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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

レッドか、否か。サディオ・マネのトラップを巡って現地メディアと評論家が激論!

プレミアリーグ4節、マンチェスター・シティが5-0でリヴァプールに圧勝したゲームでは、37分のマネとエデルソンの接触がターニングポイントとなりました。マティプが最終ラインの裏に出したボールを追いかけたアタッカーとGKは、同時にボールに追いつきます。マネにとって不運だったのは、マンチェスター・シティに入団したばかりのブラジル人守護神が、驚くほど決断が速く勇敢だったことです。つま先でボールを収めようとしたマネが高く上げた足が、エデルソンの顔に入って試合はストップ。主審のジョナサン・モス氏は、迷わずマネにレッドカードを突き付けました。

「あのプレイは単純なアクシデントだ。私には、マネが相手より先にボールに触りたいという一心で足を高く上げたように見えた。あるいは相手GKの姿がちゃんと見えてなかったのかもしれない。まさかレッドカードとは思わなかった」(ユルゲン・クロップ)
「マネのような選手が相手の顔に激しくコンタクトしようとするとは思えないよ。彼はボールに追いついていたが、危険なプレイではあった。レッドカードに値するかどうかは、私にはわからない。意図的なものではなかった。彼はエデルソンを見ておらず、大きなインパクトとなった。うまくいけば出場停止を回避できるけど、恐らく次は無理だろうね」(ペップ・グアルディオラ)

両チームの指揮官が、半ば同情的に振り返ったこのプレイとジャッジについて、現地の評論家やプレミアリーグファンの間で議論になっているようです。レッドか、否か。ちなみに、フットボールのルールには、「過剰な力や相手競技者の安全を脅かす方法で、相手競技者に対し片足もしくは両足を使って前、横、あるいは後ろから突進した場合、著しく不正なプレイを犯したことになる(=すなわち一発レッドの対象となる)」とあります。多くのレッドカードは判断ミスや結果的な注意力不足に起因するものであり、ボールを奪われると焦ったケーヒルが遅れて出した足の裏が相手を削る格好となりレッドになったように、故意でなくてもその対象になることは充分にありえます。しかし…。

映像では、マネがボールだけ見ていたことは明らかです。ご本人は試合後に「決して意図的ではなかった。彼を負傷させ、途中退場となってしまったことを申し訳なく思っている。早くよくなって、ピッチに戻ってきてほしい」とエデルソンに謝罪。故意ではないことを疑う人はいないでしょう。まず、意見が分かれたのはネビル兄弟です。ガリー・ネビルが「試合が壊れた。ばかげている」とレフェリーを非難すると、フィルは「レッドだ」とひとこと。レフェリー関係者とDF出身者にはレッド派が多く、敗者のOBであるジェイミー・キャラガーも「ボールだけしか見ていなかったからといって、危険なプレイだったことは変わらない」という見解です。プレミアリーグで数々の激しい試合を裁いてきたハワード・ウェブ氏もまた、「レッドには値しないという声が多いのは信じがたいことだ」とジョナサン・モス氏を支持。総じて、イギリス国内メディアのプレミアリーグ関連記事は、レッドカードはやむなしという立場を取っています。

これに対して、「ストライカーなら競りに行く」と主張し、レッドはやりすぎとしたのは「マッチ・オブ・ザ・デー」で解説するアラン・シアラーです。これに従ったのは、「ジャッジはお話にならない」と返したガリー・リネカーと、「先に触れば、ガラ空きのゴールが目の前にある」と語ったイアン・ライト。いずれも、プレミアリーグで素晴らしいゴールを重ねてきたストライカーたちです。ティエリ・アンリは「不運なイーブンの競り合い」と、マネの心情を慮って発言しておりましたが、ストライカーたちが声を揃えているのは「あのシーンで足を出さないヤツはいない」ということだと思われます。「危険なプレイだったので、レッドに処すべし」と主張するプレミアリーグファンのみなさんでも、マネはどうするべきだったかと問われれば「危険を回避するために手前で止まるべきだった」と即答する方は少ないのではないでしょうか。あのスピード感のなかで、瞬時にそんな判断をするのはなかなかの難題です。

さらにこの議論をややこしく(あるいは興味深く)したのは、翌日にスウォンジーと対戦したニューカッスルのマット・リッチーでした。後半開始直後、ヘディングでクリアしようとしたモーソンの額をかすったハイキックに、「このイエローこそレッドにすべきだった」という声も多く、アラン・パーデュー氏は「マネがレッドカードとは思わないが、リッチーのチャレンジは悪質で退場させられるべきだった。彼の軸足はピッチから離れていた」と古巣の選手に厳しい目を向けています。この話は、骨折こそなかったものの担架で運ばれたGKと、かすっただけで済んだDFという「被害者の症状」が判定に影響を及ぼすべきかという問題もはらんでいます。

