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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

勇気あるひとことがケガを未然に防いだ!? スターリングの「疲れている発言」騒動に思うこと【前篇】

先日、コメント欄で、「ネガティブな論争がスターリングを中心に起こっている」と教えていただいたときは、状況を理解していなかったのですが、元は「ホジソン発言」だったのですね。やっとキャッチアップしました。ユーロ2016予選のエストニア戦の前に、プレミアリーグやカップ戦で獅子奮迅の活躍をみせていたスターリングが疲労を訴えたという話が代表監督の口から洩れ、これがヒートアップして、スターリングへの糾弾という騒ぎになっているというお話です。

「練習で軽いセッションをやる段になって、スターリングは『自分は疲れている。今はベストの調子にないと思う』といってきた。彼が正直にいってきてくれたことを、私は称えた」

なぜ、ホジソン監督がこのことに触れたかといえば、関係者やサポーター、マスコミから「選手の酷使はケガにつながるから避けるべき」という意見が出ていることに対して、それを代表チームだけが背負うのはアンフェアだと言いたかったからでしょう。イギリスメディア「スカイスポーツ」に、ホジソン監督はこんなことも語っています。

「(イングランド代表がリヴァプール以上にスターリングを休ませるべきかと聞かれて)そうではないことを願っている。それはフェアじゃない。確かに、試合が多いトップチームでは、選手たちが心身ともに苦しむときもあり、われわれは選手たちの運動量に配慮しなければならない。しかし私は、選手が休めるようにという期待をすべて私がかぶるのは、アンフェアだと思う」

リヴァプールの選手については、メディアや熱狂的サポーターのみならず、ブレンダン・ロジャース監督からも「スタリッジに充分な休養を与えず練習させた」と非難されており、ホジソン監督にしてみれば、「スタリッジは練習に参加する意志をみせていたのだし、スターリングのケアについては、ミッドウィークのキャピタルワンカップで120分使ったロジャース監督にいわれたくない」というような思いもあるのではないかと察します。プレミアリーグでフル出場を続けて疲れている選手ばかりを派遣され、「誰それは何分しか使わないでくれ」「あの選手は最初の2日間はミニゲームをやらせず、軽いメニューにしてくれ」などというオーダーが殺到すれば、チームづくりも何もあったものではありません。ファンはよくばりで、「わがクラブも母国の代表も勝ってくれ」というわけで、プレッシャーのなかにいる代表監督が、自分にばかり押しつけないでくれといいたくなるのは、わかる気がします。一方で、プレイするのが不安な状態であれば、クラブであれ代表であれ、選手はそれをスタッフに伝えるべきでしょう。スターリングが疲れていると口にしたことと、ホジソン監督が代表チームばかりが責を問われるべきではないといったことについては、それぞれ納得です。

とはいえ、この件については、私は2つ、思うところがあります。ひとつは、「試合に出続けている選手がケガをしやすい、というのは本当なのか」という疑問。そして今ひとつは、「この騒動の問題点は、ホジソン監督はスターリングの訴えを公にするべきではなかった、という1点である」ということです。

前者については、率直にいえば、「ケガ人が多いクラブがなぜそうなのかが、私にはわからない」のです。このところ、主力の負傷に悩まされ続けているアーセナルのサポーターのみなさんのなかには、「エジルを酷使して壊した」とおっしゃる方もいますが、まあ、あれだけ負傷者が多いと、いいたくなるお気持ちはわかります。しかし、事実が示しているものは、「アーセナルばかりが特定の選手を使い続けているわけではない」ということになります。ワールドカップ後に長い休みを取ったエジルは、プレミアリーグ開幕戦を休んでおり、途中交代も多い選手。アーセナルで、プレミアリーグ7試合すべてにスタメンで出場しているのは、GKシュチェスニーのみです。

一方、ケガ人が少ないと模範であるかのようにいわれているチェルシーは、クルトワ、イヴァノヴィッチ、ケーヒル、テリー、アスピリクエタ、マティッチ、セスク、アザール、ジエゴ・コスタと、実に9人が「プレミアリーグ全試合スタメン」。ロンドンの2クラブを比較すれば、チャンピオンズリーグでプレーオフを戦っているアーセナルのほうが試合数が多い、キャピタルワンカップで対戦相手が楽だったチェルシーはこちらではメンバーを落としているなど、さまざまな違いはありますが、少なくとも、数字を見れば、「チェルシーはターンオーバーできていて”酷使”はしていない」とはいえません。

オフシーズンでの体づくり、日々のトレーニングの強度、選手個別の情報収集とケア手法の確立、体が堅くてケガしやすい選手の有無、試合後のクールダウンの方法、痛めたときの適切な処置(エジルは、チェルシー戦の前半で足を痛めていたのに代えなかった、というのが問題のようですね)など、さまざまな要素が絡み合って、ケガ人が多い・少ないという結果につながっているのだと思います。このあたりについては、スポーツ医学の専門知識に乏しい私は、語る術がありません。今季のマンチェスター・ユナイテッドにおけるケガ人の多さについては、「シーズン前の体ができていない状態で、本番モードでインターナショナルチャンピオンズカップを勝ちにいった後遺症」という仮説を持っておりますが、これとてどこまで事実かわかりません。

よって、私は、ケガ人の多さについては、「心配」「残念」と語ることはあっても、「監督が悪い」「クラブが悪い」という強い非難はしないと決めています。結論が出ない話なので、とりとめのない言葉に終始してしまって恐縮ですが、まとめるとすれば、「われわれサポーターは、あらためて”実際のところはわからないので、クラブにまかせ、祈るしかない”という立ち位置であることを確認して、誰かに対する罵詈雑言にも似た批判は控え、愚痴や心配を口にする程度にとどめたほうがいいのではないか」という感じでしょうか。うーん、煮え切らないですが、実際にモヤモヤしているので、すみません、いえるのはこのぐらいです。今回は、スターリングが勇気をもって監督に自らの不調を伝えたことで途中出場となり、ケガを未然に防いだとポジティブに捉えています。…この稿、長くなりましたので、「スターリングの『疲れている発言』騒動に思うこと【後篇】」に続きます。

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“勇気あるひとことがケガを未然に防いだ!? スターリングの「疲れている発言」騒動に思うこと【前篇】” への2件のフィードバック

  1. Uボマー より:

    以前ワールドサッカーダイジェストでモウリーニョのチームのフィジカルトレーニングが記事になっていたことがありまして、基本的にシーズン中はボールを使わないフィジカルトレーニングはしないんだそうです。現代サッカーは中盤より後ろは運動量過多で筋肉系の故障が多いため、体を酷使するトレーニングはしないということみたいです。ただセリエAのチームなんかは逆にボールを使わないフィジカルトレーニングを重視しているようなので、どちらが良いとも言い切れないようです。結果はモウリーニョのほうが出しているような気はしますが…。

  2. makoto より:

    Uボマーさん>
    情報ありがとうございます。逆にいえば、チェルシーは、プレシーズンはボールを使わない体づくりを相当やってるんですかね?アーセナルのケガ人の多さは、「プレシーズンにフィジカルなトレーニングが少なく、シーズンに突入して一気に負荷を上げるから」なのかなと思ったりしたもので。

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