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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

2014-15シーズン現地観戦記~(8) 悪夢甦るセント・ジェームズ・パークでハラハラ勝利!

前稿「2014-15シーズン現地観戦記~(8) コンパクトな街ニューカッスルはスタジアムへもアクセス良好」より続きます。

さて、試合前1時間を切る頃になると、スタジアムに向けて人の流れが生まれ始めていました。地図を見ながらその方向についていくと、中華街のゲートが現れ、その向こうにドーンとスタジアムが。なぜかはわからないけど「ここデカいな!」というのが第一印象です。5万2000人収容のスタジアムは、確かにこれまで訪れた他のスタジアムのうちでは大きい部類ではありますが、それでもエミレーツスタジアムやオールドトラッフォードよりは小さいはず。でも何だか威圧感があるのは、鉛色の寒空に土色という外観のなせる業なのでしょうか。そういえば言い忘れていましたがニューカッスル、明らかにロンドンより寒いです!電車を降りた瞬間から寒かった。それでもスタジアム周辺には半袖の男たちがいっぱいいましたが!

そんな要塞風の土色のスタジアムは入り口もなかなかハードコア。実はここ、Turnstile=入口のゲートの狭さにこだわる筆者に、友人が「プレミアリーグでも一、二を争う狭さ」と教えてくれたスタジアムでもあるのですが、言うだけあってもんのすごく狭いです。

ちなみに筆者の前の人はリュックがひっかかってワタワタしてました。ここはアウェイエリアなので、ホームエリアについては分かりませんが、オールドトラフォードの経験から察するに、ホームとアウェイにあまり差はないのではないでしょうか。ニューカッスルサポの大男たちはいったいどうしているのかと心配になります。

そしてそこからがアウェイ席への長い長い道のり。席にたどりつくまで、7階分の階段を上らなければなりません。途中、なぜかアーセナルのステッカーが壁に貼られているのにクスリとしたり、天井近くにあるエアコンの室外機にチェルシーのステッカーが貼られているのに「どうやって貼ってん!」と突っ込んだりしつつもだんだん疲れてきます。
ここに限った話じゃないけど、スタジアム観戦、とくにここへは、女性は絶対に!かかとの高い靴で来ないように!席にたどり着くこと自体がスポーツなんだから!などと自分(と勝手に他人)を鼓舞しながら階段を上りきり、スタンドへの入口を抜けると……いやいやこれまでの疲れを忘れるとはこのこと。目の前には物凄い絶景が広がっていました。
一望のもとに広がるピッチの緑、ホームサポで埋まった満席のスタンド、その向こうに広がるニューカッスル・アポン・タインの街。ニューカッスルの観光記事には、Castle Keepと言われる城跡(これがNewcastleの地名の由来)に上って見る街が絶景などと書かれているけれど、セント・ジェイムズ・パークのアウェイスタンドからの眺めも凄いよ!ニューカッスルのシンボルとも言われる噂のアーチ橋、Tyne Bridgeも見えるじゃないか。これは本当に素晴らしい。
スタジアムの構造上、アウェイ席のあるLeazes StandとバックスタンドにあたるMilburn Standのほうが高くなっているようで、両スタンドの最上段はある意味特等席と言えるかも。勾配も急で非常に見やすく、それでいて怖い感じがしないのはおそらく、足元のスペースに十分な余裕があるから。いいスタジアムじゃないか!もちろん集結したアウェイサポも最高。筆者同様、家から4時間はかけてやって来た人が大半なはずなのに、試合前から立ち上がってチャントを歌ってと元気いっぱいです。
試合のほうも、そんなアウェイサポの後押しを受けて快調な滑り出し。立ち上がりから、何だかポジティブな雰囲気が漂います(主観)。そんないいムードの17分、突然スタジアムが拍手で満たされました。何だろう?と思ってビジョンを見ると、そこには名前だけが入った2つのシャツが。

後から知ったところでは、実はこれ、例のウクライナ上空で撃墜されたMH17機に乗っていて亡くなった2人のニューカッスルサポーターを追悼したもの。昨年夏、ニュージーランドで行われたニューカッスルのプレシーズンツアーを見に行く途中で事件に巻き込まれてしまったんですね。それでIN LOVING MEMORYなのかなあ。昨年8月のBBCの記事によると、「サポーターズグループと地元紙がセント・ジェームズ・パークのすべての試合でtributeを繰り返すように呼びかけた」とあるので、毎試合やっているのでしょうか?筆者の周辺のアーセナルサポも全力で手を叩いていて、クラブを超えたフットボールファンの連帯を改めて感じました。

と、そんないい話の直後にではありますが突如訪れたアーセナルの時間。24分にジルーがサクッと得点(分かりにくいですが写真は得点につながったカソルラのFKの瞬間)してからは、ぐいぐい攻めて28分にもう1点。あら何だか楽勝ムード?ニューカッスルサポも黙り込んじゃって、周りからはこんなチャントが聞こえてきます。“♪Where’s your famous atmosphere?”

