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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

2016-17シーズン現地観戦記~(4)鬱屈と情熱のアンフィールド~リヴァプールVSアーセナル

現在、イギリス滞在中の本ブログ特派員が送るプレミアリーグ現地観戦記。FAカップのリンカーン戦に続く第2弾は、プレミアリーグ27節のリヴァプールVSアーセナル、お伝えしたいのは「アンフィールドの今」であります。赤いユニフォームの選手たちだけでなく、ライバルクラブの選手、監督、サポーターの多くが、「あそこの雰囲気は最高」と畏怖と敬意を込めて語る聖地には、どんな空気が漂っているのでしょうか。さっそく、レポートしていただきましょう。では、どうぞ!

リヴァプールの本拠地アンフィールドといえば、イングランドでいちばんチケットが取りづらいスタジアムといっても過言ではないかもしれません。聞くところによると、地元のサポーターも、シーズンチケットを手に入れるまで25年待ったという話もあるというほど。25年……四半世紀にもわたり変わらぬ愛と情熱を持ち続けることができるサポーターの集団と思えば、テレビカメラ越しにさえ伝わってくる熱気にも納得がいくというものです。今回、幸運にもそんなアンフィールドに乗り込む機会を得て、(もちろんアウェイサポーターとして)行ってまいりました。

実は、アンフィールド自体には、今までにも2度訪れたことがあります。2度ともお隣のグディソンバークでの試合を観に行った機会に立ち寄ったもので、立て込んだ住宅地の中にドンとそびえる様子には威厳を感じたものの、古さや天気、町の雰囲気もあって若干荒涼としたムードも感じたものでした。しかし、今回初めてマッチデーに訪ねてみてそのイメージは一変。「やはりスタジアムは人が集まってこそ」なのか、あるいはそこがリヴァプールだからなのか、とにかく、人々の活気とどこかポジティブなムードは非常に印象的です。我らがヴェンゲル監督をはじめ、他チーム関係者までが「プレミアリーグNo.1のスタジアムはアンフィールド」とうっかり評してしまう、そんな魅力がスタジアムの外にまで溢れています。
まずはスタジアム周りをぐるりと1周してみます。公園に面した裏門側にはファンゾーン。フィッシュ・アンド・チップスやバーガーなどを売るストールが並ぶほか、子ども用と思しきミニサッカーコーナーがあり、ボールを蹴る子供たちをお父さん連中が見守っています。ファンゾーンの入口隣には、アンフィールド名物の露店、”Everpool”。隣り合う2つのクラブ、エヴァートンとリヴァプールを足して2で割った店名(カラーリングも青と赤)と思われますが、お隣同士としては最も友好的と言われる両クラブならではの存在といえるでしょう。
その向かい側にある門が、“You will never walk alone”の文字が掲げられた「シャンクリーゲート」です。
住宅地に隣接した道を回り込んで正面側に出てみると、さすがにものすごい人です!露店も、公式グッズを売っているような店からゴミ箱の上で店開きしているピンバッジ屋(しかもけっこう流行っている)まで数も豊富。行列ができているパブも、スタジアムの外周だけでざっと4、5軒はあるでしょうか。プレミアリーグのマッチデーの雰囲気を凝縮したような光景が広がっています。
正面ゲートは公式ショップのある側。ショップ内も覗いてみましたが、グッズの種類も量も豊富で、ファンならずともお土産の買い物が楽しそう。ジョークをプリントしたTシャツはちょっとしたイギリス名物(?)ですが、そんなデザインのTシャツも公式ショップで扱われています。
さらにぐるっと回り込むと、今シーズン増設された噂のスタンドが出現します。ここまではどこか雑然として、それが魅力でもあったのですが、このスタンドについてはさすがにモダンで美しく立派そのもの。スタンドの一画には、ヒルズボロの悲劇で亡くなった方の慰霊碑もあり、多くのサポーターが入れ替わり立ち代わり足を運んでいます。ただ、詳しい方の話によると、増設された席の多くは、値段の高い、いわゆる「クラブレベル」に類する席なのだそうで、庶民的なKOP(リヴァプールサポーターの愛称)のみなさんのことを思うと残念な気も……そんな思いで見ると真新しいスタンドもモダンすぎてちょっと味気ない感じもしますが、今後歴史を重ねていく中で、これも素晴らしいアンフィールドの一部となっていくことを祈りましょう。
さて、スタジアム内です。入ってすぐ、ゴール裏に網が張られていることに愕然としたのですが(本来、こういう障害物がないことがプレミアリーグのスタジアムの大きな魅力です)、聞けばウォーミングアップ中にボールがスタンドに飛び込んでくるのを防ぐためのものとのことで、確かに、ウォーミングアップが終わるや否や迅速に片づけられました。逆に、ゴールラインと最前列が非常に近いクラシックなプレミアリーグのスタジアムならではの対策といえるのかもしれません。ちなみにこの試合、アーセナルのアレクシス・サンチェスがスタメンに入らず、試合後にはその理由についてさまざまな報道が飛び交いましたが(サンチェスのわがままぶりが目に余るのでスタメンを外されたとかなんとか)、あらためて見てみるとアップ時のサンチェスの表情は明るく、そんな理由ではなかったんじゃないかな?と思わずにはいられません。
ホーム側のスタンドに目を向けてみると、アップ中から大旗やら何やら非常ににぎやか。アーセナル戦というビッグマッチだからなのか、それともいつもこうなのか、さすがに聞いていた通りの情熱的なスタンドです。そして試合開始時刻の“You will never walk alone”の大合唱。マスコットの”Mighty Red”も見守るなか、スタンドはまさに揺れんばかり。ロンドン在住のアーセナルサポーターの友人がよく、「全員で歌える歌があるのは本当にうらやましい」と言うのですが、実際にアンフィールドでこの大合唱を聞いてその意味を実感しました。「歌がある」というだけなら他のクラブにもあるのですが、やはりこの歌は、歌詞も含めてその美しさも大きいと思います。ヒルズボロの悲劇のような苦難の歴史、おそらくは恵まれているとはいえない地方都市の暮らし(現に、口の悪いアーセナルサポーターなどは、“You will never get a job”なんていう替え歌で彼らを揶揄します)……そんなビハインドを背負っているからこそ、この歌が力を持つということもあるのでしょう。

