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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Chelsea×MAN.UTD】開始31秒の衝撃!歯車が狂ったマン・ユナイテッドはなす術なく4-0大敗!

衝撃の始まりでした。開始31秒、マルコス・アロンソのロングボールでペドロが裏に抜け出し、飛び出したデ・ヘアを抜き去って無人のゴールに流し込みました。プレミアリーグ9節、チェルシーVSマンチェスター・ユナイテッド。コンテ監督の選択は、このところ結果が出ている3-4-3です。GKクルトワ、3バックはアスピリクエタ、ケーヒル、ダヴィド・ルイス。カンテとマティッチがセントラル、ウイングバックにはマルコス・アロンソとヴィクター・モーゼスが入っています。プレミアリーグ7ゴールのジエゴ・コスタと中に斬り込んでくるアザールのコンビに要注意と思っていたのですが、先制点を決めたのは右のペドロでした。

いきなりビハインドを背負ったモウリーニョ監督のスタメンは、GKデ・ヘアにバレンシア、バイリー、スモーリング、ブリントまではいつもの顔ぶれ。エレーラとフェライニが中央に並び、リンガード、ラシュフォード、ポグバが2列めです。トップには、プレミアリーグで4試合ゴールがないイブラヒモヴィッチ。いきなりリードされたマンチェスター・ユナイテッドに必要なのは、早くゲームを落ち着かせて2点めを奪われないことです。

5分、ブリントのCKから右に展開し、ラシュフォードが速いグラウンダーを入れるもズラタンに届かず。8分にバレンシアが縦に突破すると、高いクロスをイブラヒモヴィッチがヘッドで叩きますが、ボールはクルトワの頭上を越えていきます。13分、ペドロのパスを受けたジエゴ・コスタがボレーを放つと、CKをダイレクトで打ったアザールのシュートは右のポストすれすれを抜けていきます。ホームチームのリードで、モウリーニョ監督は守備的に戦うわけにはいかなくなり、プレミアリーグらしいエキサイティングな攻め合いが展開されています。

マークが曖昧になりがちだったマン・ユナイテッドは、21分に右からのCKで追加点を奪われてしまいます。バレンシアの頭をかすめたボールをエレーラが処理できず、こぼれ球がケーヒルの足元へ。ボレーはブリントに当たって右隅に突き刺さり、デ・ヘアは何もできませんでした。26分、ブリントが自陣深くでペドロにボールを奪われると、速いグラウンダーはデ・ヘアが足を伸ばしてブロック。アザールのグラウンダーをジエゴ・コスタがヒールで狙った決定機は、バイリーがコースに立ちはだかりました。27分、エレーラのミドルをクルトワが左に弾くと、詰めたリンガードのシュートは素早く体勢を立て直した守護神にセーブされてしまい、マン・ユナイテッドはあと一歩でゴールを奪えません。

バイリーとスモーリングはジエゴ・コスタに翻弄されています。マン・ユナイテッドには、エレーラが思い出したように放つミドルとバレンシアのクロスしかなく、46分に右から入ったクロスはラシュフォードのボレーがうまく当たりませんでした。フリーでパスをもらったジエゴ・コスタのシュートを何とかバイリーがブロックすると、2-0の前半が終了しました。モウリーニョ監督は、ハーフタイムにマタかマルシアルを投入するはずです。ひとたび流れが変われば、2点はセーフティではないことは、リヴァプールを苦しめた昨日のWBAが証明してくれています。

やはり、フェライニをマタでした。後半、より攻めにシフトする姿勢を明確にしたモウリーニョ監督ですが、最終ラインはジエゴ・コスタとアザールに振り回されています。52分、マン・ユナイテッドに絶望的なアクシデント。バイリーが膝を痛めてしまい、代わりに入ったのはロホです。56分、左から放ったリンガードの強烈なミドルはクルトワがセーブ。ようやくアウェイチームが自分たちの時間を過ごし始めた矢先に、アザールが勝負を決めました。62分、10番が左サイドでカンテに落とし、マティッチからの縦パスを受けると、スモーリングは完全にかわされ右足インサイドのシュートが右隅へ。残り30分とはいえ、今のマン・ユナイテッドに3点を返す力はないでしょう。マルシアル登場は、時すでに遅し。試合を捨ててないですよというポーズのような打ち手です。

