イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

イギリスのEU離脱でプレミアリーグはどんな影響を受けるのか…現地は楽観、日本は悲観!

イギリスのEU離脱によって、プレミアリーグはどんな影響を受けるのか。これは多分に経済が絡むお話であり、ポンドがどの水準で落ち着くのか(直近1週間で16円安)、イギリス経済がどう推移していくのかなど今後を見てみないことには何ともわかりません。今回の投票の結果を受けて、残留派が多かったスコットランドや北アイルランドが住民投票に向かう可能性が語られるなど、状況は流動的です。先行きが見えないなかで、経済の専門家でもサッカー界に携わっているわけでもない人間は、楽観論・悲観論のどちらにも慌てて傾かなくてもいいように思います。私は、この件について数ヵ月前からさまざまな記事をチェックしていたのですが、ひとつだけ大きく気になることがありました。「スカイスポーツ」「BBC」などイギリスメディアは楽観的、日本のスポーツ専門メディアは総じて悲観的と色がついていることです。

Brexit: British clubs could suffer in transfer window, warns sports expert(イギリスのクラブは移籍市場で苦しむことになると専門家が警告)」と題された「BBC」の記事では、短期的にはポンドの下落で選手の移籍金やサラリーが跳ね上がり、クラブはその影響を受けるというスポーツ専門の教授の警告を紹介しつつ、別の切り口から語る2人の声を掲載しています。

「個人的な見解では、プレミアリーグのファーストチームにおいて、イングランド人選手の割合が30%まで落ちているのは屈辱的であり、これが増えるのは歓迎すべきことだ。あなたがたは、ここにいる欧州のトップクラスのプレイヤーを失いたくないというが」(グレッグ・ダイクFAチェアマン)
「今回の決定は、ホームグロウンの若い選手たちにトップクラブのファーストチームに食い込めるよりよいチャンスをもたらした。現在、彼ら若手には常にチャンスがあるわけではない。8歳でクラブの門を叩き、16歳でファーストチームに加わるが、500~600人は21歳までゲームから外されている」(ゴードン・テイラーPFA最高経営責任者)

現場のトップが声を揃えて「イングランド人選手にチャンスが生まれやすくなる」とポジティブな見解を表明しており、現地のプレミアリーグファンのなかにもこういった声は多いようです。現状は条件が厳しい「EU圏外選手の労働ビザ取得」については、必要があれば政府に働きかけて緩和すればいいが、それよりも自国選手の成長機会が増えることを前向きに捉えようといっているのです。EUの平均的な選手は要らない、代表で実績がなかったパイェやカンテのような選手が来られなくなっても、自国で育てて強くなればいい、と。

現状を見れば、この考え方にはリアリティがあります。現在、プレミアリーグに所属する432名の外国人選手のうち、現行ルールでビザが下りなくなるのは100名程度。イングランドが自国の若手強化を推進すれば、この規模の人数なら埋まるでしょう。EUの選手のお値段が高騰し、自国の選手にチャンスがまわってきていい選手が増えれば、代表のレギュラーではないジョン・ストーンズが奪い合いとなり値段が吊り上がる異常な状況は変わり、自国の優秀な選手をより安価に揃えられるようになるでしょう。マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、リヴァプールらが力を入れている育成も、成果が出れば重要度が上がり、クオリティは高まるはずです。

クラブを買収する企業はロシア、中東、中国、アメリカなどほとんどがEU外。トップクラブのスポンサー企業は、EUのみに依存しないグローバル企業。中堅・下位クラブの胸スポンサーの多くは、世界じゅうに個人ユーザーを持つオンラインカジノで、このたびの決定の影響は受けにくい業態です。イングランド人のアイドルが増えればスタジアムは盛況をキープでき、経済の悪化が深刻にならなければテレビ放映権料が急激に減ることもなく、EU内外問わずスポンサーを増やせればコマーシャル収入は増加。イングランドがドイツやスペイン、フランスと肩を並べるぐらいまで強くなれば、プレミアリーグ勢はチャンピオンズリーグでも充分戦える…楽観シナリオがそこまでうまくいくのかという懸念はあるでしょうが、2000年代前半までは欧州の一流国とはいえなかったスペインが歩いてきた道を、サッカーの母国が歩けない理由はありません。

