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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【MAN.UTD×Saints】スタメン、守備戦術…負けるべくして負けたマンチェスター・ユナイテッド

赤い帽子ではなく、ライオンの帽子を深々とかぶれば、来季のチャンピオンズリーグ出場権を獲得するにふさわしいクラブは、マンチェスター・ユナイテッドよりもトッテナムだと思います。昨日のクリスタル・パレス戦で見せた、デル・アリのスーパーゴールには感動しました。ハリー・ケインが右から出したロングクロスを逆サイドにいたエリクセンがヘッドで落とすと、ボールを地に落とさず右足のインサイドでトラップしたデル・アリは、美しいソンブレロ(相手の頭上にボールを浮かせて抜き去るテクニック)でジェディナクをかわし、落ち際をボレー!あのプレイにあった遊び心と冷静さこそが、23試合で28ゴールとプレミアリーグ創設以来のクラブワーストを更新してしまったファン・ハール監督のチームに欠けているものだと思います。セインツ戦は、押しているチームがはまる典型的な負けパターン。中央に蓋をされてシュートが打てず、むきになって攻めた裏を突かれてカウンターやセットプレー一発でやられる展開は、まさしく「サッカーあるある」です。

13分にブリントが放ったロングシュートが、この試合で唯一の枠内シュートでした。ルーニー、リンガードなどには、遠めからでも積極的にシュートを打っていこうという意識が感じられるシーンはあったものの、本拠地オールド・トラフォードにプレミアリーグのボトム10を迎えた試合でシュート8本は少なすぎます。同じ時間にセルハースト・パークでクリスタル・パレスと戦っていたトッテナムは、24本に及ぶシュートの雨を降らせていました。最近のプレミアリーグ6試合でスパーズ戦のオウンゴールのみの1得点と、マンチェスター・ユナイテッドよりも深刻なゴール欠乏症に罹っているクリスタル・パレスが相手だったとはいえ、「チャレンジなきところに果実なし」。プレミアリーグ4位のスパーズと、運動量とシュートの本数を比べれば、マンチェスター・ユナイテッドに何が足りないのかは一目瞭然です。

セインツでのデビュー戦でゴールを決めた新加入のチャーリー・オースティンは、昨季プレミアリーグで18ゴールを挙げており、彼が素晴らしいストライカーであることは間違いありませんが、セットプレーからの失点はファン・ハール監督の守備戦術の綻びでしょう。31分にクラーシが入れたFKを、ワニャマに競り負けたのはルーニー。62分のCKでワニャマにヘディングシュートを許したのもルーニー。ウォード=プラウズのFKからチャーリー・オースティンにどフリーのヘディングシュートを決められた87分の失点シーンは、ファールを犯して深い位置からのFKを献上したヤヌザイがマークを外し、脇にいたルーニーはボールウォッチャーと化していました。上背がなく、こと守備においてはヘディングが強いとはいえないキャプテンを、ファーサイドのポスト近くというヘディングシュートを狙われやすい位置に据えたのは、守り方を根本的に間違えていたといわざるをえません。

もうひとつ、疑問に思ったのはスタメンです。「なぜマタを使わず、機能していないフェライニのセントラルMFにこだわったのか」。ハーフタイムでフェライニをマタに代えたために、ゴールがほしかった終盤にフェライニの高さというオプションを持ち込めず。1枚しかなくなっていたカードの使い道をヤヌザイとした瞬間、デパイとアンドレアス・ペレイラをベンチに寝かせたまま終わるというゲームになってしまいました。今季プレミアリーグにおいて90分平均で1.2点しか決められていないチームは、ルーニーとマルシアルの連携不足は明らかで、唯一周囲を使える選手を外す余裕などないはずです。キャピタルワンカップの準決勝が控えているマン・シティがデブライネとダヴィド・シルヴァを並べて戦っているなか、彼らよりスケジュールにゆとりがあるチームが、枠内シュートが1本しかなかった先週のリヴァプール戦と同じ顔ぶれで中盤を固める理由がわかりません。

