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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Arsenal×Sunderland】魅力と脆さ…追加タイムにアーセナルの真髄をみた!?

プレミアリーグ第15節は、大変な結果となりました。日曜日の夕方に試合を控えているリヴァプールを除いて、昨季プレミアリーグのTOP6のゲームが5試合行われたのですが、勝者は1チームだけ。首位のクラブはアウェイでストークに完敗し、そのライバルの赤いユニフォームはチャンスを外しまくって曲者ウェストハムからゴールを奪えず。ノースロンドンの白いほうは、デル・アリの先制点を守りきれずにWBAと引き分け、極めつけはナイトゲームです。この日の大トリで登場したのは、昨季プレミアリーグの覇者。戦った相手は、現在負傷者が10人とネガティブなランキングでプレミアリーグNo.1となり、最近10試合で勝利ゼロのボーンマスです。いわば横綱VS前頭14枚目の試合は、土俵際で横綱が足を滑らせ、まさかのジャイアントキリング。ニッポンの両国国技館なら、桟敷から無数のザブトンがブーメランのように舞っていたに違いありません。

さて、唯一の勝者、アーセナルです。サンダーランドとの試合は、プレミアリーグで最も素晴らしいゲームメーカーは誰なのかを思い知らされた試合であり、ワールドクラスの守護神がまたもクラブを救った試合であり、アーセナルサポーターがなぜこのクラブをこよなく愛するのかがわかる試合でもありました。順を追って、試合を振り返ってみましょう。アレクシス・サンチェス、カソルラ、コクランといった中軸を欠いたホームチームは、不安な立ち上がりで、いつ先制されてもおかしくない状態でした。

開始4分、ワットモアがセンターサークルから出したスルーパスは決定的。パーフェクトなボールに、右からフリーで走ったのが今季ノーゴールで冴えないボリーニではなく、欠場したデフォーであれば、アウェイチームが早々に先制していたでしょう。右足の正直すぎるシュートは、慌てて飛び出さないチェフがキャッチ。10分に左からワットモアがグラウンダーを入れたシーンは、モンレアルがクリアに手間取り、ボリーニに左隅を狙われます。これもチェフが素晴らしい反応で右に弾き、アーセナルは0-0のままでひとまず落ち着くことに成功しました。

圧倒的なボールポゼッションながら、シュートが打てずに苦しんでいたガナーズは33分、プレミアリーグのアシスト王が、感動的な先制点を演出します。中盤でジルーの落としを受けたエジルが、左から最終ラインの裏に抜けたジョエル・キャンベルに完璧なスルーパス!「このボールはダイレクト用ですので、決してトラップしないでください」とラベルが貼ってあるかのようなボールをジョエル・キャンベルが軽く合わせて瞬殺の1-0です。とにかく「おお、エジルさま…!」な一発ではあったものの、パンティリモンの股間を冷静に抜いたジョエル・キャンベルもまたセンスの塊である、とも思わされたゴールでした。

普通の強豪クラブなら、このままハーフタイムを迎えるところですが、ファンを盛り上げることにかけては超一流のガナーズは、前半終了間際に1-1となるゴールを自ら用意し、エミレーツを弛緩させません。45分、エムヴィラが左から入れたFKは危険な弾道ではありましたが、ニアで触ったジルーは、チェフでもセーブできないとバンザイするゴール左上に見事なオウンゴールをぶち込んでしまいます。かくして、1-1。ポゼッションは73対27なのに、両者シュート数4、枠内は1本ずつしかありません。典型的な、「弱者が勝ち点を奪う展開」。後半のホームチームは、前半以上に危ないシーンの連続でした。

