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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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厳しい状況に耐え、結果を残した忘れえぬ名将。マウリシオ・ポチェッティーノ、解任。

Tottenham sack manager Mauricio Pochettino after five years in charge(BBC)」。彼の最後が、「sack」という言葉で語られることになるとは…。マウリシオ・ポチェッティーノ、解任。エスパニョールとサウサンプトンで指揮を執った後、2014年5月にノースロンドンにやってきた若きマネージャーは、スパーズの黄金時代を築き上げた功労者です。初年度にプレミアリーグ5位&キャピタルワンカップ準優勝という結果を残し、2015-16シーズンからは4年連続でTOP4フィニッシュ。ハリー・ケイン、ライアン・メイソン、エリック・ダイアー、ベン・デイヴィス、デル・アリ、キーラン・トリッピアー、ハリー・ウィンクスといった若い選手たちをブレイクさせ、予算が少ないクラブをビッグクラブと伍するレベルに磨き上げました。

2018-19シーズンには、チャンピオンズリーグでファイナル進出。リヴァプールに2-0で敗れた後、「この舞台に戻ってきたい」と語った指揮官は、トロフィーを手にすることはついぞなきまま、クラブを去ることになりました。12節のシェフィールド・ユナイテッド戦をドローで終え、3勝5分4敗でプレミアリーグ14位に転落。直後に、「ポチェッティーノの統治の終焉」と題したレポートを書いたのですが、そこで想像していたのは「今季限りで退任」でした。思いのほか早かった、王国の終わり。「テレグラフ」が後任探しが始まっていると伝え、「デイリー・メール」は極めて危険な状況と報じていたのですが、これほどあっけない幕切れがやってくるとは思いませんでした。

「われわれは、この変更に対して消極的でした。ボードが軽率に決めたわけでも、拙速に判断したわけでもありません。昨シーズンの終わりと今季の立ち上がりの結果にがっかりしていました。ボードは難しいジャッジを強いられました。マウリシオと彼のコーチングスタッフとの思い出深い瞬間を考えると、困難な決定でしたが、クラブの利益を最大にするためにそうせざるをえませんでした」(ダニエル・レヴィ)

やり手の会長は、1年半前の指揮官の進言を覚えているでしょうか。「The inside story of Mauricio Pochettino’s Spurs downfall(マウリシオ・ポチェッティーノのスパーズにおける没落のインサイドストーリー)」と題したレポートを配信した「テレグラフ」は、2017-18シーズンの終わりに、ポチェッティーノ監督は既にチームの陳腐化と個々のパフォーマンスの低下を感じており、再構築の必要性を理解していたと振り返っています。

「彼らが私に同意するかどうかはわからないが、新しいプロジェクトを設計するために、話し合う必要がある。小さな予算でトロフィーを獲得したとしても、世界で最も賢いとは思えない。現実は違うと考えなければならない。この状況は、クラブが勇敢にリスクを取る必要がある。ビッグクラブに近づきたいなら、ビッグクラブの考え方を取り入れなければならない」(マウリシオ・ポチェッティーノ/2018年5月)

新しい契約の締結を拒否していたトビー・アルデルヴァイレルト、ヤン・フェルトンゲン、ダニー・ローズ、さらにはクリスティアン・エリクセンも売り時だと感じていたポチェッティーノ監督に対して、レヴィ会長の答えは「売却も補強もゼロ」でした。ハリー・ケインと新契約を締結することで現場の責任者を宥めた会長に、警告が繰り返されましたが、方針は変わらず。新スタジアムの完成が大幅に遅延するという難しい環境で、チャンピオンズリーグ決勝進出という快挙を成し遂げた名将に、最後の夏も望んだ答えは返ってきませんでした。売りたかった選手は誰も去らず、新戦力は3人に留まりました。

「ポチェッティーノ監督自身が、トレーニングのフィールドに関与しなくなっていた」「選手は終わりの始まりを予感し、コミットメントが低下していた」「勧告に対して指揮官が自ら立ち去ろうとしなかったため、クラブは解任せざるをえなかった」。イギリスメディアが紹介するインサイドストーリーが概ね事実だとすれば、このタイミング、この結論しかなかったのでしょう。いやー、悔しい。悔しいです。クラブからの難しいオーダーをすべて吞み込み、最高の結果を残した名将の苦闘を心に刻んでおこうと思います。

ありがとう、ポチェッティーノ。あなたが築き上げたスパーズは、プレミアリーグを見続けてきたなかで、最高のチームのひとつでした。マンチェスター・シティやアヤックスと繰り広げた激闘を忘れることはないでしょう。次のステージでは、ぜひトロフィーを手にしていただければと願っています。未だ終わりが実感できません。週末のオリンピックスタジアムのベンチに、泰然としたその姿があるような気がしてなりません

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“厳しい状況に耐え、結果を残した忘れえぬ名将。マウリシオ・ポチェッティーノ、解任。” への17件のフィードバック

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    数時間前にそのニュースをTwitter公式アカウントで見た時、自分は寝ぼけているのだと思ってしまいました。今でもまだ信じられません。
    ポチェこそ私にとっては世界最高の監督です…彼がトロフィーを掲げるのを見たかったですしまた嬉し泣きするのを見たかった。
    ただただ感謝しかありません。
    “he’s magic you know, Mauricio Pochettino!”

  2. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    レッズサポの私ですが、ポチェッティーノは良い監督だったと思います。スパーズとのヒリヒリするゲームをすることができたのは彼が監督としてチームを変えたからでしょう。シーズン終了まで任せると思っていました。うーんどうなんでしょうか、、、。クラブには色々な考えがあっての決断でしょうから、、、。残念です。今後が気になりますが次はどこでチームを率いるのでしょうか。名監督でした。まずはお疲れ様でした。

  3. GSM より:

    ポチェは引く手数多でしょう!
    これから、ビッグクラブによる争奪戦が始まるのではないでしょうか?

