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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ヴェンゲル監督「エジル獲得の手柄」で続投!?事実ならイングランドならではの評価基準…。

イギリスの悪名高きタブロイド紙(ほめ言葉です)「サン」「ミラー」がネタ元の記事ですので、そのつもりでお読みください。アーセナルが、アーセン・ヴェンゲル監督との契約を延長する方向で考えており、750万ポンド(約11億8000万円)の2年契約で交渉を始めようとしていると報じられました。ここから先は、にわかに信じがたく多分に怪しいのですが、件のイギリス紙たちは「エジル獲得時の活躍(?)を経営陣が評価」と伝えているそうです。

これについては、「他のポジションの補強失敗はどうなんだ」「そもそも、プレミアリーグ4位でいいのか」「”エジルが活躍したから”ならわかるが、獲得を評価するというのは違和感がある」とツッコミたくなる方もいらっしゃるかもしれません。私もこのニュースを読んだときは、手段が目的化しているようにみえて、何ともモヤモヤする話だと思いながら「イギリスのタブロイド紙のいうことを、いちいち気にするのはやめよう」と矛をおさめたものです。メディアはわかりやすくおもしろく伝えようとしますが、評価ポイントのなかには、チャンピオンズリーグへの連続出場なり、今後、優勝が狙えるマネージャーであるという評価なりがしっかり入っているはずです。

ひとつだけいうならば、「イングランドであれば、チームの成績より、補強や編成が評価されるケースもあるだろうな」とは思います。イタリアやスペインのように、現場の監督とチームを編成するディレクターの役割が分かれている国と違って、イングランドは監督の権限が大きいことで知られています。その仕事はまさに「マネージャー」で、ゲームや練習の指揮に加えて、チーム編成や選手、スタッフ人事にまで関与するのが普通です。最も仕事の幅が広かったであろうサー・アレックス・ファーガソンは、デヴィッド・ギルCEOとタッグを組み、二人三脚でチームのあらゆることを切り盛りしていました。多忙で大変ではあるものの、ダイナミズムがある仕事なのでしょう。モウリーニョ監督が、チームに口出しする人間の多さに辟易して「イングランドに戻りたい」といったのもうなずけます。ロンドンであれば、アブラモビッチオーナーの了解だけ取ればOKで、直線的で手数の少ないサッカーを好むポルトガル人監督にとって、そのサッカースタイル同様、「話が早い」のは最大の価値でしょうから。

ところで、ヴェンゲルさんのオファー報道にあった750万ポンドがどのくらい高額なのか、今年の3月に専門誌が発表した監督の年収ランキングに照らし合わせてみてみました。2012年のランキングは、11億円強という額は欧州全体で6位となります。約11億8000万円という設定は、微増しているようにみえますが、このところポンドが上がっているので、今季とイーブンとみていいでしょう。そうすると、うーん、4位は元金持ちクラブを辞任し、5位のリヴァプールの英雄は収入源がよくわからず、1位と2位は居場所が変わっても収入ダウンはなさそうで、しかしベップ・グアルディオラが2位あたりに割って入って(あれ?20億だと1位でしたっけ?)…。2013年ランキングでいえば、5位に相当するんでしょうね。モナコとマンチェスター・シティが、裏でありえないような大盤振る舞いをしてなければ。

■2012年 監督年収ランキング(フランス・フットボール誌発表)
1位 モウリーニョ(レアル・マドリード→現在チェルシー)   1400万ユーロ(約17億1000万円)
2位 アンチェロッティ(パリSG→現在レアル・マドリード)    1200万ユーロ(約14億7000万円)
3位 リッピ(広州恒大)                                         1100万ユーロ(約13億4000万円)
4位 ヒディンク(アンジ・マハチカラ→現在無所属)                1080万ユーロ(約13億2000万円)
5位 ダルグリッシュ(無所属)                1000万ユーロ(約12億2000万円)
6位 ヴェンゲル(アーセナル)                940万ユーロ(約11億4000万円)
7位 カペッロ(ロシア代表)                 920万ユーロ(約11億2000万円)
8位 マンチーニ(マンチェスター・シティ→現在無所属)    610万ユーロ(約7億5000万円)
8位 ファーガソン(マンチェスター・ユナイテッド→引退)   610万ユーロ(約7億5000万円)
8位 カマーチョ(中国代表→現在無所属)           610万ユーロ(約7億5000万円)

しかしこうしてみると、昨年のトップ10のうち、半数が現在、現場にいないのですね。いろいろ事情はあれど、栄枯盛衰、驕れるもの久しからずや、一寸先は闇のシビアな仕事です。若いガナーズサポーターのなかには「ファーガソンよりもらってたの!?自分の給料は高いのに、移籍金を値切って大物獲得しないのはどういうこと!?」と気色ばむ方もいるかもしれませんが、アーセナルの金庫に豊富な資金があり、この冬のFW獲得予算は4000万ポンドなどといっていられるのは、間違いなく優秀なフランス人マネージャーのおかげですので、ここは落ち着きましょう。解任を要求するシビアな声もあるようですが、私はヴェンゲル続投がいいと思います。これほど選手とのトラブルもなく(彼に批判的なコメントをした選手はジェルビーニョとナスリくらいでしょう。他にいます?)、安定的な結果を残し、経営にも貢献できる人はなかなかいませんから。

いま一度、冷静に見てください。アーセナルが最後の優勝を遂げてから10年めになりますが、その間にプレミアリーグを制覇したチームはマンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティ、チェルシーのみ。優勝監督のアンチェロッティ、マンチーニ、ファーガソン、モウリーニョは、全員2012年のトップ10に入っている監督なのです。上位10人のうち、5人が引退あるいは浪人中の今、「ヴェンゲル監督は世界で5本の指に入る監督である」といっても、そんなに的外れでもないでしょう。これが世界の相場観です。収入がすべてではないのは、重々承知のうえで。

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“ヴェンゲル監督「エジル獲得の手柄」で続投!?事実ならイングランドならではの評価基準…。” への2件のフィードバック

  1. 福岡 より:

    いつも楽しく見させてもらっています。

    ナスリはアーセナルというチームのあり方を批判したまでで、ヴェンゲルには感謝の言葉を述べていますよ(^-^) 他にはラサナ・ディアラとかですかね?

  2. makoto より:

    福岡さん>
    確かに、ナスリは、ヴェンゲル監督には「恩を忘れない」と感謝を口にしていますね。ただ、出ていくときも出ていってからも「タイトルを獲ろうとしていない」と再三いっており、私のなかでは、一時的にヴェンゲル監督に対しても感情的になっていた印象があったのかもしれません。ディアラは、なるほど、そうでしたね。彼はゲームに出られないことにイラ立ってしまったんですね。…しかし、あれだけ長期間チームを率いていて、この程度しか批判されていないのは驚異的です。ファーガソンさんは、その間、何人と袂を分かったことか。やはり、素晴らしい人物で、器の大きい監督だと思います。

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