結果論で重箱の隅をつつくように敗因をあげつらうわけでなく、戦略・戦術ともに不可解なことが多すぎたマンチェスター・ユナイテッドは、負けるべくして負けたのだと思います。ファン・ハール監督に対する私の評価は、クラブと選手にリスペクトされている間は大胆でアイデア豊富な戦術家、しかしひとたび結果が出なくなり、ファンや選手からの圧力が高まると「手が縮こまるチキンハート」です。アヤックスでビッグイヤーを獲得し、AZで奇跡的なエールディビジ制覇を成し遂げた名将は、ファンやOBに嫌われたバルセロナや、選手との軋轢がささやかれたバイエルン時代の失敗をトレースしてしまうのでしょうか。2ヵ月という長い間、チームの課題を解決できず、未来が示せない監督にはさほど時間は残されていないでしょう。「負傷者が多く、アンラッキーだ」などと嘆けば、「行列のできるハムストリング診療所」状態を切り抜け、ノリッジから5ゴールを奪って勝ったクロップ監督に叱られます。(チャーリー・オースティン 写真著作者/Brian Minkoff-London Pixels)

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“【MAN.UTD×Saints】スタメン、守備戦術…負けるべくして負けたマンチェスター・ユナイテッド” への4件のフィードバック

  1. parliament より:

    そういえばファン・ハール政権での成果は、プレミアリーグ発足以来で23試合終了時点でクラブワーストの勝ち点、クラブワーストの最小得点らしいですね。勝率も50%を切っていてモイーズよりも低いらしいです。
    この実績をもって分かるのは、彼は不要だと言うことです。確かに過去の実績もありますしアイデアも豊富だとは思います。先のワールドカップでの采配は見事でした。ただはっきり言ってユナイテッドでは目指したいサッカーが見えないし、彼の思想に沿った補強をしても結果は出ない、何も良いとこは見当たりません。
    プレッシャーを受けるのはビッグクラブであれば当然のこと、それを克服し結果を出すのが1番大事な事だと思います。その時点で彼は、マンチェスターユナイテッドというファーガソンが作り上げた偉大なクラブを監督する器では無いのではないでしょうか。
    管理人さんは現状維持をご希望のようなので大変申し訳ないですが、個人的には具体的な不出来の証明たる数字が揃ってる以上、解任して欲しいと思っています。

  2. Uボマー より:

    取ってきた選手に間違いはなかったと思うのですが、使いこなせてませんね。もう解任でおかしくないところ、それでも経営陣が動かないのは後任人事が上手くいってないのでしょう。やっぱり内情がわかってるOBが良いのでしょうか。

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    擁護できない試合でした。こんな手数の少ない試合をいつまで見なければならないのか。彼の改革は守備の向上とチームにリスクを極力減らした攻撃だけです。思えば昨年のディ・マリアのいたシーズン序盤のダイヤモンドシステム。あの時が一番エキサイトでワクワクしていました。あの時に戻ってほしいです。3-0から大逆転され笑われたってあのチームのアグレッシブな攻撃こそがユナイテッドが求めるものであり、LVGがここに来た理由なのです。

  4. makoto より:

    parliamentさん>
    少し誤解があるようです。私は、現状維持をよしとしているのではなく、ファン・ハールさんの言動をネガティブに誇張する記事と、いわれのない罵詈雑言に「事実と違う話をひとり歩きさせるのはやめましょうよ」といっており、チームについては「CL出場権は必達目標、未来に期待を抱かせることができなくなったら監督は代えるべし」と思っています。ただし、次に誰をもってくるのかがみえないなかで、解任ありきの話をしてもなぁ…という気持ちもあります。私の解任やむなし4条件は、(1)不振からの脱却プラン、未来の青写真がみせられなくなったとき(2)冷静に指揮を執れなくなったとき(3)選手との深刻な確執があり、修復不可能となったとき(4)1~3のいずれかがあてはまり、かつ後任に的確な人材がいるとき です。今は1と2が限りなくアウトという認識ではあります。

    Uボマーさん>
    ギグス以外なら誰がいいでしょうね。ブライアン・ロブソン?ロイ・キーン?うーん…。イランからカルロス・ケイロスでも連れてきますか?(サー・アレックスのサポートつき⁉)まさかのベニテス、いきなりモウリーニョ…後任のイメージがつかないので、解任話に乗れない感もあります。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    そうですよね。昨季はおもしろい試合が多かったのですが…。獲った選手がどうかより、出し過ぎたのではないかというほうが気になります。ファン・ペルシ、ジョニー・エヴァンスは残したほうがよかったのではないかとあらためて思います。

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