先にチャンスをつかんだのはアーセナル。54分、ジョエル・キャンベルとのポストプレーで中央に出たエジルは、ラムジーに見事なラストパスを通すも、これはオフサイド。するとここから、サンダーランドが決定機を連発します。ワットモアのパスを左足で狙ったスティーブン・フレッチャーのミドルはチェフが左に飛んでセーブ。この直後のCKこそが、「守護神がチームを救ったビッグセーブ」でした。エムヴィラのキックはニアのトイヴォネンが頭でコースを変え、ファーサイドに飛び込んだのはスティーブン・フレッチャー。至近距離からのプッシュは勝ち越し必至の強烈な一撃でしたが、チェフが信じられない冷静さを見せゴールライン上でキャッチしてしまいます。このプレイは、「GKの正面にボールが入ってしまった」といった簡単なものではなく、チェフがボールに対して体で面を作り、最後まで目を離さなかったからできたプレイで、普通のGKなら体に当たって入っていたか、前にこぼしていたでしょう。

ピンチをくぐり抜けたアーセナルは、この5分後にようやく勝ち越します。ラムジーからの低いクロスをヘッドで合わせたジルーのゴールは、前半にやってしまったオウンゴールよりも難易度の高いシュートでしたが、ニアへのコースは完璧で、パンティリモンを責められません。この後も、アーセナルは彼ららしい時間を過ごします。エジルは素晴らしいパスを供給し続け、動きがいいラムジーはゴール前で多くのチャンスをつかむものの、どうしても決められず、そのたびにTV画面のこちら側では「何でやねん!」とツッコミを入れてしまいます。88分、ロドウェルのスルーパスをファン・アーンホルトがフリーで狙ったときは同点を覚悟しましたが、力みがあったのか、ボールはチェフの頭上を越えていきます。何とか、1点リードで90分まで漕ぎ着けました。ほどなく試合は2-1で終わるでしょう。

…と、いうのはマンチェスター・ユナイテッドやチェルシーの考え方であり、このクラブはファンも選手もそうではないのだ、と思い知ったのは追加タイムです。まずびっくりしたのは、ガナーズの選手が後ろの枚数を薄くしてまで攻めに出たことでした。フツー、試合を殺しにいきますよね、この場面は。アーセナルは、サンダーランドの逆襲を受けてもまったく動じず、当たり前のように攻撃に出て、ときどきボールを奪われます。「キープ」「そのまま」「行かなくていいから」と何度叫んだことか。モンレアルがチェフに至近距離から胸でバックパスを出すという危ないプレイがあり、守護神が当たり前のようにさばいたときは、「どんだけ冷静やねん!」とこれも突っ込んでしまいました。93分、2-1で勝っているチームは、分厚い攻撃で3点めをもぎ取りました。モンレアル、ラムジーに途中出場のウォルコットとギブスが絡んだショートパスでの中央突破。右に流れたボールをチャンバースがシュートすると、DFに当たったボールが中に入り、飛び込んだのはラムジーです。3-1、結局アーセナルは完勝でした。

日本シリーズ最終戦の9回裏の攻防だけを切り取って描いた山際淳司さんの名作「江夏の21球」ばりに、追加タイムの顛末だけ書こうかと思ったぐらい、アーセナルの魅力と脆さが詰まった濃密な5分間でした。チャンバースとギブスが何のために入ったかを考えれば、ゴール前に2人ともいるのを見た私の頭の中が「?…」でいっぱいになったのもご理解いただけるのではないでしょうか。しかもゴールが決まると、カウンターやバックパスのおっとっとでやきもきさせられていたはずのヴェンゲル監督はどや顔のガッツポーズ、エミレーツは大歓声、全員エクスタシーです。この勢い、明るさ、「ホット宅急便」にてオールド・トラフォードに送ってもらいたいと本気で思いました。アーセナル、どないやねん!!

