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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プレミアリーグ史上最速の10アシスト、初の6試合連続!誰か、エジルを止めてくれないか!?

ガブリエウとジエゴ・コスタのトラブルにより、緊張感が高かった試合が壊れてしまったチェルシー戦を最後に、アーセナルはプレミアリーグで負けていません。ノースロンドンダービーではハリー・ケインのゴールで抱えたビハインドをつぶすのが精一杯で、1-1のドローに終わったものの、それまで5連勝。この快進撃を牽引していたのは、誰よりもよく走り、相手の出されたくないところに簡単にキラーパスを入れられるメスト・エジルでした。データ会社「Opta」は、ドイツ代表とアーセナルの司令塔の素晴らしさを数字で証明しています。6試合連続のアシストはプレミアリーグ初、シーズン10アシストを11試合出場で記録したのはプレミアリーグ史上最速とのこと。彼なくして、マンチェスター・シティと同勝ち点で順位表の最上位に並ぶガナーズの躍進は実現しえなかったでしょう。

相手の最終ラインの裏に通すスルーパスや、自ら縦に突破して瞬時に空いている選手を見つけるグラウンダーのクオリティも素晴らしいのですが、言葉を失うのは長いボールの精度です。ノースロンドンダービーでは、「今から上げますからね」とゆっくりしたフォームで右サイドからロングクロスを蹴ることが多かったにも関わらず、そのほとんどが相手は触れず味方は打てるところにピンポイントで届くボールです。アルデルヴァイレルトが加入し、格段に守備の強度が上がったトッテナムといえども、あんなボールを受け続けては90分を無傷で耐えることはできません

エジルの6試合連続アシストを、振り返ってみましょう。始まりは、現在プレミアリーグ3位で1回しか負けていないレスターを唯一粉砕した「上位対決」でした。ヴァーディに先制された試合を事もなげにひっくり返したエンジンは、アレクシス・サンチェスやベジェリンを動かしたエジルのパスだったのですが、チームの3点めとなるアレクシス・サンチェスのヘディングシュートをアシストしたのもまた、背番号11が左から上げたピンポイントクロスでした。この試合を2-5で勝つと、次のマンチェスター・ユナイテッド戦では開始6分にアレクシス・サンチェスのラボーナを呼んだ右足の丁寧なグラウンダー。この1分後には、ウォルコットの左からのラストパスを受け、読みのよさではプレミアリーグナンバーワンといっていいデ・ヘアを棒立ちにさせる左足のコントロールショットを決め、80分余りを残して試合を終わらせています。

左足の素晴らしさゆえ、右足が苦手というイメージがあるエジルですが、ラメラやディ・マリアのような「走るためだけの右」ではないことを証明したのは、2戦連続右足アシストとなったワトフォード戦の2点めでした。右サイドから敵陣をえぐり「お互い、たまには右でいきましょう」とばかりにジルーの右足に合わせたグラウンダーは、抜け目ないストライカーが下がって一瞬DFから離れたタイミングを突いた共同作業です。2-1で接戦を制したエヴァートン戦では、右からジルーにピタリと合わせるピンポイントのクロス。5試合連続となるスウォンジー戦のアシストは、冴えなかった前半の緩い空気に喝を入れた49分のCKでした。

ノースロンドンダービーで1-0とされたヴェンゲル監督には、エジルのクロスがジルーの頭を捉え、エースが巧みにコースを変えて決めたエヴァートン戦の残像があったのではないでしょうか。モンレアルを残し、本来はSBであるギブスを攻撃的な役割として投入した采配は、勝っているときにSBを縦に並べる「特製二段重ね弁当」とは真逆の戦術でした。この日のエジルは、ボスの作戦を心得たといわんばかりに右に出てはクロスというプレイを淡々と繰り返し、その大半でジルーをフリーにしていたのですが、なかなか決めてくれない相棒の頭ではなくギブスの左足に合わせた判断が功を奏しました。左からのクロス1本、CK1本、右足のグラウンダー2本、右からの長いピンポイントクロス2本。9月中旬以降、毎試合披露してくれている6本のアシストは、サイド、高低とも多彩で、ベタ張りで密着マークをつける以外に止める手立てはないのではないかと絶望すら感じてしまう質の高さです。

