた主力は下り坂に入っているという見解は一致しており、イヴァノヴィッチ、ケーヒル、テリーらが放出候補に挙げられています。

さらにコンテ監督は、チェルシーのロッカールームはモウリーニョ元監督との確執によって発言力を増した選手が支配していると見ており、この問題はプレミアリーグで8位に落ちたことよりも根深いと主張したそうです。話のテーマが「改善」ではなく「解体」だったのは、オーナーと指揮官が「player-power culture」がチームの成長の阻害要因になっていると認識していたからでしょう。記事では、イヴァノヴィッチ、ケーヒルに加えてセスク、オスカル、マティッチの名前が並んでいます。2014-15シーズンには素晴らしいパスワークでプレミアリーグ優勝の立役者となった4番と、不動の右SBだった副キャプテンが最近になって出場機会を減らしているのは、戦術的理由に加えてチームマネジメント上の意図があるのかもしれません。

タブロイド紙が解任ゴシップに走っていたタイミングでの毅然とした「高級紙の逆襲」は、幾ばくかの推測はありながらも、大半は確かな情報に基づいて書かれているのだと思われます。少なくともアブラモヴィッチさんとコンテ監督の「アリバイ」は取れており、会談があった週末からコンテ監督の3-4-3がプレミアリーグを席巻し始めたのは事実です。スクープから6週間が経ち、その間のチェルシーはすべてクリーンシートでプレミアリーグ5連勝。ロングインタビューでの指揮官のコメントによれば、首脳陣はサッカーの中身だけでなく、チームコンセプト、組織のあり方、コミュニケーションまで含めた改革に着手しているのは明白です。1月には、夏に叶えられなかった補強・放出が施されるのではないでしょうか。チェルシーは、さらに変わります。アブラモヴィッチさんは、長期的にチームをまかせられる頼もしい監督に、ようやく出会えたのかもしれません。このたびのインタビューと以前の現地記事を重ねた私の最大の発見を言葉にすれば、こうなります。

「コンテ監督の3-4-3は、試行錯誤の末にたまたま掘り出した宝ではなく、当初より練り込まれた精緻なプランとハードワークによって導き出された”必然の着地”だった」

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“インタビューと現地記事から考察!「コンテ監督は、なぜ短期間でチームを変えられたのか?」【後篇】” への6件のフィードバック

  1. へんだーそん より:

    出来る男ですね。熱血とタフネスだけではないのですね。

  2. セオ より:

    なんとゆうか、恐怖が確信にかわる記事でした。
    グーナーとしては、一番きてほしくない監督、すなわちグレイトな監督こそコンテだったんだと、次に会うチェルシーこそ、本物のチェルシーなんだと思いました。
    連勝中のチェルシーの試合をハイライトですが見なおしました。こんなことしたことなかったですが、感想は一言、『強い』です。
    全盛期のモウリーニョのタイクツな強さとは違う、確かな強さとゆうか、とにかく強い。クルトワも楽しそうですし。

    監督の重要性を再確認しました。

    おもしろいです。楽しみです。

  3. パチ より:

    正直ユーロで補強も戦術構築にも出遅れるだろうなと思ってたので今シーズンは厳しいかなと思ってました。
    でも補強には出遅れたものの、戦術面ではさすがって感じですね…。343に落ち着く前から攻撃などはモウ時代に比べて連係で組織的に動くシーンが目立ってましたけど、それが343になって選手も入れ替えて更に攻守のバランスが良くなったって感じですね。
    ここに若手をどう入れ込んでいくかが楽しみです。

  4. そら より:

    ユーロで出遅れたのでコンテの思う補強、放出があまりできていない印象だったので冬からはコンテ好みのスカッドに変わっていきそうですね。後はやはり若手の定着が楽しみです。

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    チェルシーで三回リーグ優勝したモウリーニョのチェルシーをリスペクトしているのでタイクツで不確かな強さ(対比として確かな強さといういうならそういうことですよね)とか言うコメントが出てくると、モウリーニョコンプレックスもたいがいですね位は言いたくなります。失礼な発言ですが、最初に失礼なのはどっちだという。
    まあチェルシーは公式で認めるように最も成功した監督はモウリーニョなので比較は避けられないところがあります。コンテはどれだけそれに近づけるか。そう簡単ではないと思います。

  6. makoto より:

    へんだーそんさん>
    インタビューを読んでいて、ビジネスマンとしても優秀だなと思いました。オーナーをうまく巻き込み、中心選手を外して3-4-3にシフトするあたりは、やり手の執行役員のようです。

    セオさん>
    選手たちのテンションが上がってますよね。アザール、ペドロ、マルコス・アロンソ、ヴィクター・モーゼス、クルトワ、ダヴィド・ルイス…

    パチさん>
    若手もじわじわ組み込んでますよね。モウリーニョさんのときは、強いけどしんどそうに戦っているという印象(特に優勝したシーズンの後半戦)でしたが、今は明るいですね。

    そらさん>
    チャロバー、ロフタス=チーク、オラ・アイナ、ソランケですね。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    わかりやすい脅威、とおっしゃりたいだけだと思います。モウリーニョ監督のときは、試合展開によっては攻めさせてくれたので(ジェラードがスリップしたゲームの後半など)、ライバルチームのサポーターからすると、「勝てそうなのになぁ」「あと一歩だった…」という感覚が残ったりしたのです。滅法強かったのは間違いありません。

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