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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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残留は遠く及ばず…サンダーランドのデヴィッド・モイーズ監督が辞任!

プレミアリーグ開幕から10試合勝利なし、6勝6分26敗の勝ち点24は残留ラインに16も足りず。後半戦はわずか2勝で、本拠地スタジアム・オブ・ライトでの勝利はゼロ。TOP10に勝ったのはボーンマス戦のみ。29ゴールのうち、エースのジャーメイン・デフォーが15ゴールで、MFのゴールはハズリとエンドングが1本ずつ…。散々な数字しか残せず、辞任を申し出たサンダーランドのデヴィッド・モイーズ監督にポジティブに声をかけるとすれば、「GKのピックフォードは成長しましたね」ぐらいしか思いつきません。

負傷者が多かったのは事実です。キルヒホフ、マクネア、カッターモールはプレミアリーグ出場試合数が10に届かず、ワットモアは早々にシーズンを終えてしまいました。前半戦はボリーニが使えず、後半はジロポジがリタイア。多いときは10人を超える選手がベンチ入りさえできず、モイーズ監督は終始やりくりに追われました。しかし、「全員揃っていれば残留できたか」と問われても、うなずけないのも確かです。

夏に補強したドナルド・ラブ、マクネア、ヤヌザイ、アニチェベ、ピーナールと、冬のオヴィエド、ダロン・ギブソンは、いずれも指揮官の古巣であるエヴァートンとマンチェスター・ユナイテッドでプレイしていた選手ですが、峠を過ぎたベテランか伸び悩み中の面々ばかり。チェルシーでまったく出番がなかったジロポジ、リヴァプールでうまくいかなかったマンキージョ、マンチェスター・シティでプレミアリーグ出場ゼロのデナイエル、既に34歳になっていたレスコットも計算できる選手とはいえません。納得の新戦力はロリアンから来たエンドングぐらいで、獲りやすさで決めたかのような「トップクラブのお下がり補強」に、強化への情熱は感じられませんでした。

補強がままならなかったのは、指揮官の問題ではなく、クラブが財政的に逼迫していたからのようです。「サンダーランドは魅力的なクラブだと思っていたが、内情を知っていれば別の見方をしていた。私はプレミアリーグで指揮を執りたくてここに来たが、クラブに売却の可能性があるとは聞かされていなかった。夏に補強資金が少ないと思ったが、1月に使えるお金がないとは想像していなかった」。12月にモイーズ監督がこぼした愚痴に、就活の際の会社研究と面接時の質問が足りなかったのでは?といった意地悪な見方をする向きもあるかもしれませんが、私はこんなふうに受け取っていました。モイーズさんは、焦っていたのではないか。プレミアリーグで指揮を執って成功をおさめ、以前の自分を取り戻したいという気持ちが強く、クラブの状況を冷静に判断するというプロセスをスルーしたのではないか、と。

2002年の3月から2013年の夏まで。エヴァートンで過ごした10年2ヵ月という歳月は、サー・アレックス・ファーガソン、アーセン・ヴェンゲルに次ぐプレミアリーグ史上3番めの長さです。2004-05シーズンにクラブを4位に引き上げ、チャンピオンズリーグ出場権を獲得すると、2006-07シーズン以降はすべてTOP10フィニッシュ。この間、リーグ監督協会(LMA)の年間最優秀監督に3度選ばれており、「少ない予算をうまく活用してチームを強化できる監督」という評価が定着していました。

つまずきは、2013-14シーズン。サー・アレックスの後を受け、マンチェスター・ユナイテッドの監督に就任したモイーズ監督は、主力選手との確執もあって名門を7位に沈めてしまい、シーズン終了を待たずに解任されました。当時についてサポーターとしていえば、2014年2月9日のフラム戦で話題となった「80本のクロス」に代表されるようなクラシックなアタックや、選手間の距離があまりにも遠く連携がない中盤に未来への希望は感じられませんでした。2014-15シーズンには、クラブと自らの復活を賭けてレアル・ソシエダの監督に就任。降格ゾーンの19位にいたチームを12位に引き上げたときは、エヴァートン時代の再現かと期待を抱かせましたが、新シーズンに低迷して冬を待たずに解任。失意のなかで届いたプレミアリーグからのオファーは、輝いて見えたのではないでしょうか。

サンダーランドのエリス・ショートオーナーは、こんな表現でモイーズさんへの感謝を示していました。「降格を回避すべく懸命に働いたデイヴィッドは、違約金を受け取らずにクラブを去ると決断した。彼の誠実さの表れだ。今後の成功を祈りたい」。3度めの挫折を味わった指揮官は、クラブの財政を慮って権利を放棄したのでしょうか。いや、それだけではなかったのかもしれません。ここに成功はないと絶望した…。もしそうだとすれば、あまりにも哀しいエンディングです。モイーズ監督に、復活への道は開けるのか。まだ54歳。リタイアするには、若すぎます。

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“残留は遠く及ばず…サンダーランドのデヴィッド・モイーズ監督が辞任!” への3件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    モイーズ上手くいってませんね。レッズを追われたロジャーズとは好対照で何だか気の毒ですね。
    チャンピオンシップのチームを自分色に作り上げ、
    EPLにあがってくるパターンが向いていると思いんですけどね、、、。一度トップリーグで名門のコーチを経験すると難しいのですかね、、、。

  2. ホタ より:

    BBCの女性リポーターに暴力を振るいそうになる等、らしくない行動や言動が続き追い詰められていたとお察しします。
    就任後に逼迫した財政事情を告げられ、いわば梯子を外された形だったので失望も大きかったと思います。違約金を受け取らずの辞任は、後腐れ無くこの失意の時間にピリオドを打ついい方法だと思いました。

    近年の低迷で過去の業績を否定するかの様な記事もあり非常に淋しいですが、一度母国で再起を図るなどして、またプレミアリーグで指揮を取る姿が見たいですね。

  3. makoto より:

    Mackiさん>
    フラムとか、いいかもしれません。ひと皮向ければそれなりに強くなりそうで。

    ホタさん>
    賛成です。クリスタル・パレスやミドルズブラなど、ストロングポイントがありながらも課題が明確なチームをどうディレクションするのかを見せてもらえれば、やっぱり力のある監督だと再評価されたのではないかと思います。

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