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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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昨季売上は初の5億ポンド超え…マンチェスター・ユナイテッドがポグバに120億円もかけた理由!

Manchester United announce record revenue of £515.3m for 2016(マンチェスター・ユナイテッドは、2016年度の収益をレコードとなる5億1530万ポンドと公表)」。イギリスメディア「スカイスポーツ」の見出しに、日本円で約696億円という記録的な数字が踊っています。マンチェスター・ユナイテッドが昨シーズンに積み上げた売上高は、もちろんプレミアリーグレコード。バルセロナが5億7000万ポンド(約770億円)と発表しており、世界一とはいきませんが、1年前の3億9520万ポンドに対して30.4%UPは大繁盛です。利益のほうもプレミアリーグレコードとなる6890万ポンド(約93億円)。「スカイスポーツ」は、アーセナルと並ぶ最多タイの12回めとなったFAカップ優勝の後押し、テレビ放映権料の増加、14の新しいスポンサー獲得が売上増加の要因だと報じています。チャンピオンズリーグが年末で終わったにも関わらず、これだけの収入増加を達成したのは、このチームのブランド力と営業努力に他なりません。

以前に「Sportie」に、「マンチェスター・ユナイテッドは吉本興業?~サッカークラブの収益構造」という記事を書かせていただいたのですが、ニッポンのお笑いを支える芸能コンテンツ企業とプレミアリーグNo.1の売上を誇るビッグクラブは収益構造がとても似ています。チケットやメガストアのマッチデイ収入は、劇場やイベント営業などのライブ収入。商業収入は、お金の出どころがスポンサーのTVやCM出演。テレビ放映権料は、CDやDVD、WebTVなどの映像コンテンツにおける権利収入というわけです。サッカークラブは、エンターテインメント企業。今後、マンチェスター・ユナイテッドがさらなる成長を実現するとすれば、伸びしろが高いのはどこでしょうか。

2016-17シーズンよりプレミアリーグが新契約年度となり、テレビ放映権料は前期比1.5倍となります。マンチェスター・ユナイテッドのマッチデイ収入は全体の1/4もなく、ここを伸ばそうとすると、チャンピオンズリーグの上位進出で得られる分配金とセットで獲りにいくしかありません。ちなみに、2015年からの3年間、CLのグループステージ敗退クラブと優勝クラブにおける分配金額の差は3350万ユーロ(約38億5000万円)、準決勝なら1850万ユーロ(約21億3000万円)となっており、ホームゲームが増えることまで考慮すると、相当な額となります。

とはいえ、マッチデイには試合数という限界があり、テレビ放映権料はプレミアリーグという他者の都合でしか増えません。いちばん規模が大きく、自らの手によって成長させられるのは、全体の過半を占める商業収入です。7月24日にタグホイヤーがクラブ公式タイムキーパー兼グローバルパートナーとなり、8月には「EA SPORTS」が公式フットボールビデオゲームパートナーに就任。さらにアポロタイヤが地域パートナーからグローバルパートナーに契約を切り替えるなど、マンチェスター・ユナイテッドは現在も積極的にスポンサーを開拓・拡大しようとしています。

スポンサーを増やすことを考えれば、マチュイディではなく話題性が高いポグバ獲得だったのでしょう。ポグバ、イブラヒモヴィッチ、ムヒタリアンなどスター性のある選手が増えれば、より多くのスポンサーフィーを引っ張ってくることができます。「マンチェスター・ユナイテッドで育ったスターがオールド・トラフォードに帰ってきた」というストーリーを持つポグバに投資した8900万ポンド(約120億円)の移籍金は、5年契約なら単年では24億円。この規模のお金は、グローバルパートナーを増やし、ユニフォームなどグッズを売ればおつりが返ってきます。さらに来季以降、チャンピオンズリーグで春まで戦えれば、ポグバのサラリーまでまかなえます。

経営陣はセールスの後押しになる「スター=旬の芸人」を求め、チームを預かるモウリーニョ監督もまた、軸となるワールドクラスを加えたかったわけで、この夏のマンチェスター・ユナイテッドにおいては「儲けたい⇔勝ちたい」は相反せず、経営と現場の思惑は一致しています。「イブラヒモヴィッチとムヒタリアンを安く手に入れ、ポグバの世界レコードの移籍金を呑む」。代理人のミーノ・ライオラが持ちかけたのか、ウッドワードCEO側から打診があったのかはわかりませんが、終わってみれば3点セットの出来レースにもみえたこの夏のビッグディールは、これもまたWinWinだったのでしょう。

いい選手を獲得すると膨らむ人件費は、2億3220万ポンド(約313億5000万円)で14.6%増。3000万ポンド(約40億円)の増加は、売上や利益の数字をみれば許容範囲で、債務は為替の影響分しか増えていません。ファン・ハール監督とスタッフに払う違約金が840万ポンド(約11億3000万円)ほどかかったようですが、次のシーズンでプレミアリーグ4位を外す影響の大きさを考えれば、お金をかけても監督交代のほうを取るのもわかります。マンチェスター・ユナイテッドの売上・利益規模、コストなどの数字を見て、営業戦略と成長戦略を考えれば、金額の妥当性は議論あれど、ポグバに120億円も払った理由がわかります。儲かる。強くなる。財布はさほど痛まない。彼らがいかない理由はありません。

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“昨季売上は初の5億ポンド超え…マンチェスター・ユナイテッドがポグバに120億円もかけた理由!” への3件のフィードバック

  1. だしまる より:

    なるほど。ユースで育てた男がスターとなって帰還したというストーリー。やり残したことがある。ここが自分の家だ。などというポグバのセリフは全て繋がっているのですね。スポーツ面と興行面を上手に兼ね備える選手は、希少価値ですからね。

    まだ、吉本興業や王将なみの売上と考えると、売上向上の余地はかなりありそうです。
    アメリカ・アジア・アフリカという未開拓市場もありますしね!

    そう考えると、昨季のレスター優勝は、プレミアリーグの今後10年のストーリー・売り込み考えると、
    とても大きいものでした。

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    なるほど、勉強になりました。
    CLに出ることによる分配金よりも、それに伴う商業収入が大きいんですね。

  3. makoto より:

    だしまるさん>
    上場廃止したので今はわからないのですが、吉本はある時期までマンチェスター・ユナイテッドとほぼ同規模でした。レスターは、今季・来季をEL出場権獲得ぐらいで着地できれば、ステップアップもあるかもしれませんね。街が小さいのは気になりますが。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    圧倒的に商業収入ですね。今の経営陣は、選手を獲るのはうまいとはいえませんが、経営的には素晴らしいと思います。

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