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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Arsenal×Chelsea】戦術家モウリーニョと、指揮者ヴェンゲル。好対照采配も両者譲らずドロー決着!

前節までのプレミアリーグ1位と3位が戦う頂上決戦であり、毎回盛り上がるロンドンダービーでもあるアーセナルVSチェルシー。チェルシーを率いるモウリーニョ監督は、プレミアリーグ、カップ戦におけるヴェンゲル監督との対決で、過去5勝4分けと負けていません。にもかかわらず、試合前の会見でのモウリーニョ監督は「アーセナルがいままでいちばん勝ち点を重ねてきているのだから、最強」「メスト・エジルはとてつもない選手で、90分ストップするのは不可能」などと、ほめ殺しモードです。発言の意図はわかりませんが、少し不気味ですね。既に戦いが始まっているように感じるのは、私だけでしょうか。

この試合は、アーセナルの本拠地・エミレーツで行われるゲームであり、これを落とすと4試合勝利なしとなるヴェンゲル監督のほうが「負けられない」というプレッシャーは強いでしょう。スタメンを見ると、アーセナルは、ロシツキ、エジル、ウォルコット、ラムジーが中盤に入った攻撃的な布陣。先週負傷したコシールニーに代わり、ヴェルマーレンがCBに入ります。チェルシーは、トップにF.トーレス。ミケルがアンカーに入り、中盤センターにランパードとラミレス。アタッキングハーフにはウィリアン、アザールが並び、トップ下を置かないフォーメーションです。オスカル、マタをベンチスタートにするあたり、しっかり守ることが優先という意図が見て取れます。

前半開始から15分は、両チームとも慎重で重い展開です。試合前から雨風が吹き荒れ、濡れて滑りやすいピッチで正確にパスがつなげられず、とりわけアーセナルのロシツキやウォルコットが苦しんでいます。25分まで、シュートは両チーム合わせてわずかに1本。5分にアスピリクエタの突破から、ランパードが放ったミドルのみ。パスは足元へのボールがほとんどで、サイドを走らせようとするパスはすべて流れ、ラインを割ってしまいます。

ここからペースをつかんだのはチェルシーでした。26分、ウィリアンのクロスからラミレスがヘディングシュートを放ったのが攻勢の合図。32分には中央を上がったアザールからの浮き球が守備に戻ったアルテタの裏に出て、ランパードがフリーで打ったシュートがバーを直撃!34分には左サイドでボールを奪取したウィリアンの縦パスから、F.トーレスがペナルティエリアに侵入して左足シュートを放ちますが、これはサニャがぎりぎりで足を伸ばしてブロック。アーセナルは、エジルがドリブルで突破し、ペナルティエリア手前で右のウォルコットにパスをつないだのが唯一のチャンスです。43分にはラムジーの不用意なパスをチェルシーが拾ってカウンター。アーセナル守備陣は4対3というピンチに追い込まれながらも、ウィリアンのシュートがGKシュチェスニーの正面に入って難を逃れます。

前半のシュート数は7対2。パスミスを連発し、サイドでことごとくボールを奪われ、CKしか攻め手がなかったアーセナルに対して、中盤センターを厚くしたチェルシーはセンターサークル付近での攻防で完全勝利。ウィリアンとアザールがサイドから中に入ってくると、必ず危険なシーンを創ります。ここまではモウリーニョ監督の作戦勝ちですが、スコアはまだ0-0です。残り45分、ホームのアーセナルに巻き返しプランはあるのでしょうか?

後半に入ると、アーセナルがポゼッションを取り戻し、チェルシーはカウンター中心にスイッチ。しかし、それでも得点機が多いのはアウェイチームのほうです。55分、センターライン付近のボール奪取からウィリアンが右サイドをドリブル。逆サイドをアザールがフリーで走っていましたが、ウィリアンが気づかず手前のラミレスにパス。流れたボールがアザールにわたるものの、既にマークが戻っておりシュートを打てず。65分にもランパードが強烈なミドルを枠内に放ちますが、これはシュチェスニーがキャッチ。やはり、主導権を握っているのはチェルシーであることは変わりません。

