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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

数字は中堅クラブ⁉ ゴールが少ないマンチェスター・ユナイテッドの独特のスタッツを分析!

When we are at home we should attack, attack, attack. That’s Old Trafford(ホームでは、アタック、アタック、アタックだ。それがオールド・トラフォードだ)」。ポール・ポグバの美しい言葉に感動してしまいました。ファーガソン時代の怒涛の波状攻撃を、いつまでも懐かしんでいてはいけないのですが、なかなかゴールを決められない今季のチームにストレスが溜まっていたのです。1年前は、プレミアリーグ6節終了時点で17ゴールをゲットしていたので、守備的だバスだ何だといわれても、笑って受け流せました。ところが、2018-19シーズンは9ゴールに激減。ボーンマス、ワトフォード、レスターを下回るプレミアリーグ9位に留まっています。

5勝1分と順調なスタートを切り、「ペップとの一騎打ちか⁉」とテンションが上がっていた昨季は、最初の6試合でルカク6ゴール、マルシアル3ゴール、ラシュフォード2ゴール、ミキ1ゴール。鮮やかなカウンターが何度も炸裂し、前線のどこからでも決められたチームは、6試合中5試合をクリーンシートで完勝していました。対して今のマンチェスター・ユナイテッドは、9失点と不安定な守備もさることながら、カウンターとサイドアタックがほとんど機能していません。まずは開幕からのゴールシーンを、振り返ってみましょう。

レスター戦は、アマーティのハンドで得たPKをポグバが決め、マタが右から浮かしたボールを受けたルーク・ショーが、絶品トラップでリカルド・ペレイラをかわして左足ボレー。3-2で敗れたブライトン戦の最初のゴールは、CKのクリアをルーク・ショーがボレーで叩き、ルカクがヘッドでコースを変えてゲット。2点めはフェライニがダフィーに引っ掛けられたPKで、開幕戦に続いてポグバが冷静に決めています。

オールド・トラフォードのスパーズ戦は0-3で完敗。アウェイで完勝のバーンリー戦は、アレクシス・サンチェスのクロスをルカクがヘッドで叩き込んだ後、7番とルーク・ショーのチャンスメイクから、こぼれ球をルカクが仕留めています。ワトフォード戦は、FKの流れからアシュリー・ヤングのクロスをルカクが胸で押し込み、CKからフェライニが頭で折り返したボールをスモーリングが豪快にボレー。ウルヴス戦は、ポグバの落としをフレッジが右足で蹴り込んだミドルシュートです。

まとめると、セットピースから3発、PK2発、ミドル1発。クロスからルカクがフィニッシュした形が2回あり、ルーク・ショーの個人技で1ゴール。特徴的なのは、カウンターがゼロで、右サイドの選手がゴールシーンに関与していないことです。オンターゲット35本は、トッテナムより2本多いリーグ5位ですが、ポグバが10本、ルカクが9本と2人で過半を占めており、アレクシス・サンチェスは4本、ラシュフォードとマルシアルは未だゼロ。FWのTOP20を見ると、マネとサラーが10本でミトロヴィッチに次ぐ2位、スターリングが8本で7位、アザール11位、ペドロが13位と、TOP6のウイングの選手が軒並み上位に入っています。

さらにスタッツを深掘りしていくと、ジョゼ・モウリーニョのチームが上位のなかでは独特であることがわかります。ロングボール407本は全体の7位で、アーセナルを47本も引き離してTOP6では最多です。一方で、スルーパスの本数を見ると、マン・シティが18本、チェルシーとアーセナルが13本でTOP3となっており、8本のマン・ユナイテッドはTOP6で唯一のひとケタ。ボーンマスやニューカッスルより少なく、12位に留まっています。数字の傾向でいえば、モウリーニョ監督のサッカーは中堅・下位クラブと同様のスタイルです。

サイドアタッカーのシュートとゴールが少ない理由のひとつは、モウリーニョ監督に守備を要求されるためにバランスを気にしすぎて、中に斬り込んだりラインの裏に飛び出したりするプレイが少ないからでしょう。リヴァプールやマン・シティのウイングは、ボールを奪われた瞬間に奪い返しにいき、MFも前で獲ろうとするので、ポジションを下げずに相手のアタックを遅らせることができています。ちなみにレッズの3人のタックル成功数は、フィルミーノ14回(リンデロフより多い!)、マネ10回(リンデロフと同じ!)、サラー5回。マン・ユナイテッドの前線は、アレクシスの7回以外は、ラシュフォード4回、ルカク3回と少なく、右サイドを担うことが多いリンガードは1回しかありません。