ホームサポに向けて「おいおい~素晴らしいと噂の雰囲気はどこ行っちゃったの?」と茶化すこのチャントは、普段から「熱い」と言われるスタジアムでしか歌われないそうで、筆者も数度のアウェイ観戦の中で初めて耳にしたもの。日頃から「熱い」とまさに「有名」な、セント・ジェイムズ・パークならではの、貴重な歌を聞くことができたというわけです。ちなみにこの後チャントは同じメロディーで“♪Are you Tottenham in disguise?”と続いてアーセナルサポは超ご機嫌。「お前らホントはトッテナムなんじゃないの~?」というこの歌は、相手が弱いときに「弱いヤツ」=「トッテナム(アーセナルの目の敵)」に喩えて揶揄する定番チャントです。

ああいろいろ楽しい!しかし、筆者もご機嫌のそんなムードを一瞬で凍りつかせたのは、後半開始直後のニューカッスルのゴールでした。というのは、というのはね。アーセナルサポなら誰もが忘れることのできない事件が昔、セント・ジェームズ・パークで起こりましてね……あれは、10-11シーズンでしたか、4-0で前半を終えたはずなのに、終わってみたら引き分けていたという……テレビ観戦していた筆者も、ハーフタイムで「まあ今日はもらったな!」と思って悠々お風呂に入りに行き、出てきて愕然とした記憶がございます。

それからというもの、筆者の周りのサポ間では、「4-0は安全圏じゃない。いやむしろ危険」なんていう定説もできたほど。そんな事件を思い浮かべなかったアウェイサポは一人もいなかったんじゃないでしょうか。当然、ホームサポは元気百倍。“famous atmosphere”も大復活で一気に反撃に転じます。アウェイスタンドに向かってもヤイヤイ言って来て、我々の方も内心の動揺を気取られまいと(いや完全に気取られてると思うけど)応酬に必死です。

さらに、中盤の底で相手のプレーの芽を摘みまくっていたコクランが接触して倒れ、戻ったと思ったら両鼻の穴に綿を詰めてプレーしているではありませんか!エヴァートン戦(たしか)で負った鼻の骨折の患部をまた痛めたのでしょうか。そういえば背中に背番号がない!きっと着ていたシャツが血で汚れちゃったんだなあなどと心配は重なるばかり。
ドキドキハラハラの後半は、オスピナのスーパーセーブなんかでますますヒヤヒヤしながら何とか終了。最後は、エヴァートン戦での得点シーン以来姿を見ていなかった(風邪だったんですって?)ロシツキのスーパー美トラップなんかも見せていただいて、とりあえずまあホッとした、というのが正直なところ。ホッとしたところで今日お手柄のジルーさんは、がんとの闘病から復帰第一戦(後半から登場)のグティエレスと仲良くシャツ交換です。
それにしても、気づけば筆者の渡英以来アーセナルは全勝。現地観戦できていないプレミアリーグQPR戦と、チャンピオンズリーグモナコ戦も含めて全て!(まあチャンピオンズリーグの勝ち抜けはできなかったけど、試合自体は勝ちは勝ち)そう考えたら嬉しくなってきたのと、これがこの旅最後の現地観戦だと思うとなかなか立ち去りがたく……そんな気持ちで人影の消えつつあるスタンドに立ちすくんでいると、いつのまにかカモメがたくさん集まっていました。そうか、人が消えたあとのこの場所は、君たちの場所なのね。これも海に近い街、ニューカッスル・アポン・タインのスタジアムということなのでしょうか。
帰り際、スタジアム前のサー・ボビー・ロブソンの銅像にご挨拶し、中華街ゲートの手前にある城壁跡を眺めて最果ての観光気分もちょっとだけ味わって、そのあとに思ったことは……「時間があ ま る!!!」 そうなんです。試合が17時に終わったとして、モタモタすると18時の電車じゃ乗り遅れるかな?なんて考えて19時過ぎの電車を予約してしまったのですが、しつこいようですがセント・ジェームズ・パークは駅からも近いです(せいぜい徒歩15分~20分)。
完全に読み違えた筆者でしたが、中華街ゲート前のレストランのあったかい香港式ミルクティですっかり落ち着き、ゆったりした気分で19時過ぎの電車に乗り、車内の大混雑にもめげず、ロンドンまで4時間半近くの道中(途中工事のせいで行きとは違うルートを通るため。This is UK!)を爆睡して帰ったのでした。

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“2014-15シーズン現地観戦記~(8) 悪夢甦るセント・ジェームズ・パークでハラハラ勝利!” への2件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    セント・ジェームスパークはTVを通じても素晴らしい雰囲気を感じるスタジアムだと思います。
    TVを通じてしかわかりませんが、スタンドの傾斜が急に見えるのはピッチをよく見せるための配慮?なのでしょうか、、。スタンドがピッチを包む感じがします。
    観戦記ローカルネタ満載で面白かったです!次回も期待します。

  2. makoto より:

    Mackiさん>
    ありがとうございます。アウェイチームが「素晴らしいと噂の雰囲気は、どこ行っちゃったの?」とスタジアムとサポーターを認めているあたりがいいですね。このチャントは、アンフィールドでもおなじみだそうです。

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