しかし、いくつかのピンチをサニャやメルテザッカーの体を張った守備で封じると、残り15分過ぎからアーセナルが決定機を創り始めます。78分、ロシツキが中央をドリブルで上がり、短いパスを右のラムジーに通すと、ラムジーはすかさず逆サイドをフリーで上がってきていたジルーに浮き球パス。ゴール前、ジルーはフリーでしたが…ボレーシュートは当たり損ねとなり、ゴール左へ外れます。そして、84分もロシツキでした。この人らしい、左サイドでのスルーパスでギブスを走らせ、ニアサイドへのグラウンダーに飛び込んだのはまたもジルー!しかし今度はGKチェフが体に当ててボールは枠の外へ。この最大のチャンスを決められなかったのが痛かったですね。この後もセットプレーのチャンスはありながら、ゴールは遠く、結局0-0のドロー決着。この結果は「ホームのアーセナルが勝ち点3を逃した」という表現が妥当でしょう。

おもしろかったのは、稀代の戦術家・モウリーニョ監督と、オーケストラの指揮者・ヴェンゲル監督の采配のコントラスト。やはり、状況を見て策を講じるということにおいては、モウリーニョは天才的にうまいですね。ミケル、ランパード、ラミレスの3センターで中盤で優位に立ち、後半もまずは守備を安定させると、73分と77分にシュールレとオスカルを投入し、一時は「残り10分で点を獲って勝ちにいきますよ」という姿勢を鮮明にします。ところが、アーセナルが攻勢を強め、分が悪くなると、今度はF.トーレスをダヴィド・ルイスに代えて店じまい。モウリーニョ監督の打ち手は意図がわかりやすいので、選手も迷わず対応できます。

一方、ヴェンゲル監督は一歩も動かず。プレミアリーグの天王山ともいうべきゲームで、さすがに交代ゼロというのはは珍しいですよね。彼は、全体を指揮していい音色を紡ぎ出すことは得意ですが、状況を個別に判断して細かく手を打っていくのはあまりうまくありません。もし、勝ち点3を獲りにいくなら、ピッチの状況と相手の守り方からみてスペースを使える見込みのないウォルコットを諦め、狭い空間を使えるカソルラや、遠めから強いシュートを打てるポドルスキを入れたほうがよかったのではないかと思います。

いや、それにしても疲れました。息詰まる神経戦でしたね。この結果をいちばん喜んでいるのは、久しぶりにプレミアリーグ首位を奪取したリヴァプールでしょう。しかし彼らも、木曜日にはマンチェスター・シティとのつぶし合いです。文字どおりの三日天下となるのか、ダークホースと目されていたチームが2013年をトップで締めくくるのか。今年もあと1週間ですが、なぜかプレミアリーグはあと2試合あります。今年最後に笑うクラブはどこなのか、もはや誰にもわかりません。

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“【Arsenal×Chelsea】戦術家モウリーニョと、指揮者ヴェンゲル。好対照采配も両者譲らずドロー決着!” への3件のフィードバック

  1. チェルシー より:

    更新お疲れさまです

    試合展開としては予想通りの展開でしたね
    チェルシーは前半に点を取っておけば…
    どちらも勝つ可能性はあった試合なのでドローも妥当といったところでしょうか

    サンタは平等に両チームに勝ち点のプレゼントを与えたと受け取っておきましょう(笑)

    これで首位から5位まで勝ち点2差とますます面白くてなってきましたね(^^)
    やっぱりプレミアは、サッカーは面白いです(^^)

  2. ウィルシェア より:

    やはりパスミスが多すぎましたね
    なにかプレッシャーのようなものがあるのでしょうか
    ふだんミスしないサニャまでもがとんでもないパスミス……
    パスをまわしてリズムをつくるチームにとっては致命的ですよね

    あとどーしてもあの審判さんには何かあるようにしか見えないですね笑
    アルテタのイエローも出ないのかよ!とか叫んでました笑

    ジルーは決定力ですね、ほんとに。
    ああいう場面に決められる選手にならないとタイトルはとれないのかな、と思いました。

    いつのまにかズルズル……
    リバプールの噛みつき王がすごすぎる……

  3. makoto より:

    チェルシーさん ウィルシェアさん>
    試合の評価とは別なお話ですが。天候、レフェリー、ジャッジ…「アーセナルに不利」とまではいいませんが、相性のようなことも含め、すべてがガナーズの望まないものになってしまいました。ケガ人が戻ってきた強豪と戦うというプレミアリーグの巡り合せといい、チャンピオンズリーグのドローといい、今季のアーセナルは運は最悪です。「「終了間際のオウンゴールで勝利」とか、年が明けたら、ひとつふたつラッキーなことが起こるといいですね。私としては、混戦大歓迎。今季はプレミアリーグがおもしろくて仕方がないです。

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