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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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やはり難解…ノースロンドンのPKシーンを巡り、現地メディアの見解が真っ向対立!

Harry Kane penalty decision in north London derby was incorrect, says former referee Dermot Gallagher(かつてレフェリーだったダーモット・ギャラガーは、ノースロンドンでハリー・ケインがPKを得たジャッジは間違っていると発言)」「Why Tottenham’s penalty vs Arsenal WAS correct – despite Harry Kane being offside(アーセナル戦におけるトッテナムのペナルティはなぜ正しいか~ハリー・ケインがオフサイドだったにも関わらず)」

プレミアリーグ29節のターニングポイントになったレフェリーのジャッジについて、2つのメディアが正反対の記事を掲載しています。前者は「スカイスポーツ」、後者は「デイリー・ミラー」。果たして、どちらが正しいのでしょうか。ルールブックを紐解くと、このケースでどうジャッジするのか、詳細に定義されています。2017年6月1日にJFAがリリースした「サッカー競技規則 2017/18 改正の概要」より、オフサイドに関するルールを記載した11条の附則を引用しましょう。

「オフサイドポジションにいる競技者がボールをプレーする意図をもってボールの方へ動いたが、ボールをプレーする、または、プレーしようとする、あるいは、ボールへ向かう相手競技者にチャレンジする前にファウルされた場合、オフサイドの反則より前に起こったファウルが罰せられる。」
「既に、ボールをプレーした、または、プレーしようとした、あるいは、ボールへ向かう相手競技者にチャレンジしようとしたオフサイドポジションにいる競技者に対して反則があった場合、ファウルより前に起こったオフサイドの反則が罰せられる。」

要は、「ファールとオフサイドのどちらが先に起こったかで決まる」ということになりますね。ギャラガーさんは、「ハリー・ケインはボールに向かってジャンプしていたため、既にプレーしていたと見做すべき」と主張。「デイリー・ミラー」に寄稿したスポーツライター、リッチ・ジョーンズさんは、「”a player in an offside position is moving towards the ball with the intention of playing the ball and is fouled before playing or attempting to play the ball, or challenging an opponent for the ball, the foul is penalised as it has occurred before the offside offence.”」というプレイする前に関するルールを引用して、「ペナルティは正しい」と書いています。なるほど。ノースロンドンダービーの73分の映像を、あらためてチェックしてみましょうか。

エリクセンが蹴った瞬間、ハリー・ケインはオフサイドポジションにいましたが、その外でフリーだったフェルトンゲンはセーフ。ラインズマンはハリー・ケインと同時に走り出しており、ファーサイドでオフサイドがあったことは認識しているはずです。手前にいたコシールニーがジャンプしたタイミングでムスタフィが10番にタックル。ラインズマンからは、その瞬間は見えていないかもしれませんが、主審のアンソニー・テイラーさんは3人の選手の真後ろで目撃しています。ハリー・ケインはコシールニーとは競っておらず、ムスタフィとの接触によって体が飛びました。この時点では、ボールがどこに落ちるのかはわからず、フェルトンゲンがヘディングシュートを放てば旗は上がらないでしょう。

直後、ムスタフィの頭にボールが落下。ラインズマンは走り抜けただけでファールを示さず、テイラーさんは迷わずペナルティを指示しています。「ハリー・ケインは走っていただけであり、プレイする前に倒された」と取るか、「競りにいっており、プレイした」と見做すかは微妙です。こうなると「プレイとは何ぞや」という話になりますね。さあ、もう一度ルールブックをば。

ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた*瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる:
・味方競技者がパスした、または、触れたボールをプレーする、または、触れることによってプレーを妨害する。または、次のいずれかによって相手競技者を妨害する:
・明らかに相手競技者の視線を遮ることによって、相手競技者がボールをプレーする、または、プレーする可能性を妨げる。または、
・ボールに向かうことで相手競技者に挑む。または、自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。または、
・相手競技者がボールをプレーする可能性に影響を与えるような明らかな行動をとる。

なるほど。これもまた、難しい表現ですね。コシールニーは後ろに人がいようといまいとクリアする気満々で、ムスタフィは既に出遅れており、ハリー・ケインが走ったことで「プレイする可能性に影響を与えた」とはいえないのですが、「競ってなくても決めにいってるのだから、オフサイドでしょう」といわれれば、「そうですね!」とうなずける状況ではあります。まとめると、

・スローで見れば、「関与した」「影響を与えた」といえる状況になる前に倒されていた
・「関与しないという姿勢を明らかにしている選手以外は影響を与えている」と解釈すれば、関与している

