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6戦勝利なしはペップのワースト…どこが変わった!?マンチェスター・シティ、不振の理由を考える

プレミアリーグ開幕戦で、ラスト3分のオウンゴールというきわどい展開になりながらもサンダーランドに勝ってから、破竹の公式戦10連勝。やはりペップは世界一と、ライバルチームのファンや他クラブ優勝予想の評論家が匙を投げかけると、今度は誰もが驚く6試合勝利なしというスランプに突入。バルセロナとバイエルンで勝ち続けたスペイン人指揮官にとって、6戦の沈黙はワーストだそうです。マンチェスター・シティに、何が起こったのでしょうか。勝った10試合と勝ち点を落とした6試合について、どんな変化があるのか、復活するためには何が必要なのかを探ってみたいと思います。まずは、1-0で敗れたEFLカップのマンチェスター・ダービーの試合後会見で、指揮官が残したコメントをチェックしましょう。

「われわれが今やっていることは、10連勝していた時と何も変わらない。スランプは誰の身にも起こりえる。みんな、私が魔法の杖を持っていると思っているようだけど、サッカーにそんなものはないね。どんなチームにも、いい時期と悪い時期がある。自分のやり方を変えるつもりはない」(ペップ・グアルディオラ)

何も変わらない…。現場が取り組んでいることについては、そうだとしても、連勝中とその後では、数字は大きく変わっています。マンチェスター・シティは、ゴールを奪えなくなりました。最初の10試合は30ゴール。チャンピオンズリーグでセルチック相手に集中力を欠いて3-3と引き分けると、その後の5試合はわずか2ゴール。10連勝中は必ず先にゴールを決めていたチームは、勝てなかった6試合すべてで先制点を許しています。いちばん大きいのは、今季からモデルチェンジした「走るサッカー」による疲労の蓄積ではないでしょうか。開幕から7試合9ゴールと「アグエロ無双」状態だったエースの足が止まりました。CLのバルサ戦とEFLカップでエースを外したペップは、表向きには戦術的理由としかいいませんが、アグエロを休ませたいと考えていたのではないかと思います。セルティック戦とトッテナム戦で、いいところがなかったストライカーは、チームとともに6戦ゴールなし。最近は、ミッドウィークのゲームでは極力使わないと決めているようにみえます。

変わったのは前線だけではありません。プレミアリーグ6節のスウォンジー戦でハムストリングを負傷したデブライネは、先週末のサウサンプトン戦ではふくらはぎを痛めて前半で交代。チームがスランプに陥った6試合中3試合を欠場しており、マン・シティは決定的なラストパスと正確なミドルシュートを失いました。昨季はエヴァートンで伸び悩んでいたジョン・ストーンズは、マン・シティに移籍してからは読みのよさと前線への効果的なフィードでポテンシャルの高さを発揮していたものの、ここにきてミスが目立つようになっています。疲労からか、負傷やミスが頻発するようになったプレミアリーグ首位チームは、前線からの激しいプレスをかけられなくなる試合が増えました。敵陣でボールを奪い、ショートカウンターでゴールを決めるのがひとつの勝ちパターンだったチームがその武器を失えば、おのずとゴールが減り、リードする機会がなくなったことでカウンターからのチャンスメイクも激減します。直近5試合のうち3試合をスコアレスで終えているのは、攻撃そのものよりも守り方に問題があるのだと思われます。

こうした状況とペップの言葉を重ね合わせれば、「やっていることは変わらないが、主力の負傷やコンディション不良でクオリティが落ちてしまった」ということになります。これが妥当だとすれば、アグエロ、デブライネ、ジョン・ストーンズ、コンパニらが元気になれば、背骨が弱ったチームは再び強くなるわけですが、ペップの最大のリスクがこのことに内包されているのではないかと思います。バイエルン時代には変幻自在なフォーメーション変更で相手のチャンスの芽をつぶし続けていた名将の引き出しには、新しいチームにおけるオプションが未だ入っていないのです。

