イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Leicester×MAN.UTD】カウンター3発、PK2本で4連発KO!「采配なき個の集団」ラスト30分の混乱

シンプルな攻撃と連携がきいた守備で、エヴァートン戦とアーセナル戦をドローに持ち込み、チェルシーに善戦したプレミアリーグ昇格組のレスターに対して、まだまだチームの体を成していないマンチェスター・ユナイテッド。「鍛えられたチームVS強い個人」の一戦は、笑ってしまうぐらいの圧倒的な個人技でマンチェスター・ユナイテッドがレスターを蹂躙するスタート。しかし、最終的にこのゲームが物語ったのは、「サッカーはチームスポーツである」という普遍的な結論です。5-3、惨敗。マンチェスター・ユナイテッドのゴールを決めたのは個人で、リードを守れなかったのは采配でした。

この日のマンチェスター・ユナイテッドは、ファルカオとファン・ペルシの2トップの下にルーニー。中盤にディ・マリアとエレーラが並び、アンカーにダレイ・ブリントが入る4-3-1-2のフォーメーションです。試合開始当初からマンチェスター・ユナイテッドの守備は緩く、ニュージェントとウジョアが元気なレスターが、6分に2人の連携でシュートまで持ち込みます。10分になってようやくエンジンがかかってきたマンチェスター・ユナイテッドは、ディ・マリアのスルーパスにファン・ペルシが左から完全に抜け出しますが、背番号20のシュートはGKシュマイケルが体を張ってCKに逃れます。

マンチェスター・ユナイテッドの中盤を仕切るのはやはりディ・マリア。プレミアリーグ4節のQPR戦では慣らし運転に終わったファルカオは、左サイドを主戦場として、チャンスメイクに徹します。12分、さっそくファルカオが見せてくれました。左サイドであっさりDFをかわした背番号9は、ドリブルで縦に上がるとファーサイドのファン・ペルシにドンピシャのクロス。マークが追いつかなかったレスターは、ファン・ペルシの強いヘッドをブロックできず、マンチェスター・ユナイテッドが難なく先制です。

さらに15分、今度はルーニーとディ・マリア。中盤からドリブルで上がったディ・マリアがルーニーとのパス交換からゴール前に上がると、ディマリアのフィニッシュは、GKシュマイケルがまったく反応できない絶妙なループシュート。中盤が機能していなくても、ワールドクラスが2人絡めば、あっさりゴールを奪えてしまうマンチェスター・ユナイテッドですが、守備が不安定なのは相変わらずです。17分、自陣左サイドでロホがヴァーディーにかわされ、深い位置からクロスを許すと、中央でエヴァンスとラファエウのマークを外したのは、ここまで3ゴールのエース・ウジョア。きれいなヘディングにGKデヘアは動けず、レスターは1-2とスコアを戻しました。

前半を1点リードで折り返したマンチェスター・ユナイテッドは、後半もゲームを支配します。48分にファルカオがワントラップからの素早いシュートをバーに当て、57分にラファエウのクロスのクリアを拾ったディ・マリアのシュートをエレーラが角度を変えて決めたところまでは完全なる勝ちゲーム。3-1とリードしたマンチェスター・ユナイテッドは、残りの30分を冷静にボールキープして終わらせればOKという状況に立っていました。

ところが、ここから悲劇が始まります。昨日のアーセナルのように、セーフティにクルージングしていればよかったゲームを壊したのは、ラファエウの大人げないプレイでした。63分、ヴァーディーにショルダータックルを喰らって倒れたラファエウは、ファールを取ってもらえなかったことに腹を立てたのか、お返しとばかりにペナルティエリア内で後ろからチャージし、PKをニュージェントに決められます。2点リードの試合で、する必要のない愚かな報復。2-3として元気を取り戻したレスターは、その1分後にMFハモンドのシュートのこぼれを中央からカンビアッソが左足で叩き込み、あっという間の同点です。3-3、こうなると勢いはレスター。それでもマンチェスター・ユナイテッドが落ち着いてカウンターをケアしながら攻撃していれば、負けることはなかったと思われますが、冷静さを欠いた個の集団は魅入られたように前がかりとなり、レスターの速攻の餌食になります。