つまり、「両者、言い分あり。誤審と断じてしまうのはかわいそう」です。ただしこれは、あくまでも「スローで見れば」であり、実際のスピード感を加味すれば「ラインズマンは落下点を確認する前に旗を上げられない(=オフサイドではない選手が直接決める可能性があるから)」「ラインズマンの旗が上がっていないのを見たレフェリーが先に笛を吹き、PKを示せば、それが最終決定となる」といった時制のズレが生じることもあるわけです。

VARが導入されていれば、今回の件はどうジャッジされていたでしょうか。結局、判断するのは人間なので、「オフサイド派」「ファール派」の両方が存在した可能性は否めません。映像チェックによって、明らかなミスジャッジは減ると思われるので導入は賛成ですが、その手前で「ルールの単純化」が必要なのかもしれません。「オフサイドであろうがなかろうが、直接FKの対象となるファールがあればそちらが優先」というルールなら、今回はPKです。

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“やはり難解…ノースロンドンのPKシーンを巡り、現地メディアの見解が真っ向対立!” への19件のフィードバック

  1. グナ より:

    あのPKは難しい判断で仕方ないと諦めはつきますが、2本目のは明らかに蹴り直しであり、しっかりジャッジしてほしかったです。
    それにしても試合後のポジェッティーノのインタビューには失望しました。自分たちの所業を差し置いて…クソだと思いました。

  2. B より:

    いつもここまで深く考えて見てないので参考になりました笑
    なるべく難しいことを考えずに気持ちのまま応援してましたが、こういう深いところまで考察できるのもまたフットボールの魅力的ですね

  3. shiiin より:

    オーバメヤンのPKは蹴り直しですよね。
    写真で見たらヴェルトンゲンめちゃくちゃ出てますから。
    しかもあの飛び出してのおかげで、そのあとのシュートのクリアも間に合ってます。
    サンチェスのコシェルニーに対する蹴りも処分はないみたいですし、トレイラのファールがレッドなら、ローズのレノに対する蹴りもレッドだと思います。
    なんか納得いかない試合というか、FAはトッテナムに甘いのがムカつきます。

  4. プレミアリーグ大好き! より:

    試合後のポチェの振る舞いには感服しました。トレイラにも声をかけて、きちんと記者会見では言うべきことを言った。勝ち点は落としてしまいましたが、CLでベスト8に進みリーグ3位をキープすれば現在のスパーズの状況からすれば悪くないと個人的には思います。来期は新スタでしっかりとダービーに勝ちたいですね。FAはトッテナムに甘い笑らしいので今期とは逆に全試合ホーム戦とかにしてくれれば有難いのですが。

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    ポチェは若いから仕方ないよww

  6. プレミアリーグ大好き! より:

    ※4
    逆に全試合ホームとはどういうことでしょう??

  7. プレミアリーグ大好き! より:

    ケインの頭突きに続いてダービーでのダビンソンの蹴り上げもお咎めなしですね。試合後の監督のコメントといい、流石カスパって感じですね。

  8. jpjtw より:

    出た!!笑
    カスパを連呼するいつものグーナーさん!^^
    グーナーの方の民度下げてるだけですし、グーナーの方からも鬱陶しがられてますから、そろそろお気づきになられては…?
    現実世界でまともな社会人出来ているのか心配になるほどの周りの見えてない加減、逆に感心してしまいます。

  9. プレミアリーグ大好き! より:

    8さんへ
    もちろん7さんのようなグーナーを鬱陶しいと思っている人もいるでしょうが、7さんのように思っているグーナーもあなたが思っている以上ないますよ。
    今回のダービーの荒れ方から彼の日常生活を憂うのはそちらの妄想という域を超えないと思います。

  10. あいうえお より:

    まぁカスパはこれ以上下げる民度がないから心配しなくていいもんね(*^^*)

  11. プレミアリーグ大好き! より:

    フトチャンの記事によれば、元審判のギャラガーさんはPKを支持しているらしいのですが、どうなんでしょうか…

  12. プレミアリーグ大好き! より:

    オフポジでない選手も居る以上はオフポジの選手の関与が決定的になるまでフラッグは上がらない。その間にファウルが有ったためそちらが優先されたという事ですね。時系列で考えれば確かに納得がいきます。
    神の視点で見れば違う結論に至る可能性は有っても、その瞬間においては正しいジャッジだったと言わざるを得ないように思います。
    ところでグーナーさん、「バイタルで」「相手チームのエースに対し」「後方から」「足裏で」「ボールに触れずに」「ももを蹴った」プレイがノーファウルだった事も、スパーズが優遇されているがために起きたジャッジングなのでしょうか?試合が荒れる引き金になった元凶とも言える行為、ジャッジだったと思いますがいかがですか?