おそらく、ここまでの3ヵ月半では「激しいプレス」「奪われた直後に奪い返す」「ダイレクトパスを駆使してマークを散らす」「直線的なショートカウンター」「サイドからの速い崩し」といったコンセプトや戦術を明確にして基本形を植え付け、3バックと4バックの守り方をインストールするのが精一杯だったのでしょう。2つのフォーメーション以外の戦い方と、攻撃におけるオプションは手つかずで、「先制されると取り返せない」のは、相手の弱点を突く戦術変更ができないからではないでしょうか。EFLカップのマンチェスター・ダービーは、衝撃的でした。ターンオーバーでメンバーを落としていたのは確かですが、後半開始からのマンチェスター・ユナイテッドの猛攻に対して、ペップは対抗策を打ち出すことなく敗れてしまいました。選手交代に頼らずとも、中盤の選手を下げて対応したり、左右の選手の入れ替えるなど、今までのペップなら何らかの手を打って危機を回避しようとしていたはずです。このチームは発展途上なのだと、あらためて感じさせるゲームでした。

「リスク」と書きましたが、今回の不振を脱した後の次の正念場は、リヴァプールとアーセナルが待つ年末だと思います。スケジュールがタイトなプレミアリーグを初めて体験するペップが、この時期に負傷者やコンディション不良の選手を大量に出せば、2度めの勝てない時期を迎える可能性は充分です。サブの選手のクオリティを高めるのか、相手によってフォーメーションや戦術を変える彼らしい戦い方を実現させるのか。時間がないペップにとって、ここからの2ヵ月は初年度の最終結果を左右する重要な時期になりそうです。

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“6戦勝利なしはペップのワースト…どこが変わった!?マンチェスター・シティ、不振の理由を考える” への3件のフィードバック

  1. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。

    私もペップの就任でどうせ今季はシティが優勝だろうと匙をなげたレッズファンの一人でした 笑。
    素直にバルサ、バイエルンでのペップサッカーに魅了された一人でPLでペップをみれる幸福とレッズの悲願であるPL制覇が遠のくのではという相反する感情にモヤモヤしたシーズン前でしたので、10月の出来事はとても驚いています。
    クロップ監督も昨季は苦労しましたが、プレシーズンのあるなしは大きいこと、もともとのシティの戦力からそこまで苦戦しないだろうと思いました。
    私としてはペップが掲げる走るポゼッションサッカーに加えて戦術理解度を求めすぎることが選手の疲労と判断を鈍らせているのではと思います。
    明らかに10月になってからの試合は選手の動きが鈍く、意図はわかるが体がついていかないといった状況が増えた気がします。
    ただ確固たるスタイルをインストールしている段階であることは垣間見えるため、時間が解決する気もします。
    ただ心配は怪我人ですよね・・・。
    レッズとしては今のうちにマージンをつくるもしくは喰らいついたまま年末の直接対決といきたいところです。

  2. シティふぁん より:

    バルサやバイエルンでは対戦相手との差が が大きいことが多く、バルサやバイエルンと比べると選手の質が劣ります
    取られたらすぐにとるサッカーは素晴らしいですが
    大抵前半しか持たず疲労がたまってここ最近ではデブライネやシルバさえミスも多いです
    シティは年齢層が高かっただけに若手起用も積極的ですし今季はCL権獲得さえすればまあ良いでしょう

  3. makoto より:

    nyonsukeさん>
    負傷者と年末が懸念ですね。バイエルンでは、シーズンに複数回、大量負傷者によるメンバー不足に悩まされていましたので。5~6人いなくなれば、相当苦労しそうです。

    シティふぁんさん>
    「勝ち続けながら世代交代」をどううまくやるか、ですね。ペジェグリーニさんよりはシャープかつ大胆にやってくれそうですが。

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