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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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プレミアリーグは難しい?「ペップ元年」に待ち構える4つの落とし穴

「ペップは、仕事に対して素晴らしい倫理観を持っている。あらゆるトレーニングに意図的に取り組む偉大なコーチであることに疑いはない。しかし、イングランドのサッカーは難しい。マン・シティはペップ獲得という変革を選んだが、過去にイングランドに来た外国人監督を思い浮かべればその難しさはわかるだろう。アーセン・ヴェンゲルも、ジョゼ・モウリーニョもプレミアリーグで戦い始めて間もなく口にしていたことだ」
「私の頃も、チェルシーにジョゼがやってきた。彼は最初の2年間でチームを構築しなければならず、私はその挑戦を受けた。その図式はマン・シティにも当てはまるはずだ。チーム構築の段階でアーセナルやリヴァプールなどの強豪クラブに挑戦しなければならない。彼らは野心を持っているだろうが、それだけでプレミアリーグ制覇を成し遂げられる保証はない」

イギリスメディア「スカイスポーツ」のインタビューで、サー・アレックス・ファーガソンが、マンチェスター・シティの監督に就任するペップ・グアルディオラに対してアラームを鳴らしました。大方の識者が「ペップはプレミアリーグでも成功する」といっているように、私もマン・シティは格段に強くなると予想しており、いずれは欧州を制するのではないかと期待しています。ただし、それらは「いずれ」。初年度は、思いのほか苦労するのではないかとも思います。その理由は、4点。「自国代表が脆弱」「タイトな日程」「選手の高齢化」「若手の伸び悩み」です。

バルセロナには、シャビ、イニエスタ、プジョル、ピケ、ブスケツ。バイエルンはトマス・ミュラー、ラーム、ノイアー、シュヴァインシュタイガー、ボアテング。ペップが率いていたクラブは、どちらもワールドカップを勝った世界王者の代表の主力が数多く所属していたクラブです。優秀なベースの上に、メッシやアンリ、イヴラヒモヴィッチ、ロッベン、レヴァンドフスキといった決定力のある選手が絡み、強力な王国を築いていたわけですが、今のマンチェスター・シティはどうでしょうか。そもそもイングランド代表は、世界一どころか5本の指からはこぼれるレベルで、しかもマン・シティにいる主力選手はジョー・ハートのみ。スターリングは、なくてはならない選手といわれるには経験が必要です。ホームグロウンルールがあるなか、ペップはどこまで基盤を強くすることができるでしょうか。外国から連れてきた即戦力ばかりでは、層を厚くするのは難しいのではないかと思われます。

そしてまた、プレミアリーグ特有のタイトなスケジュールにペップは苦しめられるでしょう。これについては、ひと足先に激戦のリーグにやってきたクロップ監督に語っていただきましょう。

「経験豊富なグアルディオラに、私が何かをいうべきではないと思う。ただし、ドイツとイングランドでは試合数に大きな違いがあるとはいえるね。私はここにくるまで、キャピタルワンカップが準決勝から2試合戦うなんて知らなかったよ。FAカップがドローに終わったら再試合となることに、ドイツではみんな驚いている。普通は延長戦とPKだからね」(ユルゲン・クロップ)

グアルディオラ監督は、2季連続でヴェンゲル監督も黙り込みそうなほどの大量の負傷者を出しており、昨季はその影響もあってチャンピオンズリーグで敗退。今季は年末に元気な選手が14人、2月にはCBがひとりもいなくなるというピンチに陥っています。ドイツの専門家に「トレーニングが間違っているのではないか」とまでいわれた状態を、プレミアリーグで再現してしまえば…。中堅クラブに資金力があるプレミアリーグでは、「WBAだからメンバー落としても大丈夫」「ボーンマス戦は2点奪ったら後半は落とそう」などと簡単にまわせるゲームはありません。ペップがチームを欧州のトップレベルに引き上げられたとしても、その余裕ができるのは2年め以降でしょう。

サニャ33歳、ヤヤ・トゥレも5月には33歳。サバレタ、コラロフ、クリシー、ヘスス・ナバス、フェルナンジーニョは全員今年で31歳。ダヴィド・シルヴァは1月に、コンパニは来週30歳。デミチェリスとカバジェロまで入れたら30代だけでチームが創れる「選手の高齢化」は、ペップが改革スピードを早めて混乱を招くリスクを高めていると思われます。片側で若手が台頭してくれていればいいのですが、23歳以下で3試合以上出ているのはスターリングとイヘアナチョのみ。トッテナムからはデル・アリ、ハリー・ケイン、エリック・ダイアー、ベン・デイヴィスが出てきており、アーセナルはベジェリン、チェンバレン、イオビ、エルネニー、ジョエル・キャンベル。ライバルクラブと比べて若手が少ない極端なメンバー構成は、新戦力を補充しないと選手の成長によるレベルアップ余地が短期的には小さいことを示しています。