日本のメディアの多くが、「労働ビザが下りなくなれば外国人選手が獲得しにくくなる」「ポンド安によってEUの選手の値段が上がる」「トップクラスの選手にとって、プレミアリーグの魅力が落ちる」「ゆえにプレミアリーグは弱くなり、人気がなくなる可能性がある」と煽っています。彼らは、高額な外国人選手を獲れることがプレミアリーグの強さであるという前提に基づき、失うかもしれないものだけをピックアップするので悲観的なトーンになるのでしょう。あるいは多分に、「脅迫的な見出しを立てたほうが記事が読まれやすい」とゴシップ化させる力学も働いているのかもしれません。どちらを支持するかといわれれば、私は自国のリーグを気概をもっておもしろくし続けようとする楽観論者たちの肩を持ちたいと思います。サッカーにかける情熱では世界トップクラスの国の人々が、よくしてみせるといっているのですから。

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“イギリスのEU離脱でプレミアリーグはどんな影響を受けるのか…現地は楽観、日本は悲観!” への9件のフィードバック

  1. へんだーそん より:

    時代に逆行するような決定がされてしまったのかな?とも思いましたが、力強く前進できるといいですね。

  2. nyonsuke より:

    トップチームで活躍するイングランド人の数を見れば、海外のスター選手うんぬんより恐ろしいことが現在進行形で起こってますからね。ユーベやバイエルン、かつてのバルサとは程遠い自国選手の少なさ…

    安易に金を払ってすでに完成された選手を取るのではなく、自力で選手を育て上げる。いかに厳しい道だろうと、いつかはしなければならなかったことですし、そのタイミングが今というだけでしょう。

    —–
    更新お疲れ様です。

    おもしろい記事でとても勉強になりました。
    読んだ感想として、イングランドと日本ではサッカーに対する見方が違うなと改めて思いました。
    日本のメディアはサッカーを伝えるのではなく、アイドル選手の動向を伝えているのだと思うのです。
    サッカーをみているイングランドと、選手をみている日本、ちょっと大げさかもしれませんがこの差が今の日本サッカー界の一つの問題かと思いました。

  3. あすえこと より:

    なんとなくですが、今後しばらく困ることになるのは、イングランドのクラブよりも、イングランドのクラブに高額で選手を売っていたスペインやフランスの中小クラブになるのでは、、、という気がします。
    もちろん、今後EU内選手のイングランド移籍がどういう方針に落ち着くか次第ですが。

    とはいえ、代表についてで言うと、ドイツやフランスの場合、積極的な移民選手の取り込みが近年の成功に結び付いています。
    今回の決定でイングランドはフランスやドイツとは異なる方向に進むわけなので、別のモデルを構築していく必要があるわけですが、
    どんなチームになっていくかをしばらくは期待して見守りたいなあと思います。

  4. mufc7 より:

    プレミアの魅力の1つに枠にとらわれにくい沢山の外国のスターをイレブンに並べる事が出来ることです。これはPLだけの特権であり、他の国にこの魅力はありません。それは商業的にも素晴らしく、沢山の国から有名な選手を引っ張ってくる事でスポンサーが付き、視聴者が増え放映権が上がっていきました。企業達にとって1試合に沢山の国のヒトが見るPLは魅力的な広告塔であると思います。例え100人とはいえ企業にとって外国人枠の減少はマイナスになるでしょうし、それはPLの金銭的発展に影響を与えると思います。目覚ましい発展、バブルは終わりを迎え、徐々に衰退していくと考えます。自国籍の選手の育成を大切に思う多くはイングランドの人かサッカー好きだけです。多くの人々は多国籍スター軍団のぶつかりあいを見たい。自分の国のスター選手をみたいのです。そして育成=強化とはならない事は頭の片隅に置いておかなければなりません。自国選手を増やしても自己満足に終わりかねない懸念もあります。

  5. 真冬 より:

    もしかしたらヨーロッパの舞台でのイングランド勢の栄光を見れるのがまた先延ばしになる可能性もありますが、イングランドフットボールが破綻するわけでもクラブが無くなるわけではありませんし、気長に応援していきたいですね。おっしゃるとおり、育成にも力を入れて欲しいです

  6. yuto より:

