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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

これは激論必至!ノイアー、プラティニが「PK+レッド+出場停止」の三重苦ルールに見直し要求!

先週のチャンピオンズリーグで、プレミアリーグ勢が「PK+レッドカード」を獲られて劣勢に追い込まれ、相次いで敗戦を喫した問題がヨーロッパ全体を巻き込む議論になっています。本ブログのコメント欄でも「ノイアーがコメントしている」と教えてくださった方がいらっしゃいましたが、ありがとうございます。21日にアーセナルの対戦相手だったバイエルン・ミュンヘンのGKマヌエル・ノイアーが、23日にはUEFAのミシェル・プラティニ会長が、それぞれ「ゴール前での決定機阻止について、PK、一発退場、出場停止という二重苦・三重苦となるルールは見直すべきだ」と語りました。

プラティニ会長の言葉のなかで印象的だったのは、「UEFAとFIFAの技術委員会はこのルールに反対だが、国際サッカー評議会に上がると現行ルールに変更は加えられなくなる」というひとことです。やはりこの件は、サッカー界全体で賛否両論あるのですね。先週は本ブログのコメント欄ですら珍しく熱くなっていましたが、それほど関心度が高く、重要なテーマだということを再認識しました。前回、「世のためサッカー界のためになる、いいことをいおうと思います」などと軽はずみな書き出しをしたことを反省しております。

私は、2月20日付の記事「FIFAのお偉いさん、「PK&一発レッド」という重すぎるダブルのペナルティはおかしくないですか?」のなかで疑義を呈し、

ペナルティエリア内の決定機阻止は、PKという罰を適用し、イエローはあっても一発レッドとはしない。同時に危険なファールがあったときのみ、レッドの対象とする

としてはどうか、と書きました。ノイアーは「新しいルールを検討すべき。GKとしては、こういったシーンでのレッドカードには批判的だ。チームはPKを取られて既に罰せられている」と発言。プラティニUEFA会長は「愚かなルールだ。われわれは15年前からこれを変えようとしている。ヴェンゲル監督がレフェリーがゲームを殺したといっていたけど、レフェリーに選択の余地はない。彼らはルールが愚かでも、それを守らなければならない立場にある」といっています。両者概ね、私と趣旨は一緒ですね。

ここで誤解がないように、ひとこと添えておきますが、私は決して「みんないってるんだから、ほら、こっちが正しいでしょ」といいたいわけではありません。現行ルールは、設定されたときの状況の要請があって成り立っているわけで、プラティニ氏ほど、そのありように攻撃的な言葉を並べようとは思いません。ただし、この「重すぎる罰」が、現状ではともすればアンフェアを招いていたり、サッカーでの戦い自体よりも大きな影響力を持ってしまっていたりするので、このままではこの競技をつまらないものにしてしまいませんか?といっているのです。

あらためて、整理しましょう。まず「決定機阻止」と、「危険なプレイ」「ボールを手ではたくなどの非紳士的行為」は分けて考えましょう。これをごっちゃにして語ることが、この問題をより複雑化させてしまうと思います。そのうえで、

■「決定機阻止」は、これ単体では最大でもイエローカード
■後方からのタックル、スパイクの裏をみせてのチャージ、
 走っている選手の後ろからユニフォームや肩を引っ張る行為
 (これは見た目より危険です)などの
危険なプレイはレッドカードの対象
■無人のゴールに飛んでいくボールを手で止めたりする「非紳士的行為」は厳罰。
 ペナルティエリア外で、決定的なシーンを故意にファールで止めてFKに逃げようとする
 プロフェッショナルなファールもこれに含める

というのはどうでしょうか。前提にあるのは、「決定機だから特段危険なプレイが多かったり、卑怯なプレイがあったりするわけではない」ということです。プレミアリーグを観ていても、チェルシーのイヴァノヴィッチやダヴィド・ルイスなど、最近は「クロスを出されるときに手に当たらないよう後ろに組む」ほど、ファールに細心の注意を払っている選手が増えています。それほど、「ゴール付近でFKすら獲られたくない。ましてやPKは相当痛い」のです。「レッドを獲られないなら、1回はPKに逃げる」というのはあくまで理屈上のお話でしょう。そんなことが瞬時にできるほど余裕がないのが決定機であり、そのために危険・卑怯なことをしたら、そちら側で容赦なく笛を吹けばよいと思います。