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“【Arsenal×Sunderland】魅力と脆さ…追加タイムにアーセナルの真髄をみた!?” への6件のフィードバック

  1. K より:

    試合を見てないのに凄く想像つく描写がとても面白かったです。
    今年は本当に中堅チームの完成度が高くて予想通りの混戦で最後まで目が離せない展開になりそうですね!(チェルシーの内紛は予想外ですが…)

  2. ヤンガナ大好き より:

    12月最初のゲーム、確かにジェットコースターのようなハラハラドキドキゲームでしたね!コクラン、カソルラの穴はやはり大きく、ラムジーのパスミス目立ちましたが、良い効果も。そうです、とにかくラムジーは目の前にゴールがあればシュートする積極性!しかも、最後まで走りつづけ、チャンスを生み出しました!!もう一人の中盤候補、期待のチェンバースもラムジーに続けとばかりに前へ(笑)。そのほかウォルコットが入った瞬間、オフザボールの動きに違いを産み出してました!アレク、カソルラ、コクラン居ませんのでオリンピアコスとの決戦、この積極的攻撃でエジルのタクトで奇跡を興してもらいましょう!

    ユナイテッド、チェルシー、シティも含め、チャンピオンリーグ、4チームもと予選突破を念じています!プレミアの威信にかけて!!

  3. queen より:

    結果だけ見れば危なげなさそうですが、内容は冷や汗ものでしたね。現状を考えると勝ち点3入るだけで十分ですが、年末には果たして踏ん張り切れるか…。
    キャンベルはセンスはありますが、パスやキープなどはまだまだ粗削りな印象がありますね。でも守備にも一生懸命戻ったり、伸びしろはありそうですので期待します。

  4. 新参 より:

    カソルラ、サンチェス、コクランの名人達に比べれば、ラムジー、キャンベル&チェンバレン、フラミニは粗さが目立ちますが、そこは仕方のないことです。無理に名人達のプレーをやろうとするのではなく、自分たちのプレーをして欲しいです(特に、前半のラムジー&チェンバレン)。

    気になったのは、セントラル2人が両方とも上がる場面が異常に多いこと。機動力がないメルテザッカー、高い位置どりをとる両サイドバックを考えると、ひとりは上がらずにいて欲しいです。

    やたら終盤まで攻撃マインドが高かったのは、ヴェンゲルさんなりに、オリンピアコス戦を見据えた結果だと解釈しました。サイドバック二段重ね両サイドバックverをしたときは逃げ切りをファンですら考えましたが、2点差以上勝利してこそ完璧な準備をしたと言えると思います。惜しむらくは、エジルを休ませられなかったことです。

  5. ぐん より:

    試合見られなかったのを心底悔やむ記事でした。おかげさまで、公共車輌の中でにやつく所を見られるという恥ずかしい思いをしました。

    —–
    今日の文章は、久しぶりに腹抱えて笑いました。
    ネタとエンターテインメントを欠かさないアーセナルらしい試合でしたね。
    おお、エジル様…!

  6. makoto より:

    Kさん>
    ありがとうございます。毎試合、息が抜けませんね。ワットモアが素晴らしくて、チェフのビッグセーブがなければ結果は逆だったかもしれません。

    ヤンガナ大好きさん>
    ラムジーの存在は大きいですね。ウィルシャーまで戻ってくれば、カソルラ&コクランのいない季節をそれなりの成績で駆け抜けるのではないかと期待しています。

    queenさん>
    ジョエル・キャンベルは、シュートセンスはウォルコットより上なのではないかと思います。トップにも入れそうで、楽しみです。

    新参さん>
    「ヴェンゲルさんなりに、オリンピアコス戦を見据えた結果」
    →おっしゃるとおりならカッコいいと思いますが、相方のグーナーは、「俺、カソルラ先輩のかわりやん!とチャンバースが張りきっただけでは?」といっていました(笑)私もそっちのような気がします。

    フッチ坊さん>
    ありがとうございます。追加タイムの怒涛の攻撃は、ムキになっている理由がわからないのにえむいわれぬ迫力が漂っており、マジでおもしろかったです。

    ぐんさん>
    ありがとうございます。エジルのパス、凄かったですね。キャンベルが左足でそのまま打ちやすいような強さにコントロールされており、トラップしたらどつかれるボールでした。

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