    私はどうも楽観的にはいられない人間のようです。
    確かに育成の質が上がりイングランド代表が盛り上がる状況になれば面白いかもしれません。
    実際に若い選手が躍動したスパーズやユナイテッドの試合はとてもいいものでした。
    しかし、それは他国のスターが集まったうえで彼らを凌駕したから称賛されたものではないでしょうか。
    また、カンテのように若い外国人選手がプレミアで活躍する可能性が減るのは少し寂しいです。
    今後、多国籍にスター選手がいるなかでも、ビルバオのような地域を大事にするクラブがあるのであれば魅力あるリーグになると思います。
    この問題については楽観的、悲観的どちらに見るもその人の価値観だと思うのでどちらが間違いでもないことですから、このように様々な意見を聞いて考えを多様化していきたいですね。

  7. makoto より:

    へんだーそんさん>
    世界を俯瞰してみるとそう見えますが、移民の問題の深刻さは外からはわからないですね。おっしゃるとおり、うまく前進できればと思います。

    NA28さん>
    ピンチをチャンスに変えられればいいですね。

    nyonsukeさん>
    ありがとうございます。そうですね。イギリスのメディアには、サッカー界に全体に対する視点がある記者が数多くいて(タブロイド紙も侮れません)、そういう方は腰の入った記事を書いてますね。日本のメディアは、サッカーをかじったぐらいの若い方が書き飛ばす記事も多く、専門家があまりいらっしゃらないように思います。

    あすえことさん>
    それはあると思います。イングランドのクラブに買ってもらえるよう、値が下がるという現象が起こるかもしれません。イングランドからいい選手が数多く出ることで値が下がり、そこに合わせて外国人選手の相場も下がれば、それはそれで悪い話ではないですね。

  8. makoto より:

    mufc7さん>
    プレミアリーグの外国人選手は必ずしも各国のスターではなく、人数的に多いのはEU圏の「なかなかいい」選手たちです。いわゆるスター選手は、この度の決定で減ることはないと思われます。中の上ぐらいの外国人選手が、自国の人気選手に取って代わるという変化は、国内外問わず衰退にはならず、国内については盛り上がるでしょう。また、フランスやドイツの取り組みを見れば、本腰を入れた育成が国全体の強化につながることは間違いありません。失敗の可能性はどの国にも常にありますが、懸念ばかりが先立つお話では決してないと思います。

    真冬さん>
    そうですね。海外の選手がまったく来なくなるというような話ではありません。リーグの観客やクラブの収入が確実に減少するぐらいの懸念があれば、労働ビザ発給ルールの緩和など、しかるべき手も打たれるのだと思います。

    yutoさん>
    いろいろな意見が出て、それぞれの方の頭のなかが広がっていくのはとてもいいですよね。私もいつも、みなさんの声を参考にさせていただいてます。mufc7さんにもお答えしましたが、「スターが減る」とは捉えないほうがいいのではないでしょうか。イングランドは、各クラブともそれなりにクラブユース出身の選手を大事にしようとする空気はあるので、地元出身の中心選手が増えれば盛り上がるのではないかと思います。日本のメディアの記事には、「わかりやすくするために極論する→極論に自らはまって”やばい”と騒ぐ」式のものが見受けられ、それは事実ベースではなく、建設的でもないなと思ったりします。芸能人のトラブル、知事のお話しかり。

  9. にわかスパーズファン より:

    更新お疲れ様です。
    この記事を読むのが遅くなってしまったのですが、どうしてもコメントしたく参上いたしました。
    私はいわゆるバブルが崩壊するというふうには考えてはいません。ここ数年のPLのクラブのマーケティングは素晴らしく、今PLの大きな収入源の一つ、放映権料ですが、支払額の上位は東南アジアの途上国が占めています。先日行ったマレーシアでもテレビのある飲食店はPLの放送ばかりでした。
    さて、そうなると視聴者はハマればどこか応援するクラブができると思います。応援しているクラブにて、ユース上がりやイングランドの選手が出て活躍する喜びというものは代えがたいものがあります。ベイルやウォーカー、ケインやデリアリがそうです。ベイルは少し違いますが…
    ニワカファンがコアファンになっていくのですから、そこまで人気については心配いらないと思います。
    心配なのはポンド暴落の一点のみだと考えてます。給与交渉にどう響くか読めません。岡崎さん円にしてくれなんてないっすよね?笑
    スター選手の下りは管理人様とほぼ同意見ですので割愛します。

    長文失礼しました。

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