  13. プレミアリーグ大好き! より:

    そもそもオーバメヤンのダイブじゃん
    自分達に都合悪いことはスルーですか?アナルさん
    ジャカのタックルがファウルにもならないんだから、サンチェスのは処分なくて当然でしょ

  14. プレミアリーグ大好き! より:

    日本人も同じようにユダヤ人が経営してるトッテナム嫌いが多いんですねー

    ユダヤ人はアジアでも嫌われていることは勉強になります

  15. あいうえお より:

    オーバのPKがダイブ????????????
    思いっきり後ろから手使って倒してるんだが?????????

  16. jpjtw より:

    スパーズファンの方、同じ民度の争いになりますから、このカスパ連呼の方は冷ややかに見ておきましょう…笑
    (よく名前変えて自演されていた実績もあるので、今回はスパーズサポーターと見せかけてガナーズをわざと汚い口調で批判し、お互い様とする高等テクニックなら感服しますが。笑)

  17. makoto より:

    みなさま

    さまざまなご感想、ご意見をありがとうございます。ポジティブなコメントについては、いつも楽しませていただき、時に記事の参考にさせていただいています。大変、ありがたく思います。今後ともよろしくお願いいたします。

    話は変わりますが、ノースロンドンレポートと今回の記事に対して、複数の人物を騙った同一人物の誹謗中傷コメントが10件以上入っています。以前から相談させていただいている専門家の方にお聞きしたところ、信用毀損罪あるいは威力業務妨害罪に相当する決定的な記載があるとのこと。居住エリアがわかりやすく協力的なプロバイダであるため、告訴が成立する可能性は低くないといただいています。

    こういった方がいるために、本ブログを畳むのは悔しいことですが、日々情報をリサーチしてまとめるパワーを使うことを続けるべきなのかどうか迷ってしまうというのが正直なところであります。個人的な被害があったわけでもないのに、他人がコストをかけて運営している場を荒らすのはやめませんか。これ以上、こういったことが続くようであれば、こちらも動かざるをえなくなります。

    他のアーセナルサポーターの方に対しても迷惑です。ITに関する知識が一定あり、起こっていることについて把握している私でさえも、「アーセナルの記事を書くと、心ないコメントを読まざるをえなくなるので心が痛み、憂鬱だな」と思いますので。コメント欄を見て、アーセナルサポーターに対するリスペクトの気持ちが薄れる方もいると思います。

    勢いで書いてしまったということであれば、「他の方が不快になるようなコメントは控えてくださいね」とお願いするところですが、ここまでされるということは確信犯でしょうから、こちらからお願いすることは何もありません。自由にご判断いただき、態度や行動を決めていただければと思うのみです。

  18. プレミアリーグ大好き! より:

    主審からすれば、ムスタフィが後ろから押したのでファールだとおもったのでしょう

    副審がオフサイドの判定をしていれば、PKではなかったのかもしれません

    VARがあれば違った判定だと思いますが

    こんなことはあまり言いたくないのですがケインがPK決めたあとのラメラのしたことは印象悪いと思いました

  19. sini より:

    >makotoさん

    おつかれさまです。
    私はスパーズサポなのでもちろんガナーズを敵だと思っていますが、他クラブサポと比較してもガナーズサポの方にはマナー面でも模範的な、本当にフットボールとガナーズを愛しているのだなと思う人が多く、そのため最近増えた一部のおかしな人が理由でガナーズサポ全体を悪く思うことはありません。

    同じように、トップ6と言われるようになったくらいから増え始めた、他クラブの誹謗中傷をするスパーズサポを理由にスパーズサポを語られたくないとも思いますが。

    先日のNLDが難しい、議論の分かれる試合だったことは間違いなく、オフサイドかファールかの話もそうですし、ジャカの前半のまさかのノーファール、レノに対するローズチャレンジへのイエローとトレイラのチャレンジへのレッド、オーバメヤンに与えられたPKの是非、あるいはフェルトンゲンのフライング、いろんな局面において、どちらにとってももやもやが溜まる試合だったと思います。

    ただ、それはそれ。
    それを理由に、誰かを誹謗中傷していいことにはならないんですよね……。そんな最低限のリテラシーもない方がいることが、悲しいですね。

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