たとえばプレミアリーグでPKを獲られたシーンのVTRを並べてみれば、そのほとんどが、「ぎりぎりのところで、ファールにならないように止めにいったプレイが失敗した」だけではないでしょうか。ダニー・ローズのような、「相手に触れないようにせいいっぱい足を伸ばし、先にボールに触ったように見えるプレイ」が決定機阻止でレッドカード、などという悲劇(あるいは喜劇)があってはいけません。

プラティニ会長は、アイスホッケーのようなシンビン(時間を設定した退場制度)の導入も検討してはどうか、といっていましたが、私はこれには懸念があります。サッカーの魅力は、オフサイド以外のルールが極めてシンプルで、初めてのひとが観ても「なんでそうなるの?」という疑問が少ないところにあると思っています。シンビンは「妥当性のある退場時間設定」の難易度が高く、これはこれで「あのときの20分は10分でいいはずだ」「そもそもシンビン15分はおかしい」などの抗議を起こしてしまい、複雑性が増すと思うのですが、いかがでしょうか。

何だか、先日の主張とあまり変わりませんね。それでは申し訳ないので、新提案を加えましょう。「決定機における危険なプレイ、非紳士的なプレイには、選手生命やサッカーの将来を損ないかねないということで、別途、罰金を設ける」というのはどうでしょう。罰金であれば、試合後のVTRチェックによる審議でOKなので、ゲームを止める必要はありません。審議対象となるプレイは、主審以外を含むレフェリーからの報告・申請でいいでしょう。この「罰金基金」と、クラブ収入に応じた積立金から、「プレイ中の事故による長期離脱に対するチームや選手への補償」が充実すればよいと思います。過去のプレミアリーグでいえば、アーセナルのエドアルドやラムジーのような、復帰まで相当期間かかるような事故が対象です。チームが保険に入っていたとしても、「他者に傷つけられた損害を、傷つけられた側が負担し続ける」という理不尽は、緩和されればされるほどプラスだと思います。

本件、以上でございます。私は、チャンピオンズリーグの決勝で、微妙な判定による決定機阻止のレッドが2枚出てマンチェスター・ユナイテッドがバイエルン・ミュンヘンに勝ったとしても、あまりうれしくないでしょう(もちろん、負けるよりはうれしいですが。ここがまた、難しいところで…)。その試合は、相当つまらない、もっといえば内容的には忌まわしい試合であることは間違いないからです。選手生命を脅かす危険なプレイは取り締まりつつも、ルールは常にエキサイティングな試合ができる環境を守るものであってほしいと願っています。(マヌエル・ノイアー:写真著作者/Michael Kranewitter ダニー・ローズ:写真著作者/Dan Farrimond

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“これは激論必至!ノイアー、プラティニが「PK+レッド+出場停止」の三重苦ルールに見直し要求!” への5件のフィードバック

  1. クロップ より:

    ベンゲルとプラティニの意見が合うとかなかなか珍しいw
    いつもベンゲルが何か言ったらベンチ入り禁止になるのにw

  2. demitory より:

    以前から議論はあり、今の情勢を考えると軽減方向が妥当ですよね。選手も監督も会長も利害関係者の三者が声を揃えているのになぜ改正できないのでしょう。【国際サッカー評議会に上がると現行ルールに変更は加えられなくなる】どのような反対意見があるのか知りたい。

    下記の方が書いた文章を見つけましたが、どうなのでしょうね?
    武藤文雄のサッカー講釈
    http://hsyf610muto.seesaa.net/article/32759898.html
    元々この条項が明確になった経緯は、80年代の「決定機を阻止した反則に対する刑罰が軽微なのではないか」と言う議論から来ている。その典型的なプレイは、86年ワールドカップの「史上最高の試合」ブラジル-フランスの延長戦に訪れたプレイ。