ファン・ハール監督の下で成長したスモーリングは、新しい布陣のなかでは凡庸なCBになってしまいました。70分、前線に出たカンテにスモーリングが簡単に振り切られ、左のサイドネットに4点めが吸い込まれます。ズラタンはむきになっていたのか、前半はおそらくセルフジャッジで中盤に下がってボールをさばいていましたが、この時間帯は最前線にいるラシュフォードの後ろにポジションを取っています。若いチャロバーに続いてウィリアン、バチュアイを投入したコンテ監督の交代は、次戦以降を見据えたものでしょう。81分、マタの素晴らしいクロスを受け、体を倒しながらコントロールしたズラタンのボレーは、クルトワが左手に当てるビッグセーブ。最後のロホのロングシュートもチェルシーのGKが上に弾き出しました。意地を見せられず、収穫もないまま、マンチェスター・ユナイテッドは失意のうちにロンドンを去ることになりました。

まずは、コンテ監督の3-4-3をリスペクトしたいと思います。前線の3人の流動性が高く、ウイングバックとマティッチからの速いボールで手数をかけずにゴール前に運ぶ攻撃は、今やプレミアリーグNo.1を争うクオリティです。ユーヴェで指揮を執る前に採用していた4-2-4と今のシステムは、「ゴールに速く迫ることで得点の可能性を高める」という基本コンセプトは同じでしょう。この形になってからは、より高い位置に構えるアザールやペドロが中に侵入するシーンが増え、マーカーを背負うジエゴ・コスタの負担が軽くなったように思います。幅広いエリアをカバーするカンテの守備力と、前線に的確なパスを配給するマティッチの貢献度も高く、彼らが前と後ろをうまくつなげています。4ゴールはアウェイチームがやられすぎですが、開始直後のゴールがなくてもチェルシーの完勝だったのではないかと思います。

一方、開幕から2ヵ月経っても、マンチェスター・ユナイテッドの基本戦術が固まらないのはなぜでしょうか。シーズン前には4-2-4を試していたコンテ監督が、最終ラインの枚数を変えるぐらいのフォーメーション変更を成功させているなかで、こちらはポグバの活かし方すら見えていません。プレシーズンにはプレミアリーグ2016-17シーズンの優勝候補とまでいわれたチームは、攻守とも完成度が低く、選手交代で状況を変えられないことを露呈しました。昨季プレミアリーグで11ゴールのマルシアルは力を発揮できず、この日は負傷でいなかったルーニーの役割も不明確。チェルシー戦ではマタを外してエレーラとフェライニを同時起用したにも関わらず、守備の強度を上げられませんでした。

プレミアリーグ9試合で4勝2分3敗、得点13失点12は、上位を争うクラブの数字ではありません。バイリー負傷という激痛のアクシデントも加わったなかで、モウリーニョ監督はチームを立て直すことができるでしょうか。上位2チームがドローに終わったのは不幸中の幸いですが…。今のこのチームには、ムヒタリアンがそろそろ復帰できそうという以外に、明るい材料はありません。

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“【Chelsea×MAN.UTD】開始31秒の衝撃!歯車が狂ったマン・ユナイテッドはなす術なく4-0大敗!” への14件のフィードバック

  1. シティふぁん より:

    守備が安定したチェルシーは攻撃も安定しますね
    上位陣の勝ち点差がほとんどなくかなりスリリングです
    ユナイテッドは今いる選手に今の戦術は合わないのでは?