ノースロンドンダービーのエジルは10.5キロを走破しており、アーセナルの選手のなかで、最も長い走行距離を記録したそうです。「走る、守る、殺す」のトリプル3でチームを牽引するゲームメーカーに「自ら決める」が加われば、ヴェンゲル監督とグーナーのみなさんを、しばらく味わっていなかったプレミアリーグの頂点を戴く歓喜へと連れていってくれるのではないでしょうか。

私のなかには、昨季プレミアリーグのTOP6において、さらなるチーム躍進のカギを握るのではないかと秘かに期待している「ファンタスティック6」がおりまして、シュヴァインシュタイガー、フェルナンジーニョ、ベンテケ、アルデルヴァイレルト、ペドロ、エジルといった顔ぶれ。なかでもエジルは、いわば頂点です。ガリー・ネビルさんが「素晴らしい。驚異的な記録だ。彼は、私たちが期待したプレイを見せてくれている」と絶賛し、クラブレジェンドのティエリ・アンリさんも、「彼は世界王者レベル。今は完璧」と舌を巻いたワールドクラスの司令塔の活躍に、引き続き注目してまいりたいと思います。軽やかで、力を入れてるように見えないんだよなぁ…。凄い。

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“プレミアリーグ史上最速の10アシスト、初の6試合連続!誰か、エジルを止めてくれないか!?” への7件のフィードバック

  1. デリック より:

    いやぁ、素晴らしいですね。ガナを批判することしかない気がするネビルまで唸らせるとは!
    今シーズン始まってしばらくの間もガナファンの中ではエジルを批判する人もいました。が、ここまで数字でも出されたらもう何も言えないと思います。
    ボスがあそこまで高い移籍金を出したことに批判をする人もいないかと。
    今のエジルのアシスト記録を止められるとしたらジルーですかね笑スパーズ戦も3つピンポイントを外しましたからね。ジルーはえ!それ決めるってゴールは多いのですが、え!それ外すってプレーはもっと多い気がします。FWがレバンドフスキならエジルのアシストは凄いことになってると思います笑

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    張り付いて、その動きだけを見てみたい選手ですね。
    軽やかと言う表現がぴったりです。
    何より判断が早く、難しいことをいとも簡単にするので、素晴らしいプレイを見過ごすことも多く、録画をするようになりました。

  3. makoto より:

    デリックさん>
    同感です。あの3本を見て、ヴェンゲルさんはアンリのいうことを半分くらいは聞いてもよかったのではないかと思ってしまいました。

  4. makoto より:

    プレミアリーグ大好き!さん>
    そうなんです。「今の誰?やっぱりエジルか!」は、アーセナル観戦時の定番のセリフになりました。

  5. ジダネス より:

    エジルファンとして、評価されてるのはうれしい限りです。
    ミュラーに負けるな!(笑)

  6. どど より:

    初めまして
    いつも拝見させて頂いてるのですが、エジルファンとして、一言お礼を♪
    私は最低1回はエジルだけを見るのですが…本当分かりにくいんでしょうね
    解説者やレジェンド、たまにベンゲルのコメントに反感を抱く事もしばしば
    でもoptaさんのお陰で陽の目を、そして管理者様のお陰で広く知って頂ける事を嬉しく思います
    これからも、更新楽しみにしてます
    よろしくお願いします

  7. makoto より:

    ジダネスさん>
    バイエルン戦のときに、チラッと同じことを思いました。同世代の代表チームメイトでもあり、ライバルでもありますから。

    どどさん>
    いいポジションを取るために、あるいはフィニッシュへの絵を描くために見えづらいところで相当走ってますよね。以前から「プレミアリーグでも絶対結果を残すはず」と期待していた選手なので、彼のがんばりが数字として見えてきたのがいちばんうれしいです。

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