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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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「マン・ユナイテッドには創造力とリスクが足りない」スコールズVSファン・ハール、論争の結果は…⁉

先月末にポール・スコールズ、 そして9日にはドワイト・ヨークと、マンチェスター・ユナイテッドの2人のレジェンドが、現在プレミアリーグで3位のクラブに対して「クリエイティブではない。リスクをとらない」と批判しました。ファン・ハール監督のサッカーはつまらないとよくいわれておりましたが、9月の6試合は、敗れたPSV戦を除くすべてのゲームで2点以上を決めており、プレミアリーグではリヴァプール、セインツ、サンダーランドと3試合連続で3ゴールでした。この頃のチームは、多彩なパスで攻撃を牽引していたマタや新加入のマルシアルがうまく機能しており、今季はプレミアリーグ優勝を狙えるのではないかと期待が膨らんだものでした。

おかしくなり始めたのは、アーセナルに3-0で完敗した10月頭からです。次のエヴァートンには0-3で勝ったものの、シュート数は相手より少ない10本。CSKAモスクワとのアウェイ戦に1-1で引き分け、両者とも最終盤まで枠内シュートが打てなかったシブすぎるマンチェスターダービーはスコアレスドロー。ここから5試合連続クリーンシートながら、ゴールも3つしかない貧攻地獄にはまりました。スコールズが批判的なコメントを寄せたのは、キャピタルワンカップでミドルスブラにPK戦で負けた後です。チャンピオンシップのクラブと120分戦って1点も獲れなかったチームを見て、BBC解説者は笑って流すわけにはいかなかったようです。

「このチームは守備面では見事に訓練されており、ゴールもボールも与えない。これはいいことだ。タイトで組織化されている彼らは、対戦したくない相手だろうと思う。 そしてまた、おそらく誰もがどちらのチームでも戦いたくないだろう。マンチェスター・ユナイテッドは創造力とプレイの中でのリスクを欠いている。 ファン・ハールは、選手を鼓舞してゴールを奪おうとは思わないようだ。私は、このなかでプレイしていても楽しめない」(ポール・スコールズ)

この発言のポイントは、スコールズさんはファン・ハールさんが今まで積み上げてきたものを否定しておらず、あくまでも建設的に「足りないこと」を指摘するにとどまっていることだと思います。後に「誰もこのようなサッカーは観たくないのではないか」と語ったドワイト・ヨーク発言のほうも、趣旨は同じです。

「誰もがリスクをおかさなければならない。それは常にいいことであり、いい戦略となる。ボールを持つことができてもそれだけでは足りず、チャンスを創って観客を興奮させなければならない。 結局、エンターテインメント産業だからね。かつてのマンチェスター・ユナイテッドはすべてが刺激的だった」(ドワイト・ヨーク)

2つとも前向きで寛容な意見ではあったものの、ところどころ言葉がキャッチーすぎて、「ここでプレイしても私は楽しめない」などという批判的な言い回しがひとり歩きしてしまいました。それでもファン・ハールさんは、守備についてはリスペクトしてくれているフェアなコメントの意を汲んで、軽く流しておけばよかったのだと思われますが、ときどき変なスイッチが入る指揮官はスコールズさんに食ってかかり、話をおもしろくしてしまいました。

「彼には責任がない。だから何でもいえる。彼は何のためにいったのだろう?クラブの利益か、あるいは彼自身の利益か? 私は彼の意見に同意できない。私はいつだってリスクをおかすからだ。自分を守りたくていっているのではない。…彼はレジェンドで、多くの共感をえていると聞いた。 ならば意見は監督である私や、ライアン・ギグス、エド・ウッドワード(CEO)にいわなければならない。ところが彼は、BBCやスカイから給料をもらっているから、そちらで話さなければならないんだ。スコールズはチームを『つまらない』といい、新聞には退屈だと書かれているが、 ユナイテッドは常におもしろいと思う。われわれよりも多くの観客を集めているスタジアムは他にはない」(ファン・ハール)

うーん、幼稚な反論になってしまいましたね。ファン・ハールさんはこの後も、「観客がアタック、アタックと叫ぶのはスコールズが煽ったからだ」と八つ当たり気味の発言をしておりましたが、これについては、「3-0にしてくれたら誰も何もいいませんから」となだめて終わりにしたいところです。さて、論争というほど大したものではないかもしれませんが、この応酬、どちらの肩を持ちましょうか。