    どちらかというと、これから大変なのはスパーズだと思います。
    少ない予算の中、若手選手を成長させCLファイナルまで導いた監督と同等、もしくはそれ以上のことが求められる監督が簡単に見つかるとは思えません。
    後任の選定は注目ですね!

  4. アン より:

    意外でした。後任探しはかなり難しいミッションになりそうですね。

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    少なくとも経営陣は今シーズンは我慢してくれると思ってました。
    リーグ戦で勝ったのがいつか思い出せないほど今シーズンのパフォーマンスは悪く見ているのが辛かったです。
    それでもSackなんて言葉を見ることになるとは想像できませんでした…
    彼がいなくなってしまうことを受け入れられない状況ですが、この判断が正しかったと言えるように、次期監督に期待するしかありません(モウリーニョには不安しかありません)。
    とにかく、ポチェッティーノには感謝しかありません。ユースの選手を積極的に活用しつつ、クラブのレベルを、遥か高いところまで高めてくれました。
    また少ししたら帰ってきてくれると願ってます

    —–
    ポチェッティーノのスパーズは強敵でした。
    アーセナルに来ないかなぁ。

  6. プレミアリーグ大好き! より:

    ユナイテッドに来てほしい

  7. アイク より:

    更新ありがとうございます。
    マジですか…!!スパーズの指揮官で居続けるために設定されたハードルの高さに絶句しますね。
    レヴィ会長も1ヶ月前に、プラン通りの改革を成し遂げられなかった、と認めたばかりだったので、決断のスピードにショックを受けています。
    彼を欲しがるチームはPL内、というかロンドンにもいる気がしますが、ポチェ・スパーズにトロフィーをと願っていたので悔いが残ります。

  8. プレミアリーグ大好き! より:

    次の夏に望んだ補強をさせて言い訳できないところで勝負させて欲しかったです
    この夏の微妙すぎる補強でチグハグな状態のまま解任は間違いなくこのクラブにおけるレジェンドとなりえる監督に対して酷すぎる仕打ちだと思います

  9. 京都一のMUFCファン より:

    是非マンチェスターユナイテッドに!!

  10. プレミアリーグ大好き! より:

    中堅クラブだったスパーズをこの6年で強豪の一角にまで押し上げた手腕は見事としかいえません。
    ただ、多くのスパーズの選手の契約延長が進まなかったのはタイトルが一つも取れなかったというところにも原因があるのかなと思います。
    昨シーズンのCLでリバプールに勝てていれば、まだまだポチェ政権が続いていたと思うので残念です。

  11. やす より:

    モウリーニョに、違約金を払い続けている、ユナイテッドが、会長をそそのかして、
    「ポチェテーノを解任しても、来年、ユナイテッドが引き取るので、違約金は発生しない。」ということで、妥結したのでしょう。

    —–
    ユナイテッドはオーレと3年契約の1年目…
    タイミング悪いなぁ。
    取りに行くとモウとオーレの違約金ダブルで払うのかな。
    財政状況下降気味みたいだし、どうするんだろ

  12. やす より:

    って言ってたらモウのスパーズ就任が決まった

  13. アイク より:

    二度驚きました。
    若くてよく走るスパーズにハードマネジメントのモウリーニョ…彼のPLへの帰還は嬉しいですがこの組み合わせでいいのか。勝者のメンタリティー注入が狙いでしょうか。

  14. xof ybot より:

    幸せなお別れ…ではないのかもしれませんが、100年後からスパーズを振り返った時、ポチェッティーノの名前は確実にクラブを変革し爆発的に進化させたコーチとして残っていると思います。ユースチームの可能性、3バックの可能性、レスターとの優勝争いや夢の舞台での逆転劇
    どれも楽しく、そして悔しい記憶です。もっと彼のチームに夢を見させて欲しかった、と言うのが本音ですが、経営ボードも、そしてもちろんレヴィも、夢ばかり見る人ではないというのは分かっていたことです。
    彼の新天地が決まって、応援できるチームが増えたと強がりを言えるようにまずはスパーズの応援に徹したいですね

  15. mw より:

    外野の意見で申し訳ないですが、スパーズはレヴィがボトルネックってのを感じる。
    だからレヴィが今のやり方を続けるのであれば、モウリーニョもとっとといなくなるような気がしてならない
    ポチェを引くまで、チーム強化、監督選びは失敗続きだったわけだし(レドナップとかいたころ、既にレヴィでしたっけ?)
    逆にポチェがユナイテッドに行くのであれば、滅茶苦茶怖いなと思っていたのですが、スールシャールって今3年契約の1年目なのか…。
    プレミアリーグのファンとしてはポチェがいなくなるのは寂しいですが、贔屓のクラブを思うと、バイエルンあたりに行ってほしい気もする。

  16. 千兵衛 より:

    モウリーニョですか…。

    ここのところ、さしたる補強も若手の
    躍進も見られず、現有戦力での引き上
    げだけを図るなら良いオプションかも。

    けれど、モウもプロフェッショナルと
    言うか、節操がないと言うか…(笑)。

  17. かーど より:

    スパーズのレヴィ会長のドケチぶりをモウリーニョは知ってるわけだし、会長もモウリーニョの積極的補強かつ即戦力を欲しがるのを知ってるのにこうなるとは…
    だがそれでもモウリーニョはブンデスのシャルケの監督を断ったように勝算のある仕事じゃないと受けたがらないからスパーズの現有戦力に活路を見出してるんだと思う

    フットボールと無縁の生活を楽しめないと語って闘志を燃やしてたスペシャルワンの逆襲には期待してる

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