偏愛的プレミアリーグ見聞録

残り1週間を切って、プレミアリーグの移籍市場が活況を呈してきました。マンチェスター・ユナイテッドのマタ獲得が正式に決定。移籍金は3710万ポンド（約62億7000万円）と、ベルバトフの3050万ポンドを大きく上回るクラブレコードです。この額は、日本円に換算すると、ポンドが安かった時期に移籍したF.トーレスや、今季レアル・マドリードからバリバリのレギュラー司令塔としてやってきたエジルのお値段に匹敵します。高い！高すぎます。チェルシーサポーターの方には申し訳ありませんが、控え選手に払う額ではありません。

ワールドカップ前ということで、マタにとっては「今でしょ！（2013年の流行語大賞ですが、覚えてますか!?実は初めて使いました・笑）」であり、モウリーニョ監督にしてみれば、「この際だから高値で売り抜けてしまえ！」だったのでしょう。マンチェスター・ユナイテッドからオファーしたとはいえ、あちらさんも出したがっていたのだとすれば、もう少し移籍金は叩けたでしょうに…。いろいろ間違っているところが多すぎて、どこから指摘していいのかわからないぐらいですが、決まったものは仕方ないので、この気のいいスペイン代表MFをせいいっぱい応援することといたしましょう。しかし、マタさん。「マンチェスター・ユナイテッドは僕にとってパーフェクトな場所」などという、ラテン系らしい後先考えない情熱的な表現は、控えたほうがよろしいかと思います。チェルシーサポーターのみなさんは、あなた自身が想像しているよりも、あなたとの別れを悲しんでいると思いますよ。

そしてチェルシー絡みでいえば、エッシェンのACミラン行きがほぼ決まりました。こちらは何と！移籍金ゼロ、エッシェンのギャラは半額だそうです。ああ、こっちが欲しかった！ACミランは、DFを何とかしなければセリエA上位は難しそうですが、モントリーヴォが負傷してノチェリーノが機能していなかった中盤は、エッシェンの加入で大きく改善するでしょう。金がないACミランは、本田圭祐とカカに続く、移籍金なしのお値打ち補強です。

この31歳のベテランセンターMFがマンチェスター・ユナイテッドに来てくれれば、キャリックがケガをしても、不安定な中盤の守備を締めてくれるのに…。ザハにいち早くつばをつけ、ファン・ペルシと香川真司をリーズナブルなお値段で獲得した買い物上手のフロントは、たった1年でマタとフェライニに110億も使う、プレミアリーグの他クラブの金づるになってしまいました。いっそ、デンバ・バも50億ぐらいでいただきましょうか!?今はマンチェスター・ユナイテッドがしんどい時期なので、多分に隣の芝生が青くみえるのもあるのでしょうが、何かと納得がいかない今日この頃です。

ちなみにノチェリーノといえば、ウエストハムがレンタルで彼を獲得しています。プレミアリーグで、最下位カーディフと同勝ち点の18位にあえぐ彼らは、同時にASローマで控えに甘んじているボリエッロも獲得。イタリア準代表クラスをふたりも補強し、カールトン・コールの4得点が最高という貧弱な攻撃力を改善したハマーズは、上位クラブにとってやっかいな相手となりそうです。このうえ補強が必要なポジションは、監督ぐらいでしょうか。やりたいサッカーが見えてこないアラダイス監督は、早期に順位を上げないと、下位に仲よく並んでいるフラム、カーディフ、サンダーランド同様、しびれをきらした経営陣に発射ボタンを押される運命を辿ることになります。

最後にもう1件。出場機会を求めていたイェラヴィッチをハル・シティに放出したエヴァートンは、モナコから身長203センチの大型FWラシナ・トラオレをレンタルで獲得。つい先日までロシアのアンジ・マハチカラに所属していた23歳のコートジボアール代表は、ルカクのバックアッパーや、負けているゲームのオプションとして貢献することになりそうです。

こうなるとやはり、リヴァプールが静かなのが不気味ですね。そして、ヴェンゲル監督の「私たちが両サイドの選手を獲ることはない。サイドには17人の選手がいるのだから」という発言もまた、「じゃあ、どこなら獲るんですか？それぞれ3人しかいない、前か後ろのポジションですか!?」とツッコミたくなります。混戦からどこも抜け出したいプレミアリーグの移籍市場が、この5日間、無風で終わるとは思えません。テンションを緩めずに、続報に期待しましょう。