  2. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    正直この結果は予想はしていませんでした。
    チェルシーは強かったですね。アザールは完全復活ですね。素晴らしいかったです。個人的にはモーゼズも効いていたと思います。
    しかし開始30秒ほどで1点決められたとはいえ、ユナイテッドの戦い方が見えないゲームに感じました。ミッドウィークのカップ戦はダービーですが、この状態で臨むのはかなり酷な状況だと思います。

  3. SG8 より:

    更新お疲れ様です。
    ユナイテッドがチームもモウリーニョもどちらも元気がないのが気になりますね。
    モウリーニョは、昨シーズンのチェルシーでのメンタルをそのまま引きずっているかのような感じさえ受けます。

  4. スパーズ推し より:

    ポグバの活かし方、というより、
    ポグバを活かし、ポグバに活かされる選手がユナイテッドにはいないように見えるのは気のせいでしょうか?
    それは運動量が豊富でボールを貰いに奪いに動き回れるボランチであり、そして縦パスの出せるCBであり……

    ポグバが後ろに下がってボールを貰いたがる場面は目立ちますが、むしろそうさせている周りの方に問題があるのでは、と思いました
    後ろでゲームを作れないから、仕方なくポグバが下がらざるを得ない
    でも、ポグバは後ろからのゲームメイクでは良さを出し切れない、そう言う矛盾を感じます

    あと、何故フェライニは重用されるのかが分かりません
    足元、視野、守備時のスペースを埋める動きもユナイテッドクラスのチームが求めるボランチとしては凡庸極まる選手ではないでしょうか?
    少なくともポグバの横に臨機応変に動けもしない木偶の坊を並べているようでは、
    ユナイテッドは今期のプレミアにおいて脅威にはなり得ないと感じます

  5. トマト より:

    まだ数試合うまくいっているというだけですが、3-4-3が今のところはうまくはまっていて見ている側としてとても楽しいです。モーゼスは見事にウイングバックに適応しましたね。チームみんなが調子上向きにあるように感じられるので、この調子を維持してほしいです!

  6. スパーズ推し より:

    二度目の投稿すいません、どうしてもあと一つ

    ポグバとイブラの共存については、どう思われますか?
    個人的にはミスマッチかな、と思っているのですが……

  7. のこ より:

    前だけではなく後ろの完成度の低さも露呈した試合だったように思います。
    チェルシーは素晴らしかったですね。ユナイテッドも敗戦を契機に盛り返していってほしいです。

  8. MUFC.No.7 より:

    3つ考えました。1つ目はモウリーニョはこれまで簡単に短期間で自分色のチームに染め上げました。ここまでまだ自分の色が定着していないのは、新しいアプローチをしていて時間がかかっている。長くファーガソンの後継者として指揮をとるなら、今までよりも変わらなければいけない部分があるため、とても大事なことです。長く見守りたいと思えます。
    2つ目は、単純にスター選手に任せた攻撃をしていて、自分の色を出そうとしていない。主にレアルでの確執が原因であり、また衝突は避けたいと臆病になっているから。そして、チェルシー時代の事を考え、これ以上キャリアを汚したくないモウリーニョは自分を出せずにいる。これは最悪なパターンです。バスサッカーと言われようが意地でも勝ち点を拾う。それが彼の良さであり強さです。
    3つ目、時代が彼を追い越しつつある。柔軟性のない監督は落ちていきます。それでも認めようとせず、キャリアが終わってしまうパターンですね。モウリーニョにも柔軟性が求められてきたのかもしれません。
    どうか1つ目であってほしいと願います。

  9. kou より:

    チェルシーはアーセナル戦の完敗を引きずらずに今年度の戦い方を見事に成熟させてきました。さすがはコンテ監督ではないでしょうか。セスクやオスカルの処遇が気になるところですが・・・

    マンチェスターUはひどいの一言です。守備の要バイリーが抜け、その後に拙いプレイから失点しているのを見るとまだまだ底はありそうです。
    攻撃は個人技頼みでそれが通用する格下ならいいんですが、上位相手にはどうやって点を取るつもりなんですかね。先制点を取られたらもう終戦とはプランが無さすぎます。

    壊れたチームを立て直すのは時間がかかるとは言われますが、曲がりなりにもFA杯を取ったチームが自分が降格圏まで崩壊させたチームに蹂躙される様を見てどう感じたのでしょうか。
    ただただモウリーニョ監督への疑問が尽きない90分間でした。

  10. makoto より:

