偏愛的プレミアリーグ見聞録

開始1分9秒、コウチーニョのパスをトラップ、左足一閃、ジェームズ・ミルナー！ロジャース監督の解任報道が過熱しているリヴァプールが最高のスタートを切りました。アルベルト・モレノやコウチーニョの動きがよく、左から入れて右で決める攻撃を中心にホームチームが猛攻を続けます。絶好調のダニー・イングスが何度もペナルティエリアの外でDFに競り勝ち、ミドルを狙っています。いい滑り出しではあるものの、2点めが入るまでは要注意です。先週のプレミアリーグのノリッジ戦も、キャピタルワンカップのカーライル戦も、アンフィールドのサポーターの後押しがありながらも先制点を守れず追いつかれ、勝ち越しゴールを奪えないまま無情の笛を聞いています。

15分を過ぎても完全なるリヴァプールペースです。コウチーニョがボールをもらえるポジションにいち早く動いて球を散らし、ミルナーが左右から突破を図り、今までのプレミアリーグが嘘のようなアグレッシブさでレッズが2点めを獲りにいっています。20分、ヴィラに最初のチャンス。エムレ・ジャンのクリアがゲステデの足元に入ってしまい、強烈な右足シュートがポストの右に飛んでいきます。

20分から試合は徐々に膠着し始めますが、夏にプレミアリーグにやってきた注目株・アマヴィのオーバーラップと、シンクレアの仕掛けぐらいしか攻め手のないヴィラの攻撃にリヴァプールが崩される気配はありません。一方で、ホームチームもボールをもらう動きやスペースを創る動きが消え、前の選手がゴールを背にしてパスを受けるシーンが目立つようになりました。40分、アストン・ヴィラに決定的なチャンスが到来します。自陣でミスパスを拾い、右に展開してハットンがアーリークロス。ミニョレがこれを弾くと、ルーカスのクリアをウェストウッドがブロックし、最後はゲステデがボレーシュート。DFに当たってミニョレは事なきをえますが、前半で追いつかれても仕方がないシーンでした。1-0でハーフタイムは、今までも通った道。ロジャース監督は、早く2点めを奪って安心したいところです。

後半も、先にペースをつかんだのはリヴァプールでした。49分にミルナーの激しい当たりから敵陣でボールを奪い、コウチーニョが走り込んでシュートを放ったシーンは迫力がありました。52分の攻撃も1点もの。スタリッジの落としを受けたコウチーニョがフリーになっていたミルナーにつなぎ、左足シュートをGKグザンが弾いたところにナサニエル・クライン。最後はヴィラの対応が早く追加点はならなかったものの、レッズにはゴールの匂いが漂っています。ようやく今季プレミアリーグで初めての2点めが入ったのは、59分でした。左でスタリッジをフリーにしたミルナーのラストパスも見事でしたが、迷わず右隅に叩き込んだスタリッジの一撃は、彼ならではのスーパーボレーでした。久しぶりのクネクネパフォーマンス。これはホームチームの快勝かと思いきや、66分にヴィラが1点を返します。グリーリッシュの縦パスにハットンが走り、折り返したボールに飛び込んだのはゲステデ。しかし2-1となった1分後、レッズは再び2点差に突き放します。

2点めに負けず劣らず美しいゴール。自陣でボール奪取に成功したスタリッジは、コウチーニョとのワンツーで中央に入り込み、ゴール右隅ぎりぎりにおさまる見事なコントロールショットを決めました。今度こそ決まりかと思えば、71分にこちらも2発めのゲステデです。左からのアマヴィの長いクロスに、サコに完全に競り勝ってズドン！3-2となり、ゲームはまだまだわかりません。

残り20分、レッズサポーターは、追いつかれる恐怖よりも4点めへの期待のほうが強かったのではないでしょうか。86分、コウチーニョのパスをダニー・イングスがダイレクトの右足アウトでDFラインの裏に通し、スタリッジが右足で狙ったシーンはGKグザンのビッグセーブに阻まれたものの、2トップの息はぴったり合っていました。最後は危なげなくタイムアップ。リヴァプールの勝利は1点差ではありましたが、完勝といっていい内容でした。

攻撃陣は、軒並み合格点だったのではないかと思います。コウチーニョとミルナーは素晴らしい出来で、アルベルト・モレノとナサニエル・クラインも彼らのよさを発揮していました。そして何よりも、復帰したエースがプレミアリーグ初ゴールを決めたのが大きいでしょう。同じ時間にハットトリックを決めたアレクシス・サンチェスには1本及ばなかったものの、彼の存在が攻撃のバリエーションを確実に広げました。ヨーロッパリーグとマージーサイドダービーにつながる、貴重な勝ち点3。シャーウッド監督のほうは微妙ですが、ロジャース監督のクビはひとまずつながりました。