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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

どうする!?どうなる!?「マンチェスター・シティとファイナンシャル・フェアプレーの未来」(後篇)

さて、話は前回の「ファイナンシャル・フェアプレー抵触は76クラブ」から続きます。プレミアリーグでいちばん赤字額が激しいのは、いわずとしれたマンチェスター・シティです。2月にイギリス紙「ミラー」が報じたところによると、2012-13シーズンに彼らが選手やスタッフに払った人件費は、何と1日あたり63万9000ポンド(約1億863万円)!支出の合計は2億3310万ポンド(約396億2700万円)にも及びます。シーク・マンスール氏がクラブを買収してからの選手獲得費用は1100億円を超え、ひと頃からは減らしたとはいうものの、昨季の赤字は5160万ポンド(約87億7200万円)もあります。FFPにおける赤字許容額は、2014-15シーズンまでは3シーズン合算で4500万ユーロ(約63億円)。これでは通りませんよね、FFP。今のところは、4月までに説明が認められず、改善できないクラブには処分が下される見通しといわれています。さあ、どうするマンチェスター・シティ。どうする、UEFA!

マンチェスター・シティがこれをクリアするとすれば、短期的な逃げ方は、「アブラモヴィッチ方式」でしょう。同じプレミアリーグのチェルシーには、世界一ともいわれるロシア企業「ガスプロム」がスポンサーについており、この会社はアブラモヴィッチが関与しているといわれていますが、企業資料のどこをひっくり返してもチェルシーオーナーの名前はありません。「オーナーが経営に関与している会社のスポンサードは収入に加算できない」というFFPのルールから逃げているわけですね。マンチェスター・シティは、アブダビにある第三者の会社を前面に立てて、王族のマネーをロンダリングして注入する、ということをやる以外に手立てがないのではないでしょうか。こんなことをやると、「エミレーツとアーセナルのネーミングライツ契約は15年で、エティハドとマン・シティは10年なのに、そっちのほうがスポンサー料金が高いというのはおかしい」と文句をいっていたアーセナルや、「FFPは遠慮なく聖域なくやってほしい」とコメントしていたルンメニゲCEOのバイエルン・ミュンヘンは激怒しそうですが。

私は、UEFAがいっている「サッカー界全体、クラブ経営を揺るがす強欲で無謀な支出や財政的愚行の阻止」もさることながら、「クラブ間の経済格差によってサッカーがおもしろさを失い、マーケットが縮小すること」も気になっています。「バレンタインデーにマンチェスター・シティがプレミアリーグ優勝を決めました」などといわれたら、さすがに私も本ブログを毎日は書けなくなるかもしれません。FFPが掲げているルールのなかで、前述の「オーナーが関係している会社のお金は加算NG」というものは、単純に「お金があって赤字じゃなきゃいいよ」ではなく、「クラブ間の公平性」や、「ひとつの蛇口からの多額なお金に依存する経営のリスク」についても懸念を示しているのだと思われます。アブダビやカタールのみなさんが、「サッカー、やーめた。来年からはアイスホッケー」といった瞬間、マンチェスター・シティやパリ・サンジェルマンが彼ら以外から資金を得ていなければ、一気に破裂してしまうわけですから。

というわけで、ひとつ提案なのですが、欧州サッカー界はファイナンシャル・フェアプレーに加えて、「サラリーキャップ制の導入」をしたらどうかと思います。選手の移籍金や給与の総額に一定のラインを設け、それを超える保有をしたければ、「ぜいたく税」を払うという仕組み。アメリカのメジャーリーグベースボールに前例があり、スター選手の年俸が高いニューヨーク・ヤンキースはお金を供託し続けています。これで、ぜいたく税が一定の額貯まれば、今度はそれを「中小クラブのスタジアム整備&選手育成助成金」として使うのです。