ファン・ハール監督は、72分と76分にヤヌザイとマタを投入し、ファルカオとディ・マリアを下げましたが、交代は完全に裏目。とりわけマタが入ってからは、完全に中盤の守備が崩壊しました。79分にはマタが中盤でボールを奪われると、SBロホが上がった裏のガラ空きのスペースを突かれ、最後はヴァーディーにひとり旅を許してレスター勝ち越し。GKと1対1になったFWを後ろから追いかけていたのがルーニーだったのを見ても、中盤もDFも戻りきれない危険な布陣になっていたのは明白です。しかし、この失点から学習できなかった個の集団は、83分にまたもヴァーディーのカウンターを喰らいます。右からの突破で簡単にかわされたブラケットが、後ろからヴァーディーを引っかけてしまい、レッドカード。この日2本めのPKを、今度はウジョアに決められてジ・エンドです。プレミアリーグが始まって以来、2点リードしてから逆転負けを喫したことが1回もなかったマンチェスター・ユナイテッドが、開幕から1ヵ月以上経っても約束事のない守備の穴を突かれて惨敗しました。

ファン・ハール監督は、なぜロホを本職のCBで使わないのでしょうか。スモーリングとブラケットのCBは、アーセナルでいえばチャンバースとヘイデンをスタメン同時起用しているようなもので、プレミアリーグの経験が浅いCBの横にバックアッパーを並べる布陣では、ラインが落ち着くわけがありません。エヴァンスのケガ云々の前に、最終ラインのファーストチョイスをどうするのかを再考しないといけないのではないかと思いました。自分たちのスタイルが固まっていないのに、「若手を育てながら勝つ」のは無理でしょう。プレミアリーグ6位も危ない今のマンチェスター・ユナイテッドの優先順位は、ブラケットを使いながら成長させることではないと思います。

不幸中の幸いは、今週のプレミアリーグが、昨季の上位クラブで勝ち点3を奪ったのはアーセナルだけという、過去にないくらいの「ジャイアントキリング・ウイーク」だったこと。これだけフラフラしながら2位と勝ち点5差で済んでいるのは、幸運以外の何ものでもありません。しかしまあ、9月から登場したディ・マリアやファルカオがフィットしていないならともかく、昨季まで主力だったマタやヤヌザイが機能しないとなると、これはチームづくりが何もできていないということですね。うーん、重傷です。

監督の采配で負けるゲームは昨年、たっぷり堪能させていただいたので、「お腹いっぱいです。もうノーサンキュー」としか言いようがありませんが、しばらくは獲った獲られた、勝った負けたという出たとこ勝負の点獲り合戦を愉しむしかないのでしょうね。先のことを語り出すと暗くなるので、ここは5失点には目を背けて「ディ・マリア、ハンパねぇ。ファルカオ最高!来週もよろしくね!」と、明るくこの稿を締めたいと思います。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“【Leicester×MAN.UTD】カウンター3発、PK2本で4連発KO!「采配なき個の集団」ラスト30分の混乱” への6件のフィードバック

  1. ASAP より:

    心中お察しします…

    「最終ラインのファーストチョイス」問題についてなのですが、Van GaalのDFラインの左側(Blackett & Rojo)は、展開力の観点から「利き足(左足)」が重視されているのではないでしょうか? だとすると、Blackett(左足)とRojo(左足)が入れ替わることがあっても、Smalling(右足)と入れ替わることはないでは?と思いました(実は今回の采配からの逆算で、思い込みが過ぎるかもしれません)。となると、Evans(右足)の交代は、「早々に交代カードを…」という以上に痛かったことになります。

    makotoさんの仰るように、BlackettとRojoを入れ替えないのならば、せめてRojoにBlackettのケアをお願いしたいところですが、Rojo自体もリーグにアジャストしている最中という難しさ。例えれば、入社したての新人と中途採用で新規プロジェクトに対応している状態…。

