イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

コミュニティシールドの戦い方から深読み!「モウリーニョVSヴェンゲル・舌戦の裏にある本音」

アーセナルがチェルシーに1-0で勝利した一昨日のコミュニティシールドは、ヴェンゲル監督が14戦めにして初めてモウリーニョ監督に勝ったという話題で盛り上がり、タイムアップの笛が鳴ってからも数々のトピックスがありました。アーセナルの選手ひとりひとりと握手していたモウリーニョ監督は、ヴェンゲル監督とは一切絡まず。コミュニティシールド準優勝のメダルは、その場でガナーズファンの少年にあげてしまいました。記者会見で語った数々の言葉を、大人げないと受け取ったプレミアリーグファンは多かったのではないでしょうか。「The best team lost(ベストだったチームが敗者となった)」「理由もなく1点を獲って、守備に人数を割いた」といった発言は、サッカーはポゼッションでも美しさでもなく、相手より多くのゴールを奪った者が勝者だと語るモウリーニョさんだけに、負け惜しみ、捨てゼリフのように聞こえます。ましてや、

「Arsenal left their philosophy in the dressing room」(アーセナルは、彼らの哲学をロッカールームに置き忘れていた)

などといわれると、自らの哲学を逸脱したようなコメントをしているのはあなた自身ではないですか?と気色ばむ方もいらっしゃるでしょう。いやいや、私も一緒に深呼吸しますので、少し落ち着きましょう。昨季プレミアリーグ王者を率いる指揮官も、一方では「おめでとう」「低いポジションに構え、よく組織されていた」と、この日のアーセナルがよかったことを認めてもいるわけですから。おそらくモウリーニョさんは、感情的になって憎まれ口を叩いたわけではなく、今季のプレミアリーグを戦っていくことを考え、「これは絶対にいわなければならない」と意図的に仕掛けたのだと思います。その理由を語る前に、日曜日のゲームを振り返ってみたいと思います。ここからは、私の推量や「深読みし過ぎ」も混じるかもしれませんが、ご容赦のうえ、おつき合いいただければ幸いです。

まず、大前提として、ヴェンゲル監督もモウリーニョ監督も、「勝ちにはいったが勝利最優先ではなかった」のではないかと思われます。ヴェンゲル監督は、ウォルコットのワントップを試すには格好の場と捉え、モウリーニョ監督は、ロイク・レミーとファルカオを45分ずつ使うと事前に決めていたのではないでしょうか。30分過ぎから押していたにも関わらず、ファルカオのアップ開始が異様に早かったことを考えれば、試合前に2人のフォワードに伝えていた可能性すらあります。シュートこそ打てなかったものの、左に流れてチャンスメイクしていたロイク・レミーは決定的に悪かったわけではありません。「勝つためのファルカオ」というより、「プレミアリーグ本番のためのファルカオ」だったのではないかと思います。

残り20分のズマ投入も、モウリーニョさんが試したかったことのひとつだったのではないでしょうか。「チェンバレンに負けるシーンが目立っていたアスピリクエタのサイドを何とかしたかった」「勝つためにリスクをとってフォーメーションをいじった」という見方もあるかもしれませんが、連動性を失っていたあの時間帯のガナーズにさほど脅威はなく、強豪クラブ相手にリスクをとるには残り20分というタイミングは早すぎるでしょう。事実、この交代以降、ジルーのボレー、カソルラとギブスの抜け出しと、GKクルトワは何度も危険にさらされることになりました。

一方のヴェンゲル監督は、ウォルコットのCF起用とセットで、中央のスペースをつぶしにいく守り方を戦術として徹底させていたはずです。チェルシーがサイドにボールを展開すると、アーセナルのSBは1回も当たりにいくことなく、「中へのパスコースを切る」「時間をかけさせる」対応を徹底。コクランを筆頭にMFが戻って中央のスペースをつぶし、逆サイドのSBはCBの横にまで絞り、「シュートを打たせない陣形」を構築していました。ヴェンゲル監督は、試合後に「私たちは哲学を放棄していない。選手たちに、チェルシーという精神的なハードルがあったため、今日は守備をしたのだろう」と語りましたが、このコメントは間違いなくとぼけてます。選手たちのセルフジャッジだけでは、あそこまで徹底した守り方にはならないはずです。ウォルコット起用、中央を固める守備、リードを奪ったらカウンターにシフト、後半はジルーもテストと、ここまでは完全なるヴェンゲル監督の予定行動だったとみます。とはいえ、終盤のアルテタとギブスの投入は、勝利が見えたので、なりふり構わず勝ちにいったのでしょう。