    —–
    現場や関係者が意見一致してるのに、おかしな話ですよね~

    にしてもUEFAやFIFAでも動かせない国際サッカー評議会ってなんなんでしょう?
    勉強不足ですいません。

    —–
    いつも面白く拝見させてもらってます。
    今回はシンビンについて触れておられたのでコメントします。書いてたら長くなってしまいました。
    まずシンビンを導入するのには賛成です。シンビンってのは反省と罰則両方の意味をもってるんで,現行のイエローだすよりは,同じようなプレーを選手に繰り返させない効果があるのでは。時間については5分くらいで良いと思います。とりあえず試験的に導入してみたらいいんじゃないでしょうか。どんな効果があるか。
    ちなみにラグビーでは二枚目のシンビンはサッカーと一緒で退場です。

    ここからはルールというかそれ以前の話になるかもしれません(汗)が,ルールについての話題が多くなっている気がしたので。ブログ主さんはどうお思いですか。

    私はラグビーをやっていますが,サッカーも好きでプレミアリーグを中心に見ています。しかしサッカーを見ているといくつか気になることがあります。最たるものは審判への態度です。

    そもそもラグビーとサッカーでは審判の役割が少し違うんですが、それでもサッカー選手の審判への態度は酷いと思うんです。全ての抗議が一概に悪質なものでは無いと言うことは分かっていますが,明らかに敬意を失したものが多い気がします。
    とにかくファールがあれば不満顔でブツクサ。時には詰め寄ってがなり立てる。そんな選手,結構いませんか。まるで決まり事みたいに審判に抗議しますよね。見てる側としては・・・・・・良い印象は受けません。詰まるところ,審判のリスペクトが足りなくはないでしょうか。

    私見ですが,サッカーは選手達だけでは成り立ちません。審判と協力してゲームを作り上げるものではないでしょうか。別に審判にヘコヘコしろっていってるわけじゃありません。対等な,正当な,お互いにリスペクトを保ったコミュニケーションがチームと審判の間に気付かれるべきではないでしょうか。
    少し前に『レフェリー』という映画がありましたが,それを見てもやはり同じことを感じました。協会はルールについて話すのと同時にこういう今のサッカーに染みついてしまってる悪習(私はそう思う)を客観的に見つめ直すことが必要ではないでしょうか。それぞれの出来事にやれ罰金だ,出場停止だと処罰を下すのは結構ですが,根本的な解決になっていないのではないでしょうか。

    (それは審判への態度だけではなくいわゆるマリーシアというか,つまり蹴られてないのに痛がったりする,言ってしまえば卑怯な行為がサッカーには多い気がします。そしてそれを平然と当たり前のことのようにしてしまう空気もおかしい。一人の人間として恥ずかしい行為を当のプロ選手達がやっているのを見ると興が冷めます。ずる賢いというだけならいいんですが・・・・・・)

    勿論,サッカーはとても面白いスポーツです。正直,ラグビーよりも分かりやすくて盛り上がりやすい(笑)でももっとこのサッカーは,良いスポーツになると思います。

    長文すいませんでした(汗)
    これからも楽しみにしてます!!

    —–
    私はルール改正には反対で、現行ルールのままにすべきだと思います。なぜなら決定機阻止によるPKは試合に与える影響が高いからです。私がこの件で思い出すのが、先のW杯のウルグアイーガーナ戦です。この試合では延長でスアレスが明らかなハンドで決定機阻止でPK+退場になりましたが、結局このPKをガーナが決められなかったことでガーナは敗退しています。あの場面でガーナのシュートはスアレスが反則しなければ、明らかにゴールになっているものであり、これは決定機阻止が試合に決定的な違いを与えている原因と言えると思います。

    まぁこれがだいぶ極端な例ですが、PKと決定機阻止を同じ次元で考えてしまうのはやはり疑問です。状況によりますが、邪魔しなければ入っていたゴールと蹴るときに多大なプレッシャーがかかるPKは別物なんじゃないでしょうか?