ペップ・グアルディオラがこの夏立つスタートラインは、既に彼にとって過去最大のピンチなのではないでしょうか。ペジェグリーニ政権におけるいちばん大きな負の遺産は、保守的で変化に乏しく、主力選手が歳を重ねていくことに先んじて手を打ちきれなかったことでしょう。このうえ、今季のプレミアリーグでチャンピオンズリーグ出場権を逃そうものなら、補強によるチーム改革はさらにお金と時間がかかるものになります。

実は、冒頭に挙げた「4つの落とし穴」は、サー・アレックス・ファーガソンが引退した2013年の夏のマンチェスター・ユナイテッドと見事に符合します。「ライバルクラブでバトンタッチに失敗した前任者」の警告は、われわれが想像するよりも重い言葉なのかもしれません。

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“プレミアリーグは難しい?「ペップ元年」に待ち構える4つの落とし穴” への7件のフィードバック

  1. Davinci より:

    初めてコメントします。私も多くの識者の意見に反しペップは最初は苦戦すると思います。スペインやドイツに比べライバルが多い事、ベースとなる選手が高齢な事など。圧倒的な強さを披露するのは2期目以降ではないでしょうか。

  2. グローリーグローリー より:

    確かに落とし穴の状況は当時のユナイテッドに似ている部分がありますね。ただシティーの場合は後を継ぐのが中型免許しか持ってないモイーズでなく、バスでも飛行機でもなんでも運転できちゃうペップですし、なによりトップのビジョンもユナイテッドよりしっかりしてます。夏の市場で欠陥部分を修復できるような補強ができれば上手くいくんじゃないですかね

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    テアシュテーゲンを取ったらハートまでいなくなってしまうのでしょうか。
    せっかくスターリングにあそこまでの(無駄な)大金を払ったのに笑

  4. ガナユ より:

    ワールドカップメンバーがいるから勝てたとたまに言われてますけど、これで若返りを促しつつシティのメンバーで勝てばいよいよペップには下手な批判は出来なくなりますね(笑)
    プレミアで言われているリーグで手が抜けない、日程の厳しさをペップシティがどう切り抜けていくか今から楽しみですしょうがないです
    …シティCL逃しても来ますよね…!?

  5. シティふぁん より:

    何位なら失敗なんですかね
    優勝以外失敗と言われそうな気がします
    来季のことがとても気になりますが
    今季CL権をどうかとって欲しいですね

  6. FDN より:

    プレミアのタイトなスケジュールも然り今夏はユーロもコパもありますし、チーム作りには相当苦戦するかもしれませんね。それを圧倒的な個の補強で解決するのは面白くありません、ペップには是非現有戦力プラスαでの最適解の早急な構築を見つけてもらってプレミアや自国代表への影響を与えるような掌返しな手腕に期待です。

    勿論苦戦して欲しい他チームサポの意地悪な期待ですけども…笑

  7. makoto より:

    Davinciさん>
    ありがとうございます。バイエルンを見てしまうと、結構選手を入れ替えないと厳しそうですよね。

    グローリーグローリーさん>
    そうですね。夏にどこまで戦力が整うかで違ってくると思います。ケガ人多発が、最大のリスクかもしれません。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    ジョー・ハートはペップ好みではなさそう…とは思いますが、シュテーゲン獲得に走れば出ていきそうですよね。スターリングは、移籍金が高かったゆえに期待を下回っている感は強いですが、無駄というのはまだ早いのではないかと思います。

    ガナユさん>
    おっしゃるとおりです。初年度からいけるかどうか、ですね。CL逃してもくるでしょう。

    シティふぁんさん>
    チェルシー復帰後のモウリーニョさん同様、「初年度でCL権確保しながら構築して2年めでタイトル」なら文句は出ないのではないでしょうか。

    FDNさん>
    「その発想はなかった!」というような大胆コンバートとか、楽しみですよね。CBフェルナンジーニョ、セントラルMFサバレタ、デブライネとアグエロの2トップ…すみません、少し悪ノリしました。

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