私は、「マネはレッドやむなし、リッチーはセーフ」というジャッジに落ち着くしかなかったと思いますが、「止まれるか!」というストライカーの気持ちもわかります。「マネにとっては不運だった」とアンリの影に隠れつつ、エデルソンもモーソンも大事に至らなくてよかったと胸をなでおろすほかはありません。ビデオで何とか確認できるぐらいのかすり方だった場合の判断と、故意に「見える」ことをどう処理するかが難しい問題です。

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“レッドか、否か。サディオ・マネのトラップを巡って現地メディアと評論家が激論!” への10件のフィードバック

  1. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。

    私は、ルール上レッドはやむなし、ですが故意では決してないしスピードを武器としたストライカーなら足を上げ先にボールに触ろうとするのは当たり前(一番近いのはアンリの意見でしょうか)と思います。
    あの時のマネが思い描いたプレーはアーセナル戦のベジェリンと競ったサラーのプレーではないでしょうか。
    あのプレーもワンテンポ遅くサラーとベジェリンがぶつかっていればどちらかのファールになったはずです。
    今回はエデルソンの反応が早く、マネがボールに届く前にエデルソンが追いついたこと、そして運悪く上げた足がエデルソンの顔に入ってしまったことが重なり、レッドとの判定になったと思います。
    いわばエデルソンの好プレーによる事故ではないでしょうか。
    様々な意見があるものの、共通しているのはマネが故意ではないこと、これはレッドか否かで分かれている方々においても共通していると思います。

    試合はあのレッドカードで終ってしまいましたが、エデルソンの怪我が軽症であったことと、試合後にどちらのチームにも遺恨が残らなかったのは幸いだったと思います。
    どうもレッズが出場停止期間の軽減を求めているようですが、3試合以上の停止にはならないのではないでしょうか。
    プレミアに戻ってくるのはニューカッスル戦、ここは気持ちを切り替えCL戦での活躍をマネには期待したいです。

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    故意であるか否かでカードの種類は変わらないでしょう。危険なプレーだったら赤、当然のジャッジだと思います。危険なプレーの代表格といえばショークロスのラムジーへのタックルが挙げられると思いますが、あれも故意ではないけど危険なタックルでしたよね。
    昨今はジャッジを遡及的に見直す試みがされてますが、1番対処しなければいけないのはこういった危険なプレーに対する処罰だと思います。責任が重くなれば危険なプレーが散見されるプレミアでもそういったプレーは減るはずです。
    危険なプレーに対する厳罰、FAにはダイブに対する厳罰よりこちらを一刻も早く実装して欲しいです

  3. 福岡 より:

    マネは頭でボールにチャレンジするべきだったんですかね?もしマネが先に触れていたら2人は衝突しエデルソンにレッドカードだったかもしれません。本当に紙一重。
    そもそも空中のボールに足を上げる事に関してはどれくらい規制があるのでしょうか?オーバーベッドシュートはどこまで許されるのでしょう?
    一つ言えるのは、エデルソンは文字通り身体を張ってゴールを守ったということですね!

  4. グッチ より:

    更新お疲れ様です。賑わうチームの、それも意見の割れるジャッジについて記事を設けてくださりありがとうございます。
    マネのプレー及びレッドカードですが、本人の悪意がないことは伝わるものであり、その上で私見としては、「重度の危険性を孕む不用意なプレー」として著しく不正なプレーに該当すると思われ、正直レッドカードは止むなしかと思います。観ていなかった、ギリギリのタイミングだったから仕方ないと言ってもそれは変わるものではないと思います。エデルソンが無事で(怪我を負ったとはいえ)まずホッとしました。
    今回のプレーに至ったマネの判断はFWとして得点を狙う為のものであり「悪質だ。」と咎めるつもりはありません。だからこそ退場や、あるいは自身が怪我を負うリスクを考えて周囲を見るようにしてもらえればと思います(受ける瞬間は難しいならその準備時に)。上手くやればGKと正当な競り合いの上でゴールを奪える選手なだけに、今回の件をきっかけにそういった駆け引きとしての損得勘定のセンスも磨いてもらえればと思います。

  5. This boy より:

    試合中はエキサイトしていたこともあり、「あれがレッドなわけないだろ!」と鼻息を荒くしていましたが、私の今のスタンスは「あれがレッドじゃないわけない」です。もしアグエロやジェズスがミニョレに対して同じプレーをしていたならば、レッドで当然と、腕組みをして頷いていたと思います。ただ、レッズがFAに提出した処分の軽減措置は受け入れられるべきかなと。ジョーハートなら間違いなく、ブラボでも恐らくあの場面ではステイしていたでしょう。エデルソンの素晴らしいプレーによって生まれた悲劇は、相手チームの監督、プレイヤーも「加害者」に同情する声があります。
    私としては今回の2つのプレーを機に、なぜ1つはレッドで1つはイエローだったのか、あるいはどちらかのジャッジが間違っていたのか、統一した見解を述べていただきたいですが果たしてFAにそれが出来るのかどうか…。