日本の中小企業向けの創業資金融資のように、「年間の総収入が何ユーロ以下のクラブ」「一部リーグ在籍何年以上」「キャッシュを一定額持っていること」「事業計画書の提出」などの条件をつけて支給するクラブを選ぶようにすれば、中小クラブの経営支援や地域振興、いい選手の輩出などに好影響があると思います。高額年俸の選手を抱えている代理人の方々からは、「プラティニ共産主義」などと非難されそうですが、今までも散々、嫌味や揶揄の類を受けているミシェル・プラティニUEFA会長がひるむ理由は何もないでしょう。

いちサッカー選手に20億以上の年棒を払っているという現状は、クラブ経営にとってリスクが大きいと思われます。一握りのプレイヤーとチームに利益が集中することで、興業としての広がりを失わないためにも、このプランは有効だと思いますが、いかがでしょうか。FFPだけで、ある種の「抜け道」をすべてカットするのは困難でしょう。やりすぎてサッカー界に投資の魅力がなくなり、現状入ってきている資金を失うのも得策とはいえません。

おっと、プレミアリーグブログですといいながら、またもや話が膨らみ過ぎました。どうなりますかね、マンチェスター・シティやパリ・サンジェルマン。ファイナンシャル・フェアプレーを本気でやるなら、最初の審査は非常に重要。ここでUEFAが揺れたら、泣く泣く選手を放出してきたセリエAやスペインの中堅クラブからは激しい非難の声が挙がると思われます。引き続き、ニュースがあれば紹介しますね。…お時間あれば、「おもしろい」と思っていただいた方は、ブログランキングのバナーをクリックしていただけますか。最近このコメントが増えており、おねだりばかりで恐縮ですが、労力かけたぶん、ランキングが上がるのがうれしくてうれしくて。すみません、何とぞよろしくお願いいたします!

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“どうする!?どうなる!?「マンチェスター・シティとファイナンシャル・フェアプレーの未来」(後篇)” への8件のフィードバック

  1. チェルシー より:

    更新お疲れさまです

    チェルシーも入っている、いや入ってないといろいろ言われてますがどっちなんでしょうね
    シティ、PSGと違ってチケットや放映権の方でしっかり収入もあるので大丈夫だと思ってましたが

    それにしても76クラブは多いですね(^^;
    他はどこなんでしょう?

  2. makoto より:

    チェルシーさん>
    チェルシーはあくまでも噂レベルですね…。2010年の収支はマンチェスター・ユナイテッドより若干いいくらいだったので、最終的には大丈夫だと思います。

    他では、このところプレミアリーグに主力選手を放出していたスペインの中堅クラブや、イタリアが多いのではないでしょうか。プレミアリーグでも、新しいオーナーが乗り込んできて、景気よく補強をしたクラブは入ってしまうかもしれません。

  3. ペップ推し より:

    初めてコメントいたします。毎日興味深く拝見しております。

    EUやアメリカのロシアに対する資産凍結などの経済制裁は、ロシア資本のチェルシーやモナコにどう影響するのでしょうか。

    ガナーズ第二位の株主で、筆頭株主になるべく工作しているウスマノフはガスブロムの最重要人物らしいですが、そのガスブロムはチェルシーのスポンサーだったのですね。

    —–
    毎回とても興味深く記事を読ませて頂いてます!初めて投稿します。

    FFP関連で頻繁に話題に上がるシティとPSGですが、管理人さんはこの2チームの中でも、どちらの方がより赤字が大きいとお考えですか?

    シティはプレミア史上最大の赤字を出してしまったという報道があったものの、PSGに関する具体的な赤字の額は報道がないように思えます。

    また、オーナーの資金力から見ると、どちらの方がより強大なのでしょうか?

  4. makoto より:

    ペップ推しさん>
    赤字が大きいのは、マン・シティではないでしょうか。単純に先に大きな投資を始めているからです。資金力はわかりませんね。国としてのGDPの単純比較では、UAEはカタールの倍あるので、マン・シティのほうが底力はありそうです。

    —–
    londres nordさん>
    サッカー単体でみれば他業界に比べて投資単位が小さいこと、EUとロシアは交流が多いので、資産凍結をやった場合に長引けば双方デメリットが大きいことを鑑みれば、ほぼ影響はないと思います。

  5. まんする より:

    初めてコメントします。

    話題のマンチェスターシティですが、多分これからもCLに出場すると思います。
    そもそも論ですが、外部から見ている素人でも簡単に思い付くレベルの話に、
    聡明な経営者、プロのフロントが簡単に引っ掛かるのか?
    ということです。

    また、サラリーキャップの導入についても、欧州サッカー界では極めて困難。
    あれは、北米だけで、更に1部リーグのような世界だけで完結する世界だからこそできるもの。
    欧州サッカー界というのは、アメスポ型とは対極の特長を持つ世界です。
    下部リーグ、小国のリーグ、東欧のリーグまで含め、圧倒的な格差、大量のリーグを束ねるのがuefaという組織。
    ブログ主さんの提案を採用すると、補助金を貰えるかどうかのクラブ間の僅かな差が、大きな格差を生むことになります。

  6. makoto より:

    まんするさん>
    おそらく、マン・シティのフロントはルールの抜け道・裏道を見つけ出して運営しているのだと思われますが、「それをUEFAがどこまで許容するのか」(=お互いの主張がぶつかり合う)ということで、ひと悶着起こる可能性はあると思います。また、サラリーキャップについても、現在多くのルールについて、「UEFAが基本ルールを設定し、各国協会がそれを受けて運用する」としているので、MLBより少ないチーム数という単位でまわしていくことは可能です。補助金の格差についても、極端に多額のお金がひとつのチームにいかないように設定することで、「格差」というほどのレベルにしないようにはできるでしょう。

  7. まんする より:

    また、サ ラリーキャップについても、現在多くのルールにつ いて、「UEFAが基本ルールを設定し、各国協会がそ れを受けて運用する」

    ↑というのは、言い方を変えれば、リーグとして持っている資金(放映権収入など)の分配方式をuefaが決めるということになる。
    しかしそれは、各国リーグが独立性を失うこととほぼ同義であり、現実的とは思えません。
    極端な言い方をすれば、各国リーグの協会が存在価値を失うということになります。
    そもそも、プレミアやブンデスのような平等?に近い分配を行っているリーグから、各クラブが放送局と個別に契約を結ぶリーグまで存在するのに 、uefaが強制的にサラリーキャップを導入させる!?
    なんて、夢物語のようなものです。

    それ以前に、uefaって格差の拡大を助長してる一面もあるんですよね。
    CL、ELというのは、元々強いものを圧倒的に豊かにするシステムだからです。

  8. makoto より:

    まんするさん>
    「リーグとして持っている資金(放映権収入など)の分配方式をuefaが決める」→こんなことまではいってませんよ。今現在も、「リーグ戦の年間試合数上限」「インターナショナルマッチをやっていい週」というような基本ルールをUEFAが決めて、そのなかで各国が独自で1部リーグのクラブ数や、年間スケジュール等を運用しています。サラリーキャップにしても、「選手の年俸あるいは移籍金上限額(または率)など」をUEFAが決めて詳細は各国協会で…といった運用は可能だと思います。むしろ、基準一律のFFPよりも煩雑さは低いくらいではないでしょうか。

    また、サラリーキャップと放映権料のお話は、直接関係のない別な話であり、私はコメント欄で、一切放映権料については言及しておりません。

    まんするさんが、できないと思っていらっしゃるのはよくわかりました。
    私は、「絶対できる」といっているわけではなく、「うまいルール設定ができれば、現在抱えているいくつかの課題について、解決できる可能性があるのではないか」といっているだけです。ここで述べていることは、このくらいの粒度の話であれば「現実に実施するのは絶対に無理」というほどでもないと思います。

    「チャンピオンズリーグ」「FFP」「ワールドカップ32ヵ国」「Jリーグ」などは、いずれも実際に始まる前には「できない」「不可能」「時期尚早」といっている方々がいたんですよね。ましてや、われわれは専門家ではないので、あまり「あれは無理、これはできない」と頭から否定するより、「どうなったらおもしろそう」ということに思いを巡らせるくらいのほうが、よりサッカーを愉しめるのではないかと思います。

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