以上、「マンチェスター・ユナイテッドが決められない理由」の考察でした。「スカイスポーツ」はポグバの発言をフラットに紹介しておりましたが、「デイリー・ミラー」や日本メディアの多くはモウリーニョ批判と煽り、「守備をさぼる」「ボールロストが多い」と苛立つサポーターもいらっしゃるようです。しかし、あらためてデータをチェックすると、パス本数425本はプレミアリーグ全体の7位、シュート17本は8位で、彼がいかにゴールのために奮闘しているかが見えてきます。自陣で失うシーンが目立つのは確かですが、有効な出しどころが見つからないことが多いという面もあるでしょう。今回の言葉は、もっとゴールを決めて勝ちたいという気持ちを純粋に表現しているだけだと思います。「彼はマイペースと誤解されているが、いうなれば、”生まれついてのリーダー”だ」というディディエ・デシャンの言葉を信じます。

モウリーニョ監督のチェルシーは、2000年代前半の最強チームも、2014-15シーズンを制したときも、直線的で速いアタックが魅力でした。昨シーズンの開幕直後は、あのサッカーを再び堪能できると期待していました。しかし、今は…。サイドからの仕掛けは左一辺倒、ロングボールをゴール前に放り込む「FCフェライニ」も多く、時折モイーズ時代に引き戻されたような感覚に陥ります。オールドファッションでスピードを欠く攻撃は、われわれサポーターだけでなく、やっている選手たちにとっても魅力的ではないのではないでしょうか。ポグバ、マルシアル、ラシュフォード、バイリーなど、主力が移籍を志願しているという記事が多いのは、ゴシップのネタになりやすいクラブというばかりでなく、選手たちが「輝かしい未来が見えない停滞感」に疲弊し始めているからのようにも思えてきます。穿ちすぎでしょうか?

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“数字は中堅クラブ⁉ ゴールが少ないマンチェスター・ユナイテッドの独特のスタッツを分析!” への5件のフィードバック

  1. ペップの街 より:

    更新ありがとうございます。
    MakotoさんのようなマンU愛溢れる方にしか言えない厳しい指摘です。
    このチームが魅力的だったのはその波状攻撃、諦めない攻撃精神故でしょう。確かに今のチームにはリヴァプールのようなワクワク感がありません。素晴らしいタレントを擁しているにも拘らずです。
    仮にトップ4に残ったとしても、サポーターはモウリーニョを支持してくれるでしょうか。

  2. nao より:

    更新お疲れ様です
    毎日楽しく見させて頂いてます!

    自分もユナイテッドサポとして大きく同意します
    1年目や2年目は戦術の落とし込みやモウリーニョが獲得した選手の少なさなどで、この内容と結果でも我慢!と思っていましたが…
    流石に厳しいですね、若手が総じて伸び悩んでるのも気になります…
    今後の巻き返しに期待したいです!

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    本来、チェルシー時代のようなサッカーが出来るはずなのに守備を要求してそれを出来ないのは守備陣を信用していないからなのでは?
    リンデロフバイリーを信用できないのはモウの自業自得ではあるのですが
    選手にとって魅力的なチームじゃなくなっている責任すべてをモウリーニョに押しつけるのも違うように思います

  4. アイク より:

    モウ監督からドレッシングルームで聞かされていた試合展開の予想や敵将の交代策が次々と的中していく。その驚き様をかつてのワールドクラス達は興奮気味に証言しましたが、最近そういう声が聞こえてきませんね。
    昨年の史上最強に次ぐ2位にはリスペクトしか有りませんが、makotoさんがここまで悲観されるのはよほどのこと。
    ホームで滅法強かったスペシャルワンは変わってしまったのでしょうか。

  5. C より:

    優秀なCBを確保して、ディフェンスラインを強固にすることが出来なかったことが致命傷ではないでしょうか。強いと言われていたモウリーニョには、いつも頼れるディフェンダーが傍にいました。
    デヘアがいくら止めて失点を防ごうと、ディフェンダーがボールを奪取して素早くビルドアップしないことには、速攻なんて間に合うわけもないです。 どうして今季はこんなに落ち込んでいるんだ?という事よりも、むしろなんで昨季あんなに強かったんだ!って気持ちの方が強いですね。
    2年目のモウリーニョってやつですか、恐ろしいです…

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