  6. ホタ より:

    更新お疲れ様です。
    個人的には今回の件はレッドが妥当だと思います。
    ただ、マネのチャレンジに対するレッドというよりは、チャレンジの失敗に対するレッドだと思ってます。他の方も言うようにマネが先に触れていれば判定が逆になっていた可能性もあったと思います。ただ、今回はエデルソンが先に追いつき、遅れてマネの足裏が入ってしまいました。
    ここから思うのは、「チャレンジするのは良いけど、失敗したら罰があるよ」ということです。

    —–
    故意か事故的か、悪質か止むを得ないプレーの範囲内かは、カードに値するか否かの基準にはならないと個人的には思います。あくまで、その試合内で起きた事実(この場合、マネの足裏がエデルソンの顔をヒットした)だけに基づいて処されるべきだと思います。

    ですが、出場停止試合数に関しては上で述べた事を吟味するべきで、マネの場合は3試合の出場停止は重すぎると思います。双方があれは故意ではなく事故だったと認識している訳ですから。

  7. プレミアリーグ大好き! より:

    マンチェスターの赤いチームを応援しているものとしては、CLのマドリー戦のナニの退場をすぐに思い出しました。あの退場があるまでは完全にファーガソンのプラン通りに試合が進んでおり、審判が試合を壊したと憤慨したものでした。

    ただ、自分の贔屓するチームの関与しないところで起こると冷静にみえるもので、やはり起こった事実が重要だと思います。
    マネに故意はなくてもレッドは妥当。一発レッドならば、これまた故意でなくても3試合の停止。故意で悪質な場合は、3試合にプラスする形が現状のルールだと思います。マネもエデルソンも審判も、マネを擁護した人も間違ってないけどしょうがいないのでしょう。

    —–
    ぶっちゃけ、ボールしか見えてなかったっていう時点で危険だなって思いました。

  8. プレミアリーグ大好き! より:

    ぶっちゃけ、ボールしか見えてなかったとして、その時点で危険なプレーが起きうるだろうなって思いました。

  9. ルタレック より:

    Footでエデルソンの顔の傷跡を見ました。
    レッドでないと言い張る方はぜひ見て下さい
    顔半分がスパイクされて それはもう目も当てられない位のキズ痕です
    これを見てまだ言い張る人は。。。。。

    —–
    とても難しい問題ですね。個人的にはレッド派です。危険と思ったからです。顔面にキックという映像がやはり見ている方はレッド派が多いのかなと。人間はあの映像見るとやはり命の危険などを想像してしまいます。その一方、足首を明らかに踏んでいても選手が大事に至ってなければ危ないプレーでもイエローあるはガードなしの場面も多々見かけます。今回みたいに論争なんてあまり起きません。なぜなら足だからなのかなと。もちろん足も選手生命に関わるので危険ですが。やはり人間はで目で見た映像はとても印象に残ります。どうしても感情的な部分が入ります。そこを何とかルールで出来ないものですかね。

  10. makoto より:

    Footでエデルソンの顔の傷跡を見ました。
    レッドでないと言い張る方はぜひ見て下さい
    顔半分がスパイクされて それはもう目も当てられない位のキズ痕です
    これを見てまだ言い張る人は。。。。。

    —–
    みなさま>
    論理的、冷静、フラットといった言葉で形容できるご意見を数多くいただき、本当にありがとうございます。「基本的にはアクシデント」「レッドは妥当」「しかし3試合出場停止は軽減してもいいのでは?」という声が大半でした。私は、目も当てられないぐらいの足の曲がり方だった2年前のルーク・ショーの骨折を思い出しました。あのアクシデントで、彼のキャリアは大きく変わったのだと思いますが、「だからレッドにせよ」「エクトル・モレノはひどい」とは思いません。

    事故がないように願ってはいるものの、あれだけコンタクトが多いスポーツにおいてゼロにはできません。当コメント欄にはレッドではないと言い張る人はいなかったものの、現地評論家やファンのなかには一定層いて、その方たちには「深刻な事故があったとしても、その重さとレッドかどうかはまた別な議論だ」というポリシーがあるのだと思われます。私は、今回の件はレッドやむなしと思いつつも、そうじゃないと主張する方たちの拠って立つところも理解します。いずれにしても、こういった形でフラットに会話できることは、とても有意義だと思いました。本当にありがとうございました。今後とも、よろしくお願いいたします。

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