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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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17番めはアーセナル!今季プレミアリーグの一大トレンド、3バック隆盛の軌跡

以前に、「コンテ監督が持ち込んだ3バックは、プレミアリーグでは流行らないのではないか」と書いたのですが、私の浅はかな読みはあっけなく外れ、ヴェンゲル監督までがこれを採用して3バックにトライした17番めのチームになりました。イギリスメディア「スカイスポーツ」は、「How three at the back became the Premier League’s tactical trend this season(3バックは、今シーズンのプレミアリーグの戦術的なトレンドとなった)」と題した記事を掲載。昨季は34回しかなかったCB3人のフォーメーションは、SBが下がった5バックまで入れると112回と急増しています。

クラブ別に見てみると、最も多く採用したのは本家チェルシー。リヴァプールとアーセナルに連敗したコンテ監督は、7節のハル・シティ戦で3-4-3にシフトすると、プレミアリーグ13連勝の快進撃。年明け以降のゲームもすべてこのシステムで戦っており、12節のミドルズブラ戦から順位テーブルの最上位をキープしています。コンテ監督のフォーメーションが他の指揮官にインスピレーションを与えたポイントは、3バックの弱点といわれるサイドのスペースをカバーする術が明確だったことと、それぞれのポジションにどんなタイプが必要かがわかりやすかったことではないでしょうか。チェルシーの指揮官と双璧といえるのは、セリエA時代から3バックを採用しているマッツァーリ監督でした。プレドル、ブリトス、カブールらを擁するワトフォードは、トータル17試合をCB3人で戦っています。ただし、「3バックで戦うチーム」といえるのは、彼らのみ。他のクラブはプランBとしての導入か、後ろを厚くする必要が生じたときの策として使っています。

3バック12試合で全体の3位となったのはハル・シティ。4位にはクヤテを下げたウェストハムが11試合で続きました。ビリッチ監督がうまくいかなかったのは、ハマーズにはサイドで上下動を繰り返すWBをこなせる選手が少なく、適材適所とはいえなかったからではないでしょうか。今季プレミアリーグにおいて、4バックの勝率が36.7%に留まるのに対して3バックは47.6%と高いのは、首位チェルシーに加えてトッテナムが採用していたからです。20節のチェルシーとの直接対決を同じ3-4-3で対抗したポチェッティーノ監督は、エリック・ダイアーを最終ラインに下げる形を10試合で採用。チェルシーと大きく違うのは、両脇のフェルトンゲンとエリック・ダイアーが、MFを追い抜く勢いで攻撃参加するシーンが多かったところです。エリクセンやデル・アリがサイドと中央を行き来するトッテナムのサッカーは流動性が高く、固定的な4-2-3-1が主流だったプレミアリーグが確実に変わったと感じさせてくれました。

このほか、5試合以上を3バックで戦ったのは、エヴァートン、ストーク、サンダーランドの3チーム。意外だったのは、変幻自在に複数のフォーメーションを操るペップ・グアルディオラが4回しかやらなかったことです。オタメンディ、ジョン・ストーンズ、コラロフでは中央が不安で、WBにふさわしい選手がヘスス・ナバスぐらいしか見当たらなかったからでしょう。クリスタル・パレスとボロは3試合、ボーンマスは2試合。うまくいったとはいえなかったリヴァプールとアーセナル、守備戦術に自信があるモウリーニョ監督、4-4-2で昨季プレミアリーグを制したレスター、監督がコロコロ代わったためにフォーメーションをいじる暇がなかったスウォンジーは1試合のみです。