  3. makoto より:

    クロップさん だしまるさん バッジョさん>
    ヴェンゲルもプラティニも同意見というのは、そうとう強い論陣ですね。
    反対意見があるとすれば、「ルール変えたら決定機阻止が横行し始める」
    「今のままで秩序は保たれている」ということになると思われます。

    武藤さんが契機として出しているブラジルVSフランス戦は、私もライブで観ていました。
    GKのプレイは、わざとボールを手ではじき出すのと同じくらいひどいプレイで、
    当時のルールでも退場にできると思われるくらいのものでした。
    こういったプレイをきっかけにルールを見直すのはいいのですが、
    現状、逆に厳しすぎて試合に対する興味を削いでいるようにみえます。

    この文章に関しては、「あいまいなんだから運用でうまくやれよ」という論旨は
    乱暴かな、と思います。レフェリーからすれば、「条文どおりにやってんのに
    文句言われる筋合いはねえぞ」というところでしょう。
    今後でいえば、あらためてルールの文言を厳格に規定する、
    もしくはルールに添えてガイドラインの共有をする、
    みたいなことが必要でしょうね。

  4. makoto より:

    demitoryさん>
    スアレスのファールは、ルールが現行のものであれ、私やプラティニ会長が「変えたほうがいい」といっているものであれ、起こり得るものです。これは「いずれのルールにおいても非紳士的行為で退場&出場停止」に処すべきものでしょう。あれは「決定機阻止」以前に「非紳士的行為」であると捉えるべきだと思います。

    「PKと決定機阻止を同じ次元で考えてしまうのはやはり疑問」といただきましたが、現在、問題になっているのは、ボールを手ではじき出すような”卑怯なプレイ”と、決定機にぎりぎりのスライディングが足にかかった”必死のプレイ、しかし残念ながらファール”といったプレイが同じ「PK+レッドカード」という厳罰に処されるという問題。決定機阻止の定義が広くなりすぎていると思います。いただいた「悪質なプレイ」までイエローでいいとはいっておりません。もし、「スアレスのプレイと、DFの必死なスライディングでのファールは、どちらも決定機阻止なのでレッドでいい」とおっしゃるのなら、私の意見とは異なりますが、現行ルール尊重ということで、それはそれで尊重します。

    むしろ、現行のままがいいというご意見には、トッテナムのダニー・ローズが「ぎりぎりボールに先に触れたかどうか」というプレイでPK+レッドカードになった、あのプレイについて、「先にジェコの足に触れていたのならPK+レッドだ」と考えるのかどうかをお聞きしたいです。ファールではあったかもしれないが、卑怯とも危険ともいえないプレイでダニー・ローズがピッチを去ったトッテナムは、10人になった後、惨敗しています。

    人によっては「ローズはレッドじゃなくてもよかった」とおっしゃるかもしれませんが、現行ルールでは「あれがレッドでも間違いではない」のです。私が書いた定義でいえば、「ダニー・ローズは100%レッドにはならない」。論点は、この違いです。「結果的に決定機阻止=どんな状況でも悪質」ととるかどうかですね。現行は「悪質であり、厳罰」といっています。

  5. makoto より:

    ソルダード不売運動さん>
    いただいたご意見について、2つです。
    1)サッカーは、競技者人口もクラブもリーグも世界一多いので、「試験的導入」をするなら、コストやパワーを考慮するとどこかの国・地域でのテストというのが現実的です。難しいのは、「シンビン」がお金儲けや競技自体の楽しさ向上に直接的につながらず(決定機阻止のファールというレアな状況でのみ機能するので)、審判の運用負荷というコストが上がるので、やりたがるところがあまりないかもしれないということですね。

    2)サッカーも、「審判は絶対である」「ジャッジは変わらない」というところまでは野球など、他のスポーツと同じですが、「暴言や暴行はNGだけど、文句ぐらいなら聞こえなかったふりしてやるよ」という運用になっています。これはもはや、エンタメでありカルチャーとなっており、選手が怒るとサポーターも一緒になって盛り上がるので、変えるのは難しいというか、むしろ変えるマイナスもあるぐらいだと思います。国レベルでもリーグ戦でも、地域のライバルとの戦いはもはや「ボールを使った戦争」ですので。「プロレスが、相撲みたいに負けた選手が無言で花道に去ったらファンは拍子抜けする」といった感じでしょうか。私は、「暴力や実害がない、という一定のモラルは守るという前提で、むしろこういう猥雑な空気やケンカモードを楽しもう」と思っています。

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