結果的に、アーセナルの作戦は見事に当たりました。チェルシーの決定機は、ラミレスのヘッド、オスカルのFK、アザールの突破の3本だったのに対して、ジルーに2発のボレーがあり、カウンターやインターセプトからクルトワとの1対1のシーンを2回創ったアーセナルの勝利は妥当でした。3-0にはならず、1-0で終わったのも、ヴェンゲル監督にとっては却ってよかったでしょう。プレミアリーグ本番を前に目立ちすぎて、モウリーニョ監督に手を打たれるのは避けたかったはずですから。

最初の話に戻ります。モウリーニョ監督が何としても避けたかったのは、「この試合が、プレミアリーグ上位クラブが敷くチェルシー対策のお手本になること」だったのではないかと思います。だからこそ、相手の戦術をくさし、「哲学からはみ出てますよ、戻りなさいよ」という必要があったのではないでしょうか。一方のヴェンゲル監督も、特別なことをしたという匂いは極力消したかったのでしょう。ほめるときはともかく、ネガティブな問いに対する「私は何もしてないが、選手がやった」というコメントは、アーセナルの指揮官にしては珍しい言い回しです。

プレミアリーグ本番で使われないためにモウリーニョさんは挑発し、
プレミアリーグ本番で使うためにヴェンゲルさんはとぼけた

という高度なトークバトルとみた私は、深読みのし過ぎでしょうか?

この答えの一端は、2週間後に垣間見られるのではないかと期待しています。8月16日、場所はエティハド、マンチェスター・シティVSチェルシー。ペジェグリーニ監督が先にリードを奪ったとき、「スペースつぶし&カウンター」というヴェンゲル戦術を参考にするのではないか、と。いやいや、チェルシーサポーターのみなさん、気を悪くしないでください。わかってますわかってます。「チェルシーから先制する」のがどんなに難しいことなのかは、昨季の数字を見れば一目瞭然です。プレミアリーグのTOP6のクラブでチェルシー相手に先制点を決めたのは、アンフィールドのリヴァプールのみ。しかも、彼らがリードしていた時間はたったの5分です。その意味では、チェンバレンは、昨季プレミアリーグではエムレ・ジャンしか成し得なかった大仕事をやってのけたわけですね。監督に策があろうと、先に点を奪えなければ、チェルシーに引かれて前がかりになって、カウンターを喰らってジ・エンドです。

マン・シティの先制点…期待はあの男です。ギアが入れば、チェンバレン以上の瞬発力でDFをぶっちぎれるドリブラー。入団に際していろいろもめたものの、ここで素晴らしいゴールを決めれば、懐疑的なサポーターとうるさい評論家を一気に沈黙させることができるでしょう。今季のプレミアリーグを、ぜひおもしろくしてください、ラヒム・スターリング!

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“コミュニティシールドの戦い方から深読み!「モウリーニョVSヴェンゲル・舌戦の裏にある本音」” への7件のフィードバック

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    まあボーイングボーイングとよく歌っていたチームが、自分達がその退屈なサッカーやって勝ったのなら、今まで言ってた分言われて当然でしょう(笑)
    勝っているわけだからそれを言われても気にならないでしょうしね。

  2. サッカー小僧! より:

    いつも楽しみに拝見しておりますm(_ _)m

    『プレミアリーグ本番で使われないためにモウリーニョさんは挑発し、
    プレミアリーグ本番で使うためにヴェンゲルさんはとぼけた

    という高度なトークバトルとみた私は、深読みのし過ぎでしょうか?』

    まさに仰せのとおりだと思います!
    本音はもちろんわかりませんが、モウリーニョの言葉には必ず戦術的裏がありますよね〜世間では報道の仕方なのかもしれませんが、モウリーニョの言い訳はひどい…的なコメント多過ぎて非常に残念に思います。
    某ヤフ◯コメ…ゴ◯コム等…

    ちなみに私はグーナーなので、モウリーニョを擁護するつもりもありませんが…純粋にモウリーニョとの対決を舌戦含め楽しみたいと思います!