    シティふぁんさん>
    チェルシーは、俄然よくなりましたね。適材適所だと思います。マン・ユナイテッドは、ラシュフォードを前に上げた4-3-1-2や、4-3-3にしたほうがうまくはまりますね。バレンシアとブリント(ルーク・ショー)をアウトサイドに置くならば、チェルシーと同じ形もありえると思います。問題は、モウリーニョさんのやろうとしているサッカーは、何人かの選手に無理をさせる(ラシュフォードをサイドの守備で忙殺、ポグバがバランスを気にしないと上がれない、バレンシアのSBなど)サッカーだということではないかと思います。

    Mackiさん>
    いやー、強かったです。レッズはひと足先に当たっておいてよかったですね。

    SG8さん>
    私も、モウリーニョさんは引きずっているようにみえます。選手に気を使いすぎているのではないか、と。

    スパーズ推しさん>
    ポグバを活かし、活かされる選手ということであれば、活かすほうはブリントかシュナイデルラン、活かされるほうはマルシアル、マタ、ムヒタリアンなどいないこともないのかなと思います。フェライニは開幕からしばらくはよかったのですが、フィジカルの強さと運動量頼みなので、展開力を求めるならキャリックかシュナイデルランにまかせたほうがよさそうです。後ろが心配だからポグバが下がる、ボールがこないからズラタンが下がる、と選手のセルフジャッジが悪循環を生んでいるところはありそうですね。

    トマトさん>
    アザールとジエゴ・コスタが楽しそうですね。コンテ監督、素晴らしいと思います。

  11. makoto より:

    スパーズ推しさん>
    そもそも元の持ち場が離れているので、そういう印象はないですね。カソルラとジルー、ワイナルドゥムとスタリッジ、デンベレとハリー・ケインの相性に誰もフォーカスしないのと一緒です。「トップ下ポグバ」としたときにうまくいっていないので、おっしゃるような印象があるのかもしれませんが、ズラタンとどうこうではなく、狙いがないことのほうに問題があるのではないか、と。ちなみに4-3-3で戦ったレスター戦は、2人が近くでプレイしたときにいい連携を見せていました。

    のこさん>
    残念ながら、そうですね。スモーリングは自信喪失気味でした。

    MUFC.No.7さん>
    既に複数のフォーメーションを操っているペップやコンテを見る限りでは、「1つめ以外」にしか見えませんね…。我慢強く見守ろうというのは同感ですが。

    kouさん>
    そうですね。守備において、組織戦術で個々の実力以上の堅さを創出するということにおいてはファン・ハールさんは悪くなかったので、バイリーが加入してルーク・ショーが戻ったチームがこれだけ崩れているのは、指揮官の手法によるところが大きいのではないかと思ってしまいます。

  12. チェルサポ 一男太郎 より:

    今回は面白いゲームでした。
    別に私がチェルシーのファンだからというのではなく、モウリーニョとコンテの明暗がはっきりわかれた結果になりましたね。
    3バックにしてからのチェルシーはクリーンシートで全勝と波に乗っていますね。
    モウリーニョは今度どうなるんでしょうね。
    仮にマンUも解任されたらなかなか彼を招聘しようとするビッグクラブは現れないのでは・・・と思ってしまいます。

  13. パチ より:

    モウリーニョは中々変わらないですね。
    個人的にはマドリー3年目のころにはMUFC.No.7さんの仰る2つ目・3つ目の状態だと危惧していて、チェルシー帰還で変わって欲しいと願っていたけど変わらなくて残念だなとは思っていたのですが…。ユナイテッドでも今のところ同じですね…。

    柔軟性に関してはポルト時代(CLでは4312、国内では433と使い分け)には持っていたと思うんですが、ドログバ・イブラ・ロナウドとタレントに頼るサッカーを続ける内に失われてきたって感じで、今の時代それじゃ厳しいよって感じですかね…。
    まあ待つしかないですね。

  14. makoto より:

    チェルサポ 一男太郎さん>
    チームづくりで完全に負けてましたね。クロップ、ポチェッティーノ、グアルディオラ、ヴェンゲルの4人に引き出しの数で負けている感があるので、悪くなったら立て直さないのではないかと危惧しています。

    パチさん>
    そうですね。攻撃が選手まかせにみえるのがいちばん気になってます。

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