    「Rojoなんてタトゥーの入ったSilvestreだぜ」という不穏(言い得て妙?)なコメントをどこぞ見かけたのですが、「最終ラインのファーストチョイス」については、今後もしばらくは一進一退を覚悟する必要があるかもしれません。

  2. makoto より:

    ASAPさん>
    ご指摘は、おっしゃるとおりです。私が考えていたのは、「CBブラケット+SBロホ」ではなく、同じ左足同士で「CBロホ+SBルーク・ショー(あるいはSBブリント&MFフレッチャー)」とすること。こうすれば、不安定なスモーリングに若手の面倒まで見させる必要はなくなります。そもそもは、こうしたくて獲得したという認識です。マンチェスター・ユナイテッドはCB強化はしていたものの、ルーク・ショーが不在だったのでやむなくブラケット継続起用だと捉えておりました。

  3. ASAP より:

    「最終ラインのファーストチョイス」について、「昨日の試合の出場メンバーでどうするか?」という戦術的なアプローチと「今後チーム全体としてどうしていくか?」という戦略的なアプローチが、先の文脈のなかで混濁して、文脈が分かりにくくなってしまい、申し訳ありません…

    Manchester Unitedにおける左足ユニットの組み合わせについては、まったく同感です。気になるのはLuke Shawの扱いですよね。

    昨日のピッチにおけるVan Gaalのメッセージを、“あくまで額面通り”受け取るなら、CBについてはBlackett > Rojoで、SBについてはRojo > Luke Shawということなります(Luke Shawはシーズン前の怪我の予後がかんばしくないのでしょうか? でもベンチ入りはしてるんですよね…) 

    それとも、少々キツい言い方になりますが、Leicesterを見くびっており、リーグ本番で公開実験という意味合いがあったのか…(「CBはBlackett、SBはRojo、試してみるべぇよ」)

    また蛇足ですが、Blindは戦術デザイン的に応用が効くので、ポジションにかかわらずスタメンで起用したいですね。

    以上、2度に渡り、長々と乱文失礼しました。

  4. makoto より:

    ASAPさん>
    いえいえ。おもしろいテーマです。うがった見方ですが、ファン・ハールさんは「俺が育てた若手」を創りたいのかもしれません。加えて、ASAPさんのいうとおり「レスターだから大丈夫。ブラケット育成したいし、このメンバーでいこう」とナメていた可能性もありますね。もしそうだとすれば、マンチェスター・シティやチェルシー相手にはブラケットにせず、「エヴァンス&スモーリング」「エヴァンス&ロホ」のいずれかにすることになります。このへんは、今後の采配を見てみないとわかりませんが、何にしろ、いちサポーターとしては、CBロホがいいのではないかと思います。

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    3対3になってからヤヌザイ・マタと入れたならば、点数を取って勝ちたいという意図だったのでしょう。しかし、彼ら二人がピッチにいるってことは点数が取れないユナイテッドに逆戻りしたってことでしょ?それならむしろ守備を固めて勝ち点1を取りにいっても良かったのではないでしょうか。ヤヌザイならあとはバレンシアを入れて3トップにすれば、サイドがディフェンスに忙殺されたとしても守備は安定したはず。あとはファンペルシとルーニーの一発に賭けるくらいの思いきりが欲しかった。どうもユナイテッドは勝ち点を取るフットボールに徹していないような気がします。むしろレスターのほうが思い切りの良いフットボールをしていたんじゃないでしょうか。正直もう少しスコアが開いても不思議じゃありませんでした。

    —–
    パニックバイをして一流FWは買ったが一流DFは買わなかったいや買えなかった報い
    怪我明けのファルカオに今だ得点はなく今季もEL外期待しています。

  6. makoto より:

    Uボマーさん>
    マタはやはり守備に不安があり、ヤヌザイは求められていることが今ひとつわからなかったですね。おっしゃるとおり、「追加点を獲られないこと重視」の戦術はあったかもしれません。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    マンチェスター・ユナイテッドに限らずですが、意志をもって誹謗中傷するようなコメントは控えていただけますか。フラットな疑問、もしくは「こうすればよかったのでは?」というような「代案」でお願いいたします。

makoto へ返信するコメントをキャンセル