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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ベルギーは世界1位、オランダはユーロ予選敗退…明暗を分けたプレミアリーグの選手たち

メッシ不在、アグエロ負傷リタイアのアルゼンチンがワールドカップ予選のエクアドル戦をホームで落とし、ユーロ予選のドイツがアイルランドに敗れたために、ベルギーはイスラエル戦に勝てば、FIFAランキングで1位奪取確実といわれていました。ミニョレ、アルデルヴァイレルト、フェルトンゲン、コンパニ、フェライニ、デブライネ、アザール、ルカクと、スタメンの8人までがプレミアリーグ所属選手。2009年には日本より下の66位だったチームは、スタッド・ロワ・ボードアンで行われた予選最終戦を3-1で順当に勝利し、堂々の1位通過。後はFIFAの正式な発表を待つだけとなりました。

一方、隣国オランダは、泥沼から脱出できず。既に予選突破を決め、前節ではトルコにホームで負けていたチェコを相手にアムステルダム・アレナで2-3と惨敗を喫しました。ヴィルジル・ファン・ダイク、デパイ、ダレイ・ブリント、ワイナルドゥムと、こちらにもプレミアリーグ勢が4人いましたが、セインツに加入したばかりのファン・ダイクは失点の原因となって64分にバス・ドストと交代。デパイとワイナルドゥムは不発で、トルコVSアイスランドの結果を待つまでもなく、自ら予選敗退を決めてしまいました。

それにしても、ひどい試合でした。開始からしばらくは押していたオランダは、23分にパス3本であっけなく最終ラインを破られます。楔を受けたネツィドがヒールで10番のスカラクに流すと、フリーでラストパスをもらった右SBカデラベクがそのまま持ち込んでゴール。SBにペナルティエリアに入られ、誰もマークにいけずに見ているだけだった守備陣は重症です。35分にも、何でもないスローインからネツィド、シュラルとつながれて2点め。シュラルのドリブルでファン・ダイクが一発で抜かれ、コースを狭めるのがセオリーだったGKズートは前に出られませんでした。「予選全体を通じて、ロッベンの不在が痛かった」という解説がありましたが、根本的な問題は、10試合で14失点を積み重ねた守備でしょう。フラールやマルティンス・インディを起用して、何とかやりくりしてワールドカップ3位に漕ぎ付けたファン・ハール監督の後、ヒディンク、ダニー・ブリントの両監督は、最終ラインを固められずに1年3ヵ月を過ごしてしまったようです。

42分、デパイの突破に危険なファールを仕掛けたスヒーが決定機阻止の一発レッド。ホームです。相手は10人です。当然、オランダが怒涛の反撃で盛り返すと思いきや、66分にゴールを決めてしまったのはファン・ペルシでした。FKに合わせた見事なヘディングを呆然と見送ったのは、味方GKのズート。トルコで腐っていると報じられた元エースが決めたのは、痛恨のオウンゴールだったのです。残り20分で0-3という信じられないスコア。70分のCKをフンテラールがヘッドで決め、83分にはファン・ペルシが最前線に出たボールを足を伸ばして押し込み、やっと2-3。ここからは、プレミアリーグの下位クラブがやるような悲壮感漂う放り込みでチェコをゴール前に釘づけにしたものの、ファン・ペルシもデパイも決めなければというプレッシャーからか積極性を欠き、そのままタイムアップ。元々、トルコが勝てばこの試合の結果は無意味でしたが、オランダはこの予選の幕切れにふさわしい負け方で、隣国フランスへのゲートを封鎖される結果となりました。

本大会出場国が24となり、グループ2位までOK、3位でもプレーオフと門戸が広がったユーロで、オランダが予選敗退とは未だに信じられません。核となる選手を欠いた守備陣の弱体化に加え、世代交代がうまくいっていないようで、立て直しには時間がかかるでしょう。オランダ代表の選手たちは、ロシアでのワールドカップもテレビ観戦となってしまうかもしれません。

お隣のベルギーのゲームは、すいぶんファンキーな攻め合いとなりました。相手のイスラエルには3位の可能性が残っており、12分にベン・ハイムが抜け出したシーンでミニョレがPKと一発レッドを取られていれば、逆の結果になっていたかもしれません。最大のピンチはオフサイドと判定され、事なきをえたベルギーはミドルシュートの雨を降らせるも、なかなか先制点を奪えません。20分にはイスラエルのザハヴィにFKをポストに当てられ、28分の右クロスは、中央でフリーだったメルテンスが2006年のワールドカップドイツ大会で柳沢がやってしまったのと同じシュートミスを犯してしまいます。後半開始直後、完全なるGKとの1対1を右に外したルカクは、彼の日ではなかったのでしょう。左からのパスを受けたメルテンスが、ようやくニアに強烈なシュートを決めるまでに66分かかりました。

こういう試合は、均衡が破れると一気に決着がつくものです。78分、デブライネの直接FKが左隅に吸い込まれて勝負あり。守備ラインの綻びが亀裂へと広がってしまったイスラエルは、84分に中央でアザールをフリーにするという致命的なミスをしてしまいます。10番がGKの動きをみてインサイドで確実に流し込むと、相手の攻撃をエメのヘディング一発に抑え、3-1で終了の笛。「ヴィルモッツ監督に戦術的な引き出しが多ければ、とんでもなく強いチームになるのに…」という、いつものもどかしさを抱えながら、ベルギーは本大会に羽ばたいていきます。

大事なチェコ戦を前にして、デパイとファン・ペルシという新旧のマンチェスター・ユナイテッドのアタッカーが口論になったと報じられていました。1994年のワールドカップアメリカ大会直前にはアドフォカート監督とフリットが揉めてしまい、1996年のユーロはチーム内に派閥ができ、ダーヴィッツの監督批判がトリガーとなって内部崩壊。踏ん張らなければならないタイミングで自滅してしまうという歴史を、オランダは今回もなぞってしまったようです。今思えば、大して強くなかったチームに1ヵ月で5-3-2をインストールしてつぎはぎを施し、一体感を醸成して、当時世界ナンバーワンだったスペインを崩壊に追い込んだファン・ハール監督はやはり名将ですね。コンパニのキャプテンシーのもと、前へ前へと元気にボールを運ぶ世界一のベルギーを見て、オランダの凋落が余計にせつなく感じられました。

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“ベルギーは世界1位、オランダはユーロ予選敗退…明暗を分けたプレミアリーグの選手たち” への2件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    オランダ戦を観ておりましたが、失点シーンが何故?と目を疑いたくなるものばかりでした。
    内部崩壊はオランダの負のお家芸ですが、疑問なのが何故ファン・ハールの後ヒディングだったのでしょうか?今回のブリント状況打開するには役不足に思ってしまいました。セインツの監督クーマンでも良かったと思いますがどうなのでしょうか?

  2. makoto より:

    Mackiさん>
    ファン・ハールさんの後は、誰も手を挙げてくれない状況だったのではないでしょうか。クーマン監督も、「代表よりクラブ」だったのでしょう。今、また名前が挙がっていますが、セインツを離れることはないと読んでいます。

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