試合内容については、もはや多くを語りますまい。この日のビッグマッチで敗戦したアーセナルが、このあとのバイエルン戦も含めて絶不調のどん底にあるのは皆さんご存じの通りです。アウェイスタンドの雰囲気もそれを映し出すようなフラストレーションに満ちたもの。私のすぐ近くだけでも、スチュワードの再三にわたる注意を無視して警察に連れていかれた人がひとり、隣のサポーターに殴りかかってやはり警察につまみ出された人がひとり。2点目を失ったときには、“Where is our manager♪(オレらの監督はどこにいるんだ?)”と、オペラ『リゴレット』のアリア、「風の中の~羽のように~」のメロディーで歌うチャントも飛び出して、アウェイ席は何とも言えないやさぐれた雰囲気に包まれていました。そんなアウェイサポーターに向かって、遠慮なく勝ち誇るチャントを浴びせてくるリヴァプールサポーター。それも腹立たしいというよりはむしろ「アッパレ」という感じ。いよいよアーセナル愛を試される局面ではありますが、これもまたサポーター道というものです。

ということでこの日のレポートは終わりにして、最後に、リヴァプールで現地観戦をしたい人向けの情報を。一般席の売り出し方が特殊で、とにかく非常に取りにくいアンフィールドでは、「ホスピタリティ・パッケージ」がおすすめです。観戦チケットとスタジアム内外のレストランでの食事がセットになったパッケージで、一般の席と比べると割高ではありますがその分完売しにくく、比較的試合間近に買える場合があるのです。公式サイトから簡単に買うことができ、クラブのメンバーシップに加入していなくても買えるという点も「一度行ってみたい」というライトなファンにはメリットでしょう。割高といっても、ロンドンなどと比べると場所柄もあってか超お手頃で、価格はだいたい100ポンド~200ポンドの間。比較するためにアーセナルのマンチェスター・シティ戦のホスピタリティ・パッケージを見てみたら、最低価格でも960ポンド。え?マジですか!? スタジアム内でのレストランでのディナーと特別席での観戦がセットになっているとはいえ……そりゃみんな現状の成績に文句をいいたくなるワケだよね…(と最後は無駄に凹んだ特派員なのでありました)。

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“2016-17シーズン現地観戦記~(4)鬱屈と情熱のアンフィールド~リヴァプールVSアーセナル” への2件のフィードバック

  1. nor より:

    文章から書き手の興奮が伝わってきますね。
    毎年変わるとは思いますが、是非ロンドン(SB、EM、、)やマンチェスター(OT、CM)の現地観戦をするチケットの入手アドバイスや相場あたりもどこかの機会でお願いしたいです。

  2. makoto より:

    norさん>
    承知しました。スタンフォード・ブリッジが手強く、エティハドはいける感じです。高いけどいい席、お手頃価格といろいろワザがあるので、紹介させていただきます。

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