私は、厳しいながらも的確なツッコミを入れてくれたスコールズさんと、ぼやきながらも目に見える改善を施したファン・ハールさんの両方をリスペクトしたいと思っております。マンチェスターダービーと、直後の「負けに等しい」0-0だったクリスタル・パレス戦のシュート数は6本、5本だったのですが、スコールズ発言から4日後のCSKAモスクワ戦と、2-0で勝ったWBA戦は13本、15本。連勝を飾ったファン・ハール監督のチームは、シュートを打とうという意識が明確に向上していました。ファン・ハールさんがムキになったのは、自らも気にしていた痛いところを突かれたからでしょう。この監督は、頑固ではあるものの、課題を的確に捉える力と改善のアイデアをしっかり持っている実力者だと思います。

「やればできるじゃないですか、このうえは3点、4点とガンガンいっときましょう」と、次戦以降のプレミアリーグやグループリーグ突破がかかったチャンピオンズリーグのPSV戦に期待して、この話は幕を引きたいと思います。ルーク・ショーやバレンシアの長期離脱、昨夜のキャリックの負傷と攻撃力があるタレントを次々と失い、ポール・マーソン氏には「ドローの連続でプレミアリーグ4位を逃す」といわれたマンチェスター・ユナイテッドは、今こそ攻撃陣の立て直しが必要な時期です。適切な外圧なら、ときどきあったほうがいいということですね。スコールズさん、タイムリーなご指摘、ありがとうございました。

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“「マン・ユナイテッドには創造力とリスクが足りない」スコールズVSファン・ハール、論争の結果は…⁉” への3件のフィードバック

  1. nyonsuke より:

    更新ご苦労様です。

    ビッグクラブの監督は大変ですね。
    ユナイテッドの場合は多くのレジェンドと偉大な監督のファーガソンさんがいらっしゃるので、特に比較されてしまうでしょう。
    観ている側の人間としては内容を求めてしまいがちで、ファン・ハール監督やモウリーニョ監督のような1-0や0-0の美学をもっている監督は好みがわかれると思います。
    (私は前半0-2でも後半3-2で勝つようなサッカーが好きなミーハーですが…笑)
    しかし、忘れてはいけないのはファン・ハール監督就任後、チームはCLに復帰して現在は首位から勝ち点差2の4位ということです。
    また最近はリンガードなどのユース出身や若手の起用もしていて、今後ファンを納得させる試合も増えていくのではないでしょうかね。
    しかし、サッカーは何が起こるかわかりません。
    ブンデス最強チームのあの人が今後どうなるでプレミアリーグもさらに盛り上がるかもしれませんね。

  2. a より:

    バレンシア、キャリックの離脱は痛いですよね……。
    試合観てましたが、キャリックが倒れて起き上がれなくて医療スタッフが駆けつけて……と軽傷では済まないだろう可能性が上がっていくにつれて顔が青ざめていきました。
    しかも、点が入るようになったここ最近の数試合で効果的な縦パスを入れていたのがキャリックだったので、また点が入らないようになってしまうのではないかと不安で不安で……。
    今シーズン、ファンハールは基本的にキャリックを90分プレーさせることはなく、バスティやシュナイデルランと交代させてやりくりしてきましたが、ホジソンが一発でその努力を無駄にしてしまいましたね。ここ最近のキャリックって、怪我するときって大抵代表がらみですし、ファンハールはホジソンに電話かけて抗議してもいいと思います(笑
    バレンシアも、スピードのあるサンチェスやスターリングに対して、ダルミアンよりも守備でうまく対応していたので、オプションが減ってしまったと言わざるを得ないと思います。

    今年も最終ラインのケガ人が増えてきました。これによって怪我してない選手たちが出ずっぱりになってさらにケガ人が増える……という負のスパイラルにはまっていかないといいのですが。
    あと、パレス戦のスコアは1-1ではなく0-0ですよー。

  3. makoto より:

    nyonsukeさん>
    私も3-2派ですが、ファン・ハールさんはよくやってくれていると思います。悪い時に、即座に手が打てるのを見ると、相当優秀なマネージャーだと感じます。ドイツから来ますかね?来るとしたらたぶん水色ですよね。絶対盛り上がるのですが、ちょっぴり複雑です(苦笑)

    aさん>
    ご指摘ありがとうございます!手が滑ったようです。訂正させていただきました。キャリック、痛いですね…。代表戦の意志決定は代表監督の仕事で、文句いいっこなしなのは承知しているものの、もう1本の記事でついつい愚痴ってしまいました。監督のやりくり力に期待するしかありません。

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