    —–
    更新お疲れ様です。

    今回のコミュニティシールドは、プレミア開幕を告げる前哨戦としては、例年以上に話題提供満載で、マスコミも
    喜んだのではないでしょうか、ただ、ヴェンゲルとモウリーニョが握手をしない!に関しては、自分は正直、
    ピッチ上でのこの二人の行動においてはいつものこと、で、特段騒ぐことでもないように感じました。
    むしろ、にこやかに握手を交わされたりした方が、違和感ありまくりで大事件ですね(笑)、いったい何が
    あったんだ???と、それに、ヴィエラとキーンがやり合っていた頃を考えると、全然ソフトですしね…。

    哲学を置き忘れた…発言も、ヴェンゲル監督が、そう簡単に哲学(こだわり)を捨てきれる監督でないことは、
    今まで応援し続けてきたグーナーが一番分かっていることです、捨て切れるなら、無冠時代にもっと早く
    終止符を打てたでしょうから(苦笑)、だから、今まで以上に勝負にこだわり始めた、ととらえるのが
    妥当のように感じます、まぁ監督も任期少ないですからね、最後に一花咲かせたいでしょうから。

    最後に、モウリーニョに、…よく組織されていた、といってもらえるなんて、最高のほめ言葉だと思います、
    チームを勝たせることにおいては、自分はモウリーニョは現時点世界一の監督だと思っていますので
    (一昔前ならカペッロでしょうか)、真意はともかく、そう言わせたのなら、間違いなくアーセナルは勝つ
    集団になりつつあると思いたいですね、監督にはリーグ戦でも、再度同じセリフを吐かせる采配を期待します。

  3. makoto より:

    プレミアリーグ大好き!さん>
    歌っていたのはサポーターで、チャントはお互いさま(ロンドン同士で、もっと微妙なのがたくさんあります)なので、モウリーニョさんから見れば「お前んとこのうるせーファンがよ!いっててよ!」だとしても、ヴェンゲルさんにしてみれば「別に退屈とかいってねーし」といいたくなるところではあります。煽り合いとして捉えるより、モウリーニョさんは今回のアーセナルのスタイルを警戒しているのではないか?というほうに、より興味が湧きました。

    ベルカンフーさん>
    そうですね。モウリーニョさんは、思慮深い人だと思います。また、「言い訳」についても、欧米の感覚とわれわれの感覚は全く違うので、怒るより先に理解しなければと思ったりもします。以前に、関西弁のフランス人留学生とつるんでいたことがあり、トンカツ屋にいくと、彼はいつもカツを先に全部食べてゴハンを残すので、都度「一緒に食べたほうがええで」といっていたのですが、言い訳(日本人にとっては、ですね)がいつも凄くてですね…(笑)。「私が悪かった、と認めるほうが悪」という文化やシチュエーションもありますので。

    サッカー小僧!さん>
    私も、ヴェンゲルさんの勝ちにこだわる姿勢を感じました。本番が楽しみですね。

  4. 為せばナスリ より:

    敗戦後は内部に敵を作らせず、メディアの標的を自分に向けるっていういつも通りのモウリーニョさんですね。モウリーニョ、ベニテス、ファーガソン、ヴェンゲルのBIG4の頃は毎回こんな感じでしたので何を今更騒いでいるのかと思ってしまいます笑
    本人同士はXmasカードを送り合うみたいで仲が悪いわけではないのでしょうが、どちらもフットボール=人生で、これに関わると熱くなるみたいですね。見ているこちらとしてもライバル同士という事もあり楽しめますので、醜くならない程度でこれからも舌戦をお願いしたいですね笑

    遂に開幕プレミアリーグ、楽しみですね。

  5. makoto より:

    為せばナスリさん>
    今回は、今までにもましてオトナかつハイレベルなトークバトルでした。シーズンインが楽しみです。

  6. こう より:

    毎年モウリーニョさんとベンゲルさん ペジェグリーニさんとの三つ巴の舌戦はほんまおもろいですね プレミアは外資が強く 豊富な資金で選手を獲得しますがこういった面も魅力です

  7. プレミアリーグ大好き! より:

    ちょいちょい報道されてますがこの記事の記述とは違い、ヴェンゲルさんがモウリーニョとの握手しないように避けたようですね。それに対してモウリーニョは道ばたですれ違う人皆と握手する必要はないと「擁護」したようですが(笑)

プレミアリーグ大好き! へ返信するコメントをキャンセル