2週間前のストーク戦で唯一3バックを試したクロップ監督は、アルナウトヴィッチとシャキリにサイドを突かれて45分で新布陣を畳んでしまいました。「クロスに対応したかった」と3枚の理由を語ったヴェンゲル監督の選択は、果たして適切だったのでしょうか。横からのボールをケアしたかったのなら、SBに出どころをケアさせつつ、キャリックやフェライニが最終ラインに加勢してはね返すモウリーニョ戦術のほうが、元の布陣をいじらずに導入できます。3バックを成功させるなら、サイドの運動量と統率力のある中央のCBは不可欠でしょう。マルコス・アロンソ、ヴィクター・モーゼス、ダヴィド・ルイスがぴったりはまったチェルシーと、アルデルヴァイレルトという読みのいいCBを擁し、カイル・ウォーカー、ダニー・ローズ、トリッピアー、ベン・デイヴィスと攻め好きなSBが揃うトッテナムがうまくいったのは納得です。

ここまで常に4バックで戦ってきたのは、セインツ、バーンリー、WBAの3チームのみです。前半戦はファン・ダイクとフォンテが鉄壁で、年明けからは吉田麻也とスティーブンス以外にCBがいなかったセインツに選択肢はなし。WBAのピューリスさんは、あれこれ手を打たずにシンプルかつ明快な戦い方を徹底することでプレミアリーグ残留を勝ち取ってきた指揮官です。ロートン、ベン・ミー、マイケル・キーン、ウォードの4人以外に先発したのはフラナガンの3回のみと、4バック完全固定のバーンリーも、バリエーションより熟成度を選んだチームでした。

かくして3バックは一大ブームとなったわけですが、来季もこの流れは続くのでしょうか。アプローチは違えど4-3-3で戦うリヴァプールとマンチェスター・ユナイテッド、3バックのチェルシー、多彩な布陣を操るトッテナムとマンチェスター・シティ、4-2-3-1を踏襲しながらゼロトップという新機軸を持ち込んだアーセナル…3と4の併用は当たり前となり、さまざまな布陣が揃うプレミアリーグが、今季以上に勝つのが難しいリーグとなることは間違いなさそうです。(アントニオ・コンテ 写真著作者/@cfcunofficial (Chelsea Debs) London)

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“17番めはアーセナル!今季プレミアリーグの一大トレンド、3バック隆盛の軌跡” への6件のフィードバック

  1. おはむ より:

    良い監督は柔軟な監督でもあるんですね、プレミアリーグはフットボール意外にも参考になる要素がいっぱいあって楽しいです

  2. エバートン より:

    ポチェッティーノが3バックうまく使いこなしているのには少し驚きました。ただワニャマやトビー、フェルトンゲン、ダイアーを同時に起用するとなると3バックが一番良いような気がします。彼らのうち一人をベンチに置いておくなんてもったいないですよね。

  3. ホタ より:

    夏にこちらのコメント欄で「コンテが来て3バックブームが起こるのではないか」とコメントを残したのですが、まさかこんなに流行るとは思わなかったです

    次はBBCやMSNの様な、前半に強力なFW3人を並べる布陣が流行りませんかね…笑

  4. にわかスパーズファン より:

    更新おつかれさまです。
    スパーズが3バックでチェルシー戦に挑んだのは、相手の3トップに対抗+両ウィングの破壊が目的だったと思います。見事にハマった試合でした。
    カンテのアンカーが一般的に評価が高いですし、シーズンMVPでもふさわしいと思います。ただワニャマも相当4バック3バック共に高いクオリティでバランスを取れてるプレイヤーだと思います。贔屓目なんでしょうか…笑

  5. おはむ より:

    良い監督は柔軟な監督でもあるんですね、プレミアリーグはフットボール意外にも参考になる要素がいっぱいあって楽しいです

  6. makoto より:

    おはむさん>
    最近は特にそうですね。クロップさんにはゲーゲンプレッシングを貫いて優勝してほしい…と、一徹な監督にロマンを感じたりもするのですが。

    エバートンさん>
    SBも運動量の豊富な選手が多いので、ますます3バックに向いている感があります。

    ホタさん>
    そのやりとり、覚えてます。当たりましたね。トレンドとなるのかどうか、ずっと気にしていたので今回の「スカイスポーツ」はタイムリーでした。

    にわかスパーズファンさん>
    ワニャマ、いいと思います。デンベレとのコンビは、カンテ+マティッチに引けを取らないですよね。

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