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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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チェルシーVSアーセナル戦の「退場者間違い事件」、何ともビミョーな裁定です!

プレミアリーグ第31節、チェルシーVSアーセナル戦で「退場者を間違える」という大誤審を犯してしまったアンドレ・マリナー主審はじめ審判団。前半15分、アザールがゴール右隅めがけて打ったシュートにチェンバレンが手を出してしまい、マリナー主審はPKを宣告。カードを探す主審の手に注目していたスタジアムのサポーターとテレビの前のサッカーファンは、当然、背番号15に赤い紙が出されるであろうと注目していると、レッドカードを突きつけられたのはになったのは何もしていないキーラン・ギブス!というのが事の顛末ですが、さすがにFAは平謝り。そりゃ、そうですよね。これはマリナー主審だけでなく、ラインズマンもどうかしていると思いました。ゴール前で倒れている選手を複数の人間が誤認するなど、あってはならないことです。

FAはどういう仕切りを入れるのか?と注目していたのですが、この件、何ともビミョーな決着で終わりました。ギブスは「冤罪」ということで逆転勝訴。これは当然です。問題は、ここから。「チェンバレンも処分はなし」「マリナー主審にもお咎めなしで、今週末のプレミアリーグ、ニューカッスルVSサウサンプトン戦の主審決定」。うーん、どうなんでしょうか。2つばかり、気になる点があります。

ひとつめは、チェンバレンの処分についてです。「出場停止などの処分なし」というのは、そうすべしだと思います。何しろ彼は、試合中にカードを出されていないのですから。サッカーの大原則は、「終わったジャッジについて、遡って変更したり、ペナルティを出したりはしない」。ビデオを観て「あれはやっぱりレッド」などとやっていては、先日のスタリッジをはじめ、ダイビングでPKをゲットした選手は全員何らかのペナルティを受けることになるでしょう。そのなかに、既に試合中にイエローカードをもらっている選手がいたら…。試合が終わって3日経ってからレッドカードや出場停止を受けるなどということを始めたら、現場は大混乱になります。

ところがチェンバレンが処分なしとなった実際の理由は、「決定機阻止ではないから」とのこと。アーセナルが「あのシュートは枠にいっていなかったから決定機ではない」と主張し、認められたと報道されています。これには唖然としました。確かに、彼が手で触らなかった場合、アザールのシュートは入っていなかったかもしれませんが、チェンバレンは「入ると思ったから手で触った」はずです。そうじゃなければ、味方がゴールキックをもらって終わるボールに関与するはずがありません。ましてやこのプレイは、故意に手で触れることによって味方を有利にしようとした非紳士的な行為です。結果論として入りそうかどうかではなく、「決定機と判断した選手が、故意に手で触れた悪質なファール」と見做すべきだと思いますが、いかがでしょうか。まあ、いずれにせよ、暴力的な行為や人種差別的な発言は別として、試合中に何もなかった選手に終わってからカードを出すべきではないと思いますので、結論には異議なしですが…。

そしてもう1点は、レフェリーに何のお咎めもなかった、ということ。今回はさすがに、出場停止もしくはプレミアリーグでしばらく笛を吹けない、等のペナルティを出し、「審判のクオリティ向上、権威の維持に努める」という姿勢を明確にしたほうがよかったのではないでしょうか。これほどの誤審をうやむやにすると、潜在的なレフェリーへの不信感につながります。

結局、誰もが穏便に済ませたいんでしょうね。今回は。

・FAからすれば、審判の地位と信頼感を脅かしかねない不祥事。謝罪はしないわけにはいかないが、出来るだけ大事件にしたくない。
・アーセナルにしてみれば、どうぜ負け試合。ギブスもチェンバレンも次戦で出場停止にならなければ、着地としては悪くない。
・チェルシーのモウリーニョ監督は、負けていれば大騒ぎしたいが、勝った試合でもあり、自らの退席処分に異議を申し立てているタイミング。ここは、沈黙するのが得策。

といった思惑が見え隠れする、何とも釈然としない仕切りと裁定です。

この件を受けて、マンチェスター・シティのペジェグリーニ監督が、「サッカーでテクノロジーを使うのはいいこと。すべてのプレイで使おうとはいわないが、PKをジャッジする際に、ファールかどうかを判断する時は有効だと思う」とコメントしています。今回の件は、大きな番号を背中につけている選手を間違えるという、極めて初歩的かつ特殊なミスなので、他のケースと切り分けて判断し、ビデオ判定導入是非は別な場で議論したほうがよいと思います。とはいえ、試合の進行を著しく妨げない範囲でのビデオチェックについては、レフェリーのジャッジが話題になることが多い昨今、前向きに検討してみたほうがよさそうですね。…レフェリー、ジャッジというテーマは、語り出すと一冊の本になるくらい奥が深いので、はまってしまう前に退散しますが、うーん、どうもモヤモヤします。(キーラン・ギブス 写真著作者/Jon Candy)

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“チェルシーVSアーセナル戦の「退場者間違い事件」、何ともビミョーな裁定です!” への2件のフィードバック

  1. こーこ より:

    全然内容と違いますけどスタリッジのあれはダイブなんですかね?
    昔トーレスも似たようなのでその時はシュミレーションと判定されてカードもらってましたけど(その時も確かユナイテッド戦)
    全速力で走ってるときに突然足が出てきたら普通によけると思うんですが
    じゃないと怪我してしまいますし

    結局ビディッチのカードも取り消しになってない事に加え現地では元審判の方があれは確実にファウルと仰っておりますよね
    正直、あの場面で足出しちゃうビディッチのプレイは相当危険だと思うんですが

  2. makoto より:

    こーこさん>
    カードが取り消しになっていないのは、大前提、サッカーの判定が覆ることはないからです。一方、ビデオを見る限り、スタリッジの振る舞いはダイビングであることも間違いありません。何しろ、ヴィディッチの足は全く触っていないので。サッカーのプレイ判断は、すべて「見える」ことではなく「実際に危険な形で当たった」という「事実」で判断されるべきものです。

    触っておらず、よけてバランスを崩したというプレイでもないのが映像からわかる以上、「スタリッジは、バランスを崩した等々言い分はあるかもしれませんが、ダイビングだといわれたときに言い訳の余地はない」「ヴィディッチは真っ白であり、危険なプレイではない」というのがビデオから受け取れる「事実」だと思います。

    私のスタンスは、「サッカーはレフェリーのジャッジがすべて。主審の目を欺くのも芸のうち」ですので、このことに文句をいうつもりはありませんが、プレミアリーグ前半戦でアシュリー・ヤングがやったダイビングともども、「今季のみえみえダイブ両横綱」だと思います。アシュリー・ヤングの時も当然、判定は覆りませんでしたが、モイーズ監督が”やめさせたい”とダイビングを認めるコメントをしました。レフェリーは、非紳士的であるダイビングに対しては、もっと厳格にカードを